自民・穴見陽一議員、衆院厚生労働委員会で受動喫煙対策を訴える肺がん患者へ「いい加減にしろ」と耳を疑う暴言

 

(がん患者は)働かなくていいんだよ

 

衆院選不出馬、穴見氏

 

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穴見陽一衆議院議員=969年7月24日大分県佐伯市生まれ。法政大学経済学部を3年で中退後、1994年に父親の穴見保雄氏が創業した、九州を中心にファミリーレストランを展開する「ジョイフル」に入社。1997年に地域子会社の中国ジョイフルの社長に就任後、2003年3月にジョイフル社長に就任。自民党が政権復帰した2012年12月16日の第46回衆議院議員総選挙に自民党公認・公明党推薦で初当選し、現在当選3回目の、不祥事を連発する「魔の3回生」。安倍首相の出身派閥の細田派に所属している。なお、現在の「ジョイフル」の社長は妻の穴見くるみ氏で、陽一氏は代表取締役相談役。

 

 

自民党の穴見陽一衆議院議員(48)は、受動喫煙対策を議論した2018年6月15日の衆院厚生労働委員会で、参考人として出席した自身もステージ4の肺がん患者の日本肺がん患者連絡会代表の長谷川一男氏が屋外での喫煙に関して、なるべく吸ってほしくないとしながらも、「やはり喫煙者の方がどこも吸うところがないじゃないかとおっしゃるのもすごくよくわかります」と意見を述べた際に2回「いい加減にしろ!」とヤジを飛ばした。

 

参考人にやじを飛ばすのは極めて異例。

 

日本維新の会の浦野靖人議員が、屋外で吸うことに対する考え方を質問に対して長谷川氏が、「原則としては屋外でもなるべく吸ってほしくないというのが肺がん患者の気持ちではある」と述べたうえで、「やはり喫煙者の方がどこも吸うところがないじゃないかとおっしゃるのもすごくよくわかります」と喫煙者の思いにも配慮した発言をした。その直後に、議員席に座っていた青いシャツ姿の議員から「いい加減にしろ!」とヤジが飛んだ。

 

「最初は何が起こっているのかわからなかった」という長谷川氏は、「そういったことで、屋外の喫煙所を作る、増やしていくというのは一つの方法ではないかと考えてはいます。しかしながらそれも一時的なもので、なんとか数年経った後にそういったところもなくしていくことができればいいんじゃないかなと個人的には思っております」

 

すると、再び青シャツの議員から「いい加減にしろ!」とヤジが投げられた。別の自民党議員はヤジを飛ばす議員を見ながら笑っていた。

 

長谷川氏が、病気のために脆くなった骨を守るコルセットを外しながら、受動喫煙による被害の実態を必死で訴えた後に行われた質疑だった。

 

長谷川氏は、「私以外の受動喫煙に反対する医師にも文言はわかりませんがヤジを飛ばしていました。一部の国会議員は、意見を聞くために呼んだ参考人に対しても、自分の意見と違うとヤジでプレッシャーを与えるものなのかと驚きました」「こういう人が、国民の健康を守る大事な法案を審議しているのかと思うと残念でなりません」と話した。

 

やはり参考人として呼ばれ、長谷川氏の隣の席に座っていた全国がん患者団体連合会理事長の天野慎介氏(44)も、長谷川氏にヤジが飛ばされたことに、一瞬耳を疑ったという。

 

「参考人として招かれ、体調が良くない中をおして出席したがん患者に、ヤジを飛ばすとは驚きましたし、悲しく信じられない気持ちでした。受動喫煙対策はマナーの問題に止まらず、国民の命や健康に関わる問題であり、受動喫煙に苦しむ患者やこれから苦しむかもしれない国民のためにも、真摯に向き合った議論をしてほしい」と話した。

 

 

 

自身がつけていたコルセットを外して見せながら、受動喫煙の被害について訴えた長谷川一男氏(6月16日配信『BuzzFeed News』)

 

ヘビースモーカーとして知られる穴見議員は6月21日、自身のホームページとFacebookに「お詫び」を掲載。「いい加減にしろ」とのヤジを飛ばしたという報道があったことについて、「参考人の方はもとより、ご関係の皆様に不快な思いを与えたとすれば、心からの反省と共に深くお詫び申し上げる次第でございます」と謝罪した。発言の意図については、「参考人のご発言を妨害するような意図は全くなく、喫煙者を必要以上に差別すべきではないという想いで呟いたもの」だったと説明し、「今後、十分に注意して参りたいと存じます。この度は誠に申し訳ありませんでした」と詫びた。

ただ、報道陣の取材には応じていない。

 

 

 

 厚労委の高鳥修一委員長(自民)は21日、穴見氏を口頭で厳重注意し、おわびの文書を参考人に送付した。同委員長は記者団に対し、「私は明確に聞き取ることはできなかったが本人も認め、周りの人も聞いたことを確認した。非常に不適切で、委員長として本人を厳重注意したうえで、おわびの文書を出すことにした」と述べた。

 

 菅官房長官は21日午後の記者会見で「報道は承知しているが、事実関係は承知していない。国会議員の1つ1つの発言に対して、政府としてコメントは控えたい」と述べた。

 

 公明党の井上義久幹事長も「あってはならない。受動喫煙をどう防止していくかという基本的な認識が分かっていれば、ああいう発言は出なかったのではないか」と断罪した。

 

 野党側の筆頭理事を務める立憲民主党の西村智奈美氏は、「ご自身が発言したと認めた点はいいが、国会からお願いをして来ていただいた参考人に、圧力とも受け取られるような発言をしたことは、大変大きな問題だ。参考人に対する直接的なおわびが必要だ」と述べた。

 

共産党の志位委員長は記者会見で「心ない、許しがたい行為だ」と批判した。

 

医師などで作る日本禁煙学会は穴見議員に抗議文を送った。抗議文では「受動喫煙によって肺がんを発症した方が、死ぬような思いで話をしている中、なんという心ない言葉を浴びせるのか」としたうえで、穴見議員が今回の発言について、「喫煙者を必要以上に差別すべきではないという思いでつぶやいたものだ」とコメントしたことについて、「受動喫煙を防止して命と健康を守ってほしいという訴えを『差別』だとすることは、誤った認識に基づく居直りにすぎず、強く抗議する」と批判した。

 

2018年6月21日

自民党 衆議院議員(大分一区)穴見陽一様

 

一般社団法人 日本禁煙学会 理事長 作田 学

 

抗議文

 

先週6月15日の衆院厚労委員会で、日本肺がん患者連絡会理事長の長谷川一男さんがご意見を述べられているなか「いい加減にしろ!」というヤジが飛びました。私どもは許せない暴言だと思い、誰の発言か調べて参りましたが、ヤジの発言者の近くに座っている方々の意見が一致し、今日のBuzz Feed Newsにも掲載されました.

