「安倍・麻生道路」

 

塚田一郎・国交副大臣、「安倍首相と麻生氏を忖度」発言

 

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塚田国交副大臣、辞任

 

 

 

  

 

自民党が推薦する福岡県知事選の候補者の集会で応援演説する塚田一郎・国土交通副大臣=1日、北九州市小倉北区

 

下関北九州道路は安倍晋三首相の地元の下関市と麻生太郎副総理兼財務相の勢力圏にある北九州市を結ぶ(2019年4月2日配信『朝日新聞』)

 

(2019年4月4日配信『毎日新聞』)

 

塚田 一郎1963年新潟県生まれ。自由民主党所属の参議院議員。麻生派。中央大学法学部卒業後、1990年米国ボストン大学大学院国際関係学科修了。同年年4月さくら銀行(現三井住友銀行)に入行。2000〜02年まで麻生氏の秘書を務め、07年、新潟選挙区から参院議員に初当選。当選2回。内閣府副大臣・国土交通副大臣・復興副大臣。参議院財政金融委員長、参議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員長等を務めた。現在、自民党新潟県連会長。 郵政大臣や新潟県知事、自由民主党政務調査会長を務めた元衆議院議員の塚田十一郎の5男。元衆議院議員の塚田徹は腹違いの兄。

 

(2019年3月6日配信『産経新聞』)

 

福岡県知事選(2019年3月21日告示、4月7日投開票)麻生太郎副総理兼財務相率いる自民党県連の主流派に、党内の「反麻生」勢力が対抗する分裂選挙。麻生氏は県政の発展が望めないとして過去に支援した小川洋知事に見切りをつけ、元厚生労働官僚の武内和久氏を擁立して党推薦を得た。麻生氏と敵対する大物OBが小川氏に付き、影響下にある現職の国会議員も引き入れている。

 3選を目指す小川氏の支援組織「福岡県民の会」は2日、福岡市内で設立大会を開き、2000人以上が詰めかけた。自民党からは麻生氏と対立している武田良太、鳩山二郎両氏ら二階派の衆院議員3人が出席した。

自主投票の方針の公明党も、支持母体である創価学会の山本武総九州長が「県民の会」世話人に就き、事実上の小川氏支持で動いた。

なお、4月の統一地方選では福井、島根、徳島、福岡の4県の知事選で、自民党組織が割れる分裂選挙となった。

 

 

2019年4月5日配信『朝日新聞』 2019年4月5日配信『東京新聞』−「夕刊」

 

https://cdn.mainichi.jp/vol1/2019/04/11/20190411k0000m010160000p/9.jpg?1

(2019年4月12日配信『毎日新聞』)

 

 

塚田一郎・国土交通副大臣の集会で発言した主な内容は、次の通り。

 

 私は麻生太郎(副総理)命、一筋でやってきた。筋金入りの麻生派です。

 私は新潟県連の会長をやってまして、地元も県議選、市議選(が行われている)。帰って応援しようと思ってたが、かわいい弟分の(自民麻生派の)大家敏志参院議員が小倉に来て激励してくれと。渡世の義理には勝てません。麻生派は渡世の義理だけで動いています。ほとんどやせ我慢の団体。私はやせてませんが。私は夏に参院選があるが、自分の票を削って北九州に参った。

 国交副大臣なので、ちょっとだけ仕事の話を。大家さんが吉田博美・自民参議院幹事長と一緒に、「地元の要望がある」と副大臣室に来た。下関北九州道路(の案件)です。

 これは11年前に凍結されているんです。何とかせにゃならん。下関と北九州ですよ。よく考えてください。下関は誰の地盤ですか。安倍晋三総理です。総理から麻生副総理の地元でもある北九州への道路事業が止まっている。

 吉田幹事長が私の顔を見て、「塚田分かってるな、これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。私、すごく物わかりがいいんです。すぐ忖度(そんたく)します。「分かりました」と。

 そりゃ総理とか副総理がそんなこと言えません。でも私は忖度(そんたく)します。この事業を再スタートするには、いったん国で調査を引き取らせてもらいます、と。今回の新年度の予算で、国で直轄の調査計画に引き上げました。

 別に知事に頼まれたからやったわけじゃないですよ。大家敏志が言ってきた、そして私が忖度した、ということですので。

 おそらく橋を架ける形で調査を進めて、できるだけ早くみなさまのもとに、橋が通るように頑張りたい。

 

 

塚田一郎・国土交通副大臣が2日、福岡県政記者クラブに文書で送ったコメントの要旨は次の通り。

 

 1日に行われた自民推薦候補の応援演説で、「総理とか副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」「これは総理と副総理の地元の事業だよと言われた」「私は物わかりがいい。すぐ忖度する。分かりましたと応じた」と発言しましたが、一連の発言は事実と異なるため撤回し、謝罪申し上げます。

 下関北九州道路については今般、国において事業の必要性などを鑑み、直轄調査を実施することとしたところです。

 

下関北九州道路は関門橋の老朽化などを理由に計画されたが、国は財政悪化から2008年に計画を一旦凍結。17年度から両市の調査への補助金を復活させ、19年度予算に国の調査費約4000万円を盛り込んだ。

 

 

 

忖度疑惑の大家議員、道路巡る陳情「指示や命令ではない」(2019年4月12日配信『読売新聞』)

 

 自民党の大家敏志参院議員(福岡選挙区)は12日、下関北九州道路計画をめぐって吉田博美参院幹事長とともに塚田一郎・国土交通副大臣(当時)への陳情を行ったことについて、「地元の声、自分の思いで、誰かからの指示や命令でやっているものではない」と述べた。国会内で記者団に語った。

 大家氏は昨年12月の集会で陳情について、「安倍首相と麻生副総理の地元なので、2人がやるとぐちゃぐちゃ言われるから吉田氏を引っ張り出した」と発言した。野党は「忖度そんたくではないか」と問題視している。

 

塚田氏「忖度発言」で参院選落選必至 夫人出馬の仰天情報(2019年4月11日配信『日刊ゲンダイ』)

 

塚田一郎参議院議員夫妻

 

「忖度発言」で国交副大臣をクビになった自民党の塚田一郎参院議員(55)は、今年夏に改選を迎える。ところが、7月の参院選への出馬を断念し、代わりに夫人(47)が立候補するという仰天情報が流れている。

「塚田さんは新潟県選出の参院2回生議員です。父親の塚田十一郎氏は衆院議員や参院議員、さらに新潟県知事を務めた地元の大物です。でも、五男の一郎さんは選挙に弱く、2回も落選しています」(地元関係者)

 もともと、新潟は野党が強い地域だ。ただでさえ選挙が弱い塚田氏は、夏の参院選は厳しい戦いを強いられるとみられていた。そこへ「忖度発言」が加わった。

 そこで、本人ではなく夫人の出馬説が取り沙汰されているという。夫人は、元「新潟テレビ21」の女子アナ。早大出身の美人だ。地元での評判もいいという。はたして夫人が出馬するのか。塚田事務所はこう言う。

「奥さんの出馬説が流れているのは知っています。でも、あくまで噂でありジョークです。塚田本人が出馬するのは間違いありません」

 塚田氏が落選必至となったら、直前に候補者の差し替えもあるかも知れない。

 

大家参院議員も「忖度」発言か…下関北九州道路(2019年4月10日配信『読売新聞』)

 

 自民党の大家敏志参院議員(福岡選挙区)が昨年12月9日、北九州市での集会で、下関北九州道路計画について「安倍首相と麻生副総理の地元なので、2人がやるとぐちゃぐちゃ言われるから吉田博美参院幹事長を引っ張り出した」と発言していたことが分かった。

 大家氏は12月20日、吉田氏と共に塚田一郎・国土交通副大臣(当時)に会い、計画について陳情した。塚田氏は首相や麻生氏の意向を「忖度そんたくした」とする発言が問題となった。大家氏の発言も両氏を忖度したものだと受け取られる可能性がある。

 塚田、大家両氏はいずれも麻生派に所属している。

 

塚田氏と自民・吉田氏の面会時メモ、国交省が公開(2019年4月8日配信『朝日新聞』)

 

 関門海峡を結ぶ「下関北九州道路」事業をめぐり、塚田一郎・前国土交通副大臣が、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の意向を「忖度(そんたく)した」と発言した問題で、国交省は8日の衆院国交委員会理事懇談会で、塚田氏と自民党の吉田博美参院幹事長らが面会した際のメモを公開した。

 公開されたのは、昨年12月に国交省副大臣室で塚田氏が吉田氏らと面会した際のやりとりを同省職員がメモにし、関係先に送ったメールの写し。「塚田副大臣への要望対応結果(下関北九州道路)」の件名で31人に送られた。

 記されたメモによると、吉田氏は「大会のあいさつでも、総理・副総理のことには言及しなかった」としたうえで、「はやく国で引き取って、施工に向けて進めて欲しい」と要望。塚田氏は「前向きに検討していきたい」と応じた、とされる。

 また、「マスコミ退席」と記された後には、「総理、副総理と言うと国交省もやりにくいだろう。与党、公明党、野党で協力して進めていく」と吉田氏が発言し、塚田氏が「財務大臣にも要望して頂き感謝」と語った、とのやりとりも残されていた。

 塚田氏は北九州市で1日にあった集会で、吉田氏から「総理と副総理の地元事業なんだよ」と言われたとして「国直轄の調査に引き上げた。私が忖度した」などと発言していた。

 また国交省は8日に開かれた野党ヒアリングで、下関北九州道路の調査を今年度から国直轄にしたのは、道路局長による決裁だったと説明。事前に石井啓一国交相や塚田氏に報告していたと明らかにした。

国交省が公開したメモ

 「下関北九州道路」事業の調査に絡み、塚田一郎・前国土交通副大臣が自民党の吉田博美参院幹事長と面会した際に、国交省職員が作成したメモの内容は以下の通り。

     ◇

各位

本日12/20の吉田博美議員、大家敏志議員による塚田副大臣への要望対応結果(下関北九州道路)について共有します。

吉田氏:参議院議連の会長をさせて頂いている。総理、副総理の地元とは関係なく、中国・九州の経済や後世のため、オールジャパンで必要な道路。大会のあいさつでも、総理・副総理のことには言及しなかった。

吉田氏:無駄な公共事業と言われているうちに公共事業が無駄と思われるようになったが、必要なものは必要。

吉田氏:はやく国で引き取って、施工に向けて進めて欲しい。

塚田氏:地元の調査結果をしっかり受け止め、前向きに検討していきたい。

――マスコミ退席――

同省道路局長:必要性ははっきりしている道路。

吉田氏:総理、副総理と言うと国交省もやりにくいだろう。与党、公明党、野党で協力して進めていく。

塚田氏:財務大臣にも要望して頂き感謝。

吉田氏:今後のことはいつぐらいに対外的に言えるようになるのか。

道路局長:年度末になる。

 

「『総理、副総理』と言うとやりにくいだろう…」国交省が塚田氏の会談記録メール、衆院に提出(2019年4月8日配信『毎日新聞』)

 

 塚田一郎元副国土交通相が下関北九州道路の建設計画に関し、安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相の意向を「忖度(そんたく)した」と発言した問題で、国交省は8日、衆院国交委員会に、昨年12月の塚田氏と吉田博美自民党参院幹事長の会談記録を提出した。

 記録は国交省職員がメールで内容を共有したもの。会談冒頭は報道陣に公開され、吉田氏は「総理、副総理の地元とは関係なく、中国・九州の経済や後世のために必要な道路だ」と言及。報道陣退出後に「『総理、副総理』と言うと国交省もやりにくいだろう。公明党、野党で協力して進める」と発言している。塚田氏は「地元の調査結果を受け止め、前向きに検討していきたい」などと応じた。

 塚田氏は1日の演説では、この際のやりとりについて「吉田幹事長が私の顔を見て『塚田、分かってるな。これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ』『俺が何で来たと思うか』と言うんです」と述べていた。

 

忖度発言、国交省会談記録提出へ 野党合同ヒアリング(2019年4月8日配信『共同通信』)

 

 下関北九州道路の整備で安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相の意向を「忖度した」とする塚田一郎元国土交通副大臣の発言を巡り、野党は8日、2回目の合同ヒアリングを国会内で開いた。国交省は、昨年12月に塚田氏と吉田博美自民党参院幹事長が会談し、道路の要望を受けた際の記録が存在すると明らかにした。内容を確認し速やかに提出するとしている。

 塚田氏は昨年12月20日、副大臣室で吉田氏と会談。同省道路局長と担当課長も同席していた。野党側は「メモがあるはずだ」として、やりとりの公開を要請。2019年度の直轄調査対象に下関北九州道路を選んだ根拠についても説明を求めている。

 

塚田一郎氏、選挙結果に影響「真摯に受け止め反省」 忖度発言(2019年4月8日配信『共同通信』)

 

 道路整備を巡る「忖度(そんたく)」発言で事実上更迭された塚田一郎元国土交通副大臣は8日、自民党の二階俊博幹事長が、発言が一部の統一地方選の結果に不利に働いたとの見方は否定できないとの認識を示したことについて、「真摯(しんし)に受け止め反省したい」と述べた。地元新潟県の自民党県議団らから発言に不快感を示す声が上がっており、経緯などを説明後、新潟市で記者団に答えた。

 塚田氏は今月1日、北九州市で開かれた福岡県知事選の応援集会で、安倍晋三首相の地元の山口県下関市と、麻生太郎副総理兼財務相の地元の福岡県を結ぶ下関北九州道路の国直轄調査に触れ「忖度した」と発言した。

 

「下関北九州道路」建設要望書に安倍首相の名前が(2019年4月8日配信『日刊スポーツ』)

 

塚田一郎前国交副大臣が、安倍晋三首相の地元下関市と、麻生太郎財務相の地元に近い北九州市を結ぶ「下関北九州道路」の整備をめぐり、首相らに「忖度(そんたく)した」と発言した問題に関連し、16年3月に石井啓一国交相に提出された道路建設の早期実現を望む要望書に、首相の名前が要望者の1人として記されていたことが8日、分かった。

首相の名前は、下関や北九州に縁のある議員有志でつくる「関門会」の1人として記載されている。その会が提出に先立つ同年2月24日に、首相を囲んだ懇親会を実施した際、この道路のことが話題にあがり、「関門会の総意として要請活動を行うことになった」としている。首相にも、要請を行うことへの認識があったと受け取れる内容だ。

要望書に「強く要望する」とされた内容としては、<1>下関北九州道路の早期実現を図ること<2>実現に向けて、具体的な検討を進め、調査を実施するとともに、これらに必要な予算な予算を確認すること、としている。

8日に国会内で行われた野党合同ヒアリングでは、「現職の総理が、自分で任命した国交相に地元の公共事業を要望した例が過去にあるのか」と、首相の名前が要望者の1人として記されたことに、出席者から疑問が相次いだ。「普通はやらないはずだ」と指摘された国交省の担当者は、「調べたい」と述べるにとどめた。

首相は4日の参院決算委員会で、共産党の仁比聡平氏にこの文書について問われ、「(首相が)忖度させたのか」と追及された際、「要望書のことは、今拝見するまで知らなかった」とした上で、「首相として陳情する立場にはない」と述べていた。

同道路は地元で「安倍・麻生道路」と呼ばれ、08年に当時の福田政権が財政難から国の調査を凍結。熊本地震後の17年度、調査の補助金が復活し、現在は国の「直轄調査」に引き上げられ、19年度予算に約4000万円が計上された。

塚田氏は今月1日の会合で、「私は忖度します。国直轄の調査に引き上げました」などと、直轄調査への引き上げを自身の手柄であるかのように主張していた。

 

人工島もあった 安倍首相の地元でムダな公共事業が常態化(2019年4月6日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 安倍首相と麻生副総理の地元を結ぶ道路整備計画をめぐり、「忖度発言」をした塚田一郎国交副大臣が5日辞任した。塚田氏は、整備計画について「公正な判断だった」「忖度した事実はない」とすっとぼけたが、とんでもない。安倍首相の地元では、首相の政治力で進んでいく無駄な公共事業が常態化しているのだ。

 塚田氏の命取りになった「下関北九州道路」は、地元では“安倍・麻生道路”と言われている。関門橋とトンネルに続く3本目の関門ルートは必要性に乏しく、凍結されていたが、「整備促進を図る参議院議員の会」会長の吉田博美自民参院幹事長が、昨年12月に塚田氏と面談し、「首相と副総理の地元事業なんだよ」と猛プッシュ。はたして、今年度予算で国直轄調査費として4000万円が計上された。

 塚田氏がどう言い繕おうと、安倍首相と麻生副総理に忖度した利益誘導だ。

実は安倍首相の地元では、よく似た安倍案件がある。「週刊SPA!」(2014年1月28日号)で、ジャーナリストの横田一氏が詳細を報じている。こんな内容だ。

■安倍アイランド

 安倍首相の父・晋太郎時代から推進されてきた人工島「長州出島」は“安倍アイランド”と呼ばれている。「大型船が入港可能な国際港」を掲げ、755億円もかけて造成された。2009年から供用が始まったが、強風な上、既存の下関港の方が使い勝手がよく、期待していた外資のコンテナ船は寄りつかなかった。利用がほとんどない状態なのに、安倍政権は人工島と本州と結ぶ6・8キロの巨大バイパス整備に動き、720億円もの血税が投じられた。

■安倍道路

 安倍家の故郷である山口県長門市を通る「山陰自動車道」(下関市―鳥取市)が“安倍道路”だ。未開通区間(100キロ)は整備に推定4500億円もかかる。沿線人口わずか36万人で、県内にはすでに東西を結ぶ高速道路が2つもあり、渋滞もない。費用対効果が乏しく、建設が見送られてきたが、安倍政権になって急に進み始めた。

 必要性があやしい事業が、なぜか安倍政権で次々に花開いているのだ。横田一氏が言う。

「塚田副大臣の発言は、架空でもなければ、レアなことを言ったわけではありません。普段、起きていることをありのままに話したまでです。安倍首相の地元では、首相の政治力でムダな公共事業が前に進むことは、日常茶飯のことなのです。モリカケと同様に、問われるべきは安倍案件で行政が歪められ、巨額の血税が無駄にされていることです」

 塚田副大臣辞任で幕引きは許されない。

 

塚田氏地元関係者「とても顔出しできぬ」 統一選影響で嘆き節(2019年4月6日配信『毎日新聞』)

 

 塚田一郎副国土交通相の辞任について、新潟県内の自民党関係者からは、統一地方選のマイナス効果への嘆き節が聞かれた。

 塚田氏の事務所によると、塚田氏は3日以降統一地方選の自民候補への応援演説を全てキャンセル。事務所にも県内外から抗議の電話が殺到しており、事務所関係者は「これ以上迷惑をかけられない。とても顔出しはできない」と話した。県議選自民候補の陣営関係者は、「目に見えた抗議などはない」としつつも、「無党派層が『自民党はだめだ』という投票行動を取ることは間違いない」と肩を落とした。

 塚田氏自身が改選を控える今夏の参院選への悪影響を懸念する声も聞かれた。公明党県本部の志田邦男代表は「参院選は作戦の練り直しが求められることになる」と自民党に苦言を呈した。新潟市の中原八一市長は「市として国交省の窓口として要望を行ってきた。言動は慎重を期す方だっただけに残念だ」と述べた。

 

塚田氏辞任で地元・新潟「常識ない」「不平等な気も」(2019年4月6日配信『毎日新聞』)

 

 新潟県内の有権者からは、塚田一郎副国土交通相の辞任について「当然」との厳しい声が上がる一方、「謝罪したのだから辞任する必要はなかったのでは」との戸惑いも多数聞かれた。

 新潟市中央区の主婦(83)は「県の代表である塚田さんが辞任したのは残念。問題発言をしたからには辞任も仕方がない」と話した。同市秋葉区の男性会社員(56)は「公の場で『忖度』という言葉を使った時点でアウト。社会常識があまりにもない」とあきれ顔だった。

 一方、同市中央区のパートの男性(70)は「不適切な発言をしても辞任しない政治家もいるのに、塚田さんにばかり批判が集中するのは不平等な気もする。かわいそう、と言うわけではないけれど……」と複雑そう。同区の福祉施設職員の男性(40)は「潔く発言を認めているのだし、辞める必要はなかったのでは。失言した経緯や背景をしっかり説明した上で、気を取り直して頑張ってほしい」と話した

