陸自の最新鋭AH64Dアパッチ・ロングボウ戦闘ヘリ 住宅に墜落

 

記事 論説

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

左;2018年2月6日配信『東京新聞』/右;6日配信『毎日新聞』

 

 

 

 

  

 

 

 

2018年2月6日配信『時事通信』

 

陸自ヘリ墜落の瞬間=佐賀城北自動車学校(佐賀市)の送迎車のドライブレコーダー

墜落現場から南に約1・7キロ離れた場所に停車していた車のドライブレコーダーがとらえ、ヘリの墜落する瞬間。水平に飛行していたヘリが突然、体勢を崩し、真っ逆さまに落下する様子が映っている。

 映像は5日午後4時42分頃、佐賀城北自動車学校(佐賀市新中町)の送迎車で撮影された。

 映像では、ヘリが東(画面右)にある低い雲から姿を現し、約1分ほど高度を保ちながら西(同左)へと飛行。上下に突然揺れた直後、機首が急に下がり、ほぼ真下に向かって落ち始めた。機体は黒煙のようなものを噴きながら墜落。異変から地上の建物の陰に隠れるまでの時間は、10秒程度だった。

 送迎車を運転していた男性(62)によると、異常な音は聞こえなかったが、機体とは別に、部品とみられる物体が落ちる様子も目撃したという。男性は「プロペラのようなものが見えた。集落方面から黒煙も上がっていたので、大変なことになったと思った」と振り返った。

 

墜落した陸自ヘリが事故直前に離陸した佐賀県吉野ケ里町の目達原駐屯地(手前)と、佐賀県神埼市の墜落現場(矢印)=2月6日、共同

 

 

AH−64D Apache Longbow=マクドネル・ダグラス社(現・ボーイング)が1970年台から冷戦時代のワルシャワ条約機構軍の戦闘車両部隊に対抗するためにアメリカ陸軍向けに開発し、1984年から量産が始まったAH−64の派生型(第2世代「D型」)で、乗員2人、全長約18メートル、最大総重量約10トン。最大速度は時速約270キロ。100以上の目標を同時に捉える高性能レーダーや、複数の航空機や地上部隊と情報を共有するためのデータ転送システムを搭載し、重武装・重装甲の「空飛ぶ戦車」とも言われる。1991年3月に初飛行。アメリカ陸軍も採用しイラク戦争にも投入された。

アパッチ(Apache)の愛称はアメリカ先住民のアパッチ族に由来する。

 D型の特徴であるローターマスト上の「ロングボウ・レーダー装置」は、対地ミリ波レーダーで目標に対する広範囲な索敵能力を持つ。機首前方には赤外線・光学センサー類からなる目標捕捉、指示照準装置(TADS)、操縦用暗視装による火器管制装置を備えている。

 陸上自衛隊ではAH−1Sコブラの後継として2001年に導入が決まり、2005年から取得・配備をはじめたが、1機約50億円と高価なため、当初は62機の予定だったが、途中で発注が打ち切られ、13機で終了した。そのため、日本で製作に当たった富士重工業(現・SUBARU)が防衛省を訴え、2015年12月17日、最高裁は、富士重工の訴えを認めた東京高裁の判決を支持し、国に351億円の支払いを命じた。

当初、陸上自衛隊目達原駐屯地(佐賀)と明野駐屯地(三重)、霞ケ浦駐屯地(茨城)に配備されたが、現在、航空学校以外で部隊配備されているのは、目立原駐屯地の西部方面隊の第3対戦車ヘリコプター隊のみである。

 

 

直近の自衛隊機が墜落・死亡事故

 

2017年 10月

静岡県浜松市の沖合で航空自衛隊のUH60救難ヘリコプターが、夜間訓練の飛行中に墜落し、隊員3人が死亡

2017年  8月

海上自衛隊のSH60哨戒ヘリコプターが夜間訓練中に青森県沖の日本海に墜落し、隊員2人が死亡。1人が行方不明

2017年  5月

急救患者の搬送に向かっていた陸上自衛隊のLR2連絡偵察機が北海道北斗市の山に墜落し、機長など4人が死亡

2016年  4月

航空自衛隊のU125飛行点検機が鹿児島県の山中に墜落して6人が死亡

2015年  2月

海上自衛隊のOH6練習ヘリコプターが、宮崎県えびの市の山中に墜落し、3人が死亡

2012年  4月

青森県の陸奥湾で、海上自衛隊のSH60哨戒ヘリコプターが、低空飛行中、護衛艦に接触して墜落し、1人が死亡

2011年  7月

航空自衛隊のF15戦闘機が訓練中に沖縄県沖の海上に墜落し、パイロット1人が死亡

2009年 12月

長崎県の沖合で、海上自衛隊のSH60哨戒ヘリコプターが訓練中に不時着し、乗っていた2人が死亡

2007年  3月

救急患者を運ぶため、那覇基地を離陸し、鹿児島県徳之島に向かっていた陸上自衛隊のCH47輸送ヘリコプターが徳之島の山中に墜落し、隊員4人が死亡

2005年  4月

航空自衛隊のMU2救難捜索機が訓練飛行中、新潟と福島の県境にある山の斜面に墜落し、隊員4人が死亡

 

 

 2018年2月5日16時43分ごろ、佐賀県神埼(かんざき)市の住宅に戦車などを相手にする陸上自衛隊のAH−64D Apache Longbow攻撃用戦闘ヘリコプター(自衛隊での装備名称は「戦闘ヘリコプター」)が墜落、炎上した。飛行中に機体から異常音が響き、4枚の羽根を固定している軸の部分にあたるメインローター(主回転翼。羽根の角度を変える役割も担っていて、それによって上に上がったり前に進んだりする)が分離してほぼ垂直に落下した。飛行前に実施した定期の整備点検に問題があったとみられる。ヘリは、熊本県にある西部方面航空隊に所属している。

 

2018年2月6日配信NNNニュース

 

2018年2月6日配信『朝日新聞』)

 

ヘリは、目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)第3対戦車ヘリコプター隊に所属。この日は機体整備後の点検飛行中だった。5日午後4時36分に目達原駐屯地を離陸し、福岡県久留米市と朝倉市の上空を飛行し駐屯地に戻る計画だったが、通信が途絶えて約7分後に墜落した。

 

陸自は佐賀県警などとフライトレコーダー(飛行記録装置)を回収、事故原因の解明を進める。事故機には微量の放射性物質も使われており、周囲に影響がないかも計測する。山崎幸二陸上幕僚長は「民有地で事故が起き、大変な被害を与えてしまった。被害に遭った住宅のご家族や周辺住民の皆様に心からおわび申し上げる」と謝罪した。

 

 事故で副操縦士の高山啓希(ひろき)1等陸曹(26)が死亡。操縦士斉藤謙一2等陸佐(43)が行方不明となっていたが、6日朝からの捜索で、遺体を発見した。県警や陸自などは同日、業務上過失致死と航空危険行為処罰法違反の容疑で現場検証も実施した。

 

 斉藤2佐は防衛大卒業後の1998年に入隊して操縦士となり、総飛行時間が約2700時間に及ぶベテランパイロットだった。AH64Dの導入が01年に決まった後は米国に留学して操縦方法などを学び、陸自の航空学校の教官として操縦技術を教えてきた。17年3月から現在の第3対戦車ヘリコプター隊に配属され、第2飛行隊長を務めていた「AH64Dの操縦のスペシャリスト」という。

 

中高一貫校の九州学院中高(熊本市)のサッカー部でゴールキーパーだった高山1曹は、高校卒業後、すぐの09年に入隊。当初は航空機の整備士だったが、操縦士の育成課程を受験して合格。17年2月に第3対戦車ヘリ隊に配属されたのが操縦士として初めての本格的な部隊勤務で、1年しかたっていなかった。また高山1曹は、17年7月に発生した九州北部豪雨に災害派遣された。高山1曹は、高校時代から自衛隊に行きたいと言っていたという。

 

ヘリコプターは、佐賀県の目達原飛行場の南約4キロほど離れた、市立千代田中部小学校の北東300メートル付近の神埼市千代田町嘉納582−1の付近に墜落・炎上し、新築の2階建て住宅や小屋の計3棟が焼けた。燃えた住宅は夫婦と中学1年の長男、小学5年の長女(11)の4人暮らしで、当時1人で留守番していた長女の小学5年の女児が右足打撲などの軽傷を負った。

 

ヘリが落ちたのは燃えた住宅の東側だが、長女は西側の部屋にいたため軽いけがですんだらしい。近所の住人によると、長女は燃えた住宅のすぐ隣にあり、一部焼損した祖父母宅から飛び出してきた祖母(69)と一緒に逃げ出した。祖母に抱きしめられた長女はパニック状態で泣いていたという。

 

周辺を国道264号が走り、近くには、近くには市立千代田中部小学校や大立寺(だいりゅうじ)幼稚園を運営する認定こども園もあり、当時園内には0〜5歳児約60人がいた。

 

墜落現場から東に数百メートル離れた農地の10カ所以上で部品が見つかり、陸自が回収を進めた。

 

墜落の瞬間を目撃したという大立寺幼稚園に勤める女性は「午後4時40分ごろ、バキバキという音がして外を見たら、大きな機体がバランスを崩した感じで斜めに落下してきた。落下した場所は園から200メートルほど南の辺りではないかと思う。ものすごい音がしたあと煙がもくもくと上がってきた。園児にけががなかったのでよかったです」と話した。

 

 上空で爆発音を響かせた後、部品を落下させながら墜落するヘリコプターを目撃した住民は他にも多く、実際に現場の西約200メートルの水田には無数の破片が散らばっていた。

 

現場から西約800メートル付近のガソリンスタンドで勤務中だった男性(32)は「『ドンッ』という鈍い音がして、車が電柱に衝突した事故かなと思った。上空で機体を見つけた時は、すでにメインローターが外れた状態で、機体が頭部から落ちていった。爆発した部品もぱらぱらと散らばっていった」と証言。

 

一歩間違えれば地域住民を多数巻き込む大惨事になりかねず、住民は、「沖縄の事故を思い出した」「もう上空を飛んでほしくない」と声を震わせた。

 

現場から約300メートルに住む女性(65)は「沖縄のヘリの部品が落ちた事故を連想した。体が震えるような気持ちだった」。現場の南西約400メートルの自宅にいた主婦(67)も「今まで沖縄の米軍ヘリの墜落事故を『よそごと』と思っていたが、『もしうちに落ちていたら』と考えると、もう、そうは思えない」と不安を口にした。

 

 また、近所に住む女性(77)は「すごい音がしたので外に出て見に行きました。2階建ての住宅がすごい勢いで燃えていて、こわくなって足がすくみました。まだ新しい住宅でしたが、自分の家にまで炎が飛んでくるのではないかと思って、急いで自宅に戻りました」と話した。

 

神埼市に隣接する佐賀市で、犬の散歩中にヘリコプターが落ちていくのを目撃したという60代の女性は「上空でいつもと違うバリバリという音がしたので、見上げてみると、ヘリコプターが急に機首を下げて地上に突っ込んでいった。そして、しばらくすると黒い煙が上がった。とても怖かった」と話した。

 

神埼市の周辺では、午後は晴れで、寒気の影響で時折雪が降っていた。佐賀市には風雪注意報が出されていたが風は強くなっておらず、最大瞬間風速は午後2時20分すぎに14.5メートルで神埼市には大雪、低温、乾燥の注意報が出されていたが、強風に関する注意報は出ていなかった。

 

安倍晋三首相は6日午前の衆院予算委員会で、陸上自衛隊のヘリコプターが佐賀県神埼市で民家に墜落した事故を受け「国民の命と平和な暮らしを守るべき自衛隊が、住民の方々の安全を脅かし、多大な被害を生じさせたことは誠に遺憾だ。自衛隊の最高指揮官として心よりおわびとお見舞いを申し上げる」と述べた。

その上で首相は、事故発生後、迅速な人命救助・救出や周辺住民の安全確保の徹底などに加え、自衛隊が保有する全てのヘリの整備点検と事故を起こしたヘリの同型機の飛行停止を指示したと説明。「安全の確保は最優先の課題であり、政府として徹底した原因究明と再発防止に全力を挙げる」と語った

 

 防衛省は6日、飛行前の整備で同機のメインローター(主回転翼)の接続部を交換していたことを明らかにした。主回転翼が外れた状態で落下したという目撃証言があり、事故は整備不良が原因だった可能性がある。また、同機が墜落の5分前に管制官と交信していたことも判明。その後にトラブルが発生したとみられ、陸自の事故調査委員会が原因を調べている。

 

事故機は50時間飛行するたびに受ける定期整備後の点検飛行中に墜落した。整備ではローターの4枚の翼と回転軸をつなぐ「メインローターヘッド」という部品を交換したという。この部品は整備規定で1750時間の飛行ごとに交換が義務づけられており、陸自が保有する13機の同型機のうち、交換は3機目だった。

 

  小野寺五典防衛相は10日午前、陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが墜落した佐賀県神埼市の事故現場を視察した。墜落した住宅敷地内で陸自の担当者から被害状況の説明を受け、近隣の住民に頭を下げた。

 

 この後、神埼市役所で松本茂幸市長と面会し「ご迷惑をお掛けし、防衛省・自衛隊として心からおわびしたい。二度とこのような事故がないよう万全を期したい」と謝罪。原因究明と再発防止、被害に遭った住民への補償や心のケアに取り組む考えを示した。

 

 松本氏は「あってはならないことだ。一日も早く平穏な神埼市に戻したい」と強調した。

 

 小野寺氏は、被害家族とも非公開で面会した。面会後、記者団に「けがを負わせることになってしまったことについて謝罪させていただいた」と説明。住宅と生活の再建や心のケアにも取り組む考えを示した。

 

 小野寺氏は11日、佐賀県の山口祥義知事と県庁で会談し、陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが同県神埼市の住宅に墜落した事故について「県民の皆さまに大変ご迷惑をおかけした。防衛省、自衛隊としておわびする」と謝罪した。石倉秀郷県議会議長にも陳謝した。

 

山口氏は「決して民間人を巻き込んではいけないと肝に銘じるべきだ」と述べ、原因究明と再発防止を要求。被害住宅や周辺の居住者への丁寧な対応も求めた。小野寺氏は「できる限りの対策を取りたい」と応じた。

 

 山崎幸二陸上幕僚長は、墜落した住宅以外に周辺の7棟で被害を確認したと説明した。

 

佐賀県神埼市の住宅に、陸上自衛隊ヘリが墜落した事故について謝罪する小野寺防衛相(左)=11日午前、佐賀県庁

 

 陸自は11日、同日午前8時までに、墜落したヘリが直撃した民家2軒のほかに、現場から約200メートルの範囲で7軒に被害が出ているのを確認したことを明らかにした。ヘリの部品が屋根を貫通したり、倉庫の壁に穴があいたりしているという。

 

 小野寺五典防衛相が同日、墜落事故の謝罪のため、佐賀県の山口祥義知事と会談した際に提出した資料で示した。

 

 陸自は、10日から約1000人態勢で、ヘリの飛行経路にあたる約8キロで、落下物や被害がないか調査している。

 

  小野寺氏11日は、墜落したヘリが所属する陸自目達原駐屯地で、亡くなった隊員2人の葬送式に参列した。

 

なお、防衛省は18年3月、離島防衛の専門部隊「水陸機動団」を長崎県佐世保市に発足させる。この部隊を運ぶ輸送機統合垂直離着陸機オスプレイは駐屯地から20キロほどの佐賀空港に配備する方針で、2017年末には、佐賀市議会で「オスプレイ配備容認決議」が議決されている。ただ、地元漁協の反発もあって配備計画は進んでいない。

 

全自衛隊機飛ばすな 佐賀 神埼市議会が意見書 全会一致

 

 佐賀県神埼市の民家に陸上自衛隊の攻撃ヘリコプターが墜落した事故で、神埼市議会は2月23日、全ての自衛隊機の徹底整備と安全が確保されるまでの飛行停止を求める意見書を全会一致で可決した。

 

 意見書では、「事故発生現場は住宅密集地で、周辺には保育園や小中学校があり、多数の命を奪いかねない状況だった」などと指摘。「近隣住民に与えた不安は計り知れず、極めて憂慮する事態」と批判しました。飛行停止のほか、飛行ルートの見直しや老朽化した自衛隊機の廃棄など計6項目を要請した。

 

 事故機が所属していた陸自目達原駐屯地(同県吉野ケ里町)は、事故機と同型機を除くヘリの飛行を2月22日から再開している。

 

 

 

陸自ヘリ墜落 「メインローターヘッドは中古品」と訂正(2018年2月14日配信『毎日新聞』)

 

 

 佐賀県神埼(かんざき)市の民家に陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが墜落した事故で、陸自は14日、主回転翼の4本の羽根と回転軸をつなぐ「メインローターヘッド」は新品ではなく、中古品だったと訂正した。これまでは直前の整備で新品と交換されたと説明してきたが、その後の調査で別の機体で使われた際に不具合が出た後、修理したものと判明。陸自は「修理と事故の関係は不明」としている。

 陸自によると、交換したローターヘッドは別の同型機で845時間にわたって使用したが、別の部品とヘッドとの接続部の一つに摩耗が見つかり、2011年に米国のメーカーに修理に出していた。ヘッドは計1750時間まで使えることになっており、事故機のヘッドを定期整備で交換する際に、保管されていた修理済みのヘッドに替えたという。

 陸自トップの山崎幸二陸上幕僚長は8日の記者会見で「(ヘッドは)新品と報告を受けている」と説明したが、その後の調査で間違いと判明。また、当初は事故機のヘッドの交換が13機ある同型機の中で3例目だったとしていたが、8例目だったことも分かった。