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/judoukitsuen−yaji−anami?utm_term=.slB4V74VR4#.uswJLmJLgJ

それによると、発言者は穴見陽一議員に間違いないこと、穴見議員は大分県の、公益財団法人大分がん研究振興財団の理事をしていることが明らかになりました。

長谷川さんは受動喫煙によって肺がんを発症し、現在Stage 4という重症の方です。その方が、死ぬような思いで、発言をされている中、なんという心ない言葉を浴びせるのでしょうか。

これに対して、穴見議員は次の様に釈明しています。

「喫煙者を必要以上に差別すべきではないという思いでつぶやいたものだ」

受動喫煙は、非喫煙者の命にかかわる問題です。受動喫煙をしっかり防止して非喫煙者の命と健康を守ってほしいとの切実な訴えを、「喫煙者を必要以上に差別」するものだと論難することは「釈明」ではなく、誤った認識に基づく居直りにすぎません。本学会は、穴見議員に強く抗議するものです。また、厚生行政の基本もわきまえない人物を厚生労働委員とした自由民主党にも強く抗議いたします。

 

 公益法人「大分がん研究振興財団(大分県由布市)、2007年に発足した時から理事を務める穴見氏から22日に同財団の理事を辞任する届け出があり、理事長が届け出を受理したことを明らかにした。

 財団の植山茂宏理事長は「参考人や全国のがん患者やその家族に大変不快な気持ちを抱かせたことに、心よりおわびします」とのコメントを発表した。

 坂本修一事務局長によると、顔を合わせるのは「事業計画の承認時など年2回程度」という。坂本氏は「一般常識からしておかしい発言で、びっくりしている。我々の活動は多くの方々の理解と寄付で成り立っており、発言で財団のイメージが悪くなってしまわないか」と懸念していると話した。

 

 

受動喫煙対策をめぐっては、2017年5月の自民党厚生労働部会で自民党の大西英男衆院議員が職場での受動喫煙対策を訴えた同党の三原じゅん子参院議員に(がん患者は)働かなくていいんだよ」とヤジを飛ばし、謝罪している。

 

受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案は、飲食店内は原則禁煙にする当初の厚生労働省案に自民党が反対。一定面積以下の店は「喫煙」「分煙」などと表示すれば喫煙可能にする対案を出すなど自民党の抵抗が続き、その後、妥協案として、客席面積が100平方メートル以下の店を例外とするなどの経過措置が設けられた政府の現改正案が出され、がん患者らから「骨抜きにされた」と批判を浴びていた。

 

 がん患者団体の代表が反対する中で、改正法案は6月15日に衆院厚労委員会を通過した。

 

 

「やりたかったこと、軌道に」衆院選不出馬、穴見氏に聞く(2019年5月11日配信『大分合同新聞』)

 

がん患者への問題発言「委員会運営に不満」

 

衆院経済産業委員会に臨む穴見陽一氏=10日

 

 自民党の穴見陽一衆院議員(49)=大分1区、3期=が10日、次期衆院選への不出馬と今期限りでの政界引退を正式に表明した。9日の大分合同新聞の取材に対する一問一答は次の通り。

 ―いつから引退を考え、なぜこの時期の表明か。

 前回(2017年)の選挙前から「次の1期の中で勝負したい」との思いがひそかにあった。衆院はいつ解散か分からず、できるだけ早く表明すべきと思った。もし衆参同日選になって出ないと混乱するので、昨年から「統一地方選の直後」と考えていた。

 ―党本部や派閥の幹部には伝えたのか。

 首相、官房長官、派閥の会長と事務総長に伝えた。4月に下村博文先生と話したのが最初で、誰に伝えるか相談した。

 ―引退する理由は。

 国政でやりたかったことはほぼ軌道に乗せることができた。1億総活躍政策では高齢者、障害者、外国人が就労し、活躍しないと人口減少社会はもたないと訴えてきた。党で放射性廃棄物処分に関する小委員会の事務局長を務め、止まっていた最終処分の議論を再起動した。安倍内閣が憲法改正を除いて期待した政策をほぼ実現できたのもある。

 ―昨年、厚労委員会で、参考人のがん患者に「いいかげんにしろ」と発言したとして問題化した。

 与党の委員会理事に対する不満をつぶやいた。参考人招致は両論の意見を聞くべきだが、喫煙者やそのビジネスの立場の人がいなかった。バランスの取れた議論にならず、委員会運営に不満があった。参考人に不快を与えたならば申し訳なく、おわびした。総裁選前で政権全体への影響に鑑み、心情を表明するのは控えた。

 ―後任について考えは。

 党県連にお預けする。個人的には、女性で若い人が良いと思う。現場で汗を流し、現場の課題を感じる人に務めてほしい。

 ―引退後の活動は。

 任期は2年以上あり、仕事を一生懸命やること以外考えない。ジョイフルの代表取締役は続けていくだろう。

 ―有権者への思いは。

 期待に応えられているか分からないが選挙で訴えたことを誠実に努力してきた。任期中は引き続き支援をお願いしたい。

 

ジョイフル、全店で禁煙へ やじの穴見陽一衆院議員が代表取締役(2018年8月13日配信『産経新聞』)

 

 ファミリーレストランを展開するジョイフルは13日、受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が全面施行される2020年4月までに、全国約900のグループ店舗で全席禁煙を実施すると明らかにした。法案審議中に参考人のがん患者にやじを飛ばした自民党の穴見陽一衆院議員が代表取締役相談役を務める。

 改正法では、大手チェーン店は面積にかかわらず原則禁煙となる。ジョイフルでは、直営ファミレス店のうち全席禁煙を達成したのは約30店舗にとどまっているが、全店舗に拡大する。ただ、愛煙家に配慮し、店舗内の一角か屋外に喫煙ブースを設ける計画だ。

 記者会見したジョイフルの小野哲矢常務は、穴見氏の発言は政治家としてのものだと釈明した上で「会社としては(完全分煙を導入するなど)以前から対策をしている」と強調した。

 ジョイフルは、穴見氏の父・保雄氏が1976年に前身の会社を創業。主要株主でもある陽一氏は社長や会長を歴任しており、現在は妻・くるみ氏が社長。

 

政治資金から「利息」 自民・穴見議員のトンデモ“錬金術”(2018年7月23日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 受動喫煙対策を巡る国会審議中、参考人として出席した肺がん患者の発言中に暴言ヤジを飛ばした自民党“魔の3回生”穴見陽一衆院議員(48)。日刊ゲンダイは、6月22日発売号で「穴見議員 政治資金“還流”疑惑浮上」と報じた。

 穴見氏が代表の資金管理団体の収支報告書(14〜16年分)を調べたところ、団体が穴見氏から借金し、その返済とは別に「利息」を穴見氏本人に支出したという不可解なカネの動きがあったからだ。穴見事務所は日刊ゲンダイの質問に「法定の記載事項以上の詳細に関しては回答していない」と、ダンマリを決め込んだ。