 

塚田氏地元「忖度暴露の功労者」「国とのパイプ、うそ」野党が攻勢(2019年4月6日配信『毎日新聞』)

 

 公共事業を巡る「忖度(そんたく)」発言で副国土交通相を5日辞任した塚田一郎参院議員は、自民党新潟県連会長として統一地方選の陣頭指揮を執ってきたキーマン。それだけに、7日投開票の県議選や新潟市議選にとどまらず、自身の参院選への影響は必至だ。野党勢は自民を攻め立て、有権者からも厳しい声が上がっている。

 県内野党勢からは、塚田氏に議員辞職を求める声まで上がった。

 「これが安倍政権の本質だ。森友・加計問題から来る『忖度政治』の実情を暴露したという意味では彼は功労者なのでは」。社民党県連の渡辺英明幹事長は皮肉交じりにこう述べ、夏の参院選で3選を目指す塚田氏を「県民として恥ずかしい。これでも参院選に出るつもりか」とけん制した。

 黒岩宇洋衆院議員(新潟3区)も「『忖度した』ことを冗談交じりに言うなんて話にならない」と糾弾。「今回の失言で(参院選では)確実に10万票は減らしただろう。野党側はこれで勝利へのハードルが下がった」と期待感を示した。

 塚田氏は7日に投開票を迎える県議選と新潟市議選でも自民候補の応援に入っていたが、菊田真紀子衆院議員(新潟4区)は「私の選挙区でも『国とのパイプ』を強調していた。今回の忖度発言が本人の言うように『我を忘れて事実と異なることを言った』のであれば、『国とのパイプ』もうそになる」と指摘。「野党はこれからも『忖度する政治を変えよう』と主張していかなければならない」と語気を強めた。

 

「忖度」発言の下関北九州道路(2019年4月5日配信『しんぶん赤旗』)

 

首相自ら“陳情”や指示か

参院決算委 仁比議員が追及

 下関北九州道路(山口県下関市―北九州市)整備計画の調査を今年度から国直轄事業に移行させた決定について、自民党の塚田一郎・国土交通副大臣が「総理とか副総理が言えないので私が忖度(そんたく)した」と発言した問題で、日本共産党の仁比聡平議員は4日の参院決算委員会で、背景に安倍晋三首相の“陳情”や指示があったのではないかと追及するとともに、塚田氏の罷免と計画の断念を求めました。

計画断念・塚田副大臣罷免迫る

 仁比氏は塚田発言の核心を、「下関北九州道路を再スタートするために新年度予算で国直轄事業に引き上げたことであり、それは総理の地元の下関市と麻生副総理の地盤の北九州市の道路計画だからだ」という内容だと強調しました。

 塚田氏は発言の中身を「事実ではない」と否定しました。仁比氏は第2関門橋計画で2008年に冬柴鉄三国交相(当時)が「今後は調査を行わない」と答弁していたことを指摘。与党国会議員有志で結成された「関門会」が16年に石井啓一国交相あてに提出した要望書に安倍首相の名前があることを明らかにしました。

 仁比氏は「同会は『下関北九州道路の早期実現をはかること』や『具体的な検討を進め、調査を実施するとともに必要な予算を確保すること』を要求している。そうやって忖度させてきたのではないか」と迫りました。安倍首相は、自身が同会のメンバーであることを認めた上で「要望書が出されたことは初めて知った。私は陳情する立場にはない」などと言い逃れました。

 仁比氏は「実際に安倍首相は官邸で推進議員と会談し、『早期実現に向けた活動にしっかり取り組むように』(昨年10月25日)と整備に意欲を見せている。これは(塚田氏の)忖度と言うより、あからさまな指示ではないか」と指摘。「麻生副総理も下関北九州道路整備促進期成同盟会の顧問に名を連ねている」として、この計画が地元で「安倍・麻生道路」と呼ばれていることの実態を明らかにしました。

 仁比氏は2000億〜2700億円かかるとされる同計画は「不要不急の上に採算がとれる見通しもない。約4000万円の国直轄調査はやめ、ただちに計画を断念すべきだ」と強調しました。

 

真相徹底解明、統一地方選で審判を(2019年4月5日配信『しんぶん赤旗』)

 

 塚田氏辞任 志位委員長が表明

日本共産党の志位和夫委員長は5日、宇都宮市・新潟県長岡市で党県議候補の勝利をめざす街頭演説で演説し、「下関・北九州道路」(下北道路)計画で「調査計画を国直轄事業に引き上げた。私が忖度した」と発言した塚田一郎国土交通副大臣が辞任したことについて、「辞めてすむ話ではありません。辞任したとしても、『“安倍・麻生道路”を忖度して国直轄の事業にした』という血税私物化の事実は変わりません。真相を徹底解明し、安倍首相の任命責任を追及していく決意です」と表明しました。

 志位氏は「『安倍総理、麻生副総理、忖度』―といえば森友疑惑と同じ構図です。安倍政治の体質を象徴する出来事ではありませんか。こんな政治は変えようではありませんか。統一地方選挙でこんな政治を終わりにしようという審判を共産党の一票に託してください」と訴えました。

 志位氏は、長岡市内で、参院新潟選挙区選出の塚田氏が夏の参院選で改選となることを記者団から問われ、「議員の資格もない。新潟選挙区でも、市民と野党の共闘を成功させて、おひきとりを願いたい」と語りました。

 

辞任は当然」「自覚が足りない」識者ら 塚田氏「忖度」発言(2019年4月5日配信『毎日新聞』)

 

 辞任に発展した自民党の塚田一郎副国土交通相の「忖度(そんたく)」発言に、識者や塚田氏の地元・新潟県からは「辞任は当然」「自覚が足りない」などと一斉に批判の声が上がった。

 「発言が事実なら言語道断だし、事実でないならうそをついて有権者の票を集めようとしたことになる。辞任は当然だ」。一連のてんまつを厳しく見るのは政治アナリストの伊藤惇夫さんだ。安倍政権で「忖度」は、学校法人「森友学園」「加計学園」をめぐる問題などでたびたび問われてきた。「『安倍1強』の中で緩みやおごりが出ており、自民党内に『忖度して当たり前』というムードがあるのかもしれない。安倍晋三首相自身が、忖度をしないよう党内に指示すべきだ」と指摘する。

 本当に忖度はなかったのか。塚田氏は5日、記者団に「大きな会合で雰囲気にのまれて発言してしまった」と述べ、改めて否定した。これに対し、国際医療福祉大の川上和久教授(政治心理学)は「会合などで話を誇張して有権者の関心を引くのは政治家によくあるタイプ」と分析。その上で「副大臣に登用され、自己顕示欲を満たしたかったのかもしれないが、公人としての自覚が足りていないのは明らかだ」と批判した。

 最近では、2月に競泳の池江璃花子選手が白血病を公表したことに対し、桜田義孝五輪担当相が「がっかりしている」と発言して謝罪するなど閣僚らの失言が相次いでいる。神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は「安倍政権下での閣僚らの失言は今に始まったことではない。塚田氏は選挙を控えた時期で政治状況を踏まえて辞めさせられたに過ぎず、他にも辞めてしかるべきケースもある」と話した。

◇「支持者、離れないか心配だ」地元の新潟、危惧

 塚田氏は自民党の新潟県連会長として統一地方選の指揮を執ってきただけに、7日投開票の県議選などへの影響は必至だ。

 新潟市にある塚田氏の事務所によると、「忖度」発言が公になって以降、抗議の電話が殺到している。自民県連幹部は「支持者が愛想を尽かして離れないか心配だ」とうなだれ、県議選の自民候補の関係者は「この展開は予想できなかった」と困り顔だ。

 塚田氏は今夏の参院選が改選期で、野党は参院選の追い風になるとも受け止める。旧民進系無所属の黒岩宇洋元法務政務官(衆院新潟3区)は「(前回選で約46万票の塚田氏は)今回の失言で10万票は減らした。野党側は勝利へのハードルが下がった」と期待した。

 故田中角栄元首相の後援会「越山会」元南魚沼青年部長で南魚沼市の自動車整備会社社長、富所健太郎さん(71)は「言ってはならない発言だった。政治家に言い訳はきかない」と話した。

 

辞任も仕方ない」「当然だ」 塚田氏の地元、冷めた反応多く(2019年4月5日配信『毎日新聞』)

 

 塚田氏の副国交相辞意表明について、地元・新潟では「あんなこと言わなければよかったのに」と冷めた反応が多い。

 新潟市中央区の主婦(83)は「県の代表である塚田さんが辞任したのは残念。問題発言をしたからには辞任も仕方がないけれど。謝るぐらいならはじめから言わなければよかったのに」と話した。

 共産党新潟県委員会の樋渡士自夫(しじお)委員長は「塚田さんの辞任は当然。忖度(そんたく)したのはうそだと自分は言っているが、誰もそんなの信じない。自分を大物に見せたかったのだろう」と述べた。

 

「安倍1強なら辞めずに済む」 盟友気遣い判断遅れたか(2019年4月5日配信『朝日新聞』)

 

 安倍晋三首相がかばい続けた「忖度(そんたく)発言」の塚田一郎国土交通副大臣が、一転して辞任に追い込まれた。キーワードの「忖度」は、政権の急所である森友・加計(かけ)学園問題を想起させる。首相の擁護で後手後手に回った政権のダメージは大きく、利益誘導があったかどうかの解明もこれからだ。

 「今回の発言の責任を取って、副大臣の職を辞したい」。5日午前、塚田氏は石井啓一国土交通相と同省内で面会し、用意した辞表を提出した。石井氏は引き留めることなく「承った」。前日の国会で塚田氏は「職責を全うしたい」と続投する意向を示してからわずか1日での急変だ。

 事態が動き出したのは4日夜。菅義偉官房長官がホテルに塚田氏を呼び出し、「国会議員なのだから出処進退は自分でしっかり決めるべきだ」と伝えた。その後、塚田氏は所属する麻生派会長の麻生太郎財務相と面会し、辞意を伝達。麻生氏は5日午前の閣議後に安倍首相と会談し、塚田氏の辞意を報告し、首相が受け入れた。

 首相は塚田氏を続投させる考えだった。4日の国会答弁では「本人からしっかりと説明すべきであり、そのことを肝に銘じて、職責を果たしてもらいたい」と強調。新元号を好感し、支持率が上昇する報道機関の世論調査結果も出ていた中で、官邸幹部が「1強の安倍政権なら辞めないで済むかもしれない」と話すなど、時間の経過とともに問題が収束するという甘い見方があった。

 首相が盟友・麻生氏に気を使って、更迭の判断を遅らせたとの見方も強い。

 塚田氏の発言は、福岡県知事選で麻生氏が担ぎ出した自民推薦の新顔候補の応援演説で出たものだ。3期目を目指す現職に対して、新顔の苦戦が伝わる中、塚田氏の露骨な「利益誘導」発言。首相が麻生氏の頭越しに更迭すれば、「麻生氏のメンツをつぶすことになる」(麻生派幹部)というわけだ。

 5日午前、麻生氏が塚田氏の辞意を安倍首相に伝えた会談では、辞任劇の引き金を引いた菅氏による塚田氏の呼び出しについて「総理のお考えですか」と尋ね、首相は「そんなことはありません」と答える一幕もあったという。

 しかし、「忖度」という言葉をめぐっては、政権を土台から揺るがしている森友・加計学園などで繰り返し指摘され、世論の厳しい批判を浴びてきた経緯がある。発言を認めれば重大な疑惑を認めることになる一方、撤回することは選挙のさなかにウソをついたことになる深刻な事態だ。

 野党だけでなく自民党内の派閥会長クラスからも厳しい指摘が相次いだ。岸田文雄政調会長は4日、北海道滝川市で「緊張感を欠く軽率な発言だったのではないか」と批判。茂木敏充経済再生相も同日、記者団に「極めて不適切。忖度という、今使ってはいけない言葉を使っている」と述べた。麻生派の一人は「塚田氏の地元である新潟県連からも『県議選が戦えない』という批判が強く、本人も持たなくなった」と話す。

 安倍政権では、過去にも問題発言や不祥事で閣僚や政務三役が辞任したケースがある。だが、一度続投を明言しながら、急きょ方針転換を迫られたケースは少ない。党幹部は「早く切っておけば何てことはなかった。官邸が麻生氏に気を使ってしまったからこういうことになった」と話す。対応は完全に後手に回った。(岡村夏樹、太田成美)

政治に翻弄された道路

 塚田氏が「忖度して国直轄の調査に引き上げた」と語った下関北九州道路は、長く政治に翻弄(ほんろう)されてきた。

 山口県下関市と北九州市を隔てる約2キロの関門海峡を結ぶ構想が浮上したのは、安倍晋三首相の父、故晋太郎氏が地元選出の衆院議員だった1980年代にさかのぼる。東京湾など全国の6海峡を橋やトンネルで結ぶ「海峡横断プロジェクト」の一環として、98年までに国の開発計画に盛り込まれた。しかし、大型公共事業への批判が高まり、第1次安倍政権を引き継いだ福田政権が2008年、国による調査中止を表明して計画を凍結した。

 「国土強靱(きょうじん)化」を掲げる第2次安倍政権が発足すると、首相と福岡を地盤とする麻生氏のおひざ元という事情もあって、地元の期待は膨らんだ。17年度から2年間は地元自治体が年2100万円をかけて工事方法などを調査。国は調査費のうち年700万円を補助した。さらに19年度は国の直轄調査に引き上げられ、19年度予算で4千万円を計上した。

 海峡横断プロジェクトで国が直轄調査を行うまでになったのは下関北九州道路だけだ。こうした経緯のなか、塚田氏は首相と麻生氏の意向を「私が忖度した」と語って、「国直轄の調査に引き上げた」と誇らしげに紹介した。福岡県幹部は「『安倍・麻生道路』とは本人たちが言うわけがないが、この2人にとってもやりたい事業なのは間違いない」と受け止めた。

 副大臣は国家行政組織法で「閣僚の命を受け政策及び企画をつかさどり、政務を処理し、閣僚の命を受けて閣僚不在の場合その職務を代行する」と定められている。塚田氏は昨年10月に副大臣に就任し、19年度予算編成に携わっている。石井国交相は調査の中止や決定過程の検証はしない考えだが、強い職務権限があった塚田氏が道路調査の「格上げ」に関与したかの解明は今後も焦点となる。

 野党は辞任だけでは済まないとして、追及する方針だ。国民民主党の玉木雄一郎代表は記者団に「いまだにこんなことがまかり通っているのか。昭和の自民党という感じが否めない」と指摘。社民党の又市征治党首はコメントで「首相らの意向を忖度して、森友・加計学園問題や統計不正問題などへの批判や追及を何ら反省せず、副大臣自らが公共事業や国土交通行政に関する信頼性を低下させた責任はきわめて重い」と批判した。

 

「塚田氏辞任は本人の判断」安倍首相、一転事実上の更迭を決断(2019年4月5日配信『毎日新聞』)

 

 自民党の塚田一郎副国土交通相(参院新潟選挙区)は5日、下関北九州道路の建設計画を巡り、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の意向を「忖度(そんたく)した」と利益誘導とも取れる発言をした責任を取って辞任した。塚田氏を続投させる考えだった首相は、野党が「安倍―麻生道路」と批判を強める中、政権全体に影響しかねないとみて5日朝、事実上の更迭を決断した。

辞任について報道陣に説明する塚田一郎副国土交通相=国交省で2019年4月5日午前11時42分、佐々木順一撮影

 政府は5日の持ち回り閣議で、塚田氏の後任に副国交相経験者の牧野京夫(たかお)参院議員(静岡選挙区、竹下派)の起用を決めた。

 首相は「本人が国会の場で説明することが重要だと考えていた。そのうえで本人が行政に停滞があってはならないと判断したわけであり、石井啓一国交相もその意向を尊重した」と記者団に語り、辞任は塚田氏の意向だったと強調した。

 塚田氏は国交省で辞表を提出後、「行政の信頼を損ね、国政の停滞を招いた」と改めて陳謝した。夏の参院選で改選を迎えるが、議員辞職は否定した。

 首相は4日の参院決算委員会で「職責を果たしてもらいたい」と塚田氏を擁護した。一方、塚田氏は同日、所属する麻生派会長の麻生氏と面会し「迷惑をかけたので辞職したい」と辞意を伝えたが、麻生氏は慰留したという。

 自民党内には当初、「辞任せずに乗り切れるのではないか」という楽観論もあった。しかし、塚田氏の「忖度」発言は学校法人「森友学園」「加計学園」問題を想起させ、首相と麻生氏が国会で再び野党の追及の矢面に立たされた。テレビ各局は4日深夜まで塚田氏の失言を繰り返し報じた。

 自民党幹部によると、首相、麻生氏、菅義偉官房長官は5日朝、首相官邸で協議し、塚田氏の続投は困難という見解で一致した。

 塚田氏は1日、北九州市での福岡県知事選の集会で「私すごく物わかりがいい。すぐ忖度する」などと述べ、翌日に謝罪、撤回した。国会でも「我を忘れて誤った発言をした」と苦しい釈明が続いていた。

 

甘利氏「生真面目だからウケ狙う行動」塚田氏の辞意受け(2019年4月5日配信『朝日新聞』)

 

 道路事業の調査をめぐり、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の意向を「忖度(そんたく)した」と発言した塚田一郎国土交通副大臣が5日、辞表を提出した。野党は、国直轄の調査に引き上げた経緯について真相解明を目指すと同時に、更迭を否定してきた首相に批判の矛先を向ける。統一地方選や参院選への影響を懸念する与党からも、政府の対応を批判する声が強まっている。

自民・甘利明選挙対策委員長

 (参院選新潟選挙区で改選を迎える塚田一郎参院議員の差し替えについては)ありません。彼は生真面目な性格で、ウケを狙うような軽率な行動に出てしまった。言ってよい言葉と言ってはいけない言葉がある。事実からはみ出した話は、いかに笑いを誘ったとしても絶対に発言してはいけない。誠心誠意、自身の政治姿勢を訴えて、失点を取り返してもらいたい。(都内で記者団に)

岩屋毅防衛相

 選挙応援の場で、本人は少し会場を盛り上げたい気持ちで言ったんだと思うが、いやしくも国交副大臣。そういう事業を所管する省庁の副大臣としては極めて不適切な発言だったと思う。同じところ(自民党派閥)で勉強する同志でもあるので、反省してさらに精進していただきたい。

 本人がすぐに発言を撤回し、謝罪・おわびしているので、(安倍政権は)まずは判断を見守るということだったと思うが、国会その他の反応が思いのほか厳しかったということで、本人がこれ以上迷惑はかけられないと判断されたんだろうと思う。(記者会見で)

国民民主党・玉木雄一郎代表

 (辞任は)遅きに失した。安倍総理がかばったから辞めにくくなった、あるいは自民党・政府としても辞任を促しにくかったのではないか。かばった総理の責任も厳しく問われるべきだ。安倍政権が長期化することで、いわゆる権力のおごり、緩み、こういったものが出てきて権力の私物化、税金の私物化がこれに限らず全国に蔓延(まんえん)しているのではないか。総点検していく必要がある。後半国会では各委員会で厳しく追及していきたい。単なる辞任で幕引きでなく、予算委員会を開いて集中審議を行うべきだ。(記者団に)

社民・又市征治党首

 塚田氏の発言は選挙向けのリップサービスでは済まされない。応援する候補者の選挙を有利にするための露骨な利益誘導発言だ。首相らの意向を忖度して、本当に便宜を図ったのなら、政治の私物化の極致だ。辞任は統一地方選や衆院補選への影響を考えてしっぽ切りを図ろうとしたのだろうが、塚田氏を最後までかばい続けた首相の任命責任は残る。幕引きを許さず、道路整備の問題点の追及や忖度発言の真相究明を図るとともに、首相の任命責任をただしていく。

 

塚田副大臣、辞任 道路忖度発言で引責 統一選政権に打撃(2019年4月5日配信『東京新聞』−「夕刊」)

 

 塚田一郎国土交通副大臣(55)=参院新潟選挙区=は5日、道路整備を巡り「安倍晋三首相や麻生太郎副総理(兼財務相)が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と発言した問題の責任を取って辞表を提出したと記者団に明らかにした。事実上の更迭だ。統一地方選や衆院大阪12区、沖縄3区補欠選挙への影響を抑えるための判断とみられる。夏の参院選を控え安倍政権への打撃となるのは必至で、野党は首相の任命責任を追及。政府は5日中にも後任を選定する。