 墜落したヘリは空中でヘッドが破損し、主回転翼の羽根が外れたとみられている。陸自は防衛省の訓令に従い、4カ月以内に調査報告をまとめる方針だが、フライトレコーダーの破損が激しく、調査が長引く可能性もある。

 

墜落ヘリ部品、直前に中古と交換 防衛省「新品」と説明(2018年2月14日配信『朝日新聞』)

 

 佐賀県神埼(かんざき)市で陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが住宅に墜落した事故で、直前の定期整備で交換されたばかりの「メイン・ローター・ヘッド」と呼ばれる部品は、以前に別の同型機に取り付けられていた中古品だったことが防衛省への取材で分かった。防衛省はこれまで、「新品と交換した」と説明していた。

 メイン・ローター・ヘッドは、4本あるメインローター(主回転翼)にエンジンの出力を伝える部品。事故機の2本のメインローターは、ヘッドの一部と接合された状態で、墜落現場から300〜500メートル離れた場所で見つかった。ヘッドそのものが破損していた。中古品を取り付けること自体は認められているものの、その強度が事故原因と関係していないか、防衛省は慎重に調査を進める。

 防衛省関係者によると、このヘッドは米ボーイング社製で、日本でライセンス生産している富士重工業(現スバル)が購入したもの。事故機は1月18日〜2月4日に定期整備を受け、ヘッドもこの間に交換された。陸自トップの山崎幸二陸上幕僚長は事故後の8日の記者会見で「交換した部品は新品だと報告を受けている」と話していた。

 その後、防衛省が整備記録などを調べたところ、このヘッドは以前に、別の同型機に取り付けられていたことが判明。この同型機から取り外され、スバル側で点検を受けた後、陸自に納入されて事故機に取り付けられたという。

 「新品」と公表した理由について、防衛省関係者は「確認が不十分だった」と話す。このヘッドは別の機体に取り付けられていた際、交換の目安とされる1750時間の飛行時間に達していなかった。整備規定で定められた飛行時間の範囲であれば、中古品を別の同型機に取り付けることは認められているという。

 

佐賀墜落事故 こども園にヘリ潤滑剤(2018年2月13日配信『しんぶん赤旗』)

 

当時70人園児 現場近くに

 佐賀県神埼(かんざき)市の民家に陸上自衛隊ヘリが墜落した事故(5日夕)で11日、墜落現場近くの認定こども園の遊具に、ヘリに使用されていたグリース(潤滑剤)が付着していることが分かりました。

 陸自が県側に示した資料によると、グリースが付着していたのは、認定こども園「大立寺幼稚園・子どもの家保育園」の遊具です。

 事故当時、園には60〜70人の園児がいて、ヘリのプロペラがバラバラになるのを目撃していた副園長が園児に「伏せて」と、とっさに叫んでいました。

 ヘリが所属していた目達原(めたばる)駐屯地の報道担当者はグリースについて「ヘリのさまざまな部分に使っている」と述べ、部位によってはグリース自体が高温になる可能性があることを認めました。また、グリースに有害物質が含まれている可能性については「わからない」と答えました。事故により、園児の頭上に高温のグリースが落ちる事態もあり得ました。

 

陸自ヘリ墜落 また被害者ネット中傷 負傷少女の父に(2018年2月13日配信『東京新聞』)

 

 佐賀県神埼(かんざき)市の住宅に陸上自衛隊のヘリコプターが墜落した事故で、住宅にいて負傷した少女(11)の父親が「許せないですよね」との報道機関に語ったコメントが、短文投稿サイト「ツイッター」上で匿名の中傷にさらされている。12日で事故から1週間。落下部品が周辺の住宅七棟でも確認され、被害が拡大する中、心ない中傷を批判する書き込みも出ている。

 「許せないって、自衛隊はわざとやってる訳じゃないだろう」「亡くなられた隊員に関しては無関心なんだな?」。投稿を一覧表のようにまとめているサイトには、ツイッターから抜き出したこれらの書き込みが20数件並んでいる。中には「は? 許せないとか何様?」との投稿もあった。

 一方で「人間の言葉かと思う どうしてこんなこと言えるのか」「許せないと思うのは当然」など、中傷を批判する内容の書き込みも目立つ。「自分が当事者だったらと言う考えも出て来ないのだろうか?」との問い掛けもあった。

 こうした被害者側に対する中傷は、沖縄県宜野湾(ぎのわん)市で昨年12月、米軍ヘリの部品が小学校に落下した事故でも、「学校をどかすのが筋だろう」などの電話が市教委に寄せられた。また衆院本会議で先月25日、米軍機の事故や不時着を野党が取り上げた際、松本文明・前内閣府副大臣が「それで何人死んだんだ」とやじを飛ばし、辞任した騒ぎもあった。

 

陸自ヘリ墜落1週間 「試験飛行なぜ住宅上で」募る不安(2018年2月12日配信『日経新聞』)

 

 佐賀県神埼市の住宅に陸上自衛隊のヘリコプターが墜落した事故は12日で発生から1週間。現場では広範囲に散乱した部品の回収が進む一方、空中分解とみられる事故の原因は不明なままだ。日常的にヘリが頭上を往来する住民らは「安心して空を見られない」と不安を募らせる。事故同型機の移転計画が浮上する隣の佐賀市でも警戒感が高まっている。

 「大きな音がするたびに不安でたまらなくて」。墜落現場から200メートルほど離れた場所に住む主婦(64)は事故以来、事故時の地響きのような墜落音やうずまく黒煙が目に浮かび、眠れない日を過ごしている。

 自分の畑と隣接する田んぼではヘリの羽根の一部とみられる大きな部品も見つかった。「原因もよく分からないままで本当に怖い。もう上空を飛ばないでほしい」

 陸自はこれまで、現場から数百メートルの範囲で散乱する部品を回収。羽根をつなぐメインローターヘッドなども見つかり、これが飛行中に破断した可能性が高まっているが「整備不良なのか、部品や機体の不具合なのか、本当に分からない」(防衛省幹部)という。

 事故時の機体状況などが記録されたメンテナンスデータレコーダー(MDR)の分析も進める方針だが、損傷が激しい場合は海外企業に解析を依頼することもある。同省には4カ月以内に大臣に事故原因を報告するとの訓令があるものの「再発防止策も作る必要があり、一般に公表できる時期のメドはたっていない」という。

 現場周辺は広大な田畑が広がっており、住民の間には「なぜ試験飛行でわざわざ住宅地の上を飛んだのか」との不信感も募っている。陸自によると、今回の試験飛行は通常訓練のルートと同じ。民家への墜落を避けられなかったことについては「制御を失っていたとしか思えない」と説明する。

 事故機が所属する目達原駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)では年約1万2千回航空機が離着陸するが、周辺自治体と飛行ルートなどに関する協定は結んでいない。神埼市防災危機管理課の担当者は「そもそもどこを飛んでいるかも分からず、事故に備えるという概念はなかった」と話す。

 現場から約80メートルの場所に住む70代女性は「これまでは上空を飛んでも気にしていなかったが、これからは『100%安全』と分かるまで安心できない。試験飛行するときはルートを事前に通知してほしい」と話す。

 事故機の飛行経路上には多くの部品の飛散が確認されており、陸自は10日から約1000人態勢で、東北東方向に約5キロ、北方向に約3キロに捜索活動の範囲を広げた。部品は田畑だけでなく、農業に使う水路の中からも発見されており、麦農家の男性(67)は「事故原因の分析だけでなく、農業への影響が本当にゼロなのかどうかも早く調べてほしい」と話す。

 

陸自ヘリ墜落;事故の被害者に心ない非難 沖縄の米軍機トラブルでは冷酷な失言も(2018年2月10日配信『毎日新聞』)

 

 

 佐賀県神埼(かんざき)市で5日に起きた自衛隊ヘリ墜落事故で、家を失った住人がネット上で罵声を浴びている。沖縄で相次いでいる米軍ヘリの不時着や部品落下の事故では「それで何人死んだんだ!」と国会でやじが飛んだ。基地のそばで不安を抱えて生きる人びとへの想像力が、失われかけていないか。

「許せないとか何様」「イースター島にでも越しとけ」

 自衛隊ヘリが墜落した際、家に一人でいた11歳の女児は軽傷で奇跡的に難を逃れた。翌日、父親の「許せないですよね」というコメントが新聞で報じられると、ツイッター上に非難の投稿があふれた。

<は? 許せないとか何様? 墜落して亡くなった隊員の事考えねーのかよ>

<わざと落ちた訳じゃないと思うし許せないの意味が分からん>

<わからんでもないが死ななかっただけいいじゃないか>

<「許せないですよね」じゃねーよ。イースター島にでも越しとけ>

<平和ボケも過ぎたものだ まずは国のために死んでしまった人を追悼でしょ>

 これらを批判する声も投稿されている。

<人の心はないのか?>

<自分の家に落ちてきても、同じことが言えるのか>

 中には、有事の際に批判が封殺される可能性を示唆する意味深長な投稿もある。

<時の権力者の判断で自衛隊員の生命が失われるような事案が起こっても、自衛隊員が死んでいるんだぞ、自衛隊批判とは何事か、黙れ、と言われるんだろう>

亡くなる間際に「ハトポッポ」

 戦後、本土でも沖縄でも軍用機墜落に巻き込まれ住民が死亡した例は多数ある。

 横浜市で1977年9月27日、米軍厚木基地を離陸した偵察機が住宅地に墜落した事故では、土志田(どしだ)和枝さん(事故当時26歳)と3歳の長男裕一郎ちゃん、1歳の次男康弘ちゃんの母子3人が自宅で全身やけどを負い、子供2人は間もなく死亡。和枝さんも治療の末、4年4カ月後に亡くなった。偵察機の乗員2人はパラシュートで脱出して無事だった。

 「お水をちょうだい。ジュースをちょうだい」。裕一郎ちゃんは全身に包帯が巻かれ、病院のベッドで苦痛を訴え続けたが、次第に衰弱。最後に声を振り絞って「バイバイ」と言い、息を引き取った。同じ病院で治療を受けていた康弘ちゃんも、家族の懸命の呼びかけに口をかすかに動かした。「ポッポッポー、ハトポッポー」。お風呂で父親に教わったばかりの童謡。間もなく兄の後を追った。

 母の和枝さんは一命を取りとめたが、皮膚移植手術は60回を超えた。治療に専念してもらう配慮から1年4カ月間、子供たちの死を知らされなかった。「心配でいても立ってもいられない」。当時の和枝さんの日記には、この世にもういない息子たちを案じる思いがつづられていたという。

 横浜市中区の「港の見える丘公園」に、母が2人の子を抱く「愛の母子像」がある。和枝さんの死から3年後の85年、父勇さんが市に掛け合って設置された。

黒焦げの児童を長いすで運ぶ

 米軍基地の集中する沖縄で数々起きている住民巻き添え事故の中でも、とりわけ悲惨な記憶として語り継がれているのが、本土復帰前の59年6月30日、石川市(現うるま市)の宮森小学校に戦闘機が墜落した事故だ。児童11人を含む17人が死亡し、210人が重軽傷を負った。

 ミルク給食の時間中だった。

 「爆発のような衝撃音とともに校舎が大地震のように揺れ、間もなく炎と黒い煙が立ち上りました。校内は蜂の巣をつついたようなパニック状態になり、黒焦げになった男の子が長いすに乗せられて運ばれていきました」。事故当時、同校の5年生だった佐次田満(さしだ・みつる)さん(69)=うるま市=は、事故から約60年たった今もなお、惨状が目に焼き付いているという。

 宮森小の事故を伝える活動に取り組むNPO法人「石川・宮森630会」会長の久高政治(くだか・まさはる)さん(69)は言う。「事故の遺族や目撃者は今も6月30日が近づくと動悸(どうき)で眠れなくなる。60年たっても恐ろしさにおののいています」

沖縄ではあわや大惨事の連続

 沖縄では近年、米軍機の事故やトラブルが頻発している。

 2016年12月に名護市沖で垂直離着陸輸送機オスプレイが落下し大破した。17年10月には東村の牧草地にヘリが不時着して炎上。その2カ月後の12月には、宜野湾市の普天間第二小学校の校庭にヘリの窓枠(約90センチ四方、重さ約7・7キロ)が落下した。今年に入ってからも、すでに3件のヘリ不時着が起きている。

 住民に死傷者は出ていないが、名護市沖でオスプレイが大破した現場は集落まで約800メートルの距離だった。窓枠が落下した際には校庭に約60人の児童がおり、一番近くの児童との距離はわずか約10メートル。一歩間違えれば大惨事になりかねなかった。

 さらに今年2月9日、うるま市伊計島の大泊ビーチで、オスプレイの部品が海に浮いているのが見つかった。右エンジン空気取り入れ口のカバー(カーボン製)で、縦約70センチ、横約1メートル、幅約65センチで重さは13キロ。ビーチで清掃活動をしていた男性が見つけ、日本側への報告はなかったという。

 「それで何人死んだんだ!」という国会でのやじの主は松本文明副内閣相だ。1月25日の衆院本会議で、共産党の志位和夫委員長が代表質問をしている最中だった。2015年10月〜16年8月には副内閣相として沖縄・北方問題も担当していた。

 松本氏は翌26日、安倍晋三首相に「誤解を招く発言でご迷惑をかけています」と陳謝し、副内閣相を辞任した。だが、内実は首相と菅義偉官房長官が協議し更迭を決めたとされる。松本氏の事務所は毎日新聞の取材に「コメントすることはない」としている。

失言史上で例を見ない冷酷さ

 やじは、裏返せば「誰も死んでいないので問題ではない」とも受け取れる。

 「救いようがない。その冷酷さは政治家の失言史に残る」。松本氏のやじをこう表現するのは、政治評論家の森田実さんだ。辞表を出させる体裁をとった政府についても、森田さんは「少なくとも辞任を認めるのではなく、罷免すべきだった。対応が甘い」と指摘する。「昔なら議員辞職に至ったはずだが、自民党内からの怒りの声が少なく、そうなっていないことがまた深刻です」

 横浜市で墜落事故を語り継ぐ活動を続けている同市緑区の斎藤真弘さん(76)は、やじについて「ショックを受けています」と話す。「過去の死亡事故について認識がなかったのなら国会議員としていかがなものかと思うし、認識があった上での発言ならもっと問題です」

 沖縄・宮森小の墜落事故を生き延びた佐次田さんも言う。「沖縄担当を務めた人の発言とは思えず、怒りを通り越して開いた口がふさがらない。国会議員失格でしょう」。そしてこう続けた。「宮森小の事故の後も米軍機墜落で多くの沖縄県民が亡くなっている。本土復帰から40年以上たちましたが、基地が集中し、米軍機が頭上を飛び交う危険な状況は変わっていません。このことをきちんと理解している政治家が、本土にはどれだけいるのでしょうか」

 宮森小の悲劇を語り継ぐ久高さんも「米軍機が墜落するかもしれない恐怖の中で暮らす人たちの気持ちを考えてほしい」と話す。墜落事故被害者へのツイッター上の非難や、国会でのやじには、そんな人びとへの想像力、共感が決定的に欠けている。久高さんはそう思えてならない。

 

専門家も「ありえない」 陸自ヘリ墜落事故の異例さ(2018年2月10日配信『AERA』)

 

 陸自ヘリの乗員2人の命が失われ、民間人を巻き込んだ事故。専門家がありえないという事故は海外でも起きていた。

 佐賀県神埼(かんざき)市で2月5日夕、陸上自衛隊のヘリコプターが住宅街に墜落した。沖縄で最近、米軍機の事故が目立っているが、訓練の練度が高いとされる自衛隊で民間人を巻き込んだ事故が起きたことに、首相官邸や防衛省にも衝撃が走った。

 事故を起こしたヘリは、陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)に所属するAH64D戦闘ヘリコプター。もともと米陸軍向けに開発され、アパッチ・ロングボウという名称もある。大ヒット映画「シン・ゴジラ」にも登場したヘリコプターのひとつだ。操縦していた隊員2人が死亡、墜落で住宅2棟が焼け、避難の際に小学5年生の女児(11)が軽傷を負った。

●離陸からわずか7分後

 防衛省によると、事故機は2006年3月から配備。50時間の飛行ごとに実施される定期整備を実施していた。5日午後4時43分、点検飛行で離陸したヘリは、同駐屯地から南西約5キロ付近に墜落した。離陸してからわずか7分後のことだった。飛行計画では、福岡県の久留米市や朝倉市方面を飛行し、駐屯地に戻る計画だった。ヘリから管制官に異常を伝える交信はなかったという。

 翌6日朝、記者が現場を訪ねると、外壁を残して焼け落ちた一軒家が見えた。会社員の川口貴士さん(35)が、妻と2人の子どもと暮らしていた2階建ての住宅で、近隣住民は「まだ新築されて2年くらいしか経っていない」と話した。

 午前7時を過ぎたころ、防災無線が鳴り響いた。

「ヘリコプター事故による部品等を発見した場合は、触らずに神埼警察署に連絡してください」

 川口さんの自宅前には田畑が広がっていた。周辺にはヘリの割れたガラスや金属製部品が散乱している。道路をはさんで墜落現場の向かい側に住む78歳の女性は、墜落の瞬間をこう振り返った。

 「飛行機の音には慣れていますが、明らかにいつもとは違ったプロペラ音でした。破片のようなものが落ちてきて、ヘリもほぼ垂直に落ちてきました」

 当時、川口さんの自宅には長女がいた。川口さんと妻、長男は不在だった。川口さんをよく知る人物はこう話した。

「(長女の小5女児は)小学校から帰って、宿題をしているところだった」

 長女は墜落音を聞いて外に飛び出し、同じ敷地内の家に住む川口さんの母親(69)と逃げた。墜落現場から約100メートルの場所には幼稚園や保育園、約300メートル先には市立小学校があった。

