自民党が「失言防止マニュアル」配布 “苦肉の策”に党内からも「レベル低い」(2019年5月15日放送『Live News it!』

 

 

論説関連

 

 

『失言』や『誤解』を防ぐには」と題された文書。


これまで、たびたび“失言問題”に揺れてきた自民党が作った、いわば“失言防止マニュアル”だ。


5月、所属議員らに配られた。 

 

自民党の“失言防止マニュアル”には・・・

 

マニュアルには、過去の失言を念頭に、注意事項が具体的に記されている。

発言は『切り取られる』ことを意識する

タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意

 

https://www.fnn.jp/image/program/00045884HDK?n=12&s=nc

 

「セクハラ罪っていう罪はない」麻生財務相発言に批判

例えば2018年、事務次官による“セクハラ疑惑”で財務省が大揺れとなった際の麻生財務大臣の発言。

 
セクハラ罪っていう罪はないですよね

開き直りともとれるこの発言が一斉に報じられ、批判が殺到した。

 

https://www.fnn.jp/image/program/00045884HDK?n=13&s=nc

 

身内や酒席で盛り上がるような話は要注意

 

さらにマニュアルには、4月に辞任した2人に通じる指摘もある。

身内の会合や酒席で盛り上がるような『トークテーマ』には要注意

 

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桜田義孝議員は、自民党議員のパーティで、震災の被災者の気持ちを逆なでする“失言”をして、五輪相を辞任。

 

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塚田一郎議員は、麻生財務相の地元・福岡県で開かれた身内の会合で、道路建設を巡る“忖度”発言をして、国交副大臣を辞任した。

 

選挙惨敗の“悪夢”を再現したくない“苦肉の策”?

自民党がこの失言防止の“虎の巻”を作成した背景には、夏に控える参院選がある。
 
第一次安倍政権では、2007年の参院選を前に閣僚の失言などが相次いで“辞任ドミノ”が起き、選挙に惨敗した。

 

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あれから12年…

14日に行われた麻生派のパーティで、安倍首相は「そして、とうとう我々は政権を失い、悪夢のような民主党政権が誕生した」と語った。

 

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“悪夢の再現”を阻止したい自民党の“苦肉の策”が、“失言防止マニュアル”だったのだ。

 

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自民党内からも「レベル低いよね」の声も・・・

自民党内では「よく見ると、とても勉強になる」と評価する意見がある一方、閣僚経験者の一人は「レベル低いよね。政治家の発言は統制するものではないよ」と語った。

 

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街の人に今回の“失言防止マニュアル”について聞いてみると…
「リスクを避けるためには、作らざるを得ないと思う」
「議員の質の低下を感じる」
「わざわざマニュアルにしないといけないということ自体が、中学生くらいのレベルですよね」
などといった声が聞かれた。

 

 

色に出でにけり(2019年6月5日配信『北海道新聞』ー「卓上四季」)

 

 平安時代の三十六歌仙の一人、平兼盛に、百人一首にも選ばれた有名な歌がある。「忍ぶれど色に出(い)でにけりわが恋は物や思ふと人の問ふまで」

▼隠していたが、とうとう顔に出てしまったよ、私の恋心は。思い悩んでいるのですかと、尋ねられるほどに―。気持ちを隠しきれないのは、いつの時代も変わらないようだ。それが恋心でなくても

▼「お子さん、お孫さんには子どもを最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」。自民党の桜田義孝・前五輪相が、国会議員のパーティーでこう述べ、批判を浴びている

▼自民党は先月、失言防止マニュアルを配布した。歴史認識やLGBTなどについては特に気をつけるように、との内容だ。それでも失言が止まらないのは、これが本人の持論だからか。本音は隠しきれないのだろう

▼桜田氏は自らの失言で五輪相を辞任したばかり。そもそも結婚や出産は各自が決めることだし、何よりも少子化は、子育ての環境が十分に整備されていないことも一因だ。それを何とかするのが国会議員の仕事だとの認識は、どうやらこのご仁はお持ちでないらしい

▼桜田氏だけに限らない。議員の失言や暴言、妄言は後を絶たない。いま必要なのはマニュアルより、言っていいことと悪いことの分別を身につけることではないか。それをしなければ、どれだけうわべを取り繕っても、本音はいつか「色に出る」。