 塚田氏は石井啓一国交相に「発言の責任を取り、職を辞したい」として、辞表を提出。国交省で記者団に「行政への信頼を損ね、国政の停滞を招いた」と辞任理由を説明した。「事実と異なる発言をしたことで、大変大きなご迷惑をお掛けした。誠に申し訳ありませんでした」と改めて謝罪を表明した。議員辞職は否定した。

 麻生氏はこれに先立つ閣議後記者会見で、自民党麻生派に所属している塚田氏から4日に辞意を伝えられたと明らかにした。西村康稔官房副長官は5日、自民党の二階俊博幹事長を訪ね、塚田氏を辞めさせるとの首相方針を伝達した。

 首相は3日の衆院内閣委員会で「本人がしっかり説明し、このことを肝に銘じ職責を果たしてほしい」と話し、罷免を否定。4日の参院決算委では、罷免を重ねて拒否しつつ「有権者の前で事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と指摘していた。野党の反発が収まらず、後半国会の運営に響きかねないとみて方針転換した。

 立憲民主党の逢坂誠二政調会長は5日、取材に「辞任は当然だ。遅すぎたぐらいだ」と語った。塚田氏は参院当選2回。麻生氏の秘書などを経て2007年に初当選した。党副幹事長や党国対副委員長を務め、昨年10月の内閣改造で国交副大臣に就任した。

 政府は5日、忖度発言で辞表を提出した塚田一郎国土交通副大臣の後任に、牧野京夫(たかお)元国交副大臣を充てる方針を固めた。

 

やまぬ閣僚失言、政権体質に批判 副国交相辞任へ(2019年4月5日配信『毎日新聞』)

 

 道路整備を巡って安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相に「忖度(そんたく)した」と発言した塚田一郎副国土交通相が5日、辞任する見通しとなった。安倍首相が塚田氏の更迭を否定してから一転して幕引きを図った形だが、安倍政権では閣僚らの失言が相次ぎ、政権の体質が問われている。

 

【セクハラ発言の福田淳一前財務次官ら】2018年 辞任、辞意を表明した人たち

 今国会では、2月に競泳の池江璃花子選手が白血病を公表したことに対し、桜田義孝五輪担当相が「がっかりしている」などと発言。批判を浴び、謝罪と発言撤回に追い込まれたばかりだった。

 2018年1月には、松本文明元副内閣相が、沖縄県で相次ぐ米軍ヘリのトラブルに関する国会での質問中に「それで何人が死んだんだ」とヤジを飛ばした責任を取り、辞任した。17年7月には稲田朋美元防衛相が自衛隊が南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣時の日報を「廃棄した」と虚偽報告した問題で批判され、東京都議選での失言も重なって防衛相を辞めた。

 17年4月には、今村雅弘元復興相が東日本大震災について「まだ東北だったから良かった。これが首都圏に近かったりすると、甚大な被害があった」と述べ、辞任に追い込まれている。

 一方で、麻生氏は前財務事務次官のセクハラ問題に関して「セクハラ罪っていう罪はない」と発言して批判を浴びたが、辞任はしなかった。昨年、週刊誌で「政治とカネ」の問題が取り上げられた片山さつき地方創生担当相は「名誉毀損(きそん)」だとして出版社を提訴後、詳細な説明を避けたまま続投している。

 経済アナリストの森永卓郎さんは今回の塚田副国交相の「忖度発言」について「事実ではないと言うが、それにしてはリアリティーがあった。政権を揺るがす問題発言だ」と批判。そのうえで「歴代首相に比べ権力が強い安倍さんが長く政権の座にいるのだから、忖度が増えてくるのは当然だろう。政権を続けたいならば、論功行賞ではなく、きちんとした人材を起用すべきだ」と指摘した。【向畑泰司、服部陽、金子淳】

 ◇安倍政権閣僚らの最近の主な失言(肩書は当時)

2017年3月 務台俊介内閣府政務官

台風被害視察で長靴を持参せずに職員に背負わせた問題で「長靴業界はだいぶもうかったんじゃないか」=辞任

 17年4月

山本幸三地方創生担当相 訪日外国人を活用した地方創生を巡り、「一番のがんは文化学芸員だ。観光マインドが全くなく、一掃しないとだめだ」=謝罪・撤回

 17年4月

今村雅弘復興相 東日本大震災について「まだ東北だったから良かった」=辞任

2018年1月

松本文明副内閣相 沖縄で相次ぐ米軍ヘリを巡るトラブルに関し、共産党の代表質問中に「それで何人が死んだんだ」とヤジ=辞任

2019年2月

桜田義孝五輪担当相 競泳の池江璃花子選手の白血病公表について「本当にがっかりしている」=謝罪・撤回

 19年4月

塚田一郎副国土交通相 下関北九州道路建設に関し、安倍晋三首相らに「忖度(そんたく)した」=辞任の見通し

 

塚田国交副大臣が「私が忖度した」発言で辞意(2019年4月5日配信『共同通信』)

 

塚田一郎国土交通副大臣(55=参院新潟選挙区)は5日、道路整備を巡って「安倍晋三首相や麻生太郎副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と発言した問題で辞任する意向を固めた。政府関係者が明らかにした。統一地方選や衆院大阪12区、沖縄3区補欠選挙への影響を抑えるため、責任を取る必要があると判断した。夏の参院選を控え、安倍政権への打撃となるのは必至だ。

塚田氏は1日、北九州市で開かれた福岡県知事選の応援集会で、首相の地元の山口県下関市と、麻生氏の地元の福岡県を結ぶ「下関北九州道路」の国直轄調査に触れ「忖度した」と発言。2日に文書で事実と異なる発言だったとして撤回、謝罪したが、野党が「利益誘導だ」と批判していた。

首相は3日の衆院内閣委員会で「本人がしっかり説明し、このことを肝に銘じ職責を果たしてほしい」と述べ、罷免を否定。4日の参院決算委では、罷免を重ねて拒否しつつ「有権者の前で事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と指摘していた。野党の反発が収まらず、後半国会の運営に響きかねないとみて方針転換した。

塚田氏は自民党麻生派所属の参院当選2回。麻生氏の秘書などを経て2007年に初当選した。党副幹事長や党国対副委員長などを務め、昨年10月の内閣改造で国交副大臣に就任した。

 

 

安倍が“忖度道路”の要望書を提出、山陰自動車道でも利益誘導(2019年4月5日配信『リテラ』)

 

塚田副大臣辞任も、安倍首相の利益誘導を物語る文書が!

忖度案件の道路に要望書提出、山陰自動車道、下関人工島にも疑惑

「安倍・麻生道路」と呼ばれてきた下関北九州道路の建設計画をめぐって、「総理とか副総理が言えないので、私が忖度した」と発言した塚田一郎・国土交通副大臣がようやく辞任を表明した。

 しかし、問題は塚田副大臣の辞任で済む話ではない。これは安倍首相と麻生財太郎務相の地元に露骨な利益誘導がおこなわれたという話だからだ。

 先日の記事でも既に伝えたが(https://lite-ra.com/2019/04/post-4643.html)、塚田副大臣は、昨年12月、「私の逆らえない」相手だという吉田博美・自民党参院幹事長と福岡県選出の大家敏志・参院議員のふたりと面会。そこで「塚田、わかってる? これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」「俺が何で来たかわかるか」と言われ、対して塚田国交副大臣は「わかりました」と返答したと語っていた。そして、下関北九州道路は今年度から国直轄の調査となり予算として4000万円が計上された。

「逆らえない」相手である政治家の固有名詞まで挙げて、こんな具体的な嘘をつく理由はどこにもない。「忖度」どころか「圧力」があったと考えるのが普通だろう。

 しかも、やはり昨日おこなわれた野党合同ヒアリングでは、立憲民主党の長妻昭議員から「吉田氏と塚田氏の面会がだめ押しになって4000万円の予算がついたのではないか」と問われると、国交省側は「時系列的にはそうなる」と回答。またこの面会の際、国交省の池田豊人道路局長と担当課長までもが同席していた。

 さらに、ここにきて、「本人からしっかりと説明すべきで、そのことを肝に銘じて職責を果たしてもらいたい」などとまるで他人事のように語ってきた安倍首相に、直接的な関与を物語る物証が出てきた。

 2016年3月31日付けの石井啓一国交相宛てに提出された「下関北九州道路の早期実現に向けての要望書」。この要望書の提出者は「関門会」なるグループなのだが、その提出者のひとりとして〈安倍晋三〉と明記されているのだ。昨日の参院決算委員会で共産党の仁比聡平議員が突きつけた。

 総理大臣が国交相に対して「道路の建設を早く進めろ」と要望をおこなっていた──。その事実だけでも驚くが、この要望書には、こんなことが書かれていた。

〈「関門会」は、関門すなわち下関、北九州にゆかりのある自民党、公明党国会議員の有志によって結成された会である。去る二月二十四日、安倍総理を囲み懇談会を開催させていただいたところ、その際、「第二関門橋」の早期建設促進の件が話題となり、「関門会」の総意として要請活動を行うこととなった。〉

 つまり、安倍首相が発端となって、この要望書は提出されていたのである。

 要望書を読み上げた仁比議員が「こうやって忖度させてきたんじゃありませんか?」と追及すると、安倍首相は「私自身ですね、そういう要望書が出されたってことは、いま拝見するまで知らなかった」などと言い訳をしたが、無責任にもほどがある。実際、下関北九州道路は2008年の福田康夫政権時に調査が中止されたにもかかわらず、第二次安倍政権で復活。要望書が提出された翌年の2017年度からは自治体予算と国の補助で調査を再開させているのだ。

安倍首相が地元を通る「山陰自動車道」について「必ずできる」と豪語

 しかも、問題は下関北九州道路だけではない。第二次安倍政権になってから、こうした「安倍案件」の公共事業が息を吹き返し、事業化に向けて動き出しているのだ。

 たとえば、下関北九州道路と同様、「安倍道路」と呼ばれてきたのが、安倍首相の地元・長門市を通る「山陰自動車道」(山口県美祢市鳥取県鳥取市)。総事業費は約4500億円とも言われるものだが、本サイトでも連載をしているジャーナリストの横田一氏がこの問題をレポートした「週刊朝日」(朝日新聞出版)2013年6月7日号によれば、山陰自動車道は小泉純一郎政権時に総延長距離が1万4000キロから9342キロに引き下げられたのだが、第二次安倍政権の発足によって議論などなかったかのような状態に。そして、2013年1月には中尾友昭・下関市長(当時)が、このような安倍首相の発言を紹介したという。

「『(私が)首相になったから下関は良くなりますよ』と仰られ、『山陰自動車道は(国交省OBの)山本繁太郎知事が誕生したのだから必ずできますよ』とお墨付きを与えてくれました」

 実際、安倍首相は事ある毎にこの山陰自動車道に言及してきた。2016年には「国土の骨格となる基幹的な道路だ」「予算を確保したい」と言い、昨年7月にも「山陰は最大のミッシングリンク(高速道路未整備区間)だ」と明言。そして、国交省もそれに合わせるように、昨年11月、先行整備する優先区間を最終決定するために動きを進めている。

 さらに、同じく安倍首相のお膝元である山口県岩国市では、民主党政権時代に槍玉にあがって検証対象となった「平瀬ダム」が、安倍政権下の2014年3月より着工。2023年に完成予定となっているが、総工費は当初の想定から120億円増え、860億円にまで膨らんでいる。

下関人工島でも利益誘導、下関港「国際旅客船拠点形成港湾」選定の裏も

 また、父・晋太郎氏も推進した総事業費755億円の下関市の人口島「長州出島」も、「事業化には安倍首相や父晋太郎氏の国への働き掛けがあった」(東京新聞2014年2月19日付)と言われているが、今年3月1日、国交省が下関港を「国際旅客船拠点形成港湾」に選定したと下関市が発表。これにより、現在は岸壁を貨物船と客船が共用しているが、国がクルーズ船の専用岸壁を整備するという(西日本新聞3月7日付)。

 安倍首相の地元で、安倍政権の「国土強靱化計画」のもと、「無駄な公共事業」として見直された計画が復活したり、国がバックアップしている事実──。安倍首相は森友学園問題の追及を受けた際、「私自身がずっとかかわってきた山陰自動車道なんかもずっとミッシングリンクのままでございますし、妻が名誉校長だったからといって、近畿財務局がそれはそう簡単にそういう行為をするということはあり得ない」などと述べて森友問題を矮小化しようとした。だが、現実には、今回の下関北九州道路の問題が象徴するように、こうした公共事業でも森友や加計同様、「忖度」がなされ、安倍首相の地元への利益誘導は進んできたのだ。

 塚田国交副大臣の辞任は当然だが、それでこの問題を終わらせてはならない。安倍首相の「私物化体質」をこのまま放置しつづけるのかどうか。それがいま問われているのである。

 

塚田氏「ご迷惑おかけした」 辞意、麻生氏に前日伝える(2019年4月5日配信『朝日新聞』)

 

 麻生太郎財務相は5日午前の閣議後会見で、塚田一郎国土交通副大臣から前日4日に辞意を伝えられたことを明らかにした。麻生氏によると塚田氏は「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。辞職したい」と話したという。麻生氏は「政治家の出処進退ですから、自分で決断をしたということだと思う」と話した。

 

山口県知事「急に話が出て戸惑っている」 副国交相「忖度」発言(2019年4月5日配信『毎日新聞』)

 

 山口県下関市と北九州市を結ぶ下関北九州道路(下北道路)建設計画を巡り、塚田一郎副国土交通相が利益誘導をしたと取れる発言をした問題で、山口県の村岡嗣政知事は4日の定例記者会見で「特別な配慮が無ければ取り上げられない事業と思っていない。急にこういう話が出て戸惑っている」と述べた。

 下北道路は3月末発表の今年度予算で、国の直轄調査着手が盛り込まれた。塚田副国交相は1日、福岡県内の演説で、安倍晋三首相の地元・下関が絡む計画だとして「忖度(そんたく)」の言葉を使い、首相らに配慮して直轄調査移行を決めたと受け取れる発言をした。

 感想を問われた村岡知事は「本人が撤回した」とかわし、関門橋と関門トンネルは完成から長期間たち通行止めが多い▽災害時の代替ルートが必要――など下北道路の必要性を強調した

 

「忖度」副大臣、自民内「辞めれば助かる」 野党攻勢に(2019年4月5日配信『朝日新聞』)

 

 塚田一郎国土交通副大臣(自民党)の「忖度(そんたく)」発言について、野党は4日の参院決算委員会で「利益誘導」「予算の私物化だ」と追及を続けた。安倍政権の本質が表れた発言だとして照準を合わせるが、安倍晋三首相は塚田氏の更迭を改めて否定。早期の幕引きを図る姿勢を崩していない。

 塚田氏は1日に北九州市で開かれた集会で、本州と九州を新たに結ぶ道路事業の調査を「国直轄に引き上げた」と発言。安倍首相と麻生太郎副総理の意向を「私が忖度した」とも語った。3日に「事実と異なる発言をした」と陳謝して、発言を撤回した。

 4日の決算委で、立憲民主党の小川敏夫氏は塚田氏の発言を「自民党型の利益誘導政治を、実に如実に表した貴重な証言だ」と皮肉った。国民民主党の礒崎哲史氏も「政治家が支持を集めるためにウソをついていいのか」と批判した。

 塚田氏は謝罪の言葉を繰り返し、「職責を全うしたい」と辞任を否定した。

 安倍、麻生両氏の名前が挙がったことに着目したのは、共産党の仁比聡平氏。道路沿線にゆかりのある与党議員有志が2016年3月に国交相あてに提出した道路の早期実現を求める要望書を取り上げ、「その筆頭に安倍首相の名前がある」と指摘。「首相なのに国交相に要望するのは異様だ。こうやって忖度させてきたのか。まさに安倍麻生道路ではないか」とただした。

 安倍首相は「メンバーではあるが、そういう要望書が出されたことは今拝見するまで知らなかった。そもそも首相として陳情する立場にない」と答弁。塚田氏が所属する麻生派を率いる麻生氏は「これ(要望書)に限らず、地元選出の国会議員としていろいろ名前は載る」とはぐらかした。

 野党はこの日、これまで政権の不祥事を追及してきた「合同ヒアリング」を国会内で開催。事業が国直轄に引き上げられた経緯などを国交省に問いただし、追及のボルテージを上げた。

 ただ、政権は今のところ塚田氏を「辞めさせるわけにはいかない」(官邸幹部)と罷免(ひめん)しない考えだ。罷免したところで事態が収束に向かうとは限らず、統一地方選や夏の参院選を控え、逆に野党を勢いづかせる可能性すらあるからだ。

 首相はこの日の決算委でも「まず本人からしっかり説明すべきで、そのことを肝に銘じて職責を果たしてもらいたい」と続投させる考えを強調した。だが国会開会中は野党の追及が続き、どんな新事実が浮かぶかもわからない。ある自民国対関係者は「自分で辞めてくれると助かる」と漏らす。

 

塚田氏の忖度発言、強まる逆風 与党からも、くすぶる辞任論(2019年4月5日配信『毎日新聞』)

 

 塚田一郎副国土交通相は4日の参院決算委員会で、下関北九州道路(下北道路)の建設計画を巡って安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相に「忖度(そんたく)した」と発言したことを重ねて陳謝した。首相は塚田氏をかばう姿勢を変えていないが、辞任は避けられないとの見方が与党からも出始めた。

 山口、福岡両県を結ぶこの道路計画は首相と麻生氏の地元が舞台。統計不正問題で安倍政権を攻めきれなかった野党は「統計問題よりずっとわかりやすい。統一地方選にも影響するだろう」(立憲民主党幹部)と勢いづく。

 塚田氏は参院決算委で、1日の自身の発言に関する報道を翌日知り、「改めて発言内容を思い起こし、事実と異なるという認識に至った」と釈明した。北九州市での福岡県知事選の集会だったことで「熱が入ってしまった」とも述べた。

 自民党では昨年11月、下北道路の整備促進を図る参院議員の会が発足し、吉田博美参院幹事長が会長に就任した。吉田氏は昨年12月20日、国交省の副大臣室で塚田氏と面会し、道路局長らが同席した。さらに3月19日には山口、福岡両県知事らが石井啓一国交相に調査を国直轄にするよう要望。2019年度予算が成立した3月27日、国の調査費約4000万円が決定した。

 こうした経緯から、野党は4日、国会内で行った国交省などへのヒアリングで「吉田氏と塚田氏の面会がだめ押しになって4000万円の予算がついたのではないか」(立憲民主党の長妻昭氏)などと追及。国交省側は塚田氏と吉田氏の会談内容を明らかにしなかったが、「時系列的にはそうなる」と認めた。

 一方、参院決算委で共産党の仁比聡平氏は、与党議員有志の会「関門会」が16年、石井氏に提出した計画の早期実現を求める要望書に首相の名前があるとして「まさに安倍・麻生道路」だと批判した。これに対し、首相は「要望書が出されたことは知らなかった。そもそも私は首相として陳情する立場にない」と反論した。

 仁比氏は、麻生氏が「下関北九州道路整備促進期成同盟会」の顧問だとも指摘したが、麻生氏は「地元のそういったものには名前がよくのっかる」とかわした。

 学校法人「森友学園」「加計学園」問題が下火になる中、塚田氏の発言で「忖度」は再び国会論戦の焦点に浮上した。新元号発表後、共同通信の世論調査などで安倍内閣の支持率が上向いただけに、自民党関係者は「『令和』の2文字でお祝いムードになっていたのに、『忖度』という別の2文字がまた出てきた」と嘆く。

 自民党の石原伸晃元幹事長は4日、石原派の会合で「気を引き締めないと小さな穴が大きな穴になる」と苦言を呈した。塚田氏が所属する麻生派の会合では麻生氏が「気を抜くと常に問題が起きる。緊張感を持ちつつ務めを果たしてほしい」とあいさつしたが、塚田氏の名前は出さなかった。自民党内では「塚田氏の進退は麻生氏が判断する」とみられている。

 野党は、塚田氏が辞任しなければ来週の参院国交委で航空法改正案の審議に応じない構えだ。自民党幹部は「当面持ちこたえると思うが、来週の国会次第で状況は変わる」と懸念した。