 ●回転翼が上空で分離

 

 ある自衛隊パイロットは、「万が一、墜落する状況になっても、ぎりぎりまで操縦して人口密集地や民家を避け、河川敷や川などに向かい、住民の被害が出ないようにと心がけている」と語る。今回の事故はドライブレコーダーの動画や目撃情報から、ほぼ垂直に落ちていて、回避行動も間に合わなかったように見える。こうしたことから事故原因について浮上しているのが、上空でのメインローター(主回転翼)の分離だ。事故機は飛行前に羽根を機体につなぐ「メインローターヘッド」を交換していた。墜落現場の住宅の敷地からは、4本のメインローターのうち2本を発見。現場から南東に約500メートル付近の用水路から、1本が見つかった。

 専門家は一様に「メインローターが空中で分離する事故は聞いたことがないし、考えられない」(中日本航空)と首をかしげる。ヘリコプターの整備を手掛ける匠航空の森岡匠代表は、考えにくい理由をこう話す。

「メインローターヘッド交換のような整備は数人がかりでやり、テスト飛行前にも正常に取り付けられたかをローターを動かしながら地上で入念に確認します。その際に何らかの整備不備があれば振動計などに異常が出る。万一、見逃してそのまま飛んだとしても、すぐに操縦士が異変に気がつき予防的に着陸するはずです」

●同様の事故が複数回

 今回の事故について、欧米のパイロットらが集うインターネット上のサークルとして知られる「PPRuNe」では、早速こんなやり取りが交わされていた。

 「メインローターが分離するなんて、ガルベストン湾とフォートキャンベルで起きたそれぞれの事故にそっくりだ」

「原因はストラップパックの不良では? ボーイングは繰り返し起きるこの問題に、もっと熱心に対処してほしいと願うよ」

 国内の航空専門家の間ではメインローターが分離する事故は極めて異例とされているが、実は米国では今回事故を起こしたAH64と同系統の機種で同様の事故が複数回起きていた。

●整備不良か機体の問題

 1度目は15年12月。ケンタッキー州にあるフォートキャンベル陸軍基地を飛び立ったAH64Eが訓練飛行中にメインローターが外れて墜落炎上し、乗員2人が死亡した。事故原因は整備不良だった。この事故を取材した米国紙「USAトゥデー」のステファニー・インガーソル記者は、本誌の取材にこう話す。

 「事故を起こした機体は事故の50時間前にローター部の部品を交換した際に正しく組み付けられず、部品に負荷がかかった結果としてメインローターが空中で分解しました」

 米軍の調査報告書は、ロワーロッドと呼ばれるローター部を支える部品の一部にベアリングがしっかり固定されなかったためにロッド1本が破損してメインローターが分離したと断定。部品を交換した3人の整備士と検査員に責任があるとした。

 その1年後の16年12月には、やはり飛行中にメインローターが外れたAH64がテキサス州のガルベストン湾に墜落し、乗員2人が亡くなっている。

 事故の目撃者は、地元テレビ局の取材に「大きな音が聞こえたので空を見上げると、ヘリが旋回しながら機首を下に向けて落ちてきた。その直後にローターも落下してきた」と証言。海に落ちた機体を撮影した別の目撃者は「羽根の1枚はなくなっていた」と話すなど、今回の事故と状況が似ている。このときの事故原因は、メインローターヘッド部にある「ストラップパック」と呼ばれるV字形をした部品の不良によるものだった。

 何度か同様の事故が起きているということは、整備不良に加え、部品の設計を始めとする機体側の問題はなかったのか。航空機の事故をまとめた「アビエーション・セーフティー・ネットワーク」によると、00年から現在までに世界中で起きたAH64の事故は101件。原因は操縦ミスなどのヒューマンエラーが多いが、なかには整備ミスや部品の不具合もあった。

 AH64はボーイング社が設計し、世界各国の軍隊に導入されている。ボーイング日本支社の広報担当者に今回の事故と米国で起きたAH64の事故について尋ねたが、「弊社からお答えすることはありません」との回答だった。

●途中で生産打ち切り

 軍事ジャーナリストの清谷信一さんは、当初62機導入される計画だったのに、生産打ち切りで13機にとどまったAH64Dについて、こんな指摘をする。

 「先進国ではすでに新型AH64Eを導入しており、D型では仮に有事になっても他国とネットワークの連携をとれない。稼働できるアパッチは5、6機に過ぎず、部隊としては戦う前から終わっている。今後の増数やE型へのアップグレードも発表されていない中、お金ばかりがかかり戦えない戦力が事故を起こしてしまった。事故をキッカケに防衛について根本的に考える必要もあるだろう」

 

空自ヘリ現場上空飛ぶ(2018年2月9日配信『しんぶん赤旗』)

 

墜落事故後3日 原因究明ないまま 佐賀・神埼

住民怒りの声

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航空自衛隊のCH47

 

陸上自衛隊ヘリコプターが墜落した佐賀県神埼市千代田町の事故現場近くの上空を、航空自衛隊の大型輸送ヘリCH47Jが飛行していたところを8日、本紙記者と複数の住民が目撃しました。航空自衛隊春日基地(福岡県春日市)の報道担当者は、本紙の取材に同基地所属のCH47Jが千代田町上空を飛行した事実を認め、「配慮に欠け、不適切であった」とのべました。5日の事故からわずか3日後で、事故原因の究明もされていないなかでの飛行に、住民からは怒りの声が出されました。


 複数の目撃者によると8日午前9時ごろと同10時45分ごろに同機が上空を飛行。日本共産党の福田清道神埼市議は、午前10時45分ごろに目撃し、「事故現場から1〜2キロ離れた上空を北に向かって飛んで行った」と話します。

 自衛隊は同基地から鹿児島県内への往路と帰路の2回、事故現場付近の上空を飛行したとしています。

 福田市議は「住民感情からすると事故直後にもかかわらず、千代田町の住民の上空を飛ぶなど許せないことだ」と批判しました。

 ヘリを目撃した女性(71)は「グラウンドゴルフをしているときに音が聞こえてきたので空を見たら自衛隊ヘリが民家の上を飛んでいた。みんなびっくりしていた。にらみつけてやりましたよ。被害者のことを考えると、千代田町の上空を飛ぶことはできないはず。許されない」と怒りました。

 

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上空を飛ぶCH47(矢印)=8日、佐賀県神埼市

 

回転翼部品が根元から破損、飛行中分解か 陸自ヘリ墜落(2018年2月8日配信『朝日新聞』)

 

 佐賀県神埼(かんざき)市で陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが住宅に墜落した事故で、防衛省は7日、現場から南東に約500メートル付近の用水路から、事故機のメインローター(主回転翼)の4本のうち1本が見つかったことを明らかにした。このローターとエンジン出力をメインローターに伝える「メイン・ローター・ヘッド」の一部もボルトで締められた状態で見つかっており、この部品が根元から破損したとみられるという。

 防衛省はメイン・ローター・ヘッドの一部が飛行中に分解した可能性が高いとみている。

 防衛省によると、現場となった住宅の敷地からは、メインローター2本が見つかっている。他にも広範囲に機体の一部が散らばっており、順次回収を進めている。

 事故機は50時間の飛行ごとに実施される定期整備後の試験飛行中だった。定期整備は1月18日から2月4日までの間に実施され、メイン・ローター・ヘッドもこの間に交換された。事故機は2006年3月に配備されたが、事故機でこの部品が交換されたのは今回が初めてだったという。

 防衛省によると、5日の飛行前には5回にわたって地上でエンジンの出力を徐々に上げるなどの試運転を実施。振動や音などから異常がないことを慎重に確認したうえで試験飛行を始めたという。

 陸自によると、搭乗していた機長の斉藤謙一2等陸佐(43)の総飛行時間は約2700時間で、このうちAH64Dは約1600時間。AH64Dの操縦者養成の教官も務めるなど、部内では「AH64Dのスペシャリスト」と目されていた。

 防衛省幹部は「ベテランが地上で入念に点検し、ホバリングの状況もみて、駐屯地周辺を飛行して機体に異常がないことを確認している。機体に突発的なトラブルが起きた可能性が高い」と話す。

 一方、佐賀県警は7日、斉藤2佐の死因について外傷性ショックと発表した。

 

「事故捜査は陸自が主導」 政務官発言に陸幕困惑(2018年2月1日配信『東京新聞』−「夕刊」)

  

 陸上自衛隊のヘリコプター墜落事故に関して、大野敬太郎防衛大臣政務官は六日夜、報道陣に「陸自の警務隊が主導して事故捜査を進める」と語った。この発言に対し、陸上幕僚監部(陸幕)は困惑。身内が主導すれば厳正な捜査に疑念を招きかねないとみて、神経をとがらせている。

 事故を巡っては、業務上過失致死や航空危険行為処罰法違反の容疑を視野に、佐賀県警と陸自警務隊が合同で捜査している。

 現地入りしていた大野政務官は六日夜に防衛省に戻り、小野寺五典(いつのり)防衛相とともに省内で報道陣の取材に対応。警察と自衛隊のどちらが捜査の主体になるかを問われ、「現場では陸自の警務隊が主導し、県警の協力を得ながら捜査を進める形になっていると承知している。詳しくは陸幕に確認を」と述べた。

 この発言を受け、陸幕は取材に「警察庁とも協議し、県警と連携し合同で捜査にあたる。部分的に警務隊が中心になることはあり得るが、捜査全体として陸自が主導することは現時点ではない」と説明。

 自衛隊内部からは「警務隊が公正な組織とはいえ、これだけの事故では『内輪で都合よく処理したのでは』とみられてしまう」との懸念が漏れている。 

 

陸自ヘリ墜落;割れた窓から素足で 奇跡的に難逃れた女児(2018年2月7日配信『共同通信』)

 

陸上自衛隊のヘリが墜落、炎上した住宅。墜落時に1人でいた小学5年の女児はリビングの窓(中央下)から外に飛び出した

 

 試験飛行中の自衛隊ヘリコプターが墜落、炎上した佐賀県神埼市の住宅に1人でいた小学5年の女児(11)は、割れた窓から素足で脱出していた−−。父親の会社員、川口貴士さん(35)が6日、奇跡的に難を逃れた長女の災難を語った。

 川口さん宅は木造2階建てで、家族4人で暮らしていた。事故が起きた5日午後4時40分ごろ、長女は小学校から帰って留守番をしていた。

 2階で着替え、1階北西側にある洗濯機に衣類を入れ、南東側のリビングに入った直後、強い衝撃がした。ヘリが突っ込んだのは、さっきまでいた建物北側だった。とっさにリビングの窓ガラスに向かい、割れた部分から外に飛び出した。

 「ヘリが落ちてきた」。午後5時ごろ、職場にいた川口さんの携帯電話に、隣の平屋に住む母親から震えた声で連絡が入った。「娘は大丈夫か」。母親と一緒に近くの住宅に避難し無事だと分かり、職場を出た。ショックで何も話せず、泣きじゃくっていた長女をしっかり抱きしめた。

 「本当に間一髪だった。助かって良かった」。事故後、川口さんは現場を訪れた大野敬太郎防衛政務官と会い、謝罪を受けた。

 

直前の部品交換が焦点に 主回転翼脱落、極めて異例(2018年2月6日配信『産経新聞』)

 

 佐賀県の住宅に墜落した陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターは、メインローター(主回転翼)が上空で脱落した可能性が強まってきた。メインローター脱落による事故は過去にほとんど例がない。なぜ起きてしまったのか。回転する4枚の羽根をつなぐ部品を直前に交換しており、この整備作業や新しい部品に問題がなかったかが焦点になりそうだ。

 ▽目撃証言

 5日午後4時36分、ヘリは佐賀県吉野ケ里町の駐屯地を離陸。約2分後、管制官がヘリと交信した際は、トラブルは確認されなかった。その後急降下し、4時43分、駐屯地から約6キロ離れた住宅に墜落した。

 その瞬間を、近くにいた車のドライブレコーダーが捉えており、水平方向に移動していたヘリが突然、制御不能に陥り、約10秒後に住宅に突っ込む様子が撮影されていた。

 この映像でははっきり確認できないが、複数の目撃者がメインローターが外れたと証言し、墜落現場の周辺には部品が散乱していた。

 陸自が事故直前に交換したのは、揚力を生み出す4枚の羽根を取り付けるメインローターヘッドと呼ばれる部品だ。大きな負荷がかかる箇所で、飛行がおおむね1750時間に達したために交換し、5日に試験飛行に臨んでいた。

▽制御不能

 事故原因について、民間ヘリの操縦士を長く務めた帝京大理工学部の倉増和治教授はまずエンジントラブルの可能性を否定する。エンジンが止まってもオートローテーション(自動回転)という仕組みで、ヘリは緩やかに降下できるからだ。

 さらに操縦ミスも考えにくいとし「目撃証言通りメインローターが脱落したのなら、映像のように制御不能の状態に陥る」と指摘。メインローターヘッドについては「あそこがヘリ全体を支えていると言っても過言ではない」とした上で「交換後の飛行なら、整備士だけでなく、操縦士も慎重、入念に機体をチェックしていたはずなのに」と語った。

 ▽見方

 メインローターの脱落は、ノルウェーで2016年に起きた13人死亡の墜落事故で例がある。このときは、エンジンの動力を伝えるメインギアボックス内の部品が剥離を起こしたことが脱落につながった。

 国内ではどうか。運輸安全委員会の統計では、前身の航空事故調査委員会が発足した昭和49年以降、ヘリ事故(自衛隊機除く)は昨年まで433件発生したが、国土交通省幹部は「メインローターの脱落は聞いたことがない」と話す。

一方、この幹部は、自衛隊機の構造は把握していないとしながらも「羽根を固定するためのピンが破断した可能性がある」と指摘。羽根4枚のうちピンが破断して1枚でも抜ければ、残る3枚によって異常な振動が生じてローターに重大な影響を及ぼすという。

 ある防衛省関係者は「メインローターヘッドを交換するときは4枚の羽根を全部取るが、きちんと取り付けていたのかどうか。今回は操縦ミスではなく、整備面が怪しい」との見方を示した。

 

「どうして民家の上を…」 ヘリ墜落、住民に不安や怒り(2018年2月6日配信『朝日新聞』)

 

 陸上自衛隊のヘリコプター墜落事故から一夜明けた6日朝、佐賀県神埼(かんざき)市の現場付近では、いつも通りに小学校や幼稚園、保育園へ向かう児童・園児らの姿が見られた。だが、車で送り届ける保護者や付近の住民からは、不安の声が漏れた。

 現場から100メートルほど離れた大立寺幼稚園・子どもの家保育園には、6日午前7時過ぎから子どもを送る保護者らが続々と訪れた。園内には警察官らが頻繁に出入りし、遊具付近では落下物を調べる自衛隊員の姿も見られた。

 神埼市の会社員中園恵美さん(24)は長女(2)とともに園へ。「昨日は子どもが救急車のサイレンの音を怖がっていた。落ち着かせようと、いつもより長く一緒に遊んだ」。車で長男(3)と次男(2)を送った同県上峰町の看護師藤戸由理さん(26)は、「一回こういうことが起きると不安。二度とないようにしてほしい」と注文をつけた。

 6歳の長男を預けている40代の女性は、墜落した家に住む中学生の男子生徒と次女が同級生。「点検後のテスト飛行だったと聞く。それなのにどうして民家の上を飛んでいたのか」と怒りをみせた。

 千代田中部小学校(児童264人)では、児童らが普段通り集団登校する一方、子どもを車で送る保護者らの姿も見られた。

 5年女児と3年男児の孫を乗せてきた女性(71)は「墜落したとき、孫はまだ帰宅していなかったが、無事でよかった。けがをした子が孫娘と同級生で心配」。子ども3人を車で送り届けた父親(35)は「沖縄で米軍ヘリのニュースが続いて心配だったが、まさかこんな近くで自衛隊ヘリが落ちるとは思わなかった」と話した。

 事故について全校放送するという田中達校長は「みんな大丈夫だよ。不安があったら先生に相談するようにしてね、と話したい」と語った。

 現場から北に50メートルほどの場所に自宅がある樋口富代さん(87)は、「心配よ」と現場を見に来た。「沖縄であがんことがあっても、遠隔地で気にしていなかった。安心して住まれんね」と話した。ただ、「飛ぶな言うても国のためにやってることだから、政治のことは分からんね」と語った。

 神埼市の松本茂幸市長は午前10時15分ごろ、山口祥義・佐賀県知事と現場を訪れ、被害者の川口貴士さん(35)と妻の留美さん(36)と面会。松本市長によると、夫妻は涙を流しながら「二度とこんな事故が起こらないようにしてほしい」と訴えたという。松本市長は「川口さんには『国、県、市ともに支えるので、何か困ったことがあれば何でも言ってください』と語りかけた。言葉にならない様子だった」と話した。

 

負傷女児、ショックで口数少なく ヘリ墜落、震える住民(2018年2月5日配信『朝日新聞』)

 

 バーンという大きな音とともに、民家へ真っ逆さまに落ちていった。佐賀県神埼市で起きた陸上自衛隊ヘリコプターの墜落は、住宅地を巻き込む異例の事故だった。小学生の女児がけがを負い、雪の舞う現場には残骸が飛び散った。「恐ろしかった」。難を逃れた住民は、恐怖で体を震わせた。

 「ガガガガダーンと音がして、自分の家に何かが墜落したかと思った」。道路を挟んで事故現場の向かい側に住む女性(73)は震える声で振り返った。外に出ると、最初は黒い煙が、間もなく火の手があがった。「ボンボン」と何度も爆発する音。周辺の田んぼや家のまわりには、墜落したヘリの残骸とみられるものが散らばっていた。