 

戦後日本型失言(2019年6月3日配信『信濃毎日新聞』―「斜面」)

 

政治家が失言で辞任する。でも、どうも恥じている様子がないのはどうしてだろう。先日亡くなった文芸評論家の加藤典洋さんが、20年前の著書「日本の無思想」で「タテマエとホンネ」を考えた時の問いだ。戦後日本型失言と呼んだ

   ◆

最初は1968年の倉石忠雄農相(衆院旧長野1区)だったとみる。「軍艦や大砲を持たねばだめだ。憲法は他力本願だ」などと発言し、野党が反発、国会が空転した。辞任に至ると「私の理想は理想として、政局を正常に戻すため」との談話を出した

   ◆

迷惑をかけたからタテマエ上は陳謝も辞任もするが、自分の信念(ホンネ)は無傷―。こうした考え方により、恥じない失言が生まれる。さらに言えば、内容の賛否は別にして、戦後日本は「発言はそれなりの理由がある」と了解をしているのだ、と加藤さんの鋭利な論考は続く

   ◆ 

ここでいう戦後日本型の失言と別次元の軽口が政治家から飛び出す時代になった。道路整備で首相らの意向を「忖度(そんたく)します」。同僚議員が「復興以上に大事」。北方領土を取り戻すには「戦争で」。失言とすら呼びたくない軽薄な言葉に、気が重くなる

   ◆

参院選を前に自民党が「失言防止マニュアル」を国会議員に配布したという。老婆心ながら皆さん、失言以前に、暴言や虚言の予防は大丈夫でしょうか。辞任のたび神妙な顔つきで「任命責任は私にあります」と繰り返し、後任者を決めるだけのタテマエには、もうウンザリとしています。

 

落ちた国会議員(2019年6月2日配信『中国新聞』―「天風録」)

 

 休日出番のきのう、同僚の机の電話が鳴った。取ると女性の声である。「突然、申し訳ありません。こちらは…」。こっちの返事も待たず、しゃべり続ける。人工知能の声らしい。参院選についての世論調査だった

▲任期満了まで2カ月を切っている。土日の2日間で有権者の胸中を測るのだろう。永田町では、衆院の「解散風」も気掛かりのようだ。衆参ダブル選は是か非か―。民意の風向きを知りたいのは与野党とも変わるまい

▲折も折とて、投票の意味合いは高まっている。国会議員の体たらくをこのところ見せつけられているからだ。「資質を欠く」くらいの形容では済まず、見るに堪えない

▲戦争による北方領土の奪還を口にして、日本維新の会から追われた衆院議員。「子どもを最低3人くらい産むように」が持論の前五輪相。「3人以上産んで」は自民党の専売特許なのか、昨年も衆院議員が述べ、撤回した。今回は謝罪も撤回もなし

▲自民党では先月、参院選対策として失言防止マニュアルを議員に配ったところだった。当の前五輪相らが失言で内閣を去った記憶もほやほやのうちに作ったと聞く。次はマニュアルをかみくだく虎の巻が必要かもしれない。

 

(2019年6月2日配信『徳島新聞』―「鳴潮」)

 

 「言語道断」という言葉をよく耳にする。永田町の先生方の失言が絶えないからだろう。「政治家は言葉が命」と言われるくらいだから、そう批判されても仕方あるまい

 そんな中、自民党が所属議員らに失言防止マニュアルを配った。要はマスコミ対策で、「発言は切り取られる」「タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意」と警鐘を鳴らし、歴史認識やジェンダー(性差)に関する発言には特に気を付けるよう指南している

 こんな文書を作らなくてはならないのは、言っていいこと、悪いことさえ分からない議員が多い証左だ。不見識をさらすのが恥ずかしいのか、文書の隅に「配布厳禁・内部資料」と記してある

 昔の政治家にも失言はあったが、言葉をもっと大切にした。雄弁家で知られた三木武夫元首相は演説にこだわり、文章を練りに練った。<まず書く。言葉を選ぶ。そこから演説は始まるというのが三木の持論だった>(岩見隆夫著『演説力』)