 そこで日刊ゲンダイは6月末、穴見氏の地元・大分県の選挙管理委員会に対し、資金管理団体と政党支部の収支報告書に添付された領収書コピーの開示を請求。今月17日に開示された領収書コピーを見ると、さらに不可解な事実が浮かび上がった。

 例えば、14年5月9日付の「利息」受領の領収書。宛名に支出者である資金管理団体の名称があり、金額は10万円の記載。受け取り側には「会社名:穴見陽一」と記され、本人の自宅住所が記されている。資金管理団体は14〜16年に各40万〜44万5000円、政党支部は14年に58万円、15年に45万円を「借入利息」などとして穴見氏本人に支出。38枚もの領収書は全て同じ形式で印字されている。

「穴見陽一」という個人名を会社名にして、何十枚も領収書を出して自分の資金管理団体から利益をもらうなんて、どう考えてもおかしい。まるで“錬金術”だ。改めて穴見事務所に問い合わせたが、返答はなかった。

「利息の支払先が会社法人とは思えない穴見氏本人になっているとは、不可解です。そもそも、資金管理団体や政党支部が、借金しなければ資金繰りに困る状態ならば、利息など支払うこと自体がおかしい。原資の一部に税金が含まれる可能性もあるので、法的瑕疵がなくとも控えるべきでしょう。少なくとも、利息を議員本人に支出した理由は説明すべきです」(政治資金に詳しい神戸学院大教授・上脇博之氏)

 さすがは“魔の3回生”である。

 

受動喫煙対策:やじの穴見氏が患者本人に文書で謝罪(2018年6月30日配信『共同通信』)

 

 受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の審議中、自民党の穴見陽一氏(48)が参考人のがん患者にやじを浴びせた問題で、穴見氏が謝罪文書を患者本人に送っていた。騒動以降、穴見氏は公の場に姿を見せておらず、法案も掘り下げた議論がないまま7月にも成立する見通しだ。患者側は「穴見氏は自分の口で説明し、命に関わる法案をより真摯(しんし)に議論してほしい」と訴えている。

 謝罪文書を受け取ったのは、日本肺がん患者連絡会理事長の長谷川一男さん(47)。文書は25日付で、穴見氏は「喫煙する機会が狭められていくことへの思いが出てしまった」「不快な思いを与えてしまった」とわびた。ファミリーレストラン「ジョイフル」の役員であることにも触れ「(長谷川さんの意見は)お客様へのサービスの視点からも真剣に考えなければならない」と記した。

 長谷川さんは文書について「気持ちをまっすぐに受け止めたい」としながらも「(公の場で)自ら考えを話してもらいたい」と述べた。

 やじがあったのは、長谷川さんが参考人として出席した15日の衆院厚生労働委員会。肺がんのため骨がもろくなった長谷川さんは、装着しているコルセットを見せながら「ラッシュの電車で恐怖を感じながら来た」とあいさつ。学校の敷地に喫煙場所を設けるべきでないと主張し「受動喫煙が原因で死んでいく年1万5000人の声なき声に耳を傾けて」と訴えた。その最中に「いいかげんにしろ」とやじが飛んだ。

 21日に発覚後、野党議員は「参考人に対するやじは前例がない」と批判。安倍晋三首相も国会で「大変残念な発言だった」と苦言を呈するなど波紋が広がった。

 1年半以上に及ぶ同法案の議論では、当初「店舗面積30平方メートル以下」としていた例外的に喫煙ができる飲食店の面積が大幅に拡大し、規制が緩くなった経緯がある。日本禁煙学会の作田学理事長は「たばこ業界から献金を受けたり利害関係があったりして、国民の方を向いていない議員が多いことが改めて明らかになった」と指摘している。

 

がん患者の人権踏みにじる(2018年6月23日配信『しんぶん赤旗』)

 

自民また暴言

安倍政権の強権体質が土壌

 受動喫煙をめぐる15日の衆院厚生労働委員会の参考人質疑で、自民党の穴見陽一議員が、参考人として出席したがん患者の長谷川一男さんの陳述中に「いいかげんにしろ」などと暴言を吐きました。人権をないがしろにし、国会、国民を見下す安倍政権・自民党の体質を示すものです。

 長谷川さんは家族や同僚などからの受動喫煙後、ステージ4(他の臓器にがんが転移している状態)の肺がんを患っています。質疑では病気のためにもろくなった背骨を守るコルセットを外して示し、「少しでも力がかかると背骨がつぶれ下半身不随になる」と恐怖を語りながら受動喫煙対策の必要性を訴えました。

 穴見氏の暴言は、長谷川氏の命がけの訴えを一顧だにせず、受動喫煙による患者の人権を踏みにじるものです。到底許されません。

 さらに、穴見氏は暴言について発表した「お詫び」の中で「喫煙者を必要以上に差別すべきではないという想いで呟(つぶや)いた」と記して弁解。

 しかし暴言が吐かれたのは、長谷川氏が屋外喫煙をめぐって喫煙者の思いにまで配慮する意見を述べた直後です。「差別すべきではないという想い」など通用しません。

 穴見氏だけではありません。松本文明前内閣府副大臣は、沖縄の保育園に米軍機の部品が落下した事故に関して「それで何人死んだんだ」(1月25日)との暴言ヤジで辞任。沖縄全土で相次ぐ米軍機事故のさなか、日々命と暮らしを脅かされる保護者や沖縄県民の苦しみを踏みにじりました。

 下村博文元文科相は、財務事務次官によるセクハラ事件で被害女性がセクハラ発言を録音していたことについて、「福田次官は、はめられた」「ある意味犯罪だと思う」(4月22日)などと述べ、被害者を犯罪者扱いし、女性蔑視をあらわにしました。

 安倍政権下での暴言による人権じゅうりんは数え切れません(表参照)。

 背景にあるのは、基本的人権や生命など「個人の尊厳」を国家権力から守る立憲主義破壊の安倍政権の強権政治です。

 安倍政権は、集団的自衛権の行使容認をして9条の解釈改憲を閣議決定し、安保法制=戦争法を強行成立させるなど、日米安保を絶対視して立憲主義を破壊。今国会ではカジノ実施法案や「働かせ方大改悪」法案など悪法の強行成立を国会会期を延長してまで狙い、数の暴力をふるうことに恐れも慎みもありません。この安倍政権の体質こそ、暴言を生み出す最大の土壌です。

 国民の命も暮らしも踏みにじる安倍政権は早急に退陣すべきです。

[自民国会議員の暴言]

 ・松本文明衆院議員「それで何人死んだんだ」(沖縄で続発する米軍機事故について。1月25日、衆院本会議でのヤジ)

 ・渡辺美樹参院議員「週休7日が人間にとって幸せなのか」(過労死遺族に対して。3月13日、参院予算委公述人質疑)