 墜落したヘリAH64Dは、神埼市千代田町嘉納の住宅地にある会社員、川口貴士さん(35)方の住宅を炎上させた。事故当時、この住宅には長女(11)が、隣接する両親宅には母親(69)がいた。川口さんは朝日新聞の取材に、「娘が無事で本当によかった。母がそばにいてくれてよかった」と語った。

 ヘリの墜落で、長女と母親はそれぞれ屋外へ飛び出した。職場にいた川口さんは「大変な事になっている」と母親から電話を受け、「慌てて帰ってきた」。長女は軽傷で病院から戻ったが、ショックで口数が少なく、当時のことはほとんど覚えていない、と話しているという。約2時間後に自衛隊の関係者が謝りに来たが、「許せないですよね」。

 川口さんの親戚の小部英(ひでる)さん(65)は、近くのコンビニ付近を車で走っていた時にヘリを目撃した。「近くを飛んでいたヘリのローター(回転翼)が止まり、頭から真っ逆さまに落ち、黒煙が激しく上がった」

 現場から約800メートル離れた田んぼで農作業中に墜落の一部始終を見た男性(67)は「すごく怖かった」と興奮した口調で話した。

 上空でバーンという大きな爆発音がして、空中でヘリの機体から部品が飛び散ったように見えた。「最初、真っ黒な煙がぶわーっと広がり、次に真っ赤な炎が上がった。その後白い煙があがった」という。

 沖縄で米軍ヘリの事故が続いていることを思い出した。「実際に近くでこんな事故が起こるとは。これまでも孫や子どもと『暗くなったら飛ぶのはやめて欲しいね』と話していた。本当に怖かった」と繰り返した。

 現場から約200メートル離れた所に住む農業古賀悦男さん(68)は、家の中でドーンという音を聞いた。「落雷よりひどい、これまでに聞いたことがないような音だった。外に出ると、南の方から黒い煙があがっていた。すぐ車に乗って行ってみたが、警察に『爆発するから危ない』と言われ戻ってきた」と話した。

 

 

陸自ヘリ飛行再開(2018年2月23日配信『佐賀新聞』−「論説」)

 

不安と不信、置き去りか

 民間人を巻き込んだ陸上自衛隊ヘリコプターの墜落事故から2週間余り。防衛省は事故機が所属していた目達原駐屯地のヘリの飛行再開に踏み切った。

 なぜ事故は起きたのか。

 いまだ原因は特定されていない。事故を起こした機体と同型機は飛行させないようだが、事故原因を特定できていない以上、ほかの機種だから安全だとは言い切れまい。

 これまでに事故の状況などから、ヘリの羽根を回転軸に固定する部品「メインローターヘッド」が着目されている。だが、部品に欠陥があったと結論づけるのは早計だ。しっかりと時間をかけ、徹底的に究明しなくてはならない。

 この部品をめぐっては、当初は、「新品」に交換したばかりだったと発表したが、後に「中古」部品だったと修正した経緯がある。

 極めて基本的な情報にもかかわらず、事実と異なる情報が放置され、修正までに10日近くもかかっている。「誤った報告が伝わり、新品と誤認した」と説明していたが、不自然ではないか。

 連絡体制の不備も浮き彫りになった。駐屯地の地元である吉野ヶ里町に、連絡が入ったのは事故から1時間以上たってからだったという。もしもまた事故が起きたときに、どう対応するつもりか。実際に自治体を交えた訓練を実施するなど、住民の目に見える形で示してもらいたい。

 特に理解に苦しむのは、飛行ルートの設定である。

 なぜ、事故機は、住宅や学校の上を飛んでいたのか。「試験飛行」である以上、不具合やトラブルがないかを確認するのが目的のはずだ。最悪の場合は事故もありうると考えるのが当然だろう。

 いつから、この飛行ルートが使われてきたのか、今後、どう改善するのか。しっかりと検証した上で、具体的に住民に示すべきだ。

 この事故は、自宅で事故に遭った児童だけでなく、周辺の子どもたちに大きな衝撃を与えている。

 神埼市教育委員会によると、千代田中部小、千代田中の全校児童生徒を対象にした調査で、「何らかの形でストレスを持っている疑いがある」と判断された子どもは、小学生で約60人、中学生で約50人もいたという。子どもたちの心のケアには、落ち着きを取り戻す時間の確保が求められよう。

 自衛隊員2人が亡くなり、さらに住民が犠牲になってもおかしくはなかった。これほど深刻な事故にもかかわらず、なし崩し的に飛行再開に踏み切った防衛省の姿勢には、不信感ばかりが募る。

 この上、自衛隊が導入する輸送機オスプレイを佐賀空港に配備するつもりだろうか。安全性が疑問視されている、いわく付きの機体である。もはや、受け入れの是非を議論する環境は根底から崩れており、計画そのものを見直すべきではないか。

 県議会は、国に対して再発防止や原因究明を求める意見書を全会一致で可決した。「隊員の命を奪い住民をも巻き込む重大な事故で、自衛隊の信頼を揺るがしかねない。厳重に抗議する」。国はしっかりと受け止めるべきだ。

 事故原因を特定できていない上、浮き彫りになった課題にも対応せず、飛行再開だけを進めていく。このまま、県民が置き去りでいいはずがない。

 

陸自ヘリ墜落(2018年2月13日配信『宮崎日日新聞』−「社説」)

 

◆安全性を軽視していないか◆

 佐賀県神埼市で陸上自衛隊のヘリコプターが2階建て住宅に墜落、炎上した。現場は郊外に広がる農地の中の住宅密集地で、小学校や認定こども園もある。近くに墜落機が所属する陸自駐屯地があり、普段から上空をヘリが飛んでいたという。原因はまだ分からないが、複数の目撃情報などから、飛行中に機体から異常音が響き、ほぼ垂直に落下したとみられる。飛行前の定期の整備点検に問題があった可能性もあり、陸自や警察などが解明を進める。

迅速な原因究明必要

 安倍晋三首相は小野寺五典防衛相に対し、同型機の当面の飛行停止と全てのヘリの徹底した整備点検を指示した。だが防衛省が陸自に導入される輸送機オスプレイの佐賀空港への配備を目指す中、民家が巻き込まれる事故を目の当たりにした住民らの間に不安が広がっている。米軍ヘリの不時着や部品落下が相次ぐ沖縄県にとっても、ひとごとでは済まされない。

 政府は原因究明の結果はもとより、再発防止策を具体的かつ分かりやすく説明することが求められる。国の安全保障を担う基地が、地元住民の安全と理解の確保を徹底することなしには十分機能し得ないことを改めて肝に銘じてもらいたい。

 防衛省の説明などによると、墜落したのは陸自のAH64D戦闘ヘリ。4枚の羽根をつなぐメインローターヘッドという部品の交換を行い、試験飛行のために駐屯地を飛び立って7分後に民家に突っ込んだ。安倍首相は衆院予算委員会で「国民の命と平和な暮らしを守るべき自衛隊が住民の安全を脅かした。自衛隊の最高指揮官として心よりおわび申し上げる」とした。迅速な原因究明などによって住民の不安にきちんと対応できるかが問われる。

オスプレイに影響か

 佐賀県では、事故やトラブルが相次いだオスプレイの配備計画を巡り漁協などが反対し、地元の調整が難航。知事は受け入れの最終判断を保留している。政府高官は「今回の事故は配備計画に影響しない」との見方だが、オスプレイとともに墜落機と同型のヘリも移駐されるとみられ、安全性を巡る議論を軽視してはなるまい。

 神奈川県の米軍厚木基地から空母艦載機の移駐が段階的に進められ、年内にも極東最大級の航空基地となる岩国基地のある山口県でも、事故の不安が広がるのは避けられない。とりわけ米軍機のトラブルが絶えない沖縄県では、より現実味を持って事故が受け止められ、不安は深刻だろう。

 防衛省によると、昨年、在日米軍の航空機やヘリの事故・トラブルは25件が発生し、前年の倍以上だった。特に沖縄で多発しており、10月に大型輸送ヘリが不時着・炎上したほか、12月には小学校にヘリの窓が落下した。日本側は今年初めに再発防止を求めたが、政府はこれまで以上に強い姿勢で米軍に再発防止を迫る必要がある。

 

事故矮小化の疑い?(2018年2月11日配信『琉球新報』−「金口木舌」)

 

 もくもくと黒煙が上がり、炎を上げて燃える家を、消防士が放水し消火に当たる。テレビの映像を見て、既視感を覚えつつ背筋が凍った。佐賀県の住宅地に自衛隊のヘリが墜落した時のニュース映像だ

▼沖国大や東村高江での米軍ヘリの事故を思い出した。既視感はその映像だけでなかった。小野寺五典防衛相が、発生後の会見で「ヘリAH64の着陸、炎上が確認されました」と発言した

▼自衛隊ヘリが住宅地に墜落しているのは映像から明らかなのにもかかわらず、「着陸炎上」と表現。さらに「住宅等に落着しているような状況」と説明した。「一件落着」の落着しか思い浮かばず、意味不明の説明だった

▼名護市安部にオスプレイが墜落した時、米軍や日本政府は「不時着」「着水」と言い換えた。事態を矮小(わいしょう)化しようという意図が感じられた。今回もそうなのか。それから1時間後、再び行われた会見で小野寺防衛相は「墜落」と表現を改めた

▼墜落と改めた背景は分からない。発生当初は情報が錯綜(さくそう)し、「着陸炎上」となったのかもしれない。発言の揚げ足を取るつもりはないが、前例があるだけに疑いが膨らんだ

▼安倍晋三首相は全ての自衛隊機の点検を指示し、同型機の飛行停止を命じた。国内法に基づき捜査可能な自衛隊。一方、米軍機事故は十分な現場検証さえ日本側はできない。二重基準が県民をさらに苦しめている。

 

人命を軽視する空気(2018年2月10日配信『宮崎日日新聞』−「くろしお」)

 

 今も車で西都市にさしかかると県道で起きた事故現場を生々しく思い出す。航空自衛隊新田原基地に所属するT2ジェット練習機の墜落事故。1986年9月2日に起きた。

 乗員1人が死亡。民家2軒が炎上し住民2人が大やけど。車4台も焼失した。現場を訪れたのは2日後。辺り一面黒こげで、多くの自衛隊員が片付けを行っていた。ゴムや木の焼けたにおいが、戦場に迷い込んだ気持ちにさせる。あまりに日常と隔絶した光景だ。

 身近に基地があることは暮らしの隣に戦場があること。というと感情的だが、騒音問題だけではない近隣住民の不安が形になった格好だ。佐賀県神埼市の住宅に陸上自衛隊の戦闘ヘリコプターが墜落した現場も似た光景に言葉を失った。

 乗員2人が死亡しただけでなく、住宅にいた小学生女児らがけが。とっさに住民が退避したので、民間の人的被害が最小限に抑えられた。自衛隊も安全には相当注意を払っているはずだが、素人目にも首をかしげることが多い。例えばメインローター(主回転翼)。

 上空で脱落したらしいが、なぜ主要な部分に不具合が生じたのか。なぜ試験飛行で住宅密集地の上を飛ぶのだろう。在日米軍を含めて航空機やヘリのトラブルが相次いでいる。隊員らの殉職も痛ましく思う。彼らの命もかけがえがない。

 先月国会で米軍ヘリのトラブルを巡る質問に「それで何人が死んだ」とやじを飛ばした内閣府副大臣がいた。人命を軽視する空気が政府以下まん延していると疑念を持たざるを得ない。国民の生命と財産を守る使命から総点検を促したい。

 

陸自ヘリ住宅に墜落/組織全体の徹底検証が必要(2018年2月7日配信『河北新報』−「社説」)

 

 陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが、佐賀県神埼市の住宅に墜落し、炎上した。乗員1人が死亡、不明だった機長の遺体も見つかった。この家の小学5年の女児が軽いけがをした。

 墜落現場の周辺には小学校や幼稚園もあった。一歩間違えれば、大惨事につながるところだった。火柱と黒煙に覆われた集落の騒然とした様子を見る限り、住民に犠牲者が出なかったのは偶然としか言いようがない。

 所属する陸自目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)で整備点検を受けた後、ヘリは試験飛行のため午後4時36分に離陸した。2分後の管制官との交信時には異常はなく、その5分後に墜落した。回避行動を取れなかったことを考えると、突発事故の可能性が高い。

 防衛省によると、上空でメインローター(主回転翼)が外れ、ほぼ垂直に落下したとみられている。整備では主回転翼の中心部で動力を伝えるメインローターヘッドという部品を交換していた。

 ヘリのメインローターが分離する事故は極めて異例だという。部品自体に欠陥があったのか、それとも整備点検に落ち度があったのか。防衛省は事故の異常性を重く受け止め、原因究明に全力を挙げなければならない。

 昨年1年間だけを見ても、人命が失われる自衛隊のヘリなどの事故が3件もあった。

 8月には青森県沖の日本海上で海自の哨戒ヘリが墜落。3人が行方不明になり2人の遺体が見つかった。5月には陸自の連絡偵察機が北海道北斗市内の山中に墜落し4人が死亡。浜松市沖でも10月に空自の救難ヘリが墜落して3人死亡、1人が不明となった。

 これだけ深刻な事故やトラブルが頻発すると、背後に組織的な問題が潜んでいるのではないか、と疑念を抱かざるを得ない。機体自体の性能はもとより、整備や訓練、任務のあり方など自衛隊組織全体の徹底した検証が必要だ。

 緊迫化する北朝鮮情勢などとの関連を指摘する声がある。現場の幹部は「恒常的実任務が増え、訓練に割く時間が確保できていない」と証言する。そうであれば、自衛官に過重な負担を強いる態勢の見直しが不可避だろう。

 防衛省は、佐賀空港(佐賀市)に米国から購入した輸送機オスプレイを17機配備する計画を進めている。事故を受け山口祥義知事は「非常に憂慮する状況だ」と述べた。

 米軍によるトラブルが続くオスプレイである。今回の墜落で、受け入れに慎重になるのは当然ではないか。陸自王城寺原演習場(宮城県大和町、色麻町、大衡村)で15日から始まる日米共同訓練にもオスプレイが参加する予定だ。防衛省は安全対策に十分に配慮し対応する必要がある。

 狭い日本の国土では事故はどこでも起こり得る。防衛省は足元を見つめ直し、再発防止に万全を期すべきだ。

 

住民の不安解消に努めよ/陸自ヘリ墜落(2018年2月7日配信『東奥日報』−「時論」)

 

 佐賀県神埼市で陸上自衛隊のヘリコプターが2階建て住宅に墜落、炎上した。住宅に1人でいた女児は軽いけがをしたが、同じ敷地内の平屋に住む祖母と逃げ、命拾いした。現場は郊外に広がる農地の中の住宅密集地で、小学校や幼稚園もある。近くに墜落機が所属する陸自駐屯地があり、普段から上空をヘリが飛んでいたという。

 この事故でヘリの隊員2人が死亡した。原因はまだ分からないが、複数の目撃情報などから、飛行中に機体から異常音が響き、メインローター(主回転翼)が外れて、ほぼ垂直に落下したとみられる。飛行前の定期の整備点検に問題があった可能性もあり、陸自や警察などが解明を進めている。

 安倍晋三首相は小野寺五典防衛相に対し、同型機の当面の飛行停止と全てのヘリの徹底した整備点検を指示した。だが防衛省が、陸自に導入される輸送機オスプレイの佐賀空港への配備を目指す中、民家が巻き込まれる事故を目の当たりにした住民らの間に不安が広がっている。

 政府は、迅速に原因究明を進め、再発防止を徹底し、住民の不安解消に努めるべきだ。再発防止策などについて、具体的かつ分かりやすく説明することが求められる。

 国の安全保障を担う基地が、地元住民の安全と理解の確保を徹底することなしには十分機能し得ないことを改めて肝に銘じてもらいたい。

 自衛隊所属の航空機事故は2017年、死亡事故だけで3件と頻発している。訓練や整備の在り方に問題はないのか、検証が求められよう。

 このうち1件は8月に、本県の海自大湊航空基地所属の哨戒ヘリが、竜飛崎沖の日本海に墜落し、2人が死亡、1人が行方不明となった事故だ。佐賀県の事故を受け、本県の三村申吾知事は6日の定例会見で、自衛隊機が発着する基地を抱える県の立場から、一日も早い原因究明と再発防止の徹底を訴えたが、当然の反応だろう。

 佐賀県では事故やトラブルが相次いだオスプレイの配備計画を巡り漁協などが反対し、地元の調整が難航。山口祥義知事は受け入れの最終判断を保留している。政府高官は「今回の事故は配備計画に影響しない」との見方を示しているが、オスプレイとともに墜落機と同型のヘリも移駐されるとみられ、安全性を巡る議論を軽視してはなるまい。

 

陸自ヘリ墜落 安全と理解の確保徹底を(2018年2月7日配信『茨城新聞』−「論説」)

 

佐賀県神埼市で陸上自衛隊のヘリコプターが住宅に墜落、炎上した。住宅に1人でいた女児は軽いけがをしたが、同じ敷地内の平屋に住む祖母と逃げ、命拾いした。現場は郊外に広がる農地の中の住宅密集地で、小学校や認定こども園もある。近くに墜落機が所属する陸自駐屯地があり、普段から上空をヘリが飛んでいたという。

この事故でヘリの隊員2人が死亡した。原因はまだ分からないが、複数の目撃情報などから、飛行中に機体から異常音が響き、メインローター(主回転翼)が外れて、ほぼ垂直に落下したとみられる。飛行前の定期の整備点検に問題があった可能性もあり、陸自や警察などが解明を進める。