 

「忖度」副大臣に地元批判「答弁聞いても納得いかない」(2019年4月5日配信『朝日新聞』)

 

 自民党新潟県連会長で国土交通副大臣の塚田一郎参院議員(55)が安倍晋三首相らの意向を「忖度(そんたく)した」とする失言を、有権者はどう受け止めているのか。国会で塚田氏への追及が続いた4日、地元・新潟市中央区で聞いた。

 買い物客でにぎわう古町地区では、市民から厳しい声が相次いだ。参院選で塚田氏に投票したことがあるという西区の看護師女性(63)は「信頼感が薄れた。国会での答弁を聞いても納得いかなかった」。

 中央区の無職、堀川昭さん(68)は「『忖度』が問題視されている時だし、公の場で言うべきでなかった。新潟の人なのに残念。口は災いの元だね」。花を買っていた東区の無職、波塚恭子さん(72)は「リップサービスだったかもしれないけど、甘い。慎重になってもらいたい」と釘を刺した。

 就職活動に来ていた村上市の大学4年、三野原梓さん(21)は「最近は政府にも自分の発言に責任を持たない人が多い」と憤る。「うやむやなまま(副大臣を)辞めるよりは、ちゃんと説明してやるべきことはやってほしい」という。

 副大臣の辞任を求める声も上がった。中央区で金物店を営む高井優治さん(68)は「ちょっと常識では考えられない。やめんばならんね」と即答。「実際に利益誘導したかどうかは別として、そういうことを考えている時点でアウト」と批判した。中央区のパート従業員、高橋伸子さん(60)は「あきれ返った。政治に信頼が持てなくなる発言。一から出直してほしい」と話した。

 

忖度発言、地元統一選に影響 アピール材料が一転、疑惑の的に(2019年4月4日配信『毎日新聞』)

 

 統一地方選のさなかに飛び出した、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元を結ぶ下関北九州道路での「忖度(そんたく)」発言が、地元の選挙戦にも余波を広げている。自民参院議員の塚田一郎副国土交通相(新潟選挙区、麻生派)の発言を巡り、自民候補の陣営からは悪影響への懸念が聞こえる一方、野党陣営は「敵失」に乗じ批判を強めている。

 地元自治体や経済界が求める下関北九州道路は、財政難から2008年に計画が凍結されたが、19年度予算で国は再び調査費を計上。自民関係者が困惑するのは、事業推進がアピール材料だったが、一転して疑惑の的になったからだ。県内の麻生氏の勢力圏で県議選を戦う保守系候補は「自分の選挙に必死の中、世間から『政治家はみんな利益誘導する』とみられかねない」と迷惑がった。

 野党側は攻撃材料を得て争点化を図る。対岸の山口県下関市で議席を争う県議選の野党系候補の陣営幹部は「安倍さんは問題発言した人を処分しないから図に乗っているようにしか思えない。こういう政治は変えなくてはいけない」と批判。立憲民主福岡県連も「政治の私物化」と指摘し、3日の統一選候補の合同個人演説会で取り上げて問題視するなど攻勢を強めている。

 影響は、保守分裂選挙の福岡県知事選にも及んでいる。

 自民推薦で新人の武内和久氏(47)の陣営関係者は「選挙に関係ない。我々は有権者と毎日触れあうだけだ」と打ち消しに必死だ。小川洋氏(69)は現職として下関北九州道路推進の立場。国直轄の調査移行を実績として訴えてきただけに、陣営関係者は「下関北九州道路の問題を政争の具にするなど許されない。我々は正々堂々と政策として(必要な道路だと)訴えていく」と話した。

 一方で、共産推薦の新人、篠田清氏(70)は「(武内氏と小川氏の)2人とも下関北九州道路の推進を表明している。忖度政治のもとで、大型開発に熱中するような県政でいいのか」と保守系の両候補を矛先に批判を強めている。

「本当の話、許されない」

 塚田氏は発言を撤回し謝罪したが辞任要求は拒否している。政権の「緩み」との指摘もある今回の問題を有権者はどう受け止めているのか。

 福岡市中央区の公園で花見をしていた同市の無職の男性(67)は「(塚田氏は)本当の話をしたのだと思う。政治家として許されないし、責任は取るべきだ」としつつ「自民党を支持するのは変わらないし、それは知事選でも同じ。自民党はもっとしっかりしてほしい」と注文をつけた。

 同市の会社員の男性(47)は「発言を撤回するのは当たり前。安倍首相は早めに辞任させた方が良いのではないか」と語った。

 「(事実ではなかったという)言い訳は苦し紛れにしか聞こえない。公共事業を正当な理由なく進めてはいけない」と問題視するのは同市の会社員の男性(24)。「このままでは自民がやりたいようにやってしまう」と統一選の投票先は自民党を避けるつもりで「野党がもっと頑張ってほしい」と漏らした。【佐野格】

塚田副国交相の「忖度」発言

 大家(敏志)さんが、私が逆らえない吉田博美参議院の幹事長と一緒に、私の副大臣室にアポを取って来られました。地元の要望がある。これが下関北九州道路です。実はこれ、11年前に凍結されているんです。下関は誰の地盤ですか。安倍晋三総理ですよ。安倍総理から麻生副総理の地元でもある北九州への道路の事業が止まっとるわけです。大家敏志が来てですね、「副大臣、これ何とかしてもらいたい」。吉田幹事長が私の顔をみて「塚田分かってるな。これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。私すごく物分かりがいいんです。すぐ忖度します。分かりましたと。総理とか副総理がそんなこと言えません。そんなこと実際ないんですよ。森友とかいろいろ言われてますけど。でも私は忖度します。今回の新年度予算に国で直轄の調査計画に引き上げました。できるだけ早く、皆さまのもとに下関から橋が通ってこられるように頑張りたいと思います。

 

自民党内「もうもたない…」塚田氏が苦し紛れ言い訳(2019年4月4日配信『日刊スポーツ』)

 

塚田一郎国交副大臣は4日の参院決算委員会で、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元を結ぶ「下関北九州道路」整備進展に関する「忖度(そんたく)」発言について、苦しまぎれの言い訳と謝罪を繰り返した。自らの発言にもかかわらず、「うそ」だと気づいたのは「翌日の報道を見て」と、理解に苦しむ発言も。辞任は否定し、首相も更迭を拒否したが、統一地方選への悪影響もあり、党内でも「もうもたない」の声が出始めた。

   ◇   ◇   ◇

地元で「安倍・麻生道路」と呼ばれる、政治色の濃い道路に関し、公共事業を所管する国土交通相の副大臣、利益誘導を得意げにアピールする致命的な発言。その主、塚田氏は、苦し紛れの言い訳を続けた。

「忖度発言」は「事実ではなかった」として撤回したが、野党から、発言した際にうそをついている認識があったか問われると、「認識はなかった」と主張した。その上で、「発言翌日に(報道で)確認し、言ったことが事実ではないことだったので、撤回、謝罪させていただいた」と述べた。

自らの発言にもかかわらず、言葉を発している際はうそだと気づかなかったと、理解に苦しむ説明。「大勢の人がいる会合で熱が入った。うそを言っているとの認識で発言したわけではない」とも話した。

「職責をまっとうしたい」と、野党の辞任要求を拒否。前日より沈んだ声で「申し訳ございませんでした」と頭を下げたが、立憲民主党の小川敏夫氏から「(辞任を求める)国民の気持ちを忖度(そんたく)してほしい」と皮肉られた。「話の内容が具体的で、とてもつくりごとで話せる内容ではない。(塚田氏の)忖度ではなく、あうんの呼吸で、総理や副総理の要望を伝えた人を通じ、『分かった』となったのではないか」という分析も受けた。

首相も更迭要求をあらためて否定したが、「事実と異なることを言ったのは重大な問題」と、踏み込んだ。塚田氏は、安倍政権にとって「NGワード」の「忖度(そんたく)」発言も連発しており、政権と自民党に、ボディーブローとなって広がっている。首相が更迭をためらうのは、塚田氏が盟友麻生氏に近いことも背景の1つだが、自民党内でも、「もうもたないのでは」との声が出ている。

 

“安倍・麻生道路で大炎上 塚田副大臣「忖度」発言の真相(2019年4月4日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 国交副大臣の塚田一郎参院議員の発言が大炎上だ。塚田氏は1日、北九州市で行われた福岡県知事選の応援集会で、下関北九州道路(下北道路)の調査が今年度から政府直轄になったことについて、「総理とか副総理が言えないので、私が忖度した」と明言し、「(吉田博美参院幹事長から)これは総理と副総理の地元の事業だよ」と言われ「分かりました」と応じたエピソードまで披露。道路整備で便宜を図ったと口にしたのである。

 北九州市と下関市を結ぶ下北道路は、1998年に政府が策定した「海峡横断プロジェクト」のひとつとして調査が進められてきたが、大型公共事業への批判が高まり、2008年に凍結された。ところが、安倍政権下の17年度から、調査費約2100万円のうち700万円の補助金支給が始まり、19年度からは政府直轄で調査することが決定。一度は止まった計画が安倍政権下で復活したわけだ。

 「安倍首相のお膝元・山口県と麻生副総理の地元・福岡県を結ぶ計画だけに、地元では『安倍・麻生道路』と呼ばれています。地元財界の試算では、建設費は約2000億円に上るとみられている。両県選出の国会議員にとっては、安倍総理と麻生副総理の在任中に事業化することが“最重要課題”といわれています」(福岡県政関係者)

 安倍首相自身も昨年10月、下北道路の整備促進を図る自民党参院議員との会談で「早期建設に向けた活動にしっかり取り組むように」と話していた。

「そもそも両県を結ぶ道路は、既に関門橋と関門トンネルの2ルートがある。交通量も減少傾向にあり、福岡県議会では、第3の道路を造る意味はないと野党が追及しています」(前出の福岡県政関係者)

■福岡知事選では劣勢に

 そんな中で、予算決定に関与できる塚田氏の発言は一発アウトだろう。

「塚田さんはお堅いタイプで、過去に失言したことはほとんどない。今回の失言は、二階幹事長と麻生さんの“代理戦争”になっている福岡県知事選が原因でしょう。塚田さんは麻生さんの元秘書で、『私は筋金入りの麻生派』と公言するほどの間柄。現状、麻生さんが支持する自民推薦の新人は、二階派が支援する現職に大差をつけられている。大惨敗だと、麻生さんの求心力が低下しかねません。焦る塚田さんが少しでも新人の票を増やすため、『安倍・麻生道路』をアピールし、やりすぎてしまったとみられています」(永田町関係者)

 塚田氏は「我を忘れて誤った発言をした」と釈明。ついつい“本音”を漏らしてしまったということか。

 

塚田国交副大臣「忖度」発言が嘘なわけがない! 安倍首相、麻生財務相の下関北九州道路“利益誘導”にこれだけの疑惑(2019年4月4日配信『リテ

 

 安倍政権の政治がいかに腐りきっているか。そのことが現役副大臣の発言によって明らかになった。1日に北九州市でおこなわれた集会で、自民党・麻生派所属の塚田一郎・国土交通副大臣が「総理とか副総理が言えないので、私が忖度した」と発言した問題だ。

 塚田国交副大臣が公の場で「暴露」したのは、北九州市と山口県下関市を結ぶ「下関北九州道路」について。下関北九州道路は2008年の福田康夫政権時に調査が中止されたが、第二次安倍政権で復活。2017年度からは自治体予算と国の補助で調査を再開させ、2019年度からは国の直轄事業として国が調査費を全額負担することになり、4000万円が計上されている。

 総事業費が2000〜2700億円もかかると試算されている一方、その必要性や採算がとれないのではと疑問視されている下関北九州道路。どうしてそれが復活したのか疑問視されてきたが、塚田国交副大臣は今回、本年度から国直轄の調査へと決定された内幕を明かし、「私が忖度した」と発言したのだから、これは大事件だ。

 塚田国交副大臣は昨日の国会で「我を忘れて誤った発言をした」などと釈明したが、実際の話はディテールに富んでおり、とてもじゃないが嘘の話だとは思えない。あらためて、塚田国交副大臣の発言を紹介したい。

 まず、塚田国交副大臣は「麻生太郎衆院議員にお仕えして、早20年近く。最初の総裁選は大変でした。その時代から麻生太郎命、一筋でやってきた。筋金入りの麻生派です」と述べ、その後、こんな話をはじめた。

「国土交通副大臣ですから、ちょっとだけ仕事の話をさせていただきますが、大家敏志さん(福岡県選出の自民党参院議員)がですね、私のもうひとり逆らえない吉田博美さんという参議院の(自民党)幹事長と一緒に、私の副大臣室にアポを取って来られました。『地元の要望がある』。これが下関北九州道路です。

 じつはこれ、経緯がありまして、11年前に凍結されているんです。なんでかわかります? 『コンクリートから人』っていう、とんでもない内閣があったでしょ。総理は『悪夢のようだ』と言いましたが、まさにそのとおりでございます。公共事業はやらないという民主党政権ができて、こういう事業は全部フリーズ、凍結しちゃったんです」

 事業がストップしたのは11年前の2008年であることは間違いないが、前述したように、それは福田政権時のことであって民主党政権時ではない。デマによって相も変わらずしつこい民主党政権叩きをつづけるのは安倍首相や麻生副総理とまったく同じだが、問題はこのあとだ。

「何とかしないといけないと。下関と北九州ですよ。よく考えてください。下関は誰の地盤ですか? 安倍晋三総理です。安倍晋三総理から麻生副総理の地元でもある北九州への道路事業が止まっているわけです。

 吉田(参院)幹事長が私の顔を見たら、『塚田、わかってる? これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ』と。『俺が何で来たかわかるか』と。私、すごく物わかりがいいんです(会場笑い)。すぐ忖度します(会場笑い)。『わかりました』と。

 そりゃ総理とか副総理はそんなこと言えません、地元の。そんなこと、実際ないんですよ? 森友とかいろいろ言われていますけど、私は忖度します」

 吉田自民党参院幹事長といえば、2015年の安保法制の審議で自民党参院国対委員長として安保法制強行の先頭に立ち、先の総裁選では石破茂議員が掲げた「正直、公正」というスローガンに対し「(首相への)個人攻撃と受け取っている国民もいる」と批判するなど、安倍首相に近い人物だ。

 その吉田自民参院幹事長は国交副大臣にわざわざアポを入れ、「総理と副総理の地元の事業だとわかっているのか」「俺が何で来たかわかるか」と明確に圧力をかけ、塚田国交副大臣から見事に「忖度」を引き出していたのである。

塚田発言で「お友だち優遇」と「忖度」が横行する安倍政権の実態が露呈

 しかも、塚田国交副大臣の「総理とか副総理はそんなこと言えません」という発言は重大だ。加計問題で安倍首相は「私から指示を受けたという方はひとりもいない」などと主張しているが、実態は柳瀬唯夫首相秘書官や和泉洋人首相補佐官、杉田和博官房副長官といった官邸スタッフが暗躍していた。実際、和泉首相補佐官は「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と、吉田自民参院幹事長とそっくりの発言をおこなったとされている。ようするに、直接指示せずとも「総理のご意向」「首相案件」だというだけでこうした利益誘導はおこなわれるという証拠ではないか。

 そして、この下関北九州道路は「安倍首相と麻生副総理の地元」案件として、事業化に向けて動き出した。塚田国交副大臣はこう明言している。

「それでですね、この事業を再スタートするためには、いったん国で調査を引き取らせていただくということになりまして、これを、今回の新年度の予算に国で直轄の調査計画に引き上げました!(会場拍手)

 別に知事に頼まれたからではありません。大家敏志が言ってきた、そして私が忖度したということですので」

 唖然とするほかないだろう。安倍首相に近い吉田自民参院幹事長や、北九州市を含む福岡県を選挙区とする大家議員に「総理と副総理の地元の事業だとわかっているのか」と迫られたことを明かした上、「私は忖度します」と誇り、言われたとおりに国直轄の調査計画に引き上げたことを自身の手柄として堂々と胸を張っているのである。

 見てのとおり、塚田国交副大臣はこれが利益誘導だという事の重大性にまったく無頓着で、悪気などなく発言している。これは、それほど安倍政権下で「お友だち優遇」と「忖度」政治が当たり前になっているということを示す発言であり、そのディテールの細かさからも「我を忘れて誤った発言をした」とは到底考えられないのだ。 

 そして、実際にこの塚田国交副大臣の下関北九州道路をめぐる「証言」は、「誤った発言」どころか、あまりにも状況とぴたりと符号するものなのだ。

 というのも、この下関北九州道路にかんしては、以前から「安倍・麻生道路」と呼ばれ、「安倍案件なのでは」と囁かれてきた問題であり、吉田自民参院幹事長や大家議員が関与していることも確認されていた。

 塚田「忖度」を引き出した吉田参院幹事長・大家議員は官邸で安倍首相から…

 たとえば、実際に安倍政権は、凍結されていた下関北九州道路を建設に向けて検討を再開させ、2017・2018年度予算でそれぞれ調査費700万円を計上。さらに、下関北九州道路の建設を目指して昨年11月2日に「整備促進を図る参院議員の会」を発足させた。そして、その会長に就任したのは吉田自民参院幹事長であり、幹事長には大家議員が就いている。

 その上、会発足直前の昨年10月25日には、ふたりは官邸で安倍首相と面談。そこで安倍首相は、下関北九州道路について、こう号令をかけていた。

「早期建設に向けた活動にしっかり取り組むように」

 問題となっている塚田国交副大臣が国交省副大臣室で吉田自民参院幹事長と大家議員が面談したのは昨年12月20日であり、塚田国交副大臣も面談の事実は認めている。ようするに、安倍首相主導のもと、下関北九州道路建設に向けて吉田自民参院幹事長と大家議員が動いていたのは事実なのだ。

 そして、塚田国交副大臣の発言どおり、実際に国直轄の調査計画に引き上げられ、先月29日には今年度から調査費は国が全額負担することが公表された。

 しかも、だ。いまから約1カ月前のしんぶん赤旗紙上で、下関市の自民党関係者はこんなことを語っているのだ。

「九州経済連合会の会長は、麻生太郎副総理の弟の泰氏だ。自民党内の会議では、安倍・麻生の関係でスタートした計画だといわれている。それだけに総理・副総理の在任中に事業化させたいという思いは両県の政治家に共通している。ここで動かなかったら経済界にも顔向けできない」(しんぶん赤旗3月5日付)

 どうだろう。塚田国交副大臣の今回の発言は、こうした証言と符号、見事に裏付ける内容になっているのである。

 新たに浮上した、森友・加計学園につづく「忖度」による利益誘導問題。しかも、現役の副大臣が悪びれもせずに公の場で手柄話として披露するほど、安倍政権が腐りきっていることが白日の下に晒されたのだ。今後、安倍首相と麻生副総理は全力で事実を否定しつづけるだろうが、今度こそ、この腐敗政権に終止符を打つときだ。

 

「言った時点でアウト」塚田氏の「忖度」発言、新たな火だねに(2019年4月3日配信『毎日新聞』)

 

 塚田一郎副国土交通相が安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元を結ぶ道路事業で利益誘導をしたと取れる発言をした問題で、野党は3日、「撤回では済まされない」(立憲民主党の辻元清美国会対策委員長)と塚田氏の辞任を要求した。首相は衆院内閣委員会で塚田氏の罷免を否定したが、後半国会を安全運転で乗り切りたい政府・与党は新たな火種を抱え込んだ。

 「言った時点でアウトだ。利益誘導、絶対にやっちゃダメ」。辻元氏は3日、国会内で記者団にこう語り、塚田氏の即時辞任を求めた。立憲など野党6党派の国対委員長はこれに先立つ会談で「塚田氏は辞任すべきだ」との認識で一致。辻元氏は自民党の森山裕国対委員長に辞任要求を申し入れた。

 塚田氏は1日、北九州市で福岡県知事選の応援演説をする中で、首相の地元山口県と麻生氏の地元福岡県を結ぶ下関北九州道路の建設計画を巡り、「私、すごく物分かりがいい。すぐ忖度(そんたく)する」などと発言。首相らに配慮して国直轄調査への移行を決めたと受け取れる発言で、2日に「事実とは異なる」と発言を撤回し、謝罪するコメントを出した。