 ・下村博文元文科相・衆院議員「ある意味犯罪だと思う」(セクハラの被害女性が福田淳一財務事務次官の発言を録音したことについて。4月22日、東京都内での講演会)

 ・加藤寛治衆院議員「必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい」「結婚しなければ子どもが生まれないから、ひとさまの子どもの税金で(運営される)老人ホームにいくことになる」(5月10日、派閥の会合で)

 ・麻生太郎財務相「(セクハラの被害女性に福田氏が)はめられた可能性は否定できない」(5月11日、衆院財金委)

 

肺がん患者にヤジの穴見議員が大炎上(2018年6月22日配信『Business Journal』)

 

肺がん患者にヤジの穴見議員、仮定形&反省ゼロの釈明にネット唖然→ジョイフル批判殺到

 6月15日の衆議院厚生労働委員会で、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の審議が行われた。そこで、自民党の穴見陽一衆議院議員が飛ばしたヤジが物議を醸している。

 審議には参考人として、日本肺がん患者連絡会代表で自身も肺がん患者の長谷川一男氏が出席した。長谷川氏は、自身が受動喫煙によって肺がんになったと考えているという。

 そこで、屋外での喫煙について、「喫煙所をつくる、増やしていくというのがひとつの方法ではないかと考えています。しかしながら、それも一時的なもので、なんとかそれを、数年たった後にそういったところもなくしていけたらと、個人的には考えております」と考えを述べた。その直後、穴見議員が突然「いいかげんにしろよ」とヤジを飛ばしたのだ。

 この様子がインターネット上で拡散されると、「こういう人が、まわりに配慮している愛煙家の居場所を奪っていくんだな」「喫煙者だけど恥ずかしい」「がん患者を目の前にして、あり得ない罵声」「体が弱っているなかでわざわざ国会で意見を述べてくれた人に対して中傷するなんて最低! 即刻議員を辞めろ!」と批判が続出した。作家の山本一郎氏も、21日にツイッターで「国会でガン患者に野次ってなんかすげーな」とあきれかえっている。

 これを受けて、21日に穴見議員はフェイスブックを更新。「まずは参考人の方はもとより、ご関係の皆様に不快な思いを与えたとすれば、心からの反省と共に深くお詫び申し上げる次第でございます。もちろん、参考人のご発言を妨害するような意図は全くなく、喫煙者を必要以上に差別すべきではないという想いで呟いたものです。とはいえ、今後、十分に注意して参りたいと存じます。この度は誠に申し訳ありませんでした」と釈明した。

 しかし、この文章に対しても「『不快な思いを与えたとすれば』? 反省する気一切ないんだな」「普通に不快だろ。相手が勝手に悲しんだみたいにしていてムカつく」「なんで仮定形なのでしょう。まったく謝罪していないし、一刻も早く議員を辞めてほしい」と大バッシングが巻き起こっている状況だ。

ジョイフルの「分煙」も非難の対象に

 また、穴見議員が以前にファミリーレストラン「ジョイフル」の社長を務めていたことも波紋を呼んでいる。穴見議員はジョイフル創業者の長男で、2003〜08年と11〜12年の2度にわたって社長を務めており、現在も代表取締役に就いている。

 そのジョイフルの店舗は全面禁煙ではなく、いわゆる分煙だ。ニュースサイト「ITmedia ビジネスオンライン」の6月21日付記事によると、直営店の732店舗のうち308店舗では「気流を調整して煙が禁煙席に流れない仕組みを設けている」とのことで、ほかの424店舗とフランチャイズ店では、席が分かれているだけだという。

 そのため、ネット上では「壁も仕切りもないから意味ない」「禁煙席に座っていてもタバコの煙が流れてくる」「前から名ばかりの分煙だと思っていた」「子どもと一緒に行けない」などと非難の対象になっているのだ。

 なかには、ジョイフルが完全禁煙化するには大規模な改装などが必要になる上、喫煙者の来店が見込めなくなり売り上げへの影響も予想されることから、「商売ヤジ」「自分の利益しか考えていない」「利権優先主義」などという声も多く、「こんな人がかかわっているファミレスには行きたくない」「安かったけど、もう二度と行かない」「事の重大さを認識させるために来店を控えませんか?」などと不買運動にまで発展しそうな勢いだ。

「ITmedia ビジネスオンライン」の取材に対し、ジョイフルは「ゆくゆくは全面禁煙化を進めたい」と回答しているが、失った信頼を取り戻すには時間がかかりそうだ。

 

ヤジ問題の自民・穴見議員、がん財団の理事を辞任(2018年6月22日配信『朝日新聞』)

 

 自民党の穴見陽一衆院議員(大分1区)が衆院厚生労働委員会で参考人の肺がん患者に「いい加減にしろ」とヤジを飛ばした問題で、大分がん研究振興財団(大分県由布市)は22日、穴見氏から理事辞任の届け出があったと発表した。「一身上の都合」としているが、直前に本人から財団評議員に電話があり、「大変迷惑をかけた」と謝罪があったという。

 穴見氏は2007年の財団発足時から理事を務めていた。辞任届は、近く開く緊急評議員会で受理される見込み。財団は参考人や全国のがん患者と家族に対し、「大変ご不快なお気持ちを抱かせましたことに、心よりおわび申し上げます」とする談話も出した。

 植山茂宏理事長は「参考人の方がいろんなことを考えながら発言されていたのに対し、全くそぐわない発言だった。謝罪談話の(喫煙者への)『差別』という言葉もピンとこない」と述べた。

 穴見氏は受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を審議する15日の厚労委で、参考人の肺がん患者に「いい加減にしろ」などとヤジを飛ばし、21日に謝罪コメントを発表していた。

 ファミリーレストランチェーン「ジョイフル」の運営会社(大分市)の代表取締役相談役も務めており、同社には電話などが相次いでいるという。広報室の担当者は「発言の批判も、『店は関係ない』という励ましも真摯(しんし)に受け止め、20年に向け受動喫煙対策を着実に進めたい」と語った。

 

自民議員の失言止まらず… 肺がん患者に暴言の穴見氏、首相は「勘弁して」と言ったの河村氏(2018年6月22日配信『産経新聞』)

 

 自民党国会議員の失言が止まらない。安倍晋三内閣の支持率が回復に転じたことや、通常国会の大幅延長が決まり、緊迫した与野党攻防に間延び感が漂ったことに伴う気の緩みもあるとみられるが、今回はお粗末という表現では済まされない発言もあった。(原川貴郎)

 穴見陽一衆院議員は、15日の衆院厚生労働委員会で、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案をめぐり参考人として出席した日本肺がん患者連絡会代表の長谷川一男さんにやじを飛ばした。

 長谷川さんが屋外での喫煙に関して「なるべく吸ってほしくないが、喫煙者にとって吸う場所がないと困るという気持ちも分かる」などと発言。直後に穴見氏は「いいかげんにしろ!」と言い放った。