安倍晋三首相は小野寺五典防衛相に対し、同型機の当面の飛行停止と全てのヘリの徹底した整備点検を指示した。だが防衛省が陸自に導入される輸送機オスプレイの佐賀空港への配備を目指す中、民家が巻き込まれる事故を目の当たりにした住民らの間に不安が広がっている。米軍ヘリの不時着や部品落下が相次ぐ沖縄県にとっても、ひとごとでは済まされない。

政府は原因究明の結果はもとより、再発防止策を具体的かつ分かりやすく説明することが求められる。国の安全保障を担う基地が、地元住民の安全と理解の確保を徹底することなしには十分機能し得ないことを改めて肝に銘じてもらいたい。

防衛相の説明などによると、墜落したのは陸自のAH64D戦闘ヘリ。4枚の羽根をつなぐメインローターヘッドという部品の交換を行い、試験飛行のために駐屯地を飛び立って7分後に民家に突っ込んだ。離陸の2分後に管制官がヘリと交信したところ、トラブルなどは確認されなかった。住民の多くは「いつもと違う音」を感じたという。安倍首相は衆院予算委員会で「国民の命と平和な暮らしを守るべき自衛隊が住民の安全を脅かした。自衛隊の最高指揮官として心よりおわび申し上げる」とした。迅速な原因究明などによって住民の不安にきちんと対応できるかが問われる。

 佐賀県では、事故やトラブルが相次いだオスプレイの配備計画を巡り漁協などが反対し、地元の調整が難航。知事は受け入れの最終判断を保留している。政府高官は「今回の事故は配備計画に影響しない」との見方を示しているが、オスプレイとともに墜落機と同型のヘリも移駐されるとみられ、安全性を巡る議論を軽視してはなるまい。

 神奈川県の米軍厚木基地から空母艦載機の移駐が段階的に進められ、年内にも極東最大級の航空基地となる岩国基地のある山口県でも、事故の不安が広がるのは避けられない。とりわけ米軍機のトラブルが絶えない沖縄県では、より現実味を持って事故が受け止められ、不安は深刻だろう。

 防衛省によると、昨年、在日米軍の航空機やヘリの事故・トラブルは25件が発生し、前年の倍以上だった。特に沖縄で多発しており、10月に大型輸送ヘリが不時着・炎上したほか、12月には小学校にヘリの窓が落下した。日本側は今年初めに再発防止を求めたが、米軍側は「事故は減少している」と述べたという。米軍幹部の「不時着で良かった」との発言が反発を呼んだこともあった。政府はこれまで以上に強い姿勢で米側に再発防止を迫る必要がある。

 

陸自ヘリ墜落 現場のひずみにも目を(2018年2月7日配信『朝日新聞』−「社説」)

 

 自衛隊員の命を奪い、民間人をも巻き込む重大事故が起きてしまった。徹底した原因究明が欠かせない。

 佐賀県神埼(かんざき)市で、陸上自衛隊の戦闘ヘリコプターが墜落し乗員が死亡。住宅2棟が焼け、女児が軽傷を負った。

 現場は、事故機が所属する目達原(めたばる)駐屯地の南西約5キロで、田畑に囲まれた住宅地の一角だ。近くには小学校もあり、住民の不安が高まっている。

 原因究明の焦点は、事故直前の整備状況だろう。

 防衛省によると、事故機は飛行50時間ごとに行う定期整備後の試験飛行中だった。整備とあわせ、1750時間ごとのメインローター(主回転翼)関連の部品交換も実施していた。

 なぜ整備直後に墜落したのかが大きなポイントだ。

 部品自体の問題か、整備や部品交換の作業上の問題か。機体のハイテク化が進むなか、整備士の熟練度は十分だったのか。事故との関連について詳細な解明と分析が求められる。

 より広く事故の背景に目を向けることも不可欠だ。

 とりわけ懸念されるのは、陸海空の自衛隊機の死亡墜落事故が、今年度これで4件目と頻発していることだ。一連の事故の背景に、構造的な問題が潜んでいる可能性は否定できない。

 それを見極めるには、自衛隊の現場で何が起きているのか、自らの足元を見詰め直すことから始めなければならない。

 近年、自衛隊の任務が大きく広がり、一人ひとりの隊員にかかる負荷が増えている。そのことが日常の活動にどんな影響を与えているか。

 政治主導で米国製の最新鋭兵器の購入費が膨らんでいることも見逃せない。限りある防衛費のなかで、兵器の維持費や修理費にしわ寄せが及んでいるとの指摘がある。

 沖縄県で相次ぐ米軍機の事故やトラブルも、北朝鮮などに対する警戒任務の増加や、米国防予算の削減が背景にあると言われている。自衛隊も似たような構造を抱えていないか。

 陸自は今春、長崎県の相浦(あいのうら)駐屯地に離島防衛の専門部隊を発足させる。部隊輸送のため、防衛省はオスプレイを佐賀空港に配備する方針だが、地元との調整は難航している。

 自衛隊の活動は住民の理解と信頼がなければ成り立たない。

 防衛省は実効性ある再発防止策をつくり、国民が納得できるかたちで公表する責任がある。

 そのためにも、一線の現場の課題を洗い出し、ひずみに目を向ける必要がある。

 

陸自ヘリが民家に墜落 整備体制の総点検を急げ(2018年2月7日配信『毎日新聞』−「社説」)

 

 陸上自衛隊の戦闘ヘリコプターが佐賀県神埼市の民家に墜落する事故が起きた。

 民家2棟などが焼け、少女1人が軽傷を負った。乗員1人が死亡し、機長の遺体が発見された。

 機体の破片が散乱し、激しい黒煙と炎が上がった。事故の衝撃と恐怖に周辺住民は震えた。

 周囲は田園地帯だが、墜落場所は住宅が密集し、近くには小学校や幼稚園もある。一歩間違えれば被害が広がっていてもおかしくなかった。

 事故を起こしたヘリは対戦車ミサイルを搭載できるAH64D。定期整備を終え、点検飛行中だった。

 自衛隊機が民家に墜落した事故は1969年に金沢市で起きた例があるが、極めて異例だ。

 通常、機体にトラブルが発生するなど異常を感知した場合、基地に引き返したり、安全な場所を探したりして着陸しようとする。

 しかし、防衛省や目撃者によると、事故機は急降下するように機首から落ちていったとされる。民家を避けようとする余裕もなく墜落した可能性が大きい。

 操縦していた機長はベテランで、操縦ミスは考えにくいという。

 主回転翼(メインローター)が飛行中に外れて落下したとの複数の目撃談がある。飛行直前の整備で4枚の主回転翼をつなぐ接続部品を交換したばかりだった。

 整備ミスが原因だった疑いもあるという。同型機は13機しかなく、接続部品の交換もまだ3機目だった。

 事故機の整備体制を検証することが不可欠だ。さらに全自衛隊機の装備状況の点検も急ぐべきだ。

 懸念されるのは近年の自衛隊機による死亡事故の多さだ。2015、16年は各1件、昨年は3件あった。

 多くのケースは操縦ミスが原因だった。事故抑止に向けて自衛隊全体の取り組みが求められる。

 防衛省は、事故が起きた佐賀県の佐賀空港に新型輸送機オスプレイを配備する予定だ。反対論が強まるなどの影響は避けられないだろう。

 首相は「国民の命と平和な暮らしを守るべき自衛隊が住民の方々の安全を脅かし、多大な被害を生じさせたことは誠に遺憾だ」と述べた。

 信頼回復には徹底した再発防止策の公表も必要だ。

 

陸自ヘリ墜落 整備態勢の見直しが急務だ(2018年2月7日配信『読売新聞』―「社説」)

 

 自衛隊に対する国民の信頼を損ないかねない極めて深刻な事故だ。徹底した原因究明と再発防止が欠かせない。

 佐賀県神埼市の民家に陸上自衛隊の攻撃ヘリコプター「AH64D」が墜落し、搭乗していた隊員2人が死亡した。民家は全焼し、小学5年生の女子が右膝などに軽い打撲を負った。

 安倍首相は「誠に遺憾だ。最高指揮官として心よりおわび申し上げる」と陳謝した。

 現場付近には小学校があり、大惨事につながりかねなかった。住民には不安が広がっている。首相が小野寺防衛相に、すべての自衛隊ヘリの整備・点検を徹底し、同型機の飛行を当面停止するよう指示したのは当然である。

 事故機は、50飛行時間ごとに行う定期整備を済ませ、点検飛行中だった。エンジンの動力を回転翼に伝える部品も交換した。

 離陸後10分足らずで墜落している。飛行中に複数の部品が落下しており、機体にトラブルが生じた可能性が指摘されている。

 陸自と佐賀県警は、業務上過失致死と航空危険行為処罰法違反の疑いで捜査を始めた。

 通例なら住宅地への墜落を回避するはずの自衛隊機が、なぜできなかったのか。装備のハイテク化が進む中、整備に対応できる人材育成と適切な配置が行われていたのか。予算配分に支障はなかったのか。多角的な検証が重要だ。

 安全確保に万全を期すため、防衛省全体で運用と整備態勢を抜本的に見直すことが急務である。

 最近、自衛隊機の事故が各地で相次いでいる。昨年だけでも、航空自衛隊ヘリの静岡県浜松市沖での墜落など、死亡事故が3件発生した。原因として、操縦ミスが増えているとされる。

 沖縄県では、米軍機のトラブルも後を絶たない。

 北朝鮮の弾道ミサイル発射や、中国軍の活動活発化により、日本の安全保障環境は厳しい。自衛隊と在日米軍の警戒監視活動が増え、訓練も高度化していることが事故多発の背景にある。

 事故やトラブルの最小化を図る取り組みも求められよう。

 懸念されるのは、陸自の輸送機オスプレイを佐賀空港に配備する計画への影響だ。佐賀県議会は既に容認を決議したが、空港周辺の漁業者らが反発し、山口祥義知事は態度を明らかにしていない。

 防衛省は県側に対し、オスプレイの安全性と、有事や災害対応に活用する意義を丁寧に説明し、配備に理解を求める必要がある。

 

陸自ヘリ墜落 原因究明し再発の防止を(2018年2月7日配信『読売新聞』―「社説」)

 

あってはならない事故が起きた。原因の究明を急ぎ、再発防止を徹底しなくてはならない。

 陸上自衛隊西部方面航空隊所属のAH64D戦闘ヘリコプターが佐賀県神埼市の民家に墜落、炎上し、11歳の女児が軽傷を負った。

 隣家の祖母とともに逃げたのだという。冷静な行動が命を救った。

 ヘリに搭乗していた2人の隊員は、いずれも死亡した。操縦士の遺体は、大破した機体の真下から発見された。コントロールを完全に失った機内で、最後まで住宅を回避すべく、操縦桿(かん)を握り続けたものと推察する。2人のご冥福を祈りたい。

 ヘリは定期点検を終え、試験飛行のため目達原駐屯地を離陸し、7分後に墜落した。飛行前に、4枚の羽根をつなぐメインローター(主回転翼)ヘッドを交換していた。ヘリは飛行中にメインローターが分離し、ほぼ垂直に落下したとみられる。

 通常、自衛隊員は事故の際、身をていして民間人の巻き添えを防ぐ。だがメインローターが分離する事故は極めて異例で、浮力、推進力を失った機体を制御することは不可能だったろう。

 陸自や県警は、業務上過失致死と航空危険行為処罰法違反の容疑で現場検証を進めている。ヘリはフライトレコーダー(飛行記録装置)を搭載しており、解析を急ぐとともに、部品や整備、点検に不備がなかったか、徹底的に調べる必要がある。

 沖縄では昨年12月、米海兵隊ヘリの窓が小学校の校庭に落下する事故があった。年明け以降もヘリの不時着が相次いでいる。米側に「厳格な安全確保」を要請したばかりの事故だった。

 自衛隊でも昨年、陸自の連絡偵察機や海自ヘリ、空自ヘリの墜落事故があった。いずれも機種や事故原因が異なり、軽々に並べて論じることはできないが、住民が不安に思うのは当然である。

 安倍晋三首相は衆院予算委員会で「住民の安全を脅かし、多大な被害を生じさせたことは誠に遺憾だ。徹底した原因究明と再発防止に全力を挙げていく」と述べた。その答えを、早急に明示する必要がある。

 国防を担い、国民の安全を守る自衛隊の存在は、国民や地域の信頼や理解の上に成り立っていることを忘れてはならない。

 

世界最強のヘリコプターに何が起こったのか(2018年2月7日配信『産経新聞』−「産経抄」)

 

  安倍晋三首相は、平成25年度の防衛大学校の卒業式で述べた訓示のなかで、2人の航空自衛隊員の名前を挙げた。11年11月に練習機がエンジントラブルを起こし、埼玉県狭山市の入間川河川敷に墜落した事故で、殉職したパイロットである。

▼2人は住宅街からできるだけ離れようと、最後まで操縦桿(かん)を握り続けた。そのため脱出が遅れ、地面にたたきつけられたとみられる。「2人はまさに命を懸けて、自衛隊員としての強い使命感と責任感を私たちに示してくれたと思います」。

▼陸上自衛隊西部方面航空隊所属のヘリコプターが墜落、炎上したのは佐賀県神埼市の民家だった。2人の操縦士は死亡した。1人で留守番をしていた小学5年の女児(11)は間一髪で外へ避難し、軽傷を負うだけで命に別条はなかった。生きた心地がしなかっただろう。

▼事故を起こしたAH64Dは、世界最強にして、1機70億円といわれる最も高価なヘリコプターでもある。2人は、優秀なパイロットに決まっている。住民の巻き添えを避けるために、死力を尽くしたに違いない。それがかなわなかったほどのトラブルとは、一体何か。

▼ヘリコプター、そして航空機の歴史は、悲惨な事故の歴史でもある。ただ民間機の事故は確実に減っている。前にもコラムに書いたが、昨年はなんと世界を見渡しても、ジェット旅客機の死亡事故はゼロだった。それに引き換え、昨今の自衛隊機の事故は多すぎる。

▼もちろん過酷な訓練を続ける自衛隊機と民間機を単純に比べるわけにはいかない。それでも、事故の原因を徹底的に追究し、再発防止に生かす取り組みは、共通しているはずだ。自衛隊が安全面を含めて最強の組織でなければ、安心して国の守りを任せられない。

 

陸自ヘリ墜落 安全対策に隙はないか(2018年2月7日配信『東京新聞』−「社説」)

 

 陸上自衛隊のヘリコプターが佐賀県神埼市の住宅に墜落、炎上した。ここ数年、自衛隊の航空機事故が相次いでいる。安全対策に隙はなかったのか。事故の再発防止に向けて徹底的な検証が必要だ。

 墜落したのは2人乗りAH64D戦闘ヘリコプター。通称「アパッチロングボウ」と呼ばれ、対戦車部隊に所属する。5日午後4時36分、陸自目達原駐屯地(吉野ケ里町)を離陸し、約7分後、駐屯地から約6キロ離れた民家に、機首から墜落した。

 搭乗していた自衛隊員が犠牲となり、民家にいた小学五年生の女児が軽いけがをした。住民を巻き込む重大事故となったことを自衛隊はもちろん、安倍内閣全体で深刻に受け止めるべきだろう。

 事故はメインローター(主回転翼)の部品交換後、試験飛行中に起きた。上空で主回転翼が外れて落ちたとの目撃情報もある。整備ミスはなかったのか、まずは陸自が設置した事故調査委員会で徹底的に調査することが必要だ。

 小野寺五典防衛相から報告を受けた安倍晋三首相は、同型機の飛行停止と、陸海空全ての自衛隊ヘリの整備点検を指示した。当然の措置だ。事故原因の究明と再発防止策を講じる前に、飛行を再開することがあってはならない。

 自衛隊ではここ数年、陸海空にわたって隊員が死亡する航空機の墜落事故が相次いでいる。

 昨年五月には北海道で救急搬送に向かう陸自連絡偵察機が墜落、乗員四人が死亡した。八月には青森県沖で海自哨戒ヘリが墜落して二人が死亡、一人が行方不明に。十月にも浜松市沖で四人乗りの空自救難ヘリが墜落して、三人が死亡、一人が行方不明になった。

 なぜこれほど墜落事故が相次ぐのか。特に昨年は死者を出す重大事故が三件と突出して多い。

 直接の技術的要因だけでなく、北朝鮮や中国への警戒監視に追われる現場の疲弊を指摘する声や、高額な防衛装備品購入で整備に人や金が十分に回っていないのではないか、との見方もある。構造的な問題があるのか否か、この際、徹底的に調査して、有効な対策を講じるべきだろう。

 陸自は垂直離着陸輸送機オスプレイの佐賀空港への配備を計画するが、事故やトラブルを繰り返す機種だ。在日米軍分を含めて配備を見直すべきではないか。

 国民の命と暮らしを守る崇高な使命を帯びる自衛隊が逆に、国民の安全を脅かすことになるとしたら、本末転倒である。

 

(2018年2月7日配信『東京新聞』−「筆洗」)

 

太平洋戦争中、日本国民を苦しませたB29大型戦略爆撃機。米国での愛称は「スーパーフォートレス」。空飛ぶ要塞(ようさい)。強く厳(いか)めしい

▼一方、当時の日本人はどう呼んだか。「ビー(B)公」である。この場合の「公」は「尊公」や「秀吉公」の尊敬ではなく「エテ公」「ワン公」の侮蔑と軽視の意味であろう。そう呼ぶことで爆撃機への恐怖を抑え込もうとしたのかもしれぬ