 塚田氏は野党の要求を受けて3日の衆院内閣委に出席。改めて謝罪したうえで「忖度したことはないし、特別な配慮をしたということはない」と釈明。ただ、「説明責任を果たすことで職責を全うしたい」と辞任は拒否した。衆院厚生労働委では「大勢が集まる会だったので我を忘れて誤った発言をした」と苦しい答弁に終始した。

 一方、演説の中で、首相と麻生氏の地元の事業だと指摘してきた相手として挙げられた吉田博美参院幹事長は3日、発言を否定するコメントを出し、「(道路計画は)当然ながら総理に忖度して取り組んでいるわけでもない」と突き放した。

 統一地方選に加え、夏には参院選も控えており、政府・与党は引き締めが課題だ。首相は内閣委で「事実と異なる発言をしたのは問題だ」と苦言を呈し「まずは本人からしっかり説明すべきだ。そのことを肝に銘じて職責を果たしてもらいたい」と指摘。菅義偉官房長官は記者会見で、塚田氏に「二度とないように」と注意したことを明らかにした。

 幕引きを図りたい政府・与党に対し、野党は追及を強める構えだ。国民民主党の玉木雄一郎代表は記者団に「極めて恣意(しい)的な行政をやっているとしたら大問題だ」と指摘。共産党の穀田恵二国対委員長も「選挙戦最中に利益誘導とも言える内容で、何重にも許し難い」と述べ、衆院予算委の開催を求めた。

 

「忖度」発言の塚田副大臣、政府や自民にも更迭論(2019年4月3日配信『朝日新聞』)

 

 本州と九州を新たに結ぶ道路事業の調査で、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の意向を「忖度(そんたく)した」と発言し、撤回した自民党麻生派の塚田一郎国土交通副大臣(55)は3日、国会答弁で「我を忘れて事実と異なる発言をした。行政の信頼性をゆがめた」と陳謝した。菅義偉官房長官は塚田氏を厳重注意し、安倍首相は塚田氏の続投を明言したが、政府自民党内にも更迭を求める声が出ている。

 塚田氏は北九州市で1日にあった集会で、自民党の吉田博美参院幹事長から「首相と副総理の地元事業なんだよ」と言われたことを紹介し、「国直轄の調査に引き上げた。私が忖度した」と発言した。3日の衆院厚生労働委員会では、発言が「事実と異なる」として改めて撤回し、陳謝。そのうえで昨年12月20日、国交省副大臣室で吉田氏と会談したことは認めた。

 一方、吉田氏は3日、塚田氏が紹介した自身の言葉について「発言した事実はない」とするコメントを発表。ただ、会談に同席した同省関係者によると、道路事業が話題となり、吉田氏が塚田氏に「僕も一生懸命やるし、国の仕事だよね」などと陳情したという。

 菅氏は3日の記者会見で、塚田氏に対し、2日午後に厳重注意したことを明かした。首相は3日の衆院内閣委員会で「まずは本人からしっかり説明すべきで、そのことを肝に銘じて職責を果たしてもらいたい」と述べ、続投させる考えを示した。

 しかし、政府内には「辞めたほうがいい」(官邸幹部)、自民党内にも「国会で徹底追及される。辞めさせたほうがいい」(参院幹部)との声が出ている。立憲民主党など野党6党は3日、塚田氏の辞任要求で一致した。

 道路事業は、「下関北九州道路」(下北道路)で、山口県下関市と北九州市を関門海峡をまたいで橋かトンネルで結ぶ構想。1998年に国の開発計画に盛り込まれたが、2008年に凍結。安倍政権時の17年度に地元自治体の予算と国の補助による事業化のための調査が再開され、19年度から国直轄調査になった。

 塚田氏は参院新潟選挙区選出で当選2回。今夏の参院選で改選を迎える。

 

野党、塚田副大臣の辞任要求一致(2019年4月3日配信『共同通信』)

 

道路調査めぐる「忖度」発言

 

 野党6党派の国対委員長らは3日、国会内で会談し、山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」の国による直轄調査への移行に関する発言を撤回し、謝罪した塚田一郎国土交通副大臣の辞任を要求する方針で一致した。

 塚田氏は1日に北九州市で開かれた集会で、調査に関し「安倍晋三首相や麻生太郎副総理が言えないので、私が忖度した」と発言。首相の地元の下関市と、麻生氏の地元の福岡県を結ぶ道路整備に関し、現職副大臣として便宜を図ったと受け取られかねない発言で、2日に撤回していた。

 

「忖度」発言の塚田一郎副大臣に菅義偉長官が注意(2019年4月3日配信『産経新聞』)

 

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は3日の記者会見で、山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」の国による直轄調査への移行に関する発言を撤回し、謝罪した塚田一郎国土交通副大臣を注意したことを明らかにした。「二度とこのようなことがないようにしてほしい」と要請した。

 塚田氏は1日に北九州市で開かれた集会で、調査に関し「安倍晋三首相や麻生太郎副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と発言。首相の地元の下関市と、麻生氏の地元の福岡県を結ぶ道路整備に関し、現職副大臣として便宜を図ったと受け取られかねない発言で、2日に撤回していた。

 

塚田副大臣「我を忘れ事実と異なる発言」(2019年4月3日配信『共同通信』)

 

 塚田一郎国土交通副大臣は3日の衆院厚生労働委員会で、撤回に追い込まれた発言をした理由について「大勢が集まる会だったので、我を忘れて誤った発言をした」と釈明した。

 

国交副大臣、「安倍首相と麻生氏を忖度」発言を謝罪(2019年4月2日配信『朝日新聞』)

 

 本州と九州を新たに結ぶ「下関北九州道路」(下北道路)の事業化調査をめぐり、国土交通副大臣の塚田一郎氏は、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の地元事業と紹介した上で、「国直轄の調査に引き上げた。私が忖度(そんたく)した」と語った。北九州市で1日にあった福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で語った。塚田氏は2日、発言を撤回し、謝罪した。

 塚田氏は自民参院議員(新潟選挙区)で麻生派。所管官庁の副大臣が政権中枢に配慮し、その地元へ利益誘導をしたと認める発言で、国会などで批判が出そうだ。

 下北道路は、関門海峡を挟む安倍首相の選挙区の山口県下関市と、中選挙区時代に麻生氏の地盤だった北九州市を結ぶ構想だ。財政難で福田康夫政権時代の2008年に凍結されたが、17年度に地元自治体の予算と国の補助で調査を再開。国は先月29日、19年度からは、国が調査費用を全額負担することを発表した。

 塚田氏は調査が国に移った経緯を説明。副大臣室で面会した自民の吉田博美参院幹事長から「これは総理と副総理の地元の事業だ」と言われ、「分かりました」と応じた、といったやりとりを集会で披露。さらに「総理とか副総理がそんなこと言えません。でも、私は忖度します」と述べた。

 塚田氏は2日、文書で「一連の発言は事実と異なるため撤回し、謝罪する」とのコメントを出した。

 菅義偉官房長官は同日の記者会見で、「本人から丁寧に説明を行うことが必要だ」と語った。

     ◇

 塚田一郎・国土交通副大臣(自民党参院議員)が1日夜、北九州市で開かれた福岡県知事選の自民党推薦の新顔候補の集会で発言した主な内容は、次の通り。

 

 私は麻生太郎(副総理)命、一筋でやってきた。筋金入りの麻生派です。

 私は新潟県連の会長をやってまして、地元も県議選、市議選(が行われている)。帰って応援しようと思ってたが、かわいい弟分の(自民麻生派の)大家敏志参院議員が小倉に来て激励してくれと。渡世の義理には勝てません。麻生派は渡世の義理だけで動いています。ほとんどやせ我慢の団体。私はやせてませんが。私は夏に参院選があるが、自分の票を削って北九州に参った。

 国交副大臣なので、ちょっとだけ仕事の話を。大家さんが吉田博美・自民参議院幹事長と一緒に、「地元の要望がある」と副大臣室に来た。下関北九州道路(の案件)です。

 これは11年前に凍結されているんです。何とかせにゃならん。下関と北九州ですよ。よく考えてください。下関は誰の地盤ですか。安倍晋三総理です。総理から麻生副総理の地元でもある北九州への道路事業が止まっている。

 吉田幹事長が私の顔を見て、「塚田分かってるな、これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。私、すごく物わかりがいいんです。すぐ忖度(そんたく)します。「分かりました」と。

 そりゃ総理とか副総理がそんなこと言えません。でも私は忖度(そんたく)します。この事業を再スタートするには、いったん国で調査を引き取らせてもらいます、と。今回の新年度の予算で、国で直轄の調査計画に引き上げました。

 別に知事に頼まれたからやったわけじゃないですよ。大家敏志が言ってきた、そして私が忖度した、ということですので。

 おそらく橋を架ける形で調査を進めて、できるだけ早くみなさまのもとに、橋が通るように頑張りたい。

     ◇

 塚田一郎・国土交通副大臣(自民党参院議員)が2日、福岡県政記者クラブに文書で送ったコメントの要旨は次の通り。

 

 1日に行われた自民推薦候補の応援演説で、「総理とか副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」「これは総理と副総理の地元の事業だよと言われた」「私は物わかりがいい。すぐ忖度する。分かりましたと応じた」と発言しましたが、一連の発言は事実と異なるため撤回し、謝罪申し上げます。

 下関北九州道路については今般、国において事業の必要性などを鑑み、直轄調査を実施することとしたところです。

 

下関北九州道路建設、「総理と副総理の地元」と迫られ…塚田副国交相「私が忖度」(2019年4月2日配信『毎日新聞』)

 

 

 塚田一郎副国土交通相は1日夜に北九州市であった集会で、山口県下関市と北九州市を結ぶ下関北九州道路の建設計画を巡り、国が今年度から国直轄の調査への移行を決めたことについて、下関市が地盤の安倍晋三首相らを念頭に「私が忖度(そんたく)した」と述べた。利益誘導ととられかねない発言で、塚田氏は2日に謝罪のコメントを出した。塚田氏は自民党参院議員(新潟選挙区)で麻生派。

 下関北九州道路は下関市と麻生太郎副総理兼財務相の勢力圏にある北九州市を結ぶ。塚田氏は福岡県知事選の自民推薦候補の集会で応援演説し、道路建設を推進する県選出国会議員らが副大臣室を訪れ「これは総理と副総理の地元の事業だ」と迫られたと明かした。「私はもの分かりがいい」と応じたとした上で「総理とか副総理がそんなこと言えない。私は忖度した」と語った。

 塚田氏は2日、「一連の発言は事実と異なるため撤回し、謝罪する。国で事業の必要性を鑑み、直轄調査を実施することにした」とコメントした。

 下関北九州道路は関門橋の老朽化などを理由に計画されたが、国は財政悪化から2008年に計画を一旦凍結。17年度から両市の調査への補助金を復活させ、19年度予算に国の調査費約4000万円を盛り込んだ。

 

塚田氏「安倍・麻生氏の意向を忖度」発言(2019年4月2日配信『新潟日報』)

 

撤回し謝罪

 国土交通副大臣を務める自民党の塚田一郎参院議員(新潟選挙区)が、北九州市内の集会で、同市と山口県下関市を新たに結ぶ「下関北九州道路」を巡り、本年度から事業化に向け国直轄調査に移行する決定をしたことについて「総理とか副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と話していたことが2日、分かった。塚田氏は同日、一連の発言を撤回し謝罪した。

 安倍晋三首相が下関、麻生太郎副総理兼財務相が福岡県を地盤にしており、事業を管轄する国交省の現職副大臣が利益誘導を認めたとも受け取れる「忖度」発言は、大きな批判を呼びそうだ。

 塚田氏は1日夜、福岡県知事選に立候補している自民推薦候補の応援演説をするため北九州入りしていた。塚田氏は時期は明かさなかったが、自民党の吉田博美参院幹事長と面会した際、「これは総理と副総理の地元の事業だよ」と言われたことを明かした上で、「私は物分かりがいい。すぐ忖度する。分かりましたと応じた」と話した。さらに「私は筋金入りの麻生派だ」とも強調した。

 この道路を巡っては、2008年3月に当時の自公政権が調査中止を決めたが、17年度から地元自治体による調査を再開。19年度予算で調査費として約4千万円を計上した。

 塚田氏は2日、新潟日報社の取材に「事実に基づかない発言をしてしまい、おわびします」と謝罪した。塚田氏は自民党県連会長を務めている。

 菅義偉官房長官は同日午後の会見で「個々の事業については周辺道路の整備状況や当該事業を行った場合の効果を踏まえて実施を判断している」と説明。「既に(塚田氏から)訂正と謝罪があったと聞いている。本人から丁寧に説明を行うことが必要だ」と述べた。

 

「安倍・麻生氏の意向忖度」 下関北九州道で国交副大臣、利益誘導認める(2019年4月2日配信『西日本新聞』)

 

 塚田一郎国土交通副大臣(自民参院議員)は1日夜、北九州市内の集会で、同市と山口県下関市を新たに結ぶ「下関北九州道路」(下北道路)を巡り、本年度から事業化に向け国直轄調査に移行する決定をしたことについて「総理とか副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と述べた。下北道路は安倍晋三首相が下関、麻生太郎副総理兼財務相が福岡県を地盤にしていることから「安倍・麻生道路」とやゆされてきた。現職副大臣が利益誘導を認めた「忖度」発言は、大きな批判を浴びそうだ。

 塚田氏は同日、福岡県知事選に立候補している自民推薦候補の応援演説をするため北九州入りしていた。塚田氏は時期は明かさなかったが、下北道路建設を推進する自民の吉田博美参院幹事長と面会した際、「これは総理と副総理の地元の事業だよ」と言われたことを明かした上で、「私は物分かりがいい。すぐ忖度する。分かりましたと応じた」と話した。さらに「私は筋金入りの麻生派だ」とも強調した。

 塚田氏は新潟県生まれ。2000〜02年まで麻生氏の秘書を務め、07年、新潟選挙区から参院議員に初当選。現在、麻生派に所属している。

 下北道路は、08年3月に当時の自公政権が調査中止を決めたが、17年度から地元自治体などによる調査を再開。19年度予算で調査費として約4千万円を計上した。

■「発言撤回し謝罪」 塚田副大臣が談話

 塚田一郎国土交通副大臣は2日、一連の発言について「事実と異なるため撤回し、謝罪申し上げます。下関北九州道路については今般、国において事業の必要性などに鑑み、直轄調査を実施することとしたところです」との談話を発表した。

 

国交副大臣が発言撤回 政権幹部の地元に「忖度」(2019年4月1日配信『共同通信』)

 

塚田一郎国土交通副大臣(参院新潟選挙区)は北九州市で1日に開かれた集会で、同市と山口県下関市を結ぶ「下関北九州道路」の国による直轄調査への移行に関し「安倍晋三首相や麻生太郎副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と発言した。2日、発言は事実と異なるため撤回し謝罪すると文書で発表した。

首相の地元の下関市と副総理の地元、福岡を結ぶ道路整備に関し、事業を管轄する現職副大臣として便宜を図ったと受け取られかねず、批判を浴びそうだ。

塚田氏は1日、北九州市で開かれた福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で演説し、党幹部から首相と麻生氏の地元を結ぶ事業であることを指摘された際に「私は物分かりがいい。すぐ忖度する。分かりましたと応じた」と紹介した。

下関北九州道路は2008年に国による調査が凍結されたが、13年度に福岡、山口両県が交通量の調査を再開し、国も17年度予算で道路調査費の補助を始めた。国は19年度予算に調査費を計上した。

 

 

戦後日本型失言(2019年6月3日配信『信濃毎日新聞』―「斜面」)

 

政治家が失言で辞任する。でも、どうも恥じている様子がないのはどうしてだろう。先日亡くなった文芸評論家の加藤典洋さんが、20年前の著書「日本の無思想」で「タテマエとホンネ」を考えた時の問いだ。戦後日本型失言と呼んだ

   ◆

最初は1968年の倉石忠雄農相(衆院旧長野1区)だったとみる。「軍艦や大砲を持たねばだめだ。憲法は他力本願だ」などと発言し、野党が反発、国会が空転した。辞任に至ると「私の理想は理想として、政局を正常に戻すため」との談話を出した

   ◆

迷惑をかけたからタテマエ上は陳謝も辞任もするが、自分の信念(ホンネ)は無傷―。こうした考え方により、恥じない失言が生まれる。さらに言えば、内容の賛否は別にして、戦後日本は「発言はそれなりの理由がある」と了解をしているのだ、と加藤さんの鋭利な論考は続く

   ◆ 

ここでいう戦後日本型の失言と別次元の軽口が政治家から飛び出す時代になった。道路整備で首相らの意向を「忖度(そんたく)します」。同僚議員が「復興以上に大事」。北方領土を取り戻すには「戦争で」。失言とすら呼びたくない軽薄な言葉に、気が重くなる

   ◆

参院選を前に自民党が「失言防止マニュアル」を国会議員に配布したという。老婆心ながら皆さん、失言以前に、暴言や虚言の予防は大丈夫でしょうか。辞任のたび神妙な顔つきで「任命責任は私にあります」と繰り返し、後任者を決めるだけのタテマエには、もうウンザリとしています。

 

[塚田副大臣辞任]国会は「忖度」の解明を(2019年4月7日配信『沖縄タイムス』−「社説」)

 

 安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元の道路整備を巡り、「私が忖度(そんたく)した」と発言した塚田一郎国土交通副大臣が辞任した。

 道路事業を管轄する現職副大臣が便宜を図ったと受け止められかねない「忖度」発言である。辞任は当然だ。

 発言は1日夜、北九州市で開かれた福岡県知事選の自民党推薦候補の応援集会で飛び出した。麻生氏が推す候補で、塚田氏は麻生派である。

 塚田氏は、財政難などから2008年に凍結された「下関北九州道路」の要請で副大臣室を訪れた吉田博美・自民参院幹事長とのやりとりをこう紹介した。

 吉田氏が「塚田、分かっているな。これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ。俺が何で来たか分かるか」と言い、塚田氏は「私は物わかりがいい。分かりました」と応じたという。

 塚田氏は「そりゃ総理とか副総理はそんなこと言えません。私は忖度しました」と明言し、行政の私物化につながりかねないことを自慢げに語ったのである。

 塚田氏は発言が批判されると翌日、「忖度」発言について「事実と異なるため撤回し、謝罪する」と文書で公表。その後の国会でも「(発言)翌日の報道で内容を思い起こし、事実と異なるという認識に至った」と撤回した。

 だが「忖度」発言を否定すれば、選挙向けの集票のために有権者にうそをついて、利益誘導するようなものである。いずれにしても政治家としてあるまじき行為だ。

    ■    ■

 塚田氏の発言は「安倍1強」下で、首相への「忖度」がはびこっている可能性をうかがわせるものである。

 辞任会見で塚田氏は「大きな会合で雰囲気にのまれ、事実と異なる発言をしてしまった」と釈明したが、とても信じられない。むしろ、塚田氏の発言は実名を挙げており、具体的で生々しい。一般的には実際にあったと受け止める人が多いのではないか。

 吉田氏も塚田氏が紹介した自身の発言を否定しているが、副大臣室を訪れたのは昨年12月20日。その後19年度予算に国の直轄調査費が計上された。塚田氏は応援集会で「新年度の予算で国直轄の調査計画に引き上げました」とはっきり言っている。

 行政の公正性がゆがめられることがなかったのかどうか、国会は事実関係を解明する必要がある。塚田氏は詳細な説明をしていない。辞任したからといって説明責任が消えるわけではないのである。

    ■    ■

 森友、加計学園問題で「忖度」が疑われる中、現職国交副大臣が「忖度」を自身の手柄のように語ること自体、政権内で問題を軽く受け止めている証しであろう。

 安倍首相は当初、塚田氏をかばい続け、野党が要求していた罷免を拒否。続投させる考えを示していた。

 塚田氏を事実上更迭したのは統一地方選前半の投開票が7日に迫り、与党内からも批判が出たためである。

 長期政権のおごりと緩みが出ているというほかない。安倍首相の任命責任も厳しく問われなければならない。

 

塚田副大臣辞任 問題に幕引きはできぬ(2019年4月6日配信『北海道新聞』―「社説」)

 

 塚田一郎国土交通副大臣がきのう、山口県と福岡県を結ぶ下関北九州道路計画の国直轄調査再開を巡り、地元の安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相に「忖度(そんたく)した」と述べた発言で引責辞任した。