 穴見氏は、ファミリーレストランを展開する「ジョイフル」の代表取締役相談役を務め、不祥事を連発する自民党の「衆院当選3回生」でもある。

 穴見氏は、21日になって「不快な思いを与えたとすれば、心からの反省とともに深くおわび申し上げる」と謝罪のコメントを発表した。ヘビースモーカーとして知られ、コメントでは「喫煙者を必要以上に差別すべきではないという想(おも)いで呟(つぶや)いた」とも釈明。22日には大分がん研究振興財団の理事の辞表を出し、受理された。ただ、報道陣の取材には応じていない。

 自民党幹部は「自分がどう見られるか認識が足りない」と怒りを隠さない。公明党の井上義久幹事長も22日の記者会見で「あってはならない。受動喫煙をどう防止していくかという基本的な認識が分かっていれば、ああいう発言は出なかったのではないか」と断罪した。穴見氏のフェイスブックにも「コメントの内容を読む限り、とても反省しているとは思えない」などと批判が殺到した。

 失言は閣僚経験のあるベテラン議員からも出た。

 河村建夫衆院予算委員長は20日夜、安倍首相らとの会食後、予算委の集中審議について首相が「勘弁してくれ」と述べたと説明。21日に野党が批判すると「『勘弁』との発言はなかった」と訂正した。

 麻生太郎副総理兼財務相は21日、麻生派(志公会、59人)の会合で「ロスタイムの間に下手な失点が起きないようにお願いしたい」と注意を促したが、麻生氏自身も失言の多さで知られる。会期末までに追加失点が出ない保証はない。

 

 

「聞く耳持たない」スポーツ界も国会も(2018年9月4日配信『日刊スポーツ』―「政界地獄耳」)

 

★国連人種差別撤廃委員会は先月30日に発表した対日審査報告書で、ヘイトスピーチ対策の強化などを勧告した。ヘイトスピーチは16年に対策法が成立したものの改善には至っていない、と指摘した。加えて被害者を特定できない差別的言動の禁止、集会でのヘイトスピーチや暴力の扇動の禁止、ネット上のヘイトスピーチの効果的対策の策定、技能実習適正化法の履行、外国籍者の住居や雇用の権利保障、高校就学支援金制度を朝鮮学校にも適用すべきなどが盛り込まれている。

★また15年の日韓慰安婦合意は「元慰安婦の立場が十分に反映されていない」とし、日本政府に問題の解決を促した。他国のロビーイングが功を奏したものも垣間見えるが、いずれにせよ国連は対策が限定的で不十分と指摘している。これに対して官房長官・菅義偉は「慰安婦問題は『人種差別撤廃条約』適用対象外のテーマ。国連委員会が取り上げる事案ではない」と問題をすり替え議論を避けた。

★だが、日本の国会議員の主義主張には国連がヘイトや差別だと指摘しているテーマを自らの政策として掲げている者も多い。政治家の暴言や失言についても、最近では本人が出てきて謝ることすらしないし、誤解だとか言葉足らずとか、あたかも説明不足かのような言い逃れで、自らの偏った差別感や前近代的な思考を相変わらず言い続ける議員も多い。またそれを考え方にはいろいろあるなど価値観の多様性にすり替える者もいる。勉強不足や偏った価値観を信じる彼らが1つの論を持っているかのような錯覚を起こさせ、事態を矮小(わいしょう)化しようとする議員も多い。世の中の事件でも優生思想を信じるものや、昨今のスポーツ界の問題も昔は許されていたことへの賛歌にも近い行動をとる指導者がもてはやされていたことを示唆している。国連の指摘を真摯(しんし)に聞く耳すら持たない国会議員の罪は重い。

 

がん患者にやじ 厳しく処分すべきだ(2018年7月3日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 一人の国会議員の資質だけの問題ではない。国会全体の問題だ。

 受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の審議中、自民党の穴見陽一衆院議員が参考人のがん患者、長谷川一男さんにやじを浴びせた問題で、穴見氏が長谷川さんに謝罪文を送っていたことが分かった。

 穴見氏は謝罪文で「喫煙する機会が狭められていくことへの思いが出てしまった」と釈明した。法案の趣旨とは異なる身勝手な「思い」が暴言の動機という。一層資質が問われる。

 穴見氏は大分がん研究振興財団の理事でもあったのだから、あきれてしまう。暴言後、理事を辞任した。

 肺がんのため骨がもろくなった長谷川さんは装着しているコルセットを国会で見せながら「ラッシュの電車で恐怖を感じながら来た」と語った。「受動喫煙が原因で死んでいく年1万5千人の声なき声に耳を傾けて」と訴えた最中に、穴見氏は「いいかげんにしろ」と暴言を浴びせた。

 そもそも参考人招致は憲法が定める国政調査権の一つで、国会が専門家や関係者の意見に耳を傾ける機会である。長谷川さんを招きながら「いいかげんにしろ」とは非礼極まりない。野党議員は「参考人へのやじは前例がない」と批判する。この問題をどう扱うかは、国会の権威に関わる問題である。

 穴見氏の資質だけの問題ではない要素はまだある。

 健康増進法の改正案は、飲食店の屋内を原則禁煙としているが、例外によって既存店の55%で喫煙を認めている。自民党内で反対が強く、原案より大幅に後退した。規制が緩くなり、骨抜きにされることへの懸念がある。

 日本禁煙学会の作田学理事長は「たばこ業界から献金を受けたり利害関係があったりして、国民の方を向いていない議員が多いことが改めて明らかになった」と指摘する。

 穴見氏はファミリーレストランを展開する「ジョイフル」の取締役相談役でもある。改正案ではジョイフルのような大手チェーンは全面禁煙だ。暴言の背景に経営上の利害があったとすれば、謝罪文にある「勘違い」では済まされない。

 自民党の大西英男衆院議員が昨年5月、対策を訴えた同僚議員に「(がん患者は)働かなければいいんだよ」と発言し、謝罪した経緯もある。今の国会には暴言がまかり通る空気があるようだ。公正な審議を損ねる病巣といえる。

 騒動以降、穴見氏は公の場に姿を見せていない。選良としてあるまじき態度だ。逃げ隠れせず公の場で説明し、長谷川さんをはじめ関係者に直接謝罪すべきだ。

 一方の国会は今回、口頭で厳重注意しただけである。生ぬるい。この程度で済ませるなら暴言は決してなくならない。国会全体の問題として重く受け止め、穴見氏を厳しく処分すべきだ。

 

問題多い議場の華(2018年6月26日配信『山陰中央新報』−「明窓」)

 

 火事とけんかは江戸の華。その火事現場で見られるやじ馬から転じた「やじ」は、議場の華と称される。無責任に騒ぎ立てるだけ。本来は聞こえが悪い蔑(さげす)みの言葉が、それでも議会で持ち上げられてきたのは、やじに思わずニヤリとするような機知に富んだ内容が多かったからだろう