▼してみると、この手の「道具」には2つの通称が付けられることになるのか。それで攻撃する側からの名と攻撃される側からの名である

▼あってはならぬ事故が起きてしまった。佐賀県神埼市の住宅に陸上自衛隊のヘリが墜落した。住宅2軒が炎上し女の子1人が軽傷を負った。その子も間一髪のところだったと聞く。夕刻の住宅。平和を守るべき「道具」が平和を打ち破った。乗員が亡くなっている

▼墜落したボーイング社開発の攻撃ヘリ「AH64D」の通称は勇猛果敢なアメリカ先住民の名からアパッチという。やはり、別の呼び名がある。アフガニスタン戦でこのヘリに攻撃されたタリバン兵はこう呼んだ。「ザ・モンスター」

▼整備ミスが疑われている。再発防止に向けた原因究明と自衛隊ヘリ全機の整備徹底は当然である。民家を襲うような事故が続けば、日本を守るその道具は日本人から「ザ・モンスター」と恐怖を込めて呼ばれることになる。

 

陸自ヘリ墜落 背景も含め徹底解明を(2018年2月7日配信『信濃毎日新聞』−「社説」)

 

 陸上自衛隊のヘリコプターが佐賀県神埼市で墜落、炎上した。住宅を直撃する重大な事故である。何があったのか。背景を含め徹底調査し、国民に明らかにしなくてはならない。

 整備点検後の試験飛行をしていた2人乗りAH64D戦闘ヘリである。離陸7分後に機首から墜落し乗組員が亡くなっている。離陸2分後の交信でトラブルは確認されなかった。その後、異常に気付いた管制官の呼び掛けには応答がなかったという。

 現場の2階建て住宅には4人が暮らし、当時いた小学5年の女児が右膝を打つけがをした。隣接する平屋も燃えている。女児の祖母がいたものの、無事だった。

 農地に囲まれた場所だ。ヘリのメインローター(主回転翼)が先に落ちていったと話す目撃者もいる。制御しようにもできない状態だったのだろう。近くに小学校や認定こども園がある。まかり間違えば、住民の生命に関わる深刻な事態になっていた。

 陸自は、陸上幕僚監部ナンバー2の副長を委員長とする事故調査委員会を設置した。小野寺五典防衛相は、飛行前に4枚の羽根をつなぐ部品を交換していたと明らかにしている。部品や整備の仕方に問題があったのか突き止めなくてはならない。

 安倍晋三首相は、同型機の飛行を当面停止して原因を究明するとともに、自衛隊の全てのヘリを整備、点検するよう指示した。再発防止に向け、徹底した対応が欠かせない。ヘリの窓落下などトラブルが続く米軍に対して安全確保を迫る上でも重要な点だ。

 近年、自衛隊機の事故が相次いでいる。昨年は3件の死亡事故が発生した。5月に北海道北斗市の袴腰山付近で大破した陸自の連絡偵察機が見つかっている。8月には青森県沖で海自の哨戒ヘリが墜落、10月に浜松市沖で空自の救難ヘリが墜落した。

 調査を今回の事故だけにとどめるわけにはいかない。墜落したAH64Dの整備について、人員が限られ、質の低下が問題視されていたとする専門家もいる。人員や装備に無理がかかっていないか。防衛省は事故が続いている要因を掘り下げる必要がある。

 佐賀では、陸自が導入する輸送機オスプレイの佐賀空港への配備が計画されている。墜落機と同型を含むヘリ約50機も移駐する。事故を受け、佐賀県知事が懸念を表明したのは当然である。配備を急ぐ状況ではない。この点も併せて指摘しておきたい。

 

陸自ヘリ墜落 徹底的に原因を究明せよ(2018年2月7日配信『新潟日報』−「社説」)

 

 多くの住民を巻き込む惨事となっていても不思議ではなかった。政府、陸上自衛隊は事故の重さを肝に銘じ、原因究明の徹底と再発防止に責任を持って当たらなければならない。

 5日夕、佐賀県神埼市の住宅地の中に陸自目達原(めたばる)駐屯地所属の2人乗り戦闘ヘリコプターが墜落、炎上し、乗っていた隊員が死亡した。

 ヘリは民家に落ち、家にいた女児が、軽いけがを負った。

 民家も炎上したことを思えば住民に犠牲者が出なかったのは奇跡的と言っていい。現場近くには小学校や幼稚園もある。

 事故が起きた現場一帯は、自衛隊機が飛び交う航路に当たっている。住民は危険と隣り合わせにあることを改めて実感したに違いない。

 最大の問題は、飛行に際してより細心の注意を払うべき場所で、なぜ墜落事故が起きてしまったのかということだ。

 小野寺五典防衛相は6日、墜落したヘリが飛行前に4枚の羽根をつなぐメインローター(主回転翼)ヘッドという部品を交換していたと説明した。

 ヘリは飛行中にメインローターが分離して落下したとみられる。こうした事故は極めて異例という。部品そのものや整備の問題との指摘もある。

 安全安心な飛行の大前提となる部品や整備に欠陥やミスがあったとの見方が事実なら、深刻な事態といえる。

 ただし思い込みにとらわれていては原因を見誤りかねない。あらゆる可能性を視野に、調査を尽くしてもらいたい。

 このところ海自や空自でもヘリの墜落事故が起きている。陸自にとどまらず、自衛隊全体として安全確保態勢が十分かどうか検証する必要もあろう。

 隊員の命を危険にさらす事故を防ぐ意味でも、不可欠なはずである。

 同時に、住宅地などの上空を通る既存の飛行ルートについて安全確保の観点から再点検することも求めたい。

 今回のヘリ墜落現場は、陸自が導入する輸送機オスプレイの配備計画がある佐賀空港(佐賀市)に近い。

 事故を受け、住民からはオスプレイ受け入れに強い不安の声も上がった。政府はしっかり耳を傾けるべきだ。

 計画ではオスプレイ17機の配備に加え、墜落機と同型を含むヘリ約50機が目達原から佐賀空港に移ることになっている。

 米軍所属のオスプレイを巡っては2年前に沖縄県名護市沿岸での不時着・大破があり、昨年はオーストラリア沖での墜落と重大事故が続いた。他の米軍ヘリのトラブルも絶えない。

 今回の事故で、住民の懸念がさらに高まったことは間違いあるまい。

 政府内には墜落事故によってオスプレイの配備計画を見直すことはないとの声もあるが、理解しがたい。

 最優先するべきは、住民の安全と安心の確保である。そのためには配備計画の見直しも必要だろう。

 

(2018年2月7日配信『新潟日報』−「日報抄」)

 

 雪が降ったりやんだりして始まった静かな日だったという。金沢市内に突然ズシーンとにぶい音がとどろいた。1969年2月8日の正午前、住宅密集地に爆音と火柱が上がった

▼地震かと思ったとたん、火の玉が屋根を破り降ってきた。黒煙に原爆のキノコ雲を連想する人々が震えた。自衛隊の戦闘機が墜落したのだった。民家17戸が全焼、死者4人、重軽傷者十数人に上る惨事であった

▼「おとうさん、おかあさん」と泣きながら捜すランドセル姿の子供たちの姿があった。辺りには、鋭い刃物となった機体の破片が住宅の壁や電柱に刺さっていた。脱出した隊員は、機体に雷を受けたとし、住宅密集地を避けようと操縦かんを動かしたが、全く役に立たなかった、と証言した

▼おとといは佐賀県の住宅に陸上自衛隊の戦闘ヘリが墜落、炎上した。隊員の命が失われた。巻き込まれた女の子が軽傷を負った。黒煙に「現実とは思えない」と立ちつくす人々の震えは、半世紀前の金沢と同じであろう

▼悲しみとおびえの涙がいつどこで流されることになるか、分からぬ空だ。米軍機や自衛隊機の墜落、不時着が相次ぐ。防衛のため、飛ばねばならぬ空であることが切ない。「戦闘」ヘリが頭上を飛ぶのが現実だ

▼無用の心配をいう「杞憂(きゆう)」。昔の中国にあった杞(き)の国に、天が落ちてきたらどうしよう、と心配した人がいたことから生まれた。いまならば生まれなかった語かもしれない。戦闘の機影がある空と、私たちの暮らしの間に境はない。

 

陸自ヘリ墜落  事故の背景も明らかに(2018年2月7日配信『京都新聞』−「社説」)

 

 陸上自衛隊のヘリコプターが、佐賀県神埼市で墜落した。

 乗組員が死亡しただけでなく、住宅が炎上し、小学5年の女児がけがをした。

 付近には、小学校や幼稚園がある。平和な市民生活に、恐怖をもたらす大変な事態となった。

 早急に原因究明を進め、再発防止に努めなければならない。

 墜落したのは陸自の目達原(めたばる)駐屯地に所属するAH64D戦闘ヘリコプターで、メインローター(主回転翼)の部品を交換した後、試験飛行をしていた。目撃情報などによると、機体は空中で炎上したのではなく、「先にメインローターが落ち、その後、本体が住宅に落ちた」という。

 専門家は、部品の取り付けなど整備に問題があった可能性を、指摘する。

 陸自は、事故調査委員会を設置して原因の究明を図っている。だが、身内の調査だけで十分なのか、懸念される。防衛上の機密もあろうが、第三者の目も要るのではないか。

 自衛隊所属の航空機関係で、昨年は死亡事故が3件も起きた。8月には海上自衛隊、10月には航空自衛隊のヘリが墜落しており、異常事態ともいわれている。

 これに関連して、北朝鮮情勢の緊迫に伴い任務が増えて訓練が不足していることや、機体整備の質の低下を危ぶむ声がある。

 今回の墜落では、直接の原因にとどまらず、事故が多発する背景についても明らかにすべきだろう。そうしなければ、有効な再発防止策は得られまい。

 政府は、ほかに12機ある同型機の飛行を当面停止し、自衛隊が運用するすべてのヘリを整備点検するよう指示した。

 沖縄県で相次ぐ米軍ヘリの不時着や部品落下に抗議しているのだから、自衛隊の襟もたださねばならない。原因によっては、さらに厳しく対処した方がよい。

 墜落地点から約15キロしか離れていない佐賀空港には、南西諸島の防衛強化の一環で、墜落したものと同型を含むヘリ約50機を、輸送機オスプレイとともに移駐する計画がある。

 山口祥義・佐賀県知事は昨年7月、オスプレイ配備を受け入れる意向を表明したものの、その後連続したヘリの事故を受けて、最終判断を保留している。今回の事故には、「非常に憂慮すべき事態だ」とコメントした。政府も「安全が最優先」とするのなら、慎重に対応すべきだろう。

 

陸自ヘリ墜落/背景も解明し再発防止を(2018年2月7日配信『神戸新聞』−「社説」)

 

 佐賀県神埼(かんざき)市の住宅に陸上自衛隊の戦闘ヘリコプターが墜落する事故が起きた。住宅は全焼し、女児が軽いけがを負った。乗っていた隊員は死亡した。

 自衛隊機が住民を巻き込む重大事故だ。徹底した原因の究明と再発防止策が急がれる。

 事故機は、目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)を飛び立ってわずか7分後、6キロ離れた住宅に墜落した。

 離陸前には定期点検を受け、4枚の羽根をつなぐメインローター(主回転翼)ヘッドという部品を交換したばかりだった。そのメインローターが分離して、ほぼ垂直に落下したとみられる。目撃者は「機体から分離したローターが先に落ちた」などと証言している。事実なら、極めて異例な事故だ。

 メインローターヘッドは主回転翼の中心にあり、飛行を支える重要な部品だ。定期点検は一定の飛行時間ごとに実施され、1750時間に達するとメインローターヘッドを交換する。

 事故は交換直後の点検飛行中に起きたため、部品自体や整備に問題がなかったか、重点的に調べることになる。だが、予断は禁物だ。フライトレコーダーも回収された。あらゆる角度から調べなければならない。

 安倍晋三首相は、12機ある同型機の飛行停止を指示した。自衛隊のすべてのヘリの点検・整備も求めた。いずれも当然の措置だろう。

 自衛隊機の墜落事故はこれまでにも起きている。しかし昨年は死亡事故だけで3度発生しており、異常ともいえる回数だ。

 背景には何があるのか。

 北朝鮮情勢の緊迫化で任務などが激化しているという。このため隊員の負荷が増し、訓練が十分でないとの指摘もある。

 こうした点にまで踏み込んだ検証が必要だ。根本的な要因をとりのぞかなければ、再び事故が起こりかねない。

 この事故で、陸自が導入する輸送機オスプレイの配備先決定は遅れるとみられる。防衛省は佐賀空港への配備を目指すが、県民の不安が高まるのは間違いない。

 それでも政府内には、計画を見直さない考えがあるという。県民の理解が得られなければ、配備を進めるべきではない。

 

(2018年2月7日配信『神戸新聞』−「正平調」)

 

周の幽王に、褒(ほうじ)という名の后(きさき)がいた。全く笑わなかった褒があるとき、いくさを告げる火があがるのを見て喜んだ。「あな不思議、火もあれ程多かりけるな」。中国故事「烽火(ほうか)」である

◆后が笑うのを見たいばかりに幽王は不要の火をたき、のろしをあげ、揚げ句、国は滅んだ。褒は化け物の本性を現し、土地を逃げ去ったという。いま、各地でつづく「火」の厄災にこの故事を思い出している

◆どこぞに火を見たがっている悪魔が潜んでないか、と疑う。突如として噴煙をあげ、自衛隊員の命を奪った火山。共同住宅を焼き尽くし、入居者11人を死に至らしめた火災。そしてまた信じがたい惨事が起きた

◆佐賀県の住宅街に陸上自衛隊のヘリコプターが墜落、民家が炎上した。離陸からわずか7分間に何があったか。隊員は亡くなっており、テレビで見た映像には、機首からまっすぐに落ちていく様子が映っている

◆民家には小学5年の女児がいた。家はどうでもいい、家族が無事でよかったという父の言葉がすべてを物語っている。怖かったろう。奇跡的に軽傷ですんだ女の子は、助かったと知るや声をあげて泣いたという

◆再び、があってはならない事故である。「あな不思議」ですませば、災いの火の手はすぐまたあがる。

 

自衛隊ヘリ墜落 安全対策の徹底忘れるな(2018年2月7日配信『山陽新聞』−「社説」)

  

 陸上自衛隊の戦闘ヘリコプターが、佐賀県神埼市の民家に墜落、炎上した。乗組員の男性隊員2人が死亡、屋内にいた小学5年女児が危うく難を逃れ、軽いけがをした。住民を巻き込むあってはならない事故であり、政府は事態を重く受け止めるべきだ。

 防衛省などによると、ヘリは陸自の目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)に所属。整備点検後の試験飛行のため離陸したが、7分後に機首から墜落したという。

 飛行前には4枚の羽根をつなぐメインローター(主回転翼)ヘッドという部品を交換しており、ヘリは飛行中にそのメインローターがばらばらになり、そのまま落下したとみられる。

 そうであれば、部品自体や整備に問題があった可能性が高い。ヘリから管制官に異常を伝える交信はなかったという。墜落した民家の周辺には不時着が可能な農地が広がっていたことからも、機体のコントロールを一気に失い、墜落したようだ。

 政府は点検の経緯や事故原因を徹底的に究明し、再発防止を図る必要がある。機体からはフライトレコーダーが回収された。戦闘ヘリの同型機の飛行を当面停止し、自衛隊が運用する全てのヘリの整備点検の実施を決めた措置も当然であろう。

 在日米軍基地が集中する沖縄では米軍ヘリの墜落やトラブルが頻発し、そのたびに地元の要請を無視するかのように早期の飛行再開が繰り返されている。佐賀県の山口祥義知事は「市街地なので県民は非常に不安に思っている」と述べた。墜落場所のすぐそばには幼稚園や小学校がある。一歩間違えば大惨事になっただけに、住民の不安払拭(ふっしょく)への真摯(しんし)な姿勢が政府には求められよう。

 現場から約15キロ離れた佐賀空港では、陸自が導入する輸送機オスプレイの配備や、墜落機と同型を含むヘリ約50機の移駐が計画されている。山口知事は昨年7月、オスプレイ受け入れの意向を表明したが、安全への懸念から地元では反対運動が起きている。今回の事故を受け、計画への影響も避けられまい。

 自衛隊の組織や訓練のあり方なども再点検する必要があるのではないか。

 所属の航空機事故は2017年だけで死亡事故が3件も発生している。5月には北海道の山中に陸自の連絡偵察機が墜落し、4人が死亡。8月には青森県沖で海自哨戒ヘリが墜落し2人が死亡、1人が行方不明になった。10月にも空自浜松基地の沖合で4人乗りの救難ヘリが墜落した。

 国際情勢が緊張する中、過酷な任務や救難・救助、災害出動に取り組んでいる自衛隊員の犠牲には心が痛む。

 しかし一方で、基地周辺などの住民の安全は何より重視されねばならない。地元の信頼と理解なしに、自衛隊活動は貫徹できないことをあらためて肝に銘じてほしい。

 

陸自ヘリ住宅地墜落 訓練の実態、総点検せよ(2018年2月7日配信『中国新聞』−「社説」)

 

 佐賀県神埼市の住宅地に、陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプター(通称アパッチロングボウ)が墜落、炎上した。上空で機体に異常が発生し、ほとんど制御できないまま機首から真っ逆さまに地上へ突っ込むという前例のない重大事故である。

 搭乗員2人が死亡したほか、火は住宅に燃え移り女児が軽いけがをした。小学校にも近く一つ間違えば大惨事になっていた。専守防衛や災害出動を任とする自衛隊が国民の安全を脅かすことは、あってはならない。