 巨額の公共事業予算を執行する官庁の副大臣が、行政の公正性を真っ向から否定するような話を選挙集会で手柄のように語る。言語道断であり、発言から5日目の辞任は遅すぎたと言えよう。

 問題の本質は、公共事業予算の箇所付けに、政治家の不透明な関与がいまだに影響力を及ぼしている実態があるのかどうかだ。

 辞任を幕引きとしてはならず、国会は解明を続けねばならない。

 首相は前日まで「塚田氏は職責を果たしてもらいたい」と、野党側の罷免要求を拒否していた。

 「事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と言ったにもかかわらずだ。本人の発言撤回と謝罪で事態を乗り切れると考えていたなら、認識が甘すぎる。

 決裁文書改ざんがあっても麻生氏を続投させたように責任の所在を明確にせず、けじめをつけない政権の慢心が新たな問題を引き起こしている側面は否定できまい。

 忖度発言は昨年末に塚田氏が、参院自民党の吉田博美幹事長から要望を受けたことが発端だ。吉田氏は自民党で、下関北九州道路の「整備促進を図る参院議員の会」の会長を務めている。

 この際に吉田氏から、首相と副総理の地元事業だと「分かっているな」と念を押されたと塚田氏は発言したが、吉田氏は否定し、塚田氏も撤回した。

 ではどんなやりとりがあったのか。塚田氏と吉田氏は国会に参考人出席し、説明するべきだ。

 道路計画の推進に向け、首相は与党議員有志の会の要望書に名を連ね、麻生氏は整備促進期成同盟会の顧問を務めている。

 地元では「安倍・麻生道路」と呼ぶ声もあったという。

 政府は調査目的として、関門海峡を通る第3の道路として渋滞緩和や災害時の代替機能の検討といった観点を挙げている。だが、こうした理由で地元が整備を要望している道路は全国に少なくない。

 必要性より、首相と副総理の顔を立てたというのが実情ではないか―。そんな疑念を招いたのが塚田発言にほかならない。

 公共事業を私物化するような利益誘導政治を根絶し、予算執行の透明化を図る。長年指摘され、克服できていない課題に政府・与党は真剣に取り組む必要がある。

 

(2019年4月6日配信『河北新報』―「河北春秋」)

 

<またか まただ またまたか またまたさ なれっこだな なれっこさ よくないな よくないよ どうする どうしよう 怒るか 怒ろう プン プン>。詩人谷川俊太郎さんの「また」という詩。政治家や官僚の問題発言を聞くたびに思い出す

▼失言で物議を醸す代表格と言えば、麻生太郎副総理兼財務相。今回は麻生氏を「おやじ」と慕う側近の発言が問題になった。きのう辞任した塚田一郎国土交通副大臣の発言である

▼麻生氏と安倍晋三首相の地元の道路整備を巡り、北九州市であった集会でこう語った。「首相や副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」。事業を管轄する副大臣があからさまに利益誘導を認めるとは、開いた口がふさがらない

▼驚いたのは本人の弁明。「大勢の人が集まる会で、我を忘れて誤った発言をした」。「記憶がない」はよく耳にするが、「我を忘れた」という言い訳は初めて聞いた。セクハラ発言やパワハラ発言をしても「我を忘れていた」と言えば、許されると考えているのだろうか

▼辞任しても真相は闇に包まれたまま。近年、他の政治家の発言が問題化したケースでも説明責任は果たされることはなかった。国民が忘れるのを待つだけである。真摯(しんし)に、丁寧に、しっかりと。そんな決まり文句がむなしく響く。

 

(2019年4月6日配信『デイリー東北』―「天鐘」)

 

諺に「語るに落ちる」がある。何気なく話しているうちに、つい真実を漏らしてしまうことをいう。北九州道路の建設計画を巡り、あろうことか主管の塚田一郎副国交相が「私が忖度(そんたく)した」と発言。辞任した

▼諺の前には「問うに落ちずに」が付く。問えば何も言わないが、勝手に話させておけば言ってはいけない秘密をうっかり漏らす。そんな“墓穴”を掘る人は結構いる

▼だが、政界と世間をあれほど揺るがし、昨年の流行語にもノミネートされた「忖度」を、容易たやすく「私が忖度」と言ってのける感覚が理解できない。“もりかけ”の忖度に終始した昨年の議論の何を聞いていたのか

▼昨年、安倍首相は再三にわたり「責任を痛感している。膿(うみ)を出し切る」と繰り返した。だが参院選を控えた統一地方選の最中、副大臣が首相と副総理のお膝元で、消えかけた熾火(おきび)に大量の油を注いでしまった

▼集会での“受け狙い”とか、安倍一強の“奢り”といった感覚的問題ではない。野党が指摘するように血税を私物化する利益誘導政治の跳梁(ちょうりょう)、果ては民主主義の根幹である「言葉」への責任を揺るがす危機である

▼だが問われるべきは「アウト」なのに端(はな)から罷免や更迭を否定、事態の収拾を図ろうとした安倍首相らの感覚だ。忖度以来、国民はいくら議論しても無駄という諦念と無力感に苛(さいな)まれている。民主主義の命である言葉が瀕死の状態に陥っている。

 

塚田副大臣更迭 私物化なら許されない(2019年4月6日配信『秋田魁新報』―「社説」)

 

 安倍晋三首相と麻生太郎副総理の地元の道路整備を巡り、「私が忖度(そんたく)した」などと発言した塚田一郎国土交通副大臣が5日、辞表を提出した。事実上の更迭だ。地方統一選のさなか、さらには夏の参院選を控え、安倍政権にとって大打撃である。

 問題の道路は、関門海峡を挟んで山口県下関市と福岡県北九州市を結ぶ「下関北九州道路」。山口県は安倍首相、福岡県は麻生氏の地元だ。塚田氏の発言は、道路を管轄する現職の国交副大臣として両氏の地元に便宜を図ったと取れる驚くべき内容である。これが本当なら、首相だから、副総理だから特別扱いしたことになる。明らかな行政の私物化であり、到底許されるものではない。

 忖度発言は北九州市で1日に開かれた福岡県知事選候補の応援集会の演説で行われた。翌日慌てて撤回したものの、副大臣としての発言は極めて重く、撤回すれば済むような話ではない。塚田氏は会見で「国政の停滞を招いた」と謝罪したが、取り返しがつかない。辞任は当然であり、むしろ遅きに失したと言える。

 下関北九州道路の整備は地元自治体や経済関係者が長年要望している。財政難などから2008年に国による調査が凍結されたが、13年度に山口、福岡両県が再開させ、19年度から国の直轄調査に移行となった。

 塚田氏は応援集会で、この国直轄調査移行について、自身の忖度の結果だと吹聴。首相や副総理が要望するわけにはいかないから、その思いをくみ取って19年度予算で国直轄に引き上げたなどと、まるで自身の手柄であるかのように語った。

 他の国会議員との生々しいやりとりも紹介。吉田博美自民参院幹事長らが下関北九州道路に関する要望のため副大臣室を訪問した際、「塚田、分かっているな」「これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と告げられ、「分かりました」と応じたという。

 発言に対する批判を受け、「大変大きな会合で雰囲気にのまれ、事実と異なる発言をしてしまった」などと釈明したが、信じられない。あまりに具体的過ぎる。どこがどう異なるのか、国民に分かるよう丁寧に説明すべきだ。

 政府の対応は後手に回ったと指摘せざるを得ない。安倍首相は当初、塚田氏を擁護する姿勢を見せていた。だが批判の大きさに耐え切れず、急きょ方針転換した。塚田氏の発言は政治への信頼を大きく損なう重大事だ。地元の事業に関わる問題だからこそ毅然(きぜん)と対応するべきだった。長期政権による緩みが生じているのではないか。

 塚田氏が辞任しても、国民の政治に対する不信は払拭(ふっしょく)されない。下関北九州道路の調査の国直轄移行はどのようにして決まったのか。国会での徹底究明が不可欠だ。辞任を問題の幕引きにしてはならない。

 

塚田副大臣辞任 あきれた勘違いの果て(2019年4月6日配信『岩手日報』―「論説」)

 

 「1強」安倍政権の要職に就いて、その威光を背景に何でもできると思い込む。そして、あからさまな利益誘導を誇らしげに語る。

 あきれた勘違いの果てと言うべきか。塚田一郎国土交通副大臣が5日、道路整備を巡る「忖度(そんたく)」発言の責任を取って辞任した。

 発言は、北九州市で1日開かれた福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で出た。同市と山口県下関市を結ぶ道路について、本年度予算で自分が国の調査計画に引き上げたと明らかにした。

 下関は安倍晋三首相の地元で、北九州は麻生太郎副総理の地盤に近い。立場上、首相や副総理は予算要望を言えないから、自ら「忖度した」と明言している。

 しかも、道路整備に関して自民党の吉田博美参院幹事長らから要請を受けたことにも言及した。「これは総理と副総理の地元の事業なんだよ」と頼まれたという。

 あまりに生々しい利益誘導の告白であろう。忖度により税金の使い道をねじ曲げたことをむしろ自慢するとは、開いた口がふさがらない。

 下関と北九州を結ぶ道路計画は、財政難などから11年前に凍結されている。塚田氏は発言を撤回したが、本年度に調査計画として息を吹き返したのは、いかにも不自然と見るべきだろう。

 行政の公平性を揺るがした責任は極めて重い。塚田氏の辞任は当然だ。発言が明らかになった時点で安倍首相が直ちに更迭すべきであり、遅きに失したと言える。

 だが首相は当初、「職責を果たしてほしい」とかばい、罷免を拒否した。塚田氏が盟友・麻生氏の派閥に属することや、投開票を控えた統一地方選前半への影響を考慮したとみられる。

 新元号「令和」の発表による内閣支持率の上昇も頭にあったかもしれない。しかし、時間がたてば問題発言への逆風がやむと考えるのは、国民に生じた行政への重大な疑念を見誤っている。

 もっとも今回の問題は、一副大臣の資質で片付けられない。政権にはびこる慢心や思い上がりが、たまたま表れただけではないか。

 安倍政権では、森友・加計問題で首相に対する役所の「忖度」が浮かび上がった。不明朗な政策決定に、衆院議長が「民主主義の根幹を揺るがす」とまで指摘した。

 思い上がりととれる発言は取り巻きの役所にも及ぶ。先月は内閣法制局長官が国会で野党議員を批判し、撤回、謝罪に追い込まれた。

 長期政権のおごりが政権の体質になったとすれば見過ごせない。他にも不自然な予算付けや行政運営がないか、厳しい目を向けねばならない。

 

国交副大臣の忖度発言 辞任で幕引きにするな(2019年4月6日配信『茨城・山陰中央新報・佐賀新聞』―「論説」)

 

これで幕引きにしてはならない。

塚田一郎国土交通副大臣が、道路整備を巡って「安倍晋三首相や麻生太郎副総理(兼財務相)が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と発言した問題で辞任した。安倍首相は当初、続投させる構えだったが、統一地方選や衆院補欠選挙への影響を抑えるため方針転換したとみられる。

発言は国交省の首脳が所管する行政を私物化した上、選挙向けにそれを誇るような内容で、副大臣辞任だけでは済まされない。学校法人「森友学園」を巡る一連の問題で焦点となった忖度という言葉を使う軽薄さも尋常ではない。

1強状態が長期にわたる安倍政権のおごりと緩みを象徴する言動でもある。

塚田氏は参院議員も辞職するとともに政府、国会双方で忖度など行政をゆがめる行為がなかったのか事実関係を明らかにする必要がある。

塚田氏の発言は1日、北九州市で開かれた福岡県知事選の応援集会で飛び出した。

副大臣室を訪れた吉田博美・自民参院幹事長から、安倍首相の地元の山口県下関市と、麻生氏の地元の福岡県を結ぶ「下関北九州道路」の国直轄調査について「これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」「俺が何で来たか分かるか」と言われたと紹介。「私は忖度しました」と断言した。

下関北九州道路は、関門海峡を挟んだ下関市と北九州市を結ぶ「第3の関門道」として地元自治体や経済関係者などが長らく整備を求めている。財政難などを理由に2008年に凍結されたが、19年度から国の直轄調査が決まった。塚田氏は「今回の新年度の予算で国直轄の調査計画に引き上げました」とも強調していた。

事実であれば、首相らに対する配慮で行政をねじ曲げたことになる。報道を受け、塚田氏は翌日、文書で事実と異なる発言だったとして撤回、謝罪。3日には衆院厚生労働委員会などで「大勢が集まる会だったので、われを忘れて誤った発言をした」「忖度したことはないし、首相、副総理の地元だから特別な配慮をしたことはない」と釈明した。

安倍首相も「有権者の前で事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と事実関係を否定する塚田氏の説明を追認。罷免要求に対しては「本人がしっかり説明し、このことを肝に銘じ職責を果たしてほしい」と否定していた。

しかし、塚田氏の発言は極めて具体的で「われを忘れたことによる誤った発言」とはとても思えない。政府、国会は今後、関係者から事情を聴くなど調査を行うべきだ。

仮に塚田氏の主張通り事実ではなかったとしても、発言は7日投開票の福岡県知事選の自民党推薦候補を応援する集会でなされている。さらに国の直轄調査は、選挙の対抗馬である「(現職)知事に頼まれたからではありません」とも述べているという。権限乱用による利益誘導で選挙戦を有利にしようとしたと見るのが自然だ。

塚田氏があくまでも議員を辞職しないのであれば自民党が促す必要がある。昨年10月の内閣改造で「適材適所」として塚田氏を国交副大臣に任命した安倍首相が率先しなければならないことは言うまでもない。

 

忖度発言で副大臣辞任 首相は当初なぜかばった(2019年4月6日配信『毎日新聞』−「社説」)

 

 塚田一郎副国土交通相が山口、福岡両県を結ぶ道路整備に関し安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の意向を「忖度(そんたく)した」などと発言した責任を取って、きのう辞任した。

 福岡県知事選の応援集会で語った、地元への露骨な利益誘導と受け取られる発言だ。辞任は当然である。むしろ問題なのは、安倍首相が当初「職責を果たしてほしい」と塚田氏をかばったことではないか。

 一転して辞任に至ったのは統一地方選の最中であり、世論の批判に加えて自民党内からも「このままでは選挙が戦えない」との声が強まったからだろう。首相が「責任を取る必要はない」と考えていたとすればこれも緩みやおごりの表れである。

 塚田氏は辞任の理由を「事実と異なる発言で迷惑をかけた」などと語った。首相らも「事実と違う」という点を強調している。

 では、事実と異なる点とは何を指すのか。首相らの意向を忖度して建設計画に国直轄の調査費をつけたという話自体が間違いだったということで首相らは収拾したいようだ。

 だが塚田氏は道路建設に関して参院自民党幹部らから要望を受けた際「俺が何で来たか分かっているか」と言われた点をはじめ、詳細なやり取りを演説で明かしている。その全てが作り話だったのだろうか。

 総事業費が2000億円以上とされる巨大公共事業に関わる問題だ。今後も国会で経緯の解明が必要だ。

 安倍政権では桜田義孝五輪担当相をはじめ、閣僚らの暴言や失言が相次いでいる。にもかかわらず首相は大半の閣僚を続投させてきた。

 最たる例が麻生氏だ。森友問題で財務省が前代未聞の決裁文書改ざんに手を染めた際も、省のトップである麻生氏は不問に付した。

 首相は必ず「説明責任を果たしてもらいたい」とは口にするが、その後関係者が十分に説明を尽くした例はほとんど見られない。

 国会は数の力で押さえているから予算や法案審議には影響しないと高をくくっているのかもしれない。だがけじめをつけてこなかった結果、政治のモラルは低下する一方だ。

 これほど批判されている忖度という言葉を塚田氏がひけらかしたのも、著しく節度が失われているからだろう。反省はそこからだ。

 

塚田副大臣辞任 思慮を欠く発言にあきれる(2019年4月6日配信『読売新聞』―「社説」)

 

 職責の重さを自覚しない発言にあきれるばかりだ。辞任を巡る安倍内閣の対応も後手に回った。緊張感を欠いていると言わざるを得ない。

 塚田一郎国土交通副大臣が辞任した。山口、福岡両県を結ぶ道路に調査費が計上されたことを踏まえ、安倍首相と麻生副総理の意向を「忖度そんたくした」と発言した責任を取ったものだ。

 公共事業を所管する副大臣として、資質を疑う。野党は国会で追及する構えを取っており、自民党内でも統一地方選や夏の参院選への影響を懸念する声が強まっていた。事実上の更迭とみられる。

 首相は記者団に、「改めて気を引き締め、国民の負託に応えていかなければならない」と語った。態勢の立て直しが急務だ。

 塚田氏が発言したのは、福岡県知事選での新人候補の集会だ。

 現職に麻生氏が推す新人が挑む保守分裂の構図だ。麻生派の塚田氏は、劣勢とされる陣営をテコ入れしようとして、政権の取り組みを誇示したのだろう。利益誘導を図ったと受け取られかねない。

 事実と異なるとして、後に発言を撤回したが、そうであれば、有権者を欺いたことになろう。選挙向けのアピールとはいえ、軽率の誹そしりは免れない。

 首相は当初、続投させる考えを明言していた。対応が遅れた背景には、塚田氏が参院新潟選挙区で改選を迎えるという事情もある。定数減で1人区となっており、選挙直前の辞任は避けたいとの判断が働いたのではないか。

 森友、加計学園の不祥事について、野党は、官僚による首相への忖度が働いた結果ではないか、と繰り返し追及してきた。塚田氏の今回の発言が、野党の政権批判を勢いづかせた面はある。

 安倍内閣では、昨年1月に国会でヤジを飛ばした松本文明内閣府副大臣が事実上、更迭され、言い間違いを重ねた江崎鉄磨沖縄・北方相は2月に辞任した。

 長期政権ゆえの驕おごりや緩みが目立つ。惰性を排して、政策面で結果を出さねばならない。

 公共事業の選定にあたっては、透明性を確保するとともに、丁寧な説明が求められる。

 問題となった下関北九州道路は、海峡を橋などで結ぶ構想である。財政難を理由に、2008年に調査が凍結されていた。

 地元自治体などには、災害時の代替ルートとして、必要性を訴える声が強い。費用対効果などを慎重に吟味し、事業の是非を適正に判断しなければならない。

 

国交副大臣辞任 政権に緩み、おごりないか(2019年4月6日配信『北国新聞』―「社説」)

 

 政治家の軽率極まりない発言による辞任劇の繰り返しは嘆かわしい。塚田一郎氏の「忖度(そんたく)発言」はあさはかで罪深く、国土交通副大臣にとどまれるものではなかった。こうした不用意な発言の背景に、長期政権の緩みやおごりがあるとすれば、厳しく戒められなければならない。安倍晋三内閣は、公正・公平であるべき政治、行政に疑義を持たれることがないよう、襟を正して新時代の政権運営に当たってほしい。

 塚田氏の問題発言は、福岡県知事選の応援演説で飛び出した。安倍首相、麻生太郎副総理・兼財務相それぞれの地元である山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」建設計画の調査が、自治体主導から国直轄になったことについて、「安倍首相や麻生副総理が言えないので、私が忖度した」などと発言したという。

 下関北九州道路は「第3の関門道」として地元自治体が整備を望んでいる。もともと国費の調査が行われていたが、2008年に凍結され、その後、13年度に福岡、山口両県が交通量調査を再開し、国も17年度予算で補助を始めた。国直轄調査への移行について国交省は、現在の関門トンネル・関門橋の交通状況や自然災害対応などを勘案して判断したという。

 調査費の計上は、必ずしも事業化を意味しておらず、今後、費用対効果などを検証した上で建設の是非を公正に判断しなければならないことは言うまでもない。

 塚田氏は「大きな会合の雰囲気にのまれ、事実と異なる発言をしてしまった」と釈明し、忖度発言を撤回して謝罪した。そうであったとしても、政権運営に支障をきたす危険性にまったく想像力が及ばず、結果として、地元が切望する公共事業の足を引っ張り、応援する福岡県知事選候補に迷惑をかける恐れもある、愚かな発言であったと言わざるを得ない。