▼最近の国会でのやじは眉をひそめるかのような不適切な発言だらけ。沖縄での米軍のヘリコプター不時着をめぐって国会で「それで何人死んだんだ」とやじった当時の内閣府副大臣が引責辞任したのは1月のこと

▼やじの中身どころか、今度は議員間で飛び交うはずのやじが参考人に向けられる異例の事態が起きた。受動喫煙対策の強化を審議していた衆院委員会で、答弁したがん患者団体の代表に、質問者ではない自民党議員が議員席から「いいかげんにしろ」とやじを飛ばした

▼2度にわたってというから、ついうっかりではなく「確信犯」だろう。国会審議に協力しようと、体調がすぐれない中をおして出席したがん患者の思いを踏みにじる行為。議員として資質が問われる

▼見境がないといえば、やじを発する側にも前代未聞のケースがあった。首相秘書官が首相に質問する野党議員にやじを飛ばしたのは4月。省庁から出向する秘書官は国会では首相答弁を手助けする黒子役で、明らかに役割を逸脱している

▼政治の劣化や政権のたがの緩みばかりが感じられる国会のやじ騒動。言論の府をこれ以上おとしめたくないなら、議場の華は当面封印したほうがいい。

 

参考人へのやじ 厳重注意では済まされぬ(2018年6月26日配信『西日本新聞』−「社説」)

 

 国会が自ら招いた参考人にまで無神経なやじを飛ばすとは−。あきれてものが言えない。

 異論を遮ろうとしたのか。そもそも国民の意見に耳を傾ける意思がないのなら、議員バッジを着ける資格が疑われる。

 やじの主は自民党の穴見陽一衆院議員(大分1区)である。受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を審議する衆院厚生労働委員会で、日本肺がん患者連絡会代表の長谷川一男さんに「いいかげんにしろ」と耳を疑うような言葉を飛ばしていた。

 長谷川さんはステージ4の肺がん患者で、自らが使うコルセットを示しながら受動喫煙の実態について語った。なのに、患者の立場をいたわるどころか、参考人に対する敬意も感じられない暴言に等しいやじだった。

 厚労委員長は穴見氏を厳重注意した。穴見氏も「不快な思いを与えたとすれば、心からの反省とともに深くおわびする」などと、自身の公式サイト上で謝罪した。

 それで済むのか。穴見氏は「喫煙者を必要以上に差別すべきではないとの思いでつぶやいた」と釈明したが、長谷川さんは喫煙者の立場にも一定の理解を示しながら発言していた。

 長谷川さんは「招かれて行った場でやじを浴びせられて、悲しく残念な気持ちになった」と語ったという。当然だろう。

 穴見氏には登院停止など厳しい懲罰が必要ではないか。

 国会で飛び交う機知に富んだやじは「議会の華」とも呼ばれてきた。それも今は昔である。このところ国会では低レベルで直接的なやじが目立つ。

 沖縄県で続いた米軍ヘリコプター不時着について、衆院本会議で内閣府副大臣だった松本文明氏は「それで何人死んだんだ」とやじり、辞任に追い込まれたのは記憶に新しい。

 受動喫煙対策を巡っては、大西英男衆院議員が自民党の会合で「(がん患者は)働かなくていい」とのやじを飛ばした。

 穴見氏や大西氏ら2012年初当選組はトラブルが多く「魔の3回生」とも呼ばれる。しかし、それだけが非常識なやじを生む理由ではあるまい。

 4月には経済産業省出身の首相秘書官が野党議員にやじを飛ばして、一時審議が止まった。やじではないが、長谷川さんには「死ね」など心ない嫌がらせメールが届いているという。

 そもそも安倍晋三首相や麻生太郎財務相が閣僚席からやじを飛ばす。そうした姿勢が若手議員や官僚らの非常識な言動を助長していないか。自らが国会の権威と社会のモラルをおとしめていることに気づくべきだ。首相を含めて国会議員にこそ「いいかげんにしろ」と言いたい。

 

[参考人にやじ] 議員としての見識疑う(2018年6月24日配信『南日本日本新聞』−「社説」)

 

 あまりに心ない言葉であり、見識を疑う。国会議員としての資質が問われていることを厳しく受け止めるべきだ。

 受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の審議中、参考人として発言していたがん患者に、自民党の穴見陽一氏が「いいかげんにしろ」などとやじを飛ばしていたことが分かった。

 患者団体からの反発を受けて、穴見氏は「不快な思いを与えたとすれば、心からの反省とともに深くおわびする」と謝罪し、衆院厚生労働委員会委員長が厳重注意した。だが、それで十分なのか。

 受動喫煙対策を巡っては、昨年5月の自民党会合でも、大西英男衆院議員が「(がん患者は)働かなくていい」という趣旨のやじを飛ばし、党東京都連副会長を辞任した。

 自民党内には、委員会が招いた参考人への敬意も、受動喫煙対策の重要性への認識も欠いている議員がいると言わざるを得ない。党として厳正に対処するべきだ。

 やじは、参考人の日本肺がん患者連絡会代表の長谷川一男さんが屋外の喫煙場所のあり方について「なるべく吸ってほしくないが、喫煙者にとって吸う場所がないと困るという気持ちも分かる」と述べていた際に起きた。

 穴見氏は「喫煙者を必要以上に差別すべきではないという思いでつぶやいた」と釈明する。しかし、長谷川さんの発言には、喫煙者への配慮が感じられる。穴見氏が参考人の意見に真摯(しんし)に耳を傾けていたとは思えない。

 衆院を通過し、参院に送られた健康増進法改正案では、客席面積100平方メートル以下の既存飲食店は例外的に喫煙を認めた。

 一方、穴見氏は面積にかかわらず禁煙となる大手ファミリーレストランチェーンの代表取締役相談役である。規制にかかる当事者が発したやじであることは特に見過ごせない。

 法案は今国会で成立する見込みだ。学校や病院、行政機関の屋内を完全禁煙とする。他方、100平方メートル以下の既存飲食店で喫煙が認められれば、飲食店の55%が例外となるといわれる。大きな抜け穴であり「ざる法」と呼ばれても仕方あるまい。

 飲食業界や一部の自民党関係者は「吸う権利を認めるべきだ」と主張する。だが、受動喫煙対策は「吸う権利」を否定するものではなく、非喫煙者の「吸わない権利」を守るためのものである。

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、実効性のある内容にできるのか。参院での丁寧な議論が求められる。

 

参考人にやじ 言論の府をおとしめた(2018年6月23日配信『朝日新聞』−「社説」)

 

 法案審議の参考にするために招いた民間人に対し、国会議員が心ない暴言を吐く。言論の府を自らおとしめるヤジに驚きあきれ、憤りを感じる。

 受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案を審議中の衆院厚生労働委員会で先週、自民党の穴見陽一衆院議員(大分1区)が、参考人として出席した肺がん患者に向け、「いい加減にしろ」とヤジを飛ばしていたことがわかった。