 安倍晋三首相は事故直後、同型機を当面飛行停止にするとともに、陸海空の自衛隊が運用するヘリ全ての整備点検を指示した。当然のことだろう。加えて、北朝鮮情勢をにらんで任務が増す中、訓練の実態がどのようになっているのか、徹底的に洗い出すべきである。

 事故機は4枚の羽根をつなぐ部品であるメインローター(主回転翼)ヘッドを飛行直前に交換していたことが分かった。飛行中、この部分に何らかの異常が生じ垂直に落下したとみられるが、部品自体や機体整備に問題があった可能性が高い。

 AH64D戦闘ヘリは、日本国内でライセンス生産していた富士重工業(現SUBARU)と国との間に調達打ち切りを巡って訴訟が起き、国が敗訴したといういわく付きの機種である。2001年に約60機の計画で導入が決まったが、今回の事故機が所属する陸自目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)などに13機が配備されるにとどまった。

 AH64D戦闘ヘリ固有の事情が事故の背景にあるとすれば、長く使われているため整備担当者の慣れや見落としによるヒューマンエラーが起きやすい―と専門家はみる。また、使用頻度に比して整備要員が限られ、整備の質の低下が問題視されていたとの指摘もあるようだ。

 陸自は事故調査委員会を設置したが、踏み込んだ原因究明が行われなければなるまい。

 自衛隊機の事故は近年目立っていて、昨年だけで3件の死亡事故が発生した。5月に北海道で起きた急患輸送に向かう陸自連絡偵察機の事故は、自動操縦装置を誤って解除するなどしたミスだった。8月に青森県で起きた海自哨戒ヘリの訓練中の事故は、やはり操縦ミスでバランスを崩したためだという。

 こうしたミスの背景には北朝鮮情勢の緊迫化に伴う任務の急増もあるといえよう。訓練時間が確保しにくくなって、パイロットの技量が落ちているという専門家の指摘もある。整備と操縦の技量が共に水準に達していなければ、基地周辺住民の不安が増すのは当然だ。飛行ルートも再検討すべきである。

 佐賀県では、事故やトラブルが相次いだ輸送機オスプレイを陸自が佐賀空港に配備する計画を巡って反対が根強く、山口祥義知事は受け入れの最終判断を保留している。オスプレイと共にAH64D戦闘ヘリも移駐される計画だが、今回の事故原因の究明と情報公開が行われるまでは、佐賀への配備計画全体を凍結するのが筋ではないか。

 沖縄では在日米軍の航空機やヘリのトラブルが多発している。政府は米側に再発防止を強く迫っているように見えるが、自衛隊機の安全性についても基地周辺住民の納得のゆく解決策を急がなければならない。

 

陸自ヘリ墜落/安全と理解の確保徹底を(2018年2月7日配信『山陰中央新報』−「論説」)

 

 佐賀県神埼市で陸上自衛隊のヘリコプターが2階建て住宅に墜落、炎上した。住宅に1人でいた女児は軽いけがをしたが、同じ敷地内の平屋に住む祖母と逃げ、命拾いした。現場は郊外に広がる農地の中の住宅密集地で、小学校や認定こども園もある。近くに墜落機が所属する陸自駐屯地があり、普段から上空をヘリが飛んでいたという。

 この事故でヘリの隊員2人が死亡した。原因はまだ分からないが、複数の目撃情報などから、飛行中に機体から異常音が響き、メインローター(主回転翼)が外れて、ほぼ垂直に落下したとみられる。飛行前の定期の整備点検に問題があった可能性もあり、陸自や警察が解明を進める。

 安倍晋三首相は小野寺五典防衛相に対し、同型機の当面の飛行停止と全てのヘリの徹底した整備点検を指示した。だが防衛省が陸自に導入される輸送機オスプレイの佐賀空港への配備を目指す中、民家が巻き込まれる事故を目の当たりにした住民らの間に不安が広がっている。

 政府は原因究明の結果はもとより、再発防止策を具体的かつ分かりやすく説明することが求められる。国の安全保障を担う基地が、地元住民の安全と理解の確保を徹底することなしには十分機能し得ないことを改めて肝に銘じてもらいたい。

 防衛相の説明などによると、墜落したのは陸自のAH64D戦闘ヘリ。4枚の羽根をつなぐメインローターヘッドという部品の交換を行い、試験飛行のために駐屯地を飛び立って7分後に民家に突っ込んだ。離陸の2分後に管制官がヘリと交信したところ、トラブルなどは確認されなかった。住民の多くは「いつもと違う音」を感じたという。

 安倍首相は衆院予算委員会で「国民の命と平和な暮らしを守るべき自衛隊が住民の安全を脅かした。自衛隊の最高指揮官として心よりおわび申し上げる」とした。迅速な原因究明などによって住民の不安にきちんと対応できるかが問われる。

 佐賀県では、事故やトラブルが相次いだオスプレイの配備計画を巡り漁協などが反対し、地元の調整が難航。知事は受け入れの最終判断を保留している。政府高官は「今回の事故は配備計画に影響しない」との見方を示しているが、オスプレイとともに墜落機と同型のヘリも移駐されるとみられ、安全性を巡る議論を軽視してはなるまい。

 神奈川県の米軍厚木基地から空母艦載機の移駐が段階的に進められ、年内にも極東最大級の航空基地となる岩国基地のある山口県でも、事故の不安が広がるのは避けられない。米軍ヘリの不時着や部品落下が相次ぐ沖縄県にとっても、ひとごとでは済まされない。

 防衛省によると、昨年、在日米軍の航空機やヘリの事故・トラブルは25件が発生し、前年の倍以上だった。特に沖縄で多発しており、10月に大型輸送ヘリが不時着・炎上したほか、12月には小学校にヘリの窓が落下した。日本側は今年初めに再発防止を求めたが、米軍側は「事故は減少している」と述べたという。

 米軍幹部の「不時着で良かった」との発言が反発を呼んだこともあった。政府はこれまで以上に強い姿勢で米側に再発防止を迫る必要がある。

 

陸自ヘリ墜落 原因の徹底究明と再発防止急げ(2018年2月7日配信『愛媛新聞』−「社説」)

 

 陸上自衛隊の2人乗りAH64D戦闘ヘリコプターが、佐賀県神埼市で墜落し、住宅に直撃して炎上した。

 隊員が死亡し、住宅にいた小学生の女児が巻き込まれ、けがを負った。墜落現場はヘリが飛び立った目達原(めたばる)駐屯地からわずか4キロで、すぐ近くには幼稚園や小学校がある。一歩間違えれば大惨事になりかねなかった。安倍晋三首相が、自衛隊の全ヘリの整備点検と、墜落した同型機の飛行停止を命じたのは当然だ。政府は住民の命を危険にさらした事故を重く受け止め、再発防止に全力を尽くさなければならない。

 防衛省によると、事故機は飛行前に、メインローター(主回転翼)の4枚の羽根をつなぐ部品を交換。飛行は機体の整備状況を確認するためだった。事故を目撃した住民は「機体から分離したローターが先に落ちた」とし、飛行中にメインローターを失うという信じ難い事態が起きた可能性が浮上している。周辺には農地が広がっているにもかかわらず、住宅を避けられなかった状況を考えると、パイロットが機体をコントロールできない状況に陥ったとみられる。徹底した原因究明を求めたい。

 自衛隊機の事故は後を絶たない。昨年だけでも5月に救急搬送に向かっていた陸自の連絡偵察機が北海道で墜落、8月には青森県沖で海上自衛隊の哨戒ヘリが墜落した。10月にも静岡県の浜松基地の沖合で航空自衛隊の救難ヘリが墜落。いずれも複数の死者を出した。

 事故が続発する原因として、隊員の任務増加による疲弊と訓練不足が指摘される。北朝鮮の脅威や中国の海洋進出に備え、米軍と自衛隊の一体化が加速。米国から最新鋭装備品の購入が拡大し、さらに新たな訓練が必要となったが、隊員の確保が難しく、技術の習得が追いついていないとみられる。最も重要な安全をおろそかにすることは許されない。組織の運用体制に不備がなかったか、詳細に検証する必要がある。

 今回の事故が、陸自が導入する輸送機オスプレイなどの佐賀空港(佐賀市)配備計画に影響を与えるのは必至だ。事故による海洋汚染を危惧する地元漁協の反対は根強く、佐賀県は計画受け入れの回答を先送りしている。これまで地元の懸念は欠陥が疑われるオスプレイに向けられてきたが、政府の計画には事故を起こした同型機の移駐も含まれている。今回の事故で、県民の不安がさらに高まるのは避けられまい。計画の見直しは不可欠だ。

 日本政府は、沖縄で米軍機が事故やトラブルを起こすたびに原因究明や再発防止策を求めてきた。その一方で自衛隊機が事故を繰り返していては、「安全が最優先」と強調する政府の足元はおぼつかない。政府は住民の不安に正面から向き合い、安全対策に万全を期すべきだ。事態の収拾を急ぐあまり、安易な幕引きを図ってはならない。

 

【陸自ヘリ墜落】原因の究明と公表尽くせ(2018年2月7日配信『高知新聞』−「社説」)

 

 佐賀県神埼市で陸上自衛隊の2人乗りヘリコプターが住宅に墜落し、炎上した。

 家にいた小学生の女児は軽いけがで済んだが、乗組員が死亡した。原形をとどめていない家やヘリが事故の激しさを物語っている。

 現場近くには幼稚園や小学校もある。一歩間違えば、大惨事になっていた。

 国民を守るべき自衛隊が、国民の平穏な暮らしや命を脅かすことがあってはならない。政府や自衛隊には徹底した原因究明と情報公開を尽くすよう求める。

 関係機関は、住民の心のケアにも最善を尽くしてもらいたい。突然の出来事に女児の恐怖はいかばかりだったか。近隣の住民も強い衝撃を受けているに違いない。

 現場は神埼市千代田町にある田園に囲まれた住宅地だ。

 5日夕、AH64D戦闘ヘリが上空を飛行中に突然、墜落した。2階建て住宅に激突し炎上。この住宅と、隣接する平屋を焼いた。

 住宅には4人が暮らしているが、3人は不在だった。平屋にいた女児の祖母も、逃げ出してきた女児と一緒に避難して無事だった。

 幼稚園は現場から150メートルほどしか離れておらず、事故当時は60〜70人の園児がいたという。不幸中の幸いとしかいいようがない。

 ヘリは、約6キロ先の同県吉野ケ里町にある陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地の所属機だ。防衛省によると、駐屯地を離陸して7分後に墜落した。

 飛行中に機体からメインローター(主回転翼)が分離し、ほぼ垂直に落下したとみられる。定期点検でメインローターの4枚の羽根をつなぎ止める部品を初めて交換したばかりだったという。

 民間機でもあり得ない、信じがたい事故といえる。それがなぜ自衛隊機で起きてしまったのか。

 今回の事故だけではない。自衛隊機は昨年だけでも3件の死亡事故が起きている。特に今回は住宅地に墜落する最悪のケースである。米軍機だけでなく、自衛隊機も安全性や信頼性が問われる事態だ。

 佐賀では陸自が輸送機オスプレイを佐賀空港に配備する計画がある。墜落機と同型を含むヘリ約50機も佐賀空港に移駐させる計画だ。事故続きの状態で、政府は地元に受け入れを求めるつもりだろうか。 

 北朝鮮情勢などもあり、現場は任務が増えているとの指摘もある。整備ミスや構造上の問題、任務の環境など、あらゆる角度からの解明が急がれる。

 民間機の事故なら運輸安全委員会による調査が行われる。専門家集団が原因を多角的に調べ、途中経過や報告書も公表している。

 自衛隊機の事故は自衛隊主導の調査になる。内部での調査であり、客観性や公表の程度に疑問が募る。

 安倍首相は国会で事故について謝罪し、原因究明を誓った。それには国民が納得できる調査と公表を伴うことが大前提である。

 

陸自ヘリ住宅墜落   安全確保に全力挙げよ(2018年2月7日配信『徳島新聞』−「社説」)

                    

 悪夢のような惨事である。政府と防衛省は重く受け止めなければならない。

 陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)所属の2人乗りAH64D戦闘ヘリコプターが5日夕、同県神埼市の住宅に墜落した。隊員が犠牲となり、家にいた女児1人が軽傷を負った。

 亡くなった隊員の冥福を祈るとともに、女児の心身の傷が癒えることを願いたい。

 当時、民家には女児だけがおり、他の家族は不在だった。現場は住宅密集地で、近くには小学校や幼稚園があり、さらに大きな被害が出る恐れもあった。

 幼稚園の関係者は「園舎に落ちるのでは、と気が気でなかった」と振り返り、近隣の住民は「恐ろしかった」と体を震わせた。

 駐屯地から南西約6キロの現場一帯は、自衛隊機が飛び交う航路になっている。基地が近くにある地域の危険性を改めて思い知らされた形だ。

 徳島県内にも自衛隊基地があり、米軍機の低空飛行もたびたび行われている。事故はどこでも起こり得る。

 墜落したヘリは、整備点検後の試験飛行中だった。

 目撃者らの話などから、ヘリはメインローター(主回転翼)が分離し、ほぼ垂直に落下したとみられる。4枚の羽根をつなぐメインローターヘッドという部品を交換しており、部品自体や機体整備に問題があった可能性がある。

 防衛省はフライトレコーダー(飛行記録装置)を解析し、事故原因の究明を急ぐとともに、再発防止策を徹底しなければならない。

 最近、自衛隊所属の航空機事故は相次いでいる。

 昨年5月に北海道で偵察機が落ちて乗員4人が亡くなり、8月には青森県沖で哨戒ヘリが墜落、2人が死亡、1人が行方不明になった。10月にも浜松市沖で救難ヘリが墜落し、3人が死亡、1人が行方不明となったばかりだ。

 背景には何があるのか。専門家は、今回の事故機のように、長年使われている機種では、整備担当者の慣れや見落としによるエラーが起きやすいと指摘する。整備の人員が限られ、質の低下が懸念されているともいう。

 北朝鮮情勢の悪化などにより、実任務が増え続け、パイロットの訓練が十分できていないとの声も出ている。

 いずれも見過ごせない事態である。高額の装備を購入する一方で、組織や人員に無理が生じていないか。個々の事故分析だけではなく、構造的な問題も検証する必要があるだろう。

 現場に近い佐賀空港には、陸自が導入する輸送機オスプレイの配備計画があるが、影響は避けられない。

 防衛省は事故機と同型のヘリを当面飛行停止とし、運用する全てのヘリを整備点検することを決めた。

 自衛隊への信頼は大きく損なわれた。安全最優先の姿勢で事故防止に全力を挙げなければ、回復は望めまい。

 

(2018年2月7日配信『徳島新聞』−「鳴潮」)

 

20年近く前になる。海上自衛隊第24航空隊が小松島航空隊と呼ばれていたころ、地元の支局に駐在していた。取材で何度かヘリコプターに乗ったことがある 

 和歌山県潮岬沖で起きた未明の海難事故は、今も印象深い。悪天候の中、海上保安本部から応援要請を受けた航空隊などのヘリが急行し、転覆寸前の大型貨物船から、共同で乗組員計14人を機上へ引き上げ、救った。実戦部隊としては異例の救出劇だった 

 ヘリの荷室扉が開かれ、身を乗り出して写真を撮った。足元はるか下、黒くうねる海が見えたが、さほど怖くはなかった。後ろで隊員が命綱をしっかり握り、支えてくれていたからだ。自衛隊だもの大丈夫。そんな信頼感もあった 

 佐賀県神埼市の住宅に陸上自衛隊の戦闘ヘリが墜落し、犠牲者が出た。飛行中、主回転翼が分離してほぼ垂直に落下したとみられ、部品や整備に問題があった可能性があるという 

 国民の安全を守るはずの自衛隊が、安全を脅かす。あってはならない事態である。だがこのところ、国民の信頼を自ら傷つけるような事故が続いている 

 在日米軍でも事故やトラブルが頻発しており、北朝鮮対応で実任務が増えた影響も指摘される。だとしても、それは理由にはなるまい。徹底的に原因を探り、自衛隊水準はこれだという再発防止策を示していただきたい。

 

陸自ヘリ墜落 国民の信頼揺るがす事故(2018年2月7日配信『西日本新聞』−「社説」)

 

 一歩間違えば大惨事となった重大事故である。自衛隊に対する国民の信頼を揺るがしかねない。

 佐賀県神埼市の住宅街に陸上自衛隊のヘリコプターが墜落し、乗組員の隊員の死亡が確認された。民家が炎上し、小学生が軽傷を負った。近くには小学校や認定こども園があった。

 整備後の点検飛行中だったという。所属する目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)を離陸して7分後に墜落した。墜落しそうな場合は住宅街を避けるのが鉄則だ。現場周辺には田畑も広がっているのに、民家を直撃した。

 ヘリや戦闘機など自衛隊機の墜落事故は2007年以降、主なものだけで10件目である。多くは海や山中に落ちた。今回は民間人を巻き添えにした危険度の極めて高い事故だ。安倍晋三首相が国会で「自衛隊の最高指揮官として心よりおわび申し上げる」と謝罪したのも当然だろう。

 自衛隊は厳しい訓練を重ね、災害派遣活動や国連平和維持活動などを通じて国民の信頼を得てきた。その自衛隊が本来守るべき国民に危害を及ぼす事故を起こせば信頼関係の根幹に関わることは改めて指摘するまでもあるまい。

 墜落したのは対戦車攻撃ヘリだ。「最強の戦闘ヘリ」と呼ばれ、コンピューター制御のため操縦は比較的容易という。そんな高性能機が突発的に制御不能になったとみられる。目撃者によると、メインローター(主回転翼)が機体から外れた状態で墜落したという。尋常な事故ではない。