 これまでの政治改革の目標は、利益誘導型政治の弊害をなくすことや、副大臣や政務官登用による真の「政治主導」の行政実現にあったはずである。塚田氏の言動は、政治主導のはき違えともいえ、各議員に自省を望みたい。

 

塚田副大臣更迭 説明責任果たしていない(2019年4月6日配信『新潟日報』―「社説」)

 

 副大臣という公職への自覚を欠いた無責任な発言で国民や県民を裏切り、政治不信と混乱を招いた罪は極めて重い。辞任は当然である。

 ただし、問題の発言について説明責任が果たされたとはいえない。これで落着とするわけにはいかない。

 参院新潟選挙区選出の塚田一郎国土交通副大臣が、道路整備を巡る「忖度(そんたく)」発言の責任を取って辞任した。

 統一地方選や国政選挙への影響を抑えるため、事実上更迭されたとみられる。議員辞職については否定している。

 塚田氏は今月1日の福岡県知事選の応援集会に出席し、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の地元を結ぶ「下関北九州道路」について、両氏の意向を忖度して国の直轄調査に引き上げたという趣旨の発言をした。

 発言が報道され、塚田氏は撤回。「予算の私物化」「利益誘導」との野党の批判に、「事実でない」「大勢が集まる会だったので、われを忘れて誤った発言をした」と釈明した。

 首相は塚田氏の罷免を繰り返し拒み、塚田氏本人も「説明責任をしっかりと果たすことで職責を全うしたい」などと述べていたが、自民党内からも批判が強まる中で耐えきれなくなった格好である。

 だが、塚田氏の釈明は説得力を欠く。発言では、自民党の吉田博美参院幹事長に「これは総理と副総理の地元の事業」などと言われたと明かしていた。会話の内容は具体的だ。事実でないとは、にわかに信じ難い。

 事実と異なる発言をした理由については、大勢の集会で「われを忘れた」と説明したが、こちらもふに落ちない。政治家が多くの人の前で話すことは日常的な行為のはずだ。

 国民をごまかすような言い方でなく、納得がいくようきちんと説明してもらいたい。

 塚田氏は副大臣として、所管事業に関し国民にうそをついたことになる。大勢の集会で「われを忘れて」ミスリードしたのが本当なら、政治家としての資質に疑問符が付こう。

 今回の問題はそれほど重いのだということを、肝に銘じなければならない。

 首相は塚田氏の「忖度」発言を受け、本人のしっかりとした説明を求めていた。改めて明確に指示すべきだ。

 辞任によって問題の幕引きを急ぎ、説明責任がうやむやになるようなことがあれば、政権の自己都合優先、国民軽視のそしりは免れまい。

 塚田氏は自民党県連会長である。本県自民党を束ねる立場にある人物が、今回のような発言で世間を大きく騒がせたことは甚だ情けない。失望感を抱いた県民は少なくないだろう。

 「麻生太郎命」「筋金入りの麻生派」。塚田氏は福岡の集会でこうアピールし、「忖度します」と聴衆に語り掛けた。

 有権者より派閥を優先するような内向き体質が、問題発言につながる緩みを招いた。そう思わざるを得ない。

 

「忖度」副大臣辞任 なかったとは信じ難い(2019年4月6日配信『中国新聞』―「社説」)

 

 下関北九州道路の整備について「私が忖度(そんたく)した」と発言した自民党の参院議員塚田一郎氏が責任を取り、国土交通副大臣を辞任した。

 安倍晋三首相、麻生太郎副総理の地元に絡めた発言は、利益誘導を示唆する内容である。行政の公平性を疑わせた責任は重く、辞任は当然だ。

 道路事業を管轄する国交副大臣が首相らの意向をくんで便宜を図ったのならば「予算の私物化」に他ならない。忖度は「うそだった」と塚田氏は弁明したが、果たして真相はどうか。この道路に限らず、忖度による事業の有無を徹底的に検証する必要がある。

 安倍首相にも責任がある。野党に追及されても、塚田氏の罷免を拒んでいた。忖度発言の重大性に思いが至らなかったか。塚田氏への注意のみで幕引きを図ろうとした姿勢は到底信じられない。任命責任とともに厳しく問わねばなるまい。

 「首相や副総理は言えないので、忖度した」。塚田氏の発言は1日、北九州市での集会で飛び出した。

 昨年末に下関北九州道路について党幹部から要望を受けた際に、首相の地元と副総理の地元を結ぶ道路と言われ、塚田氏は「私は物分かりがいい」ので、すぐ忖度したそうだ。

 党幹部や福岡県選出参院議員との会談内容を詳細に明かし、得意げに話していたというからあきれてしまう。議員辞職を否定しているが、議員としても不適格だろう。

 「安倍麻生道路」とも呼ばれる、くだんの道路の建設構想は11年前に自公政権の下、国の財政難のため凍結された。しかし第2次安倍政権が発足すると、山口、福岡両県の自治体や経済界が実現への働き掛けを活発化していた。

 道路の調査費計上が決まったのは、昨年末に党幹部らが要望した後である。塚田氏は党幹部らとのやりとりを極めて具体的に紹介した上で、忖度したと述べている。発言を撤回、謝罪したとはいえ、忖度がなかったとは信じられない。むしろ忖度どころか、指示されて従ったのではないかと疑いたくなる。

 下関北九州道路は費用対効果をはじめ、改めて必要性を検討することが求められる。

 それにしても忖度がつきまとう政権である。森友学園、加計学園の問題でも、官僚による首相への忖度が疑われ、追及されている。解明が不十分だとして国民はまだ疑惑の目を向けている。にもかかわらず、今度は副大臣が自慢げに語るという無神経ぶりである。

 安倍政権の1強状態が続くがおごりと緩みもここまで極まったかとの感が拭えない。

 麻生氏が推す福岡県知事選の自民党推薦候補の応援集会で、発言した点も問題だ。麻生派の塚田氏は露骨に利益誘導を語ることで派閥の領袖(りょうしゅう)の権勢を有権者にアピールし、選挙を有利に運ぶ狙いだったとみられる。もはや政治モラルを無視することにも、ためらいはないのか。

 統一地方選や夏の参院選への影響を最小限に抑えるために、副大臣辞任で幕引きを図ったのに違いない。だが忖度による予算の私物化という疑惑である。行政の公平性のため、引き続き国会で追及し、事実関係を明らかにせねばならない。

 

人を動かす(2019年4月6日配信『愛媛新聞』―「地軸」)

 

 「ちょっと待てよ」。誰かに何か言いたくなったときは、こうつぶやいて口をつぐむことも人間関係をつくる上で大事だ。そうすれば決定的なトラブルが回避できるかもしれない

▲教育学者の斎藤孝さんが、世界的ロングセラーの一冊「人を動かす」(D・カーネギー著、創元社)を自著で読み解いている。確かに、口に出そうになった言葉をのみ込み、後で「言わなくてよかった」と、ほっとすることがある

▲この人は、「言ってしまった」と悔いているのだろう。塚田一郎国土交通副大臣である。「総理や副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と発言した問題の責任を取って辞表を提出した。事実上の更迭だ

▲ただ、後悔しているのは発言自体ではなく、職を辞すことになった結果だけかもしれない。弁明を聞くと、忖度が行政の公平性を揺るがしているという現状への認識が足りないように思う

▲塚田氏が「おやじ」と呼んで慕うのが麻生太郎副総理兼財務相だ。こちらも度重なる問題発言で、何度も撤回や謝罪をしている。どこまで反省しているのか分からないが、職を返上して責任を取る気はないらしい

▲斎藤さんは著書で、人を変えようとするなら、相手の顔を立て遠回しに要望して変わってもらうのが大人のやり方だと教えている。見識を疑う暴言や失言を繰り返す政治家たちにもこの方法でお願いしたら、変わってもらえるだろうか。「人を動かす」のは難しい。

 

副大臣の忖度発言 辞任で幕引きは許されぬ(2019年4月6日配信『徳島新聞』―「社説」)

 

 塚田一郎国土交通副大臣が辞任した。事実上の更迭だ。

 塚田氏は選挙応援で、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の地元の道路建設を巡り、「首相や副総理が言えないので、私が忖度した」と発言、批判を浴びた。

 現職副大臣が利益誘導を認めたとも受け取れる重大な発言で、到底看過できない。

 野党の罷免要求を再三、拒否していた首相も、統一地方選や7月の参院選への影響などを考慮し、一転して更迭に踏み切ったようだ。

 ただ、これで済む話ではない。塚田氏は「事実と異なる発言」として撤回したものの、説明責任を果たしていない。事実関係を明確にする必要がある。首相の任命責任も問われよう。

 塚田氏が発言したのは、1日に北九州市で開かれた福岡県知事選の自民推薦候補の集会だ。

 北九州市と山口県下関市を新たに結ぶ「下関北九州道路」について、首相と麻生氏の地元事業だと紹介したうえで、自らが国直轄調査とすることを決めたと明言した。

 塚田氏は自民党参院議員で麻生派に所属している。知事選では麻生氏が擁立した候補が劣勢とされていることから、麻生氏の存在感をアピールする意図もあって「忖度」という言葉を持ち出したのかもしれない。

 選挙応援では、誇張や真偽が不明確なことも少なくない。しかし、発言の経緯や背景などをみると、「事実と異なる」との言い訳は、釈然としない。

 下関北九州道路の建設構想は、1998年策定の全国総合開発計画(全総)に明記されたが、その後、国の財政難などから凍結された。2012年に第2次安倍政権が発足し地元で実現に向けた動きが活発化。19年度からの調査再開が決まり、予算が付いた。

 塚田氏は国の直轄調査への移行に関して昨年12月20日、自民党の吉田博美参院幹事長から要望を受けたと説明したが、吉田氏は関与を否定するコメントを発表した。

 これに対し、国交省は要望を受けた際、道路局長や担当課長も同席していた可能性があると説明している。

 公平であるべき公共事業を恣意的に行っていたとの疑念が生じている。塚田氏の更迭で幕引きにしてはならない。

 森友・加計学園問題では、政権幹部らへの官僚の過度な忖度により、行政がゆがめられたと批判された。塚田氏はその認識も欠如している。

 これまでも度々指摘されてきた安倍政権の「慢心と緩み」によるものだろう。

 ところが、首相はこうした指摘を軽く見ているようだ。官僚らの失言や不祥事があっても罷免しなかったことに表れている。

 身内に甘い姿勢は党内の支持は得られても、国民の意識とは乖離するばかりだ。政治不信が高まることも懸念される。首相はもっと危機感を持つべきだ。

 

(2019年4月6日配信『徳島新聞』―「鳴潮」)

 

驚きの筋書きをその通り体現した選手たちに賛辞を送りたい。選抜高校野球で東邦(愛知)が優勝した。富岡西高が善戦した、あのチームである。平成最初のセンバツの王者が平成最後の大会を制するとは

 一方こちらには、もはや驚きもしない、賛辞も送れない。平成の国政は辞任に始まり、辞任に終わりそうだ。首相と副総理の地元の道路整備を巡って、塚田一郎国土交通副大臣が失言の責任を取りポストを辞した

 「私が忖度した」。財政難で凍結されていた事業が再び動き出したのだから、露骨な利益誘導にほかならない。批判に慌て「事実じゃなかった」と前言を翻したが、こちらの方こそ本当かどうか。選挙向けのリップサービスだったとしても、あまりに有権者を愚弄している

 平成元年は辞任ラッシュだった。当時の宇野宗佑首相が、参院選大敗に女性問題が重なって退陣。次の政権の官房長官も女性問題で。違法献金で身を引いた大臣もいた

 始まりと終わりに限らない。この30年を振り返れば、辞めた閣僚のあの顔、この顔が浮かぶ。次代に引き継ぎたくない流れである

 7日には知事選・県議選が控えている。政治家なんてこんなものと10代の有権者が失望し、投票意欲がなえたりしてないだろうか。だとしても覚えておいてほしい。政治は、選挙でなければ変えられない。

 

[国交副大臣発言] 辞任で幕引き許されぬ(2019年4月6日配信『南日本新聞』―「社説」)

 

 安倍晋三首相と麻生太郎副総理の地元の道路整備を巡り、「忖度(そんたく)した」と発言した塚田一郎国土交通副大臣が辞任した。事実上の更迭とみられる。
 撤回したとはいえ、政治的な利益誘導を公の場で堂々と言い切ったあまりに不見識な発言であり責任は重大だ。更迭は当然で、むしろ遅すぎる。
 「安倍1強」の政治状況の下、政権のおごりと緩みが極まった感がある。本当に忖度など行政をゆがめる行為はなかったか。塚田氏を任命した安倍首相が率先して、事実関係の徹底解明に取り組むべきである。辞任で幕引きは許されない。
 発言は1日、北九州市で開かれた福岡県知事選の応援集会で飛び出した。
 塚田氏は、副大臣室を訪れた自民党の吉田博美参院幹事長から、安倍首相の地元の山口県下関市と麻生氏の地元の福岡県を結ぶ「下関北九州道路」の国直轄調査に関し、「これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」「俺が何で来たか分かるか」と言われたと紹介。「首相や副総理が言えないので、私が忖度した」と発言した。
 下関北九州道路は、2008年に財政難などの理由で国による調査が凍結されたが、19年度から国による直轄調査が決まった。塚田氏は「新年度予算で国直轄の調査計画に引き上げました」とも明言していた。
 事実とすれば、政権幹部への配慮で税金の使い道をねじ曲げたことになり、露骨な利益誘導と言える。
 報道を受け、塚田氏は翌日、事実と異なる発言だったとして文書で撤回、謝罪した。ならば、虚偽の発言をして有権者の歓心を買おうとしたのか。いずれにしても、政治家としてあるまじき言動である。
 理解できないのは、安倍首相が塚田氏の釈明を追認し、野党の罷免要求を重ねて拒否したことだ。首相は問題発言を繰り返す桜田義孝五輪相もかばい続けている。こうした身内に甘い姿勢が政権内に緩みを生んではいないか。
 森友、加計学園問題で首相側に対する官僚の忖度で「行政がゆがめられた」との批判を招いた安倍政権である。一連の問題で焦点となった「忖度」という言葉を不用意に使う軽率さもさることながら、野党に「利益誘導」との攻撃材料を与えたことは安倍政権にとって大きなダメージに違いない。
 あす投票が行われる統一地方選や参院選への影響を懸念する声が与党内に広がっていた。ここに来て更迭に踏み切ったのは、問題の幕引きを急ぎたいからにほかならない。
 だが、塚田氏の発言は極めて具体的で「われを忘れたことによる誤った発言」とはとても思えない。政府と国会は、関与を否定した吉田参院幹事長を含め、関係者から事情を聴くなど国民が納得するまで調査すべきである。

 

塚田国交副大臣更迭 利益誘導は行政ゆがめる(2019年4月6日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 本当のことを言ったのか、それとも、うそをついたのか。作り話にしては内容が具体的で、込み入っている。「忖度(そんたく)」発言で事実上、更迭された塚田一郎国土交通副大臣(参院議員)のことだ。

 塚田氏は、山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」の国直轄調査への移行に関し、安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相が言えないので私が忖度した―などと述べた。北九州市で1日に開かれた福岡県知事選の自民党推薦候補の集会でのことだ。

 下関市は安倍首相の地元だ。北九州市は麻生副総理の中選挙区時代の地盤である。事実であれば、利益誘導にほかならず、断じて許されない。

 塚田氏は発言が問題化するや、事実と異なっていたとして撤回し、謝罪する旨を文書で発表した。これを額面通り受け取っていいのか、にわかには判断しかねる。

 自民党の吉田博美参院幹事長が副大臣室を訪れ「これは総理の地元と副総理の地元の事業」などと述べたことを紹介するなど、細かいやりとりにまで言及していたからだ。

 西日本新聞の報道によると、塚田氏は、吉田氏との面談について触れた上で「私は物わかりがいい。すぐ忖度します。『分かりました』と。総理とか副総理はそんなこと言えません。私は忖度しました。(中略)新年度の予算で国直轄の調査計画に引き上げました」などと明言している。

 下関北九州道路は財政難などから2008年に凍結されていた。調査費計上が決まったのは、吉田氏から要望を受けた後だ。吉田氏は関与を全面否定するコメントを発表したが、そのような趣旨のやりとりは本当になかったのだろうか。国民に向けてきちんと説明すべきだ。

 九州と本州を結ぶ幹線道路は、関門国道トンネル(1958年開通)、関門橋(73年開通)があるが、老朽化が進んでいる。補修工事などで渋滞したり、通行止めになったりすることが多いという。

 このため、地元自治体や経済関係者は「第3の関門道」として下関北九州道路の整備を求めてきた。関門トンネル、関門橋の代替機能を確保する意義は理解できる。

 とはいえ、有力な政治家の「我田引水」で恣意(しい)的な予算配分が行われるのなら、公平公正であるべき行政をゆがめてしまう。

 塚田氏は4日の参院決算委員会で「大勢の会合で熱が入った。うそを言っているとの認識で発言したわけではない」などと釈明した。

 安倍首相は「有権者の前で事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と答弁したが、どうしてそう言い切れるのか。塚田氏を任命した首相には、発言の真偽を含め事実関係を調べて明らかにする責任があるはずだ。

 問題の核心は忖度がはびこる安倍政権の体質にある。副大臣の辞任で幕引きというわけにはいかない。

 

塚田副大臣更迭→解決とはいかない官邸(2019年4月6日配信『日刊スポーツ』―「政界地獄耳」)

 

★「忖度(そんたく)した」と発言し、辞任した自民党の国交副大臣・塚田一郎の罪は政権の中枢である首相・安倍晋三と副総理兼財務相・麻生太郎の選挙区を結ぶ道路建設の復活劇の当事者に忖度したと明言したこと。立憲民主党参院議員・蓮舫は「これは忖度じゃなくてもう利益誘導。税金は自民党のためのものだと、まさに明言しているようなもの」といえる。

★本人は発言自体を撤回謝罪して結果辞任したがこの発言は福岡県知事選挙の応援演説での話。ともすれば知事選の有権者にうそ八百を話し続けたことにもなり、救うべき場所がない。共産党書記局長・小池晃は「塚田は衆院厚生労働委で『大勢が集まる会だったので、我を忘れて誤った発言をした』と釈明したが大勢が集まる場所で我を忘れる人は政治家やっちゃいけません」とSNSに書いたが、政治家失格と同義語だ。野党の強硬論に加えて与党内でも「統一地方選挙の真っ最中で参院選挙も控えていて選挙の現場は悲鳴を上げている」(自民党選挙関係者)というのも当然だろう。

★ただ、官邸は更迭すれば解決というわけにもいかない。今まで公文書の改ざんがあろうが、セクハラで事務次官が辞めようが、自殺者が出ようが辞める気がさらさらなかった麻生に始まり、金銭スキャンダルが後を絶たない男女共同参画相・片山さつきや五輪相・桜田義孝の舌禍をも守り通した手前、この事案だけ更迭できない。「そんなことをしたら忖度ドミノが起こる」(自民党関係者)。弱っているのは公明党も同じだ。塚田の監督責任は国交相・石井啓一が1711月から務めている。「当然石井の責任論にも飛び火するが、実は国交相は1412月の第2次安倍内閣発足以来、公明党枠。国交省関連の陳情は自民党の副大臣が取りまとめる慣習がある。自民党にとっては副大臣が大臣の役割を担う。それが塚田の“忖度”発言を生んでいる」(自民党幹部)。自民党の身から出たさびでもあり、塚田の首だけでは済まなくなる。

 

塚田氏忖度発言 ただちに辞任すべきだ(2019年5月5日配信『北海道新聞』―「社説」)

 

 国の予算を私物化するようなおごった物言いに、あきれ返る。

 塚田一郎国土交通副大臣が山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」の整備計画を巡り、地元の安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相への「忖度(そんたく)」から国直轄調査に引き上げたと述べた。

 首相への忖度が行政の公正性や透明性をゆがめたとされる森友・加計(かけ)問題の教訓を踏まえないどころか、忖度は自身の政治力の証しだと胸を張ったように聞こえる。

 塚田氏は発言を撤回、謝罪したが、それで済む話ではなかろう。政府の要職にある政治家として不適格であり、即刻辞任すべきだ。

 発言は、福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で飛び出した。

 参院自民党の吉田博美幹事長から、首相と副総理の地元の事業だと「分かっているな」と言われたとし、「総理、副総理が言えないので私が忖度した」と語った。

 関門海峡を挟んだ下関北九州道路計画は、2008年に国が凍結した。しかし13年度に福岡、山口両県などが独自調査を開始し、国は本年度から直轄で調査を再開すると決めている。