 自民党内では昨年5月、大西英男衆院議員が、対策を訴えた同僚議員に「(がん患者は)働かなければいいんだよ」と発言し、謝罪している。

 改正案は、飲食店の屋内を原則禁煙としたが、例外規定により、既存店の55%で喫煙が認められる。原案からの大幅な後退は、自民党内の反対に押されてのことだ。穴見氏のヤジは、党内になお根強い異論を反映したものだろう。

 批判の高まりを受け、穴見氏は謝罪コメントを発表した。発言を妨害する意図はなく「喫煙者を必要以上に差別すべきではないという想(おも)いで呟(つぶや)いた」というが、参考人が「喫煙者の方がどこも吸うところがないじゃないかとおっしゃるのもすごくよくわかる」と配慮を示した矢先のヤジだった。とってつけた言い訳と言わざるを得ない。

 穴見氏はファミリーレストラン運営会社の役員を務めており、規制がかかる当事者でもある。対策の強化を求める者への恫喝(どうかつ)まがいの発言を「呟き」で済ますわけにはいかない。

 自らは喫煙歴がなく、受動喫煙でステージ4の肺がん患者となったという参考人は、修正すべき法案の問題点を淡々と指摘した。目の前の相手に対する誠実さも想像力もうかがえない穴見氏には、議員としての資質を疑わざるをえない。

 自民党の高鳥修一・厚労委員長は、穴見氏に口頭で厳重注意した。しかし、国会の品位を汚した、参考人への侮辱に対する対応としては甘過ぎないか。まずは自民党自身が、党内で厳正な処分を検討すべきだ。

 安倍政権下での国会審議では、首相本人や麻生財務相らが、答弁席から不規則発言することがしばしばある。黒衣であるはずの首相秘書官が、野党党首の質問に対しヤジを浴びせたこともあった。

 異論に耳を傾けず、批判に対し、敵意もあらわに言い返す。そんな政権の姿勢が、国会論戦の荒廃を助長しているのではないか。軽んじられているのは、結局、私たち国民であることを忘れてはなるまい。

 

参考人への非常識なやじ 品位なき議員には懲罰を(2018年6月23日配信『毎日新聞』−「社説」)

 

 あるまじき言動だ。あまりに非常識で国会議員としての資質を疑わざるをえない。

 自民党の穴見陽一衆院議員が、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案について審議した衆院厚生労働委員会で、参考人として受動喫煙の問題を訴えた肺がん患者に、「いいかげんにしろ」とやじを飛ばした。

 参考人の長谷川一男さんはステージ4の重度の肺がん患者だ。優れない体調にもかかわらず、弱くなった背骨を守るコルセットを背中に当て、通勤ラッシュの中、委員会の求めに応じて出席した。

 そんな長谷川さんに対する耳を疑う発言である。

 やじは、屋外での喫煙規制に関する質問に長谷川さんが「なるべく吸ってほしくない」としつつ、喫煙者にも配慮し「屋外喫煙所も一つの方法だ」と言ったときだった。

 長谷川さんはたばこを吸わないが、長く受動喫煙の環境下にあったという。がん患者に非情とも言える仕打ちだが、穴見議員が地元の大分がん研究振興財団の理事の役職にいたというのだから、あきれる。

 本来ならがん患者を守るために見識を示す立場のはずだ。この財団が「考えられない発言で申し訳ない」と陳謝したのは当然だろう。

 穴見議員はファミリーレストランの経営に携わっている。改正案では大手外食チェーンは全面禁煙となる。経営上の利害が背景にあったのではと勘ぐられても仕方がない。

 そもそも長谷川さんを国会に招いたのは委員会である。参考人招致は憲法が定める国政調査権の一つで、国会が専門家や関係者の意見を法案審議に反映させるねらいがある。

 穴見議員は「不快な思いを与えたとすれば、心からの反省と共に深くおわびする」とのコメントを出した。人ごとのようで誠意が感じられないにもかかわらず、高鳥修一委員長は口頭で厳重注意しただけだ。

 招いたゲストに威圧的なことばを浴びせた穴見議員の非礼は委員会の権威も汚した。その程度の処分で済まされるなら国会の権威にもかかわる。懲罰に値する事案だ。

 衆院規則には「議院の品位を傷つけ、その情状が特に重い者」の除名など懲罰規定がある。国会は穴見議員の責任を見過ごすべきではない。

 

(2018年6月23日配信『日経新聞』―「春秋」)

 

トランプ米大統領のふるまいを支えているのは、米国社会の「PC疲れ」だとよく言われる。ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)――つまり公の場で、人種、宗教、性別などの差別を排する概念だ。それを窮屈に思う人々を、トランプ氏は取り込んだという。

▼ことは米国ばかりの問題ではあるまい。職場で地域で、多様性を重んじる動きは日本でも盛んになってきた。しかし昔はよかったといらだつ声を、ちまたではしばしば聞く。タテマエはうんざりだと、なじる意見も珍しくはない。自民党の穴見陽一衆院議員はこともあろうに国会で、そんな「ホンネ」を口に出したようだ。

▼受動喫煙対策をめぐって衆院厚生労働委員会に招かれた参考人への、ヤジというより、耳を疑う暴言である。肺がん患者である長谷川一男さんが、自分が使っているコルセットを見せて説明したり、屋外喫煙について話したりしていた。そこへ穴見議員は「いい加減にしろ」。政治家の劣化、ここに極まると言うほかない。

▼「喫煙者を必要以上に差別すべきではないという思いでつぶやいた」。穴見議員は書面でコメントして謝罪に及んだが、ネットには「よく言った」の書き込みさえあるから気がめいる。がん患者との共生など、想像もつかないのかもしれない。PCが米国みたいに徹底してもいないのに、日本はもうPC疲れなのだろうか。

 

「いいかげんにしろ」発言(2018年6月23日配信『中国新聞』−「天風録」)

 

 北京を訪れた東南アジアの王族が、帰りの飛行機に乗り込むやいなや、中国の党幹部らは引き揚げてしまった。「どんな国のお客だろうと、飛び去るまで見送るのが礼儀だ」。そう周恩来は叱り付けたそうだ

▲もてなしの手本といえる逸話である。ところが先週、参考人という「お客」に信じ難い言葉が投げ付けられた。受動喫煙を防ぐ法改正案を議論する衆院の委員会に、肺がん患者が招かれて意見を述べていた際、やじが飛ぶ。「いいかげんにしろ」と

▲発したのは自民党の3回生議員。昨年、秘書への暴言や不適切な交友関係などで辞職に追い込まれた面々の同期。自らも愛煙家というから、禁煙の輪の広がりに追い詰められ、いらだっていたに違いない

▲この議員は父親が創業したファミレスに、相談役として自らも経営陣に名を連ねている。法改正案が通れば、レストランもたばこを全面禁止にせざるを得なくなる。愛煙家が遠ざかったり、改装費がかさんだりすることを、心配していたのだろうか