 大平正芳元首相の話は「アー、ウー」が口癖で聞きづらいが、それを除くと論理的で無駄のない文章になっていた。彼らにとって、今の言葉の軽さは「言語道断」だろう

 元は仏教語の「言語道断」は、言葉に尽くせないほど素晴らしいという意味で使われた。政治家の劣化とともに、言葉の意味も変わってしまったか。

 

国会議員の劣化 政党の責任が問われる(2019年5月23日配信『北海道新聞』―「社説」)

 

 国会には、国民の代表にふさわしい人材が本当に集まっているのか、疑問を抱かざるを得ない。

 戦争による北方領土奪還に言及し、日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員をはじめ、国会議員の社会常識に欠けるような言動が止まらない。

 政党本位の選挙を目指すとした衆院への小選挙区制導入に伴い、いわゆる「風」に乗って若手議員が大量当選する傾向が強まっていることと無縁ではなかろう。

 議員の劣化は政治に対する国民の信頼低下を招き、議会制民主主義を危うくしかねない。

 議員一人一人が研さんを積むべきなのは当然だが、問われるのは選挙で公認した政党の責任だ。

 丸山氏は2012年、維新ブームに乗って議席を獲得し、当選3回を数える。

 当時、政権を奪還した自民党にも大量の新人議員が生まれた。しかし、その後に金銭トラブルや女性問題などで離党したり、議員辞職したりする例が後を絶たない。

 先月は田畑毅・元衆院議員が、議員辞職後に準強制性交などの容疑で書類送検された。

 17年に秘書への暴力・暴言が報道された豊田真由子氏、16年に内閣府政務官として長靴を履かずに被災地を視察し、職員におんぶされた務台俊介氏も12年当選組だ。

 政治家の資質どころか、社会人としての規範すら身に付けていないような人物が後を絶たない。

 政党は選挙で、候補者の人間性を見極めず、議席獲得のコマのように公認していないだろうか。

 安倍1強政権下で数を頼みにした国会運営が続き、政策論議によって若手議員が鍛えられる機会が奪われていないかも気がかりだ。

 ただ、問題発言は若手議員に限ったことではない。

 「忖度(そんたく)」発言、「復興以上に大事な議員」発言でそれぞれ国土交通副大臣、五輪相を辞任した塚田一郎、桜田義孝両氏は、一定の経験を積んだ中堅・ベテランだ。

 こうした事態を受け自民党は、「発言は切り取られる」「強めのワードに注意」などと書かれた、失言防止のマニュアルのような文書を所属議員に配布した。

 不見識な言葉がなぜ発せられるのかという問題の本質に目を向けずに、小手先の対応を取るだけでは何の解決にもなるまい。

 議員を国会に送り出すのは国民だ。選挙期間中のみならず、国政を託すに足る人物なのかどうか、有権者としても日ごろから言動に目を凝らしてゆきたい。

 

(2019年5月23日配信『デイリー東北』―「天鐘」)

 

アメリカのリンカーン大統領が奴隷解放宣言をしてから100年目の1963年。黒人の差別撤廃を求めて20万〜30万人が参加したワシントン大行進で、かの有名な演説は生まれた。「私には夢がある」

▼マーティン・ルーサー・キング・ジュニアはキリスト教牧師の黒人指導者。闘争において非暴力主義を貫き、公民権運動を率いた。64年にノーベル平和賞。68年に凶弾に倒れ、39歳の若さで逝く

▼目指すべき社会像、決意と自信を示した演説は一部がアドリブだったという。「夢を聞かせて!」という呼び掛けに応じ、用意していた原稿を脇に置いて語り始めた。即興であるが故に、揺るぎない信念が投影された。だからこそ民衆は高揚したのだろう

▼政治家にとって「言葉は命」とされる。その劣化が著しい。閣僚が辞任に追い込まれるなど舌禍が相次いでいる事態を受け、自民党が“失言防止マニュアル”を作成したという

▼「発言は切り取られる」「強めのワードに注意」「危ない表現を確認」―。留意点や演説のポイントなどを手取り足取り指南している。国民が憤り、憂慮するのは数々の言い訳に見え隠れする本音、政治家としての資質である。マニュアルから問題意識は感じられない

▼うわべでなく、飾りでもなく、説得力のある言葉がほしい。衆参同日選の観測が流れている。果たして夏の決戦で心に響く演説は聴けるのだろうか。

 

 

 

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