 徹底的な原因究明と再発防止が重要である。機体や整備に問題はなかったか。組織や要員の在り方を含む構造的な問題にも切り込む必要があるのではないか。

 沖縄で米軍ヘリによるトラブルが相次ぎ、日本政府が米軍に再発防止を要請するさなかに今回の事故は起きた。その意味でも深刻な事態と言わざるを得ない。

 国民の信頼回復のためにも、政府と防衛省は事故関連の速やかな情報公開に努め、安全性の確保に万全を期してほしい。

 

北米の先住民の中で最も攻撃的な部族とされるアパッチ族…(2018年2月7日配信『西日本新聞』−「春秋」)

 

 北米の先住民の中で最も攻撃的な部族とされるアパッチ族。白人の開拓に抵抗し、勇猛さと奇襲で入植者を震え上がらせた。「アパッチ」は本来、「敵」を意味した先住民の言葉が部族名として広まったそうだ

▼白人がその名を恐れたように、相手を恐れさせようという狙いか。空から敵に奇襲を掛ける米軍の攻撃ヘリコプターに「アパッチ」の通称が採用された。戦車を一撃で破壊できる“最強のヘリ”として、日本などにも導入されている

▼陸上自衛隊の「アパッチ」が、佐賀県神埼市の住宅に墜落して炎上、乗員が死亡した。家の中には小学5年の女児がいた。幸い、逃げる際の軽いけがで済んだ。近くには小学校や認定こども園もあった。一歩間違えば、と思えばぞっとする

▼昨年末から、沖縄で米軍ヘリの部品落下や不時着が相次ぎ、小欄も批判してきた。今度は自衛隊が。しかも、民家に落ちるとは。「米軍しっかりしろ」とばかりは言えなくなった

▼いや、基地問題に絡んで米軍のトラブルが目立つだけで、自衛隊でも事故は起きている。昨年1年間で3機の自衛隊機が墜落し、合わせて隊員9人が死亡、2人が行方不明に。いずれも山中と海への墜落だった。今回は、民家への被害を避けることもできなかったのか

▼国民の安全を守るはずの自衛隊機が、住民に恐れられ、敵視されることがあってはなるまい。改めて「しっかりしろ」と言いたい。

 

陸自ヘリ墜落 住民の安全確保の徹底を(2018年2月7日配信『熊本日日新聞』−「社説」)

 

 陸上自衛隊のヘリコプターが5日夕、点検整備後の試験飛行中に墜落し、佐賀県神埼市の2階建て住宅に突っ込み炎上した。ヘリの隊員2人が死亡。民家に1人でいた小学5年の女児が軽いけがを負ったが、同じ敷地内の平屋に住む祖母と逃げて命拾いした。

 現場は近くに小学校や幼稚園もある住宅密集地だ。普段から自衛隊機が飛び交う航路の下とはいえ、まさか垂直落下事故が起きるとは住民も思っていなかっただろう。国民の命と安全を守るはずの自衛隊機が、住民を巻き込む事故を起こした衝撃は極めて大きい。

 墜落したのは、同県吉野ケ里町の目達原[めたばる]駐屯地に所属する全長約18メートル、最大総重量約10トンの2人乗り戦闘ヘリ。陸自と県警などが業務上過失致死と航空危険行為処罰法違反の容疑で調べている。事故原因を徹底的に究明し、防止策を速やかに講じてほしい。

 ヘリは4枚の羽根を本体につなぐメインローターヘッドという部品を交換後に離陸し、7分後に墜落した。飛行中にこの部品が分離したとみられ、部品または整備に問題があった可能性がある。また、整備後に点検飛行する際、通常は民家などを避けて飛行するとの指摘もある。なぜ住宅密集地に墜落したのか。

 さらに現場は、陸自がオスプレイ17機の配備を計画している佐賀空港からも約15キロしか離れていない。オスプレイと共に、墜落機と同型を含むヘリ約50機の移駐も計画されている。安倍晋三首相は同型機の当面の飛行禁止と全てのヘリの徹底した整備点検を指示したが、事故を目の当たりにした住民らの不安が高まるのは必至だ。

 自衛隊機は昨年1年間だけで3件の死亡事故を起こしている。佐賀県の山口祥義知事も、事故の続発を受けてオスプレイ受け入れの最終判断を保留している。背景には、北朝鮮情勢などによって実任務が増え続け、訓練が十分にできていないことがあるとの指摘もある。

 政府は再発防止策について具体的かつ分かりやすい説明を尽くすことが求められる。国の安全保障を担う基地が、地元住民の安全と理解の確保を徹底することなしには十分機能しないことを改めて肝に銘じてもらいたい。

 

[陸自ヘリ墜落] 生活脅かす重大事故だ(2018年2月7日配信『南日本新聞』−「社説」)

 

 佐賀県神埼市の住宅に、陸上自衛隊目達原駐屯地(同県吉野ケ里町)所属の戦闘ヘリコプターが墜落し炎上した。

 ヘリの隊員2人が死亡した。住宅にいた小5女児は軽いけがをしたが、隣の平屋に住む祖母と一緒に逃げ出し命拾いをした。

 墜落現場は農地に囲まれた住宅密集地で、近くには小学校や幼稚園もある。国民の命を守るべき自衛隊が日常生活を脅かすというあってはならない重大事故だ。

 住民が「生きた心地がしなかった」とショックを受け、不信感を募らせるのは当然だ。

 安倍晋三首相は事故機の同型機を当面飛行停止にし、自衛隊が運用する全てのヘリを整備点検するよう指示した。

 政府は徹底的に原因を究明し、実効性のある再発防止策を示さなければならない。

 事故機は整備点検をした後の試験飛行中で、駐屯地を離陸して7分後に民家に突っ込んだ。目撃情報などから、飛行中にメインローター(主回転翼)が外れてほぼ垂直に落下したとみられる。

 飛行前にメインローターの重要部品を交換したという。専門家は「何らかの整備ミスがあった可能性は否定できない」と指摘する。

 看過できないのは自衛隊機の事故が続発していることだ。まさに異常事態といえる。

 2016年4月、航空自衛隊の飛行点検機が鹿屋市と垂水市にまたがる高隈山系に墜落、乗員6人が死亡した事故の衝撃は今も鮮明だ。17年は死亡事故だけでも3件発生している。

 背景には緊迫する北朝鮮情勢などへの対応で訓練不足を指摘する声もある。「現場は恒常的に任務に追われ、訓練時間が全く確保できていない」(自衛隊幹部)との見方だ。

 そうだとすれば問題の根は深い。点検整備はもとより訓練のあり方も抜本的に見直すべきだ。

 防衛省は陸自に導入される輸送機オスプレイの佐賀空港への配備を目指しており、事故機と同型を含むとみられるヘリを移駐する計画がある。

 だが、今回の事故で計画に影響が出るのは避けられまい。住宅地が巻き込まれたという事態を重く受け止め、住民が納得できる事故情報と安全対策が必要だ。

 米軍機の事故やトラブルが多発する沖縄はもとより、自衛隊基地を抱える鹿児島もひとごとでは済まされない。

 安全保障を担う基地は、地元住民の安全確保と理解を徹底することなしには機能しない。政府は改めて肝に銘じてもらいたい。

 

[陸自ヘリ民家に墜落]沖縄でも尽きない不安(2018年2月7日配信『沖縄タイムス』−「社説」)

 

 佐賀県神埼市の住宅に、陸上自衛隊のAH64D戦闘ヘリコプターが墜落し、炎上した。

 家で1人で留守番をしていた11歳の女の子は、割れた窓から素足で飛び出し、奇跡的に助かった。ヘリが突っ込んだのは、女の子がいたリビングの反対側だった。

 近くにいた車のドライブレコーダーにバランスを崩したヘリが、真っ逆さまに落ちていく様子が捉えられている。

 住民に与えた恐怖は計り知れない。

 この事故でヘリに乗っていた自衛隊員2人が亡くなった。事故原因は調査中だが、メインローター(主回転翼)が上空で脱落したとの目撃情報がある。事故機は飛行直前に4枚の羽根をつなぐ部品を交換しており、新しい部品や整備作業の問題が指摘されている。

 現場は農地に囲まれた住宅密集地で、近くには小学校や幼稚園がある。ヘリが墜落した家は、激しい炎に包まれ、機体の部品は広範囲にわたり散乱した。

 政府は同型機を当面の間、飛行停止とし、自衛隊の全てのヘリの整備点検を決めた。大惨事になったかもしれない事故であり、徹底した原因究明を図ってほしい。

 ニュースで墜落の映像を見て、人ごととは思えない衝撃を受けたのは、普天間第二小学校の運動場に米軍ヘリの窓が落下した時の映像と重なったからだ。

 住宅地に隣接する基地から日常的に米軍機が飛び立つ沖縄は大丈夫か。「この次は…」との不安が広がる。

■    ■

 自衛隊機事故と米軍機事故を比較した時、根本的な違いが二つある。

 今回、政府は首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を置き、陸自は事故調査委員会を設置した。現場検証は陸自と県警で進めている。

 対照的に沖縄では民間地で起きた事故であっても、日本側が主権国家として普通に捜査権を行使できない。

 昨年10月、東村高江の民間地で米軍の大型輸送ヘリが炎上・大破した事故も、一昨年12月、名護市安部の海岸にオスプレイが墜落した事故も、現場は米軍によって封鎖された。

 米軍機事故では軍の論理が優先される。

 相次ぐ不時着に、ハリス米太平洋軍司令官が「安全な場所に降ろす措置に満足している」とパイロットをたたえたのがそれを指し示している。

 同じことを自衛隊幹部が話せば、国会で厳しい追及を受けるだろう。

■    ■

 懸念されるのは昨年来、自衛隊機事故が頻発していることだ。

 昨年5月に陸自のLR2連絡偵察機、8月に海自の哨戒ヘリ、10月に空自の救難ヘリが墜落し、死亡者を出している。 

 米軍機事故が多発する背景には、北朝鮮危機に対処するための訓練激化や国防費削減による整備不足などがあるといわれる。

 自衛隊の場合はどうなのか。原因究明と同時に、事故の背景分析も進めてもらいたい。

 

陸自ヘリ民家墜落 原因の徹底究明を図れ(2018年2月6日配信『秋田魁新報』−「社説」)

 

 きのう佐賀県神埼市千代田町の民家に、陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)の第3対戦車ヘリコプター隊に所属するAH64D戦闘ヘリが墜落、炎上した。防衛省によると、男性隊員2人が乗っており、うち1人が死亡、もう1人は捜索中という。炎上した民家には4人が暮らしていたが、在宅中の小学5年の女児が右膝を打ち軽いけがをした。周辺住民にけが人は確認されていない。

 現場はJR神埼駅から南約4キロの住宅密集地で、近くには幼稚園を運営する認定こども園や小学校もあった。大惨事につながりかねなかったことを防衛省、自衛隊は重く受け止めなければならない。

 目撃した住民の話ではヘリは逆さまの状態で墜落したという。大きな音が響くと同時に黒煙が立ち上り、現場は騒然となった。周辺住民の恐怖はどれほど大きかったことだろう。先に上部のローターが落ちて、その後に本体が住宅の方に落ちたとの目撃情報もある。

 飛行中のヘリの機体に何が起こったのか。安倍晋三首相は墜落したヘリと同型機を当面飛行停止とするとともに、自衛隊が運用する全てのヘリの整備点検を実施するよう指示したが、当然の対応だ。早急な原因究明が求められる。

 自衛隊機の事故が後を絶たない。昨年は5月に救急搬送に向かっていた陸自北部方面航空隊(札幌市)のLR2連絡偵察機が北海道北斗市で墜落し、乗員4人が死亡したほか、8月に青森県沖で海自哨戒ヘリが墜落して2人が死亡、1人が行方不明のままだ。10月にも空自浜松基地(浜松市)の沖合で4人が乗った救難ヘリが墜落し、3人が死亡、1人が行方不明となっている。

 北海道の墜落事故は人的ミスが原因とみられる。続発する事故の原因として、隊員の実任務増加による疲弊と訓練不足を指摘する声もある。最も重要な安全対策がおろそかになっていないか、点検が必要だ。防衛省は、隊員の技能向上も含め、早急に安全対策を徹底すべきだ。

 また今回の墜落事故は、近くにヘリが離着陸する飛行場のある危険性を改めて浮き彫りにした。沖縄では昨年12月、宜野湾市の米軍普天間飛行場に隣接する小学校の運動場に、海兵隊のCH53E大型輸送ヘリの窓が落下したほか、飛行場近くの保育園の屋根にも同型機の計器カバーとみられる円筒状の物体が落下したばかり。同飛行場配備機の事故やトラブルも相次いだ。窓落下の際は運動場に児童約60人がおり、一歩間違えれば大惨事になっていた。そうした事故を防衛省、自衛隊はどう受け止めていたのか。対岸の火事としていなかったか。

 今回の墜落事故で自衛隊への国民の信頼は大きく揺らいだ。事故原因を究明して国民にしっかり説明し、有効な再発防止策を講じなければならない。

 

自衛隊ヘリ墜落(2018年2月6日配信『佐賀新聞』−「論説」)

 

組織含めた原因究明を

 陸上自衛隊目達原駐屯地(神埼郡吉野ヶ里町)から飛び立った対戦車攻撃ヘリコプター「アパッチ」が墜落し、民家を直撃した。乗っていた自衛隊員が犠牲になり、巻き込まれた民家にいた小学5年生の女児が軽いけがをした。

 亡くなった自衛隊員の冥福と、女児の回復を祈るばかりだが、政府と防衛省は、住民の生命を危険にさらした惨事を重く受け止めるべきだ。

 墜落現場は目達原駐屯地からわずか4キロで、すぐ近くには幼稚園や小学校がある。燃え上がる民家を見つめていた近くの住民は「ドーンという音がして、家から飛び出した」「知人が巻き込まれたんじゃないかと思って駆けつけた」「整備した直後に起きた事故と聞いて、もっと怖くなった」などと、口々に不安を訴えた。

 なぜ、自衛隊機は落ちたのか。

 目撃者の証言によると、まず回転翼「ローター」部分が、それから機体部分が落ちていったという。周辺に農地が広がっているにもかかわらず、民家を避けられなかった状況を考えると、パイロットが機体をコントロールできない状況に陥ったのではないか。

 在日米軍の場合、事故が起きる度に「人為的ミス。機体の安全性は確認できた」と、パイロットに責任を押しつけて飛行を再開するケースが目立つ。

 今回ばかりは事態収拾を急ぐあまり、安易な幕引きは許されない。というのも、自衛隊機をめぐる事故もまた、多発しているからだ。

 昨年5月には北海道で救急搬送中の陸自連絡偵察機が墜落し、4人が亡くなっている。8月には青森県沖で、海上自衛隊の哨戒ヘリが墜落して2人が死亡し、1人が行方不明になった。さらに、10月にも航空自衛隊浜松基地の沖合で4人が乗った救難ヘリコプターが墜落している。

 これほど事故が相次ぐのは、何か根本的な原因を抱えているのではないか。北朝鮮の脅威や中国の海洋進出で緊迫する国際情勢が影響している可能性もある。直接の技術的な原因だけでなく、その背後に潜む組織的な体制まで含めて、広く原因究明に取り組むべきだ。

 また、事故直後、小野寺五典防衛相は「ヘリコプターの着陸・炎上」と発表したが、どうにも違和感がある。現場を見れば明らかなように、これは着陸ではなく、民間人を巻き込んだ「墜落」そのものだ。事態をできるだけ小さく見せたいという思惑を感じさせ、県民の不信につながりかねない。

 折しも、自衛隊が導入する輸送機オスプレイの佐賀空港配備計画が議論されているさなかである。今回の墜落事故により、県民の不安は高まるばかりだ。この上、安全性が疑問視されているオスプレイは受け入れがたいだろう。

 しかも、この配備計画は米軍機の受け入れにもつながりかねない。昨年、在日米軍の航空機やヘリコプターによる事故やトラブルは前年から2倍以上に跳ね上がった。小学校の校庭にヘリから窓が落ちる事故も起き、住民の暮らしが脅かされる状況が続いている。

 まずはヘリ墜落の事故原因を徹底的に究明した上で、速やかに情報を公開し、再発防止策を示すよう求めたい。何よりも住民の生命が最優先である。

 

神埼にヘリ墜落(2018年2月6日配信『佐賀新聞』−「有明抄」)

 

 炎と黒煙が立ち上る映像が衝撃的だった。自衛隊の攻撃ヘリが神埼市に墜落した。燃え上がる民家に向かって、何本ものホースから放水され、消防隊が懸命に消火活動をする。混乱した現場の雰囲気に慄然(りつぜん)とした

◆付近にいた住民は、墜落の瞬間、地響きがするような大きな音に驚いたという。「ありえない、こんなところで…。怖かった」。実感だろう。航空機事故の恐ろしさである。落ちたのは陸上自衛隊目達原駐屯地(吉野ヶ里町)の対戦車ヘリで、パイロットの貴い命も失われた

◆被害にあった民家の住民の命は無事だったものの、女の子が負傷した。軽かったのは偶然にすぎない。加えて、帰宅したら何もかもが灰になったショックは計り知れないだろう。米軍とはいえ、今年に入って沖縄でヘリの不時着が相次ぎ、空からの部品の落下という事象も起きている

◆基地と隣り合わせで暮らす住民の不安は、人ごとではなかった。目達原のヘリ約50機の移駐を伴う、佐賀空港へのオスプレイ配備計画があるからだ。パイロットは飛行中にアクシデントが起きても、「地上には被害を与えるな」と教育されるそうだ

◆民家を避けられるものなら、避けたかったろう。それでも操縦不能に陥ることがある。不安に駆られながら、空を見上げたくはない。安全に絶対はないことを思い知る。

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