▲周恩来ほどの姿勢を望むのは無理かもしれない。とはいえ政治家として、人としての見識を疑わざるを得ない。まずは自身のレストランで接客から学び直しては。

 

馬は人の表情と声から感情を読み取れる(2018年6月23日配信『西日本新聞』−「春秋」)

 

 馬は人の表情と声から感情を読み取れると、きのうの本紙朝刊(福岡県内版)に。北大大学院の研究チームが発表した

▼同じ日の紙面に馬に笑われそうな記事も。受動喫煙対策法案を審議する衆院の委員会で、参考人として発言していた肺がん患者に「いいかげんにしろ」とやじが飛んだ。声の主は自民党の穴見陽一議員(大分1区)

▼話を聞かせて、と来てもらった参考人に失礼極まりない。何より、重いがんと闘っている人が切実な思いを訴えているのに、「黙れ」と言わんばかりの暴言を投げるとは。どれほど傷ついたろう。国民の代表なのに、その痛みも読み取れないのか

▼穴見氏はホームページに「お詫(わ)び」を掲載。「ヤジを飛ばしたという報道があった」「関係者に不快な思いを与えたとすれば、お詫び申し上げる」「喫煙者を必要以上に差別すべきではないとの思いでつぶやいた」

▼やじの事実を直接は認めず、仮に誰かを不快にさせたのなら悪かった、やじではなく「つぶやき」だった、と。心から反省しているとは思えない。まず相手に頭を下げ、公の場で非を認めて謝罪するのが筋だろう

 

下劣なやじ(2018年6月23日配信『佐賀新聞』−「有明抄」)

 

 「招かれて行った場でやじを浴びせられ、悲しく残念な気持ちになった」。心ない言葉が人を大きく傷つける。受動喫煙対策を審議する場で、自民党の穴見陽一衆院議員から「いいかげんにしろ」とやじを飛ばされた長谷川一男さん。その無念はいかばかりだろう

◆長谷川さんはステージ4の肺がん患者。体調が優れない中、厚生労働委員会の要請に応じて出席していた。「声なき声に耳を傾けてほしい」と受動喫煙の被害実態について発言中、恫喝(どうかつ)ともとれるやじを受けた

◆こんな下劣を放置してはいけない。穴見議員は長谷川さんに直接会って謝罪すべきではないか。ところが、「不快な思いを与えたとすれば、おわびする」と逃げ口上のようなコメントを出した上に、やじは「つぶやいた」と釈明している。長谷川さんが受けた苦痛との落差

◆こうした罪深いやじが、同じ政党の議員から多いと感じるのは気のせいではないだろう。受動喫煙を巡り「(がん患者は)働かなくていい」、沖縄での米軍機不時着では「それで何人死んだんだ」。数の力を背景にしたおごりはないか

◆そもそも政治家同士の論戦ではなく、一般人を呼んでおいて「いいかげんにしろ」とは。これが有権者の選んだ選良なのか。人を傷つけ、うやむやにして雲隠れ。同じようなことを何度、見せられてきたことか。

 

(2018年6月23日配信『熊本日日新聞』−「新生面」)

 

昔のテレビドラマは、刑事ものを筆頭にたばこを吸う場面がつきものだった。最近はめったに目にしない気がするが、高齢者ドラマとして話題になった昨年の「やすらぎの郷[さと]」は、ストーリーに関係なくやたらと喫煙シーンがあった

▼脚本を書いた倉本聡さんは大の愛煙家として知られる。肩身が狭くなるばかりの喫煙者の思いを代弁したかったのかもしれない。ただ、以前から喫煙シーンを削るよう求められたら筆を折ると公言していたようだ。今回は作品自体が好評だったためかさほど問題視されなかったが、批判は覚悟の上だったはず

▼そんな一本筋の通った倉本さんを引き合いに出すのも気が引けるような、喫煙者であろうとなかろうと許せない発言があった。自民党の穴見陽一衆院議員だ。受動喫煙対策を強化する法案を審議していた国会で、参考人として発言していたがん患者に「いいかげんにしろ」とやじを飛ばした

▼喫煙者として言い分があるなら堂々と論陣を張ればいい。体調が優れない中、求めに応じて国会に出てきた参考人にやじを飛ばすとは、議員の資格だけでなく人間としてのモラルを疑いたくなる

▼さらに驚くのは、穴見氏が大分がん研究振興財団理事だったということだ。財団は目的の一つに「がん予防・治療の啓発活動」を掲げる。人一倍がん患者へ思いをはせる立場のはずだ

▼本人は「喫煙者を必要以上に差別すべきではないという思いでつぶやいた」とコメントしているが、喫煙者にとってもはた迷惑極まる話だろう。

 

謝罪会見ほとんどなし魔の3回生(2018年6月1日配信『日刊スポーツ』―「政界地獄耳」)

 

★自民党総裁選挙が9月20日で固まりそうだ。党内は安倍3選支持が広がりを見せる。最大の理由は短期間に総選挙を重ね、いわゆる安倍チルドレンを大量増産したからだ。案の定、人数は多いが大量生産の弊害も多く魔の3回生という言葉で国民はピンとくる。安倍さんのおかけで代議士になった彼らは失言・暴言なんのその、安倍3選の実動部隊だ。

★最初の騒動は不倫。宮崎謙介が議員辞職したほか、金銭トラブルで武藤貴也が引退。経産政務官・中川俊直は不倫で出馬辞退、秘書への暴言や暴力などで豊田真由子が離党。元財務相・中川昭一夫人の中川郁子は同僚議員の門博文との不倫が報じられ、落選。門は3選を果たす。内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官・務台俊介は被災地視察で、現場の水たまりをおんぶされて渡っていたとし謝罪。その後自身のパーティーで「『長靴事件』があったものですから、その後、各省で政府が持つ長靴がえらい整備されたと聞いている。たぶん、長靴業界はこれでだいぶもうかったのではないか」と発言。翌日、政務官辞任。

★まだまだある。橋本英教は中国人女性との関係が報じられ単独比例で出馬するも落選。大西英男は失言キングといえる。「まず自分が子どもを産まないとダメ」「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番」「(がんの)患者側は店や仕事場を選べない」など同僚議員の発言に「働かなければいいんだよ」。いずれも与党幹部から厳しく叱責(しっせき)されたが持論を展開する。池田佳隆は前文科事務次官・前川喜平の講演内容を文科省に照会して騒動に。加藤寛治は「必ず3人以上の子供を産み育てていただきたい」と発言、陳謝。国場幸之助は地元で泥酔、一般人ともみあいになり傷害で送検。そして「いいかげんにしろ」の穴見陽一に続く。このうち会見で陳謝した者はほとんどおらず、言い分だけ言う者、ホームページで謝罪だけ多数。へのかっぱか。

 

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