 地元が期待する道路の推進を、選挙戦で「手柄」として誇る。

 自民党の利益誘導体質が変わっていないことの表れであり、公共事業になお不透明な政治家の関与があるのではないかとの疑いを国民に抱かせた。発言の罪は重い。

 政府は計画を中止し、調査再開決定に至る経緯を検証すべきだ。

 塚田氏は、忖度と吉田氏の言葉は事実と異なるとし、「大勢が出席する会だったので、われを忘れて言ってしまった」と釈明した。

 こんな稚拙な言い訳を、誰が信じられようか。重大な発言が「われを忘れて」口をつき、有権者にウソをついたというなら、国会議員としての資質さえ問われよう。

 首相が、野党の罷免要求に応じないのも理解に苦しむ。

 財務省で森友問題を巡る決裁文書改ざんがあっても、首相は麻生氏を続投させた。政権の緩みと無責任な体質を象徴するのが、今も解明が進まぬ森友・加計問題だ。

 森友問題では先月、有印公文書変造・同行使容疑などで告発され、大阪地検特捜部が不起訴とした佐川宣寿前国税庁長官らについて、大阪第1検察審査会が「不起訴不当」と議決した。

 まっとうな市民感覚の表れだろう。検察が再捜査を尽くすべきなのは当然として、国有地が8億円も値引きされた問題の全容解明に取り組むのは国会の責任である。

 

「袋のねずみ」といえば…(2019年4月5日配信『毎日新聞』−「余録」)

 

 「袋のねずみ」といえば追い詰められ逃げ場のないさまだが、英語には「袋の中のぶた」という言葉がある。品物を十分あらためもしないで売り買いすることをいうそうだが、これには説明が必要だろう

▲子ぶたを袋に入れて売買した昔、猫を入れた袋を売りつけて人をだました連中がいたのだ。そこから秘密をもらすという意味で「袋から猫を出す」という言い回しが用いられるようにもなった(「ブルーワー英語故事成語大辞典」)

▲「袋のねずみ」ならぬこの「袋の猫」、売りつけようとした当人がついうっかりばらしてしまうという含みがある。まあペテン師にも間抜けはいようが、こちらはれっきとした国土交通省の副大臣が出した猫で、名は「忖度(そんたく)」という

▲福岡県知事選の応援演説で塚田一郎(つかだ・いちろう)副国交相が「私が忖度した」と自慢したのは、下関北九州道路計画についた国の調査費のことだ。首相と副総理の地元を結び「安倍(あべ)・麻生(あそう)道路」と呼ばれる計画だと言えば、発言の趣旨が分かろう

▲今時珍しい露骨な利益誘導にあっけにとられていたら、当人は「発言は事実と異なる」とさっさと前言撤回した。なぜ、との問いには「我を忘れて……」だそうな。はて忘れたのは「我」か、政府の一員たる政治家の常識とモラルか

▲飛び出た猫がばらしたのは副大臣の土建政治体質や軽率さだけではない。冗談めかした物言いにくるんだ権力の誇示は政権全体の空気を表していよう。そのすみずみにまでうろつく「忖度」という化け猫である。

 

塚田副大臣発言 国民は事実が知りたい(2019年4月5日配信『東京新聞』−「社説」)

 

 撤回では済まされない。塚田一郎国土交通副大臣が道路予算の計上で政権中枢の意向を忖度(そんたく)したと発言した。撤回・謝罪はしたが行政への信頼が真っ向から否定された。国民は何より事実が知りたい。

 問題の発言は1日夜、北九州市内で行われた福岡県知事選自民党推薦候補の応援演説会であった。

 安倍晋三首相の地元の山口県と麻生太郎副総理兼財務相の地元の福岡県を結ぶ「下関北九州道路」について、自民党の吉田博美参院幹事長から建設促進を要請され「総理とか副総理はそんなこと言えない。私は忖度しました」と、聴衆約600人を前に述べた。

 さらに「新年度予算で国直轄の調査計画に引き上げた」と説明。調査費約4000万円を自らの判断で計上したかのように報告した。

 麻生派所属の副大臣として麻生氏が推す候補が勝利すれば、大型の利益誘導が可能と誇示したかったようだ。森友・加計学園問題で首相への官僚の忖度が疑われている中でのあけすけな物言いに、開いた口がふさがらない。

 翌2日、塚田氏は「一連の発言は事実とは異なるため撤回し、謝罪します」とのコメントを出したが、にわかには信じ難い。

 塚田氏は1日の発言で、吉田氏は福岡県選出の大家敏志参院議員と一緒に「『地元の要望がある』と副大臣室に来た」と述べ、吉田氏から「これは総理と副総理の地元の事業」「俺が何で来たか分かるか」と畳み掛けられると「私は物分かりがいい。すぐ忖度します。『分かりました』と」答えたという。事実と異なるという割にはやりとりが具体的だ。

 下関北九州道路は地元で「安倍・麻生道路」とも呼ばれている。2008年、道路特定財源の使途見直しに伴って他の海峡横断プロジェクトと一緒に計画が凍結されたが、その復活に政治が関わったのか否か。民主政治の公平性、透明性を確保する上で当事者の正確な説明が必要だ。

 首相は4日の参院決算委員会で自身の関与を否定。塚田氏に対しては発言の撤回・謝罪により罷免はしない考えを示した。だが、安易な幕引きは許されない。公明党の石井啓一国交相も主体的に事態解明に当たるべきだ。

 野党は塚田氏の辞任を要求するだけでなく、国政調査能力を十分に発揮してほしい。

 統一地方選や参院選が目前。選挙は税金の使途を考える機会だ。だからこそ、事実関係は速やかに明らかにされなくてはならない。

 

(2019年4月5日配信『東京新聞』−「筆洗」)

 

夏目漱石は、<河豚(ふぐ)汁や死んだ夢見る夜もあり>と詠んでいる。美味を安全に味わうことができる現代に、感謝したくなるが、『虞美人草(ぐびじんそう)』では、そのおいしさと危うさに「うそ」を重ねた。<其場(そのば)限りで祟(たたり)がなければ是程旨(これほどうま)いものはない。然(しか)し中毒(あたっ)たが最後…>

▼自民党の塚田一郎国土交通副大臣が「事実と異なる」ことを言った、と謝罪した。山口県下関市と北九州市を結ぶ道路の整備を巡り地元の安倍首相と麻生副総理の意向を<私は忖度(そんたく)しました>とした発言である

▼北九州市の有権者を前に心が高ぶったのかもしれない。私のおかげで整備が進むのだと言うのは政治家としておいしかったか。すぐに言葉がたたる。身内からも批判が出た

▼弁解の余地は乏しそうである。その場の方便だったとしても、利益誘導そのものの発想をする人物であることが分かった。国交省の副大臣にふさわしいだろうか

▼方便でないとすれば、問答は無用である。ネットで昨年の国会の会議録を検索する。森友学園と加計学園の問題で忖度が取りざたされていたころ、塚田氏は参院予算委で、首相の姿勢を問うていた。「政権が長期化していることで総理への忖度があったのではないかという声がある…どのようにお考えなのか」。約一年後に、同じ人物が、「私は忖度しました」と誇るように言った

▼政権の長期化で、毒はまわってないか。

 

塚田氏の忖度発言 首相は罷免をためらうな(2019年4月5日配信『産経新聞』−「主張」)

 

 開いた口がふさがらない。塚田一郎国土交通副大臣による忖度(そんたく)発言のことである。

 政治家の出処進退は本来自ら決めるべき事柄だが、発言は行政の公正性に関わる。撤回すれば済む問題ではなかろう。

 塚田氏は3日、「事実と異なる発言で多くの皆さまに大変なご迷惑をおかけした」と、発言を撤回して謝罪した。4日の参院決算委員会では、発言翌日の報道で間違いを認識したと釈明した。副大臣にとどまるつもりのようだが、事の善悪が分からなかったとは驚く。

 してもいない安倍晋三首相らへの忖度に言及して地元への利益誘導をひけらかす。副大臣を務めるに値しないのは、誰の目にも明らかではないか。

 安倍首相は4日、「事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と答弁した。ならば、塚田氏を罷免するのが筋だ。

 忖度発言が出たのは1日の北九州市で開かれた集会だ。塚田氏は山口県下関市と北九州市を結ぶ関門新ルート(下関北九州道路)の国直轄調査への移行に関し「安倍首相や麻生太郎副総理が言えないので私が忖度した」と語った。

 野党が副大臣辞任を求めたのは当然である。

 参院議員の塚田氏は、自民党麻生派の所属でもある。首相の地元下関市と麻生氏の地元福岡県を結ぶ道路整備で便宜を図ったと誤解されかねない。

 7日投開票の福岡県知事選の自民党推薦候補を応援する集会での発言だ。自らの影響力を誇示して、選挙を有利に運ぶ思惑はなかったか。それとも単なる受け狙いか。いずれにせよ、お粗末な話である。

 地元では、共産党など一部を除き関門新ルートの建設を望む声が強い。

 同ルートの建設計画は、無駄な公共事業だとして平成20年に凍結された。昨夏の西日本豪雨で関門橋と関門国道トンネル両方が通行止めとなり、生活必需品の流通に多大な支障が出た。これを機に、31年度予算に国直轄の調査費4千万円が計上された経緯がある。忖度があったとは考えにくい。

 安定した政権運営にとって肝心なことは、不適格性を示した内閣の一員をいたずらにかばうことではない。安倍首相は、行政の公正性を示すためにも浅慮に過ぎる副大臣は退場させたほうがよい。

 

「忖度」発言 撤回で済む問題ではない(2019年4月5日配信『信濃毎日新聞』―「社説」)

 

 撤回、謝罪で済むと考えているなら、認識が甘過ぎる。

 塚田一郎国土交通副大臣が、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元の道路整備を巡り「忖度(そんたく)した」と述べた。利益誘導を公言するような人物に重責は任せられない。

 福岡県知事選の応援演説での発言である。麻生氏が擁立した自民党推薦候補の集会で、山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」について「首相や副総理が言えないので、私が忖度した」などと述べた。

 翌日になって、発言は事実と異なるため撤回して謝罪すると文書で発表した。国会では「大勢が集まる会だったので、われを忘れて誤った発言をした」と説明している。苦しい釈明だ。

 「首相と副総理の地元事業」と指摘したとされた自民党の吉田博美参院幹事長は関与を全面否定するコメントを発表した。

 有権者にアピールしようと、現職の副大臣が特定の事業に便宜を図ったと取れる発言をした。忖度の有無とは別に、それ自体、見過ごせない問題である。行政の公平性に対する認識を欠いている。

 下関北九州道路は、1998年策定の全国総合開発計画に明記されたものの、国の財政難などから2008年に「当面、整備に着手する可能性がない」として凍結された経緯がある。

 第2次安倍政権発足後、地元の自治体などから実現への働き掛けが活発化した。国は19年度から直轄での調査再開を決めている。

 財政難は変わらないのに、なぜまた動きだしたのか。経過を踏まえると、演説でつい本当のことをしゃべったのではないかとの疑いが拭えない。塚田氏は「事業の必要性等を鑑み、直轄調査を実施することとした」とする。政府は根拠を詳しく説明すべきだ。

 森友、加計学園問題をちゃかすような発言でもある。官僚が首相周辺の意向を忖度し、行政がゆがめられたとの疑念は解消していない。もう終わったことと捉えているのか。政権内のおごりが改めて浮かび上がる。

 野党からの辞任要求に対して首相は「本人がしっかり説明し、このことを肝に銘じ職責を果たしてほしい」と拒んでいる。このまま沈静化を待とうというのか。

 安倍政権では政治家や官僚が失言、問題発言をしても撤回、謝罪するだけで責任を取らないケースが相次いでいる。甘い対応を重ねていては、規律の緩みも政治不信も止まらない。

 

(2019年4月5日配信『信濃毎日新聞』―「斜面」)

 

「渡世の義理」と聞けば一匹おおかみの流れ者が思い浮かぶ。迷いつつも痩せ我慢を通す姿は哀切が漂う。塚田一郎国土交通副大臣は所属する自民党麻生派が渡世の義理だけで動いていると胸を張った。1日夜の北九州市の集会である

   ◆

 福岡県知事選の応援だ。弟分の参院議員の要請を受け、おやじ(麻生太郎副総理兼財務相)の顔が浮かび、地元新潟を空けて参院選で自分の票が減るのも覚悟で駆けつけた、との趣旨だ。下関北九州道路の直轄調査を巡る問題発言はその後に飛び出した

   ◆

 安倍晋三首相の地元の山口県と麻生副総理の福岡県を結ぶ道路だ。「首相や副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」。政権トップへの利益誘導は当然との物言いだ。しかも本年度の直轄調査決定を自分の手柄にして恩を売っている。税金が元手の予算を私物と勘違いしていないか

   ◆

関門海峡は潮が速い。ルート予定地は対岸まで2キロ。船舶も頻繁に通る。総工費が2千億円近い巨大事業だ。自公政権下の2008年度にいったん凍結。「コンクリートから人へ」を掲げた民主党時代は日の目を見ず第2次安倍政権になって再始動した

   ◆

西日本新聞によれば地元では「安倍・麻生道路」とやゆされている。建設促進協議会を率いるのは麻生泰九州経済連合会長だ。副総理の弟である。国民の不信を招かないためには事業が必要か国会で基から議論すべきだ。公共事業を渡世の義理に利用する副大臣はその任にふさわしくない。

 

(2019年4月5日配信『新潟日報』―「日報抄」)

 

この言葉を久しぶりに聞いた。「忖度(そんたく)」だ。2年前の2017年、森友学園の土地取得に関してよく話題になった。その年の流行語大賞にまで選ばれた

▼森友学園の一件で元検事の人が述べている。忖度は典型的な官僚世界の用語で、官公庁や官僚的な体質の企業に所属したことがない人にはなかなか理解できない言葉だという。この一件で注目される前は、「すんたく」と読んでいる学生もいた

▼意味するところは上司、上位者の意向を本人に確認することなく推察し、その意向に沿うように行動することだ。指示や命令などは受けていない。他人には分からないように行うことに本質があるそうだ。だから忖度される側の上司には分からない

▼分かるようなものは忖度といわない。指示があれば忖度する必要はない。直接意向を確認して指示を仰ぐことに支障がある案件だからこそ、忖度が行われる。上司にしてみれば、問題が起きても関わっていないと言えるので都合がいい

▼本県選出の国会議員の発言が波紋を広げている。福岡県知事選の応援演説で、国土交通副大臣の立場にありながら、下関北九州道路の国直轄調査を巡り、安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相の意向を「私が忖度した」と述べた

▼本来なら周囲に分からないようにやるのが忖度のはず。しかし副大臣は自分の実績だとアピールしたかったようだ。野党からは「政権ぐるみの予算の私物化」との批判が上がる。のみならず、言葉の使い方も理解していなかったか。

 

塚田副大臣「忖度」発言(2019年4月5日配信『福井新聞』―「論説」)

 

常態化する「1強」の緩み

「首相や副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」。塚田一郎国土交通副大臣が統一地方選の応援演説でこう述べた。安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相のお膝元である山口県下関市と福岡県の北九州市を結ぶ「下関北九州道路(下北道路)」建設を巡る発言だ。

 加計学園の獣医学部新設計画に関する首相補佐官の言葉を想起する。「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と、当時の文部科学事務次官に迫ったとされる。

 加計、森友学園を巡る問題では、官僚らによる「忖度政治」疑惑がやり玉に挙がった。森友問題では首相夫人らの記述を財務官僚が決裁文書から消し去るという、前代未聞の改ざん事件まで引き起こしたが、忖度の解明には、いまだ至っていない。

 塚田氏の発言で重要なのは「私が忖度した」と言い切っていることだ。実際、国の財政難などから2008年に凍結された下北道路は、地元の自治体や経済界が実現への働きかけを活発化させ、国は19年度から直轄での調査開始を決めた。

 塚田氏自身も応援演説で「新年度予算で、国で直轄の調査計画に引き上げました」と述べている。利益誘導は明らかだ。野党から「税金は自民党のためのものと明言しているようなものだ」と批判の声が上がるのも当然だろう。

 報道などで問題視されたことを受け、塚田氏は国会で「事実と反するので撤回した」と陳謝し、「大勢が集まる会だったので、われを忘れて事実とは異なる発言をした」と釈明した。応援演説ならではのリップサービスだとしても「うそだった」では通らない。

 塚田氏は麻生氏に秘書として仕え、現在は麻生派の参院議員。首相は麻生氏に遠慮してのことか、「事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と答弁したものの、野党の罷免要求は拒んでいる。

 政治を私物化する発言であり、うそが事実なら思い上がりも甚だしい。けじめをつけないことによるモラルの低下も懸念される。ただ、引導を渡すべき麻生氏も改ざん事件を起こした財務省のトップとしてのけじめが問われ続けている。政治家が誰一人責任を取らないことが既にモラルを破綻させているといえよう。

 ここにきて、官僚の暴走も相次ぎ表沙汰になっている。横畠裕介内閣法制局長官は「声を荒らげて発言することまで含むとは考えていない」と野党議員の質問姿勢を批判し、撤回、陳謝に追い込まれた。厚生労働省の課長が飲酒の揚げ句、韓国の空港で暴行したとして現行犯逮捕され、ツイッターに人種差別投稿を繰り返していた年金事務所長が更迭された。

 個人の資質を理由にするのでは済まない。塚田、横畠両氏の発言はかねて指摘されてきた安倍「1強」の緩みが、またぞろ噴き出した感が否めない。閣僚や官僚が官邸しか見ない、そんな統治の在り方である以上、常態化は無論、一層の政治の劣化も避けられない。

 

(2019年4月5日配信『福井新聞』―「越山若水」)

 

 週刊文春の少し前の号に神田松之丞という講談師の記事が出ていた(「阿川佐和子のこの人に会いたい」)。まだ真打ちでもない若手ながら、チケットが取れないほどの人気者だという

▼講談という芸能は、良く言えば勇ましい。語られるのは多くが英雄の歴史物語で、講談師は釈台と呼ばれる台をパパンパン、と張り扇でたたきながら語る

▼そんな姿を子どものころにテレビで見かけたきり、もうすっかり廃れたものだと決めつけていた。なのに、まだ30代の松之丞さんが講談の道へなぜ? と興味深かった

▼初めは落語に引かれ、立川談志が講談好きだと知って聞いてみた。全然面白くなかったが、通い詰めた。その理由に感心した。「僕の耳が悪いんだろうな」と思ったのだという

▼骨董(こっとう)の「目利き」に似て、講談を聞く客にも素養が要るということだろう。松之丞さんの思いは正しく、1年も通うと耳が慣れて面白くなったのだそうだ

▼「私が忖度(そんたく)した」という塚田一郎国土交通副大臣による一席は、場所を国会に移して続いている。九州では大勢の聴衆を前に勇ましかったらしい

▼政権トップとナンバー2。その二人が地元に道路を、とは言い出せない。そこで私が…と語ったら、その楽屋話は問題だと炎上した。真に迫った熱演なのではなく、話の中身が真なんだろうと大方は思う。忖度が何せ耳に慣れすぎた

 

副大臣の「忖度」  政治家も1強になびく(2019年4月5日配信『京都新聞』―「社説」)

 

 撤回するだけでは済まないのではないか。塚田一郎国土交通副大臣の「忖度(そんたく)」発言である。

 福岡県知事選の応援演説で、安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元同士を結ぶ道路整備の国による直轄調査への移行について、「私が忖度した」と語った。

 塚田氏は、道路事業の採択や遂行を所管する省庁の副大臣だ。恣意(しい)的に便宜を図ったと受け取られても仕方ない発言である。

 「安倍1強」のおごり体質が、首相側近の官僚だけでなく、政治家にも及んでいるのは深刻だ。

 塚田氏は演説で「首相や副総理が言えないので、私が忖度した」と述べた。自民党幹部から首相と麻生氏の地元を結ぶ事業であることを指摘され、「私は物わかりがいい。分かりましたと応じた」などと発言した。

 野党などの批判を受け、塚田氏は一連の発言を「事実と異なる」として撤回し、謝罪した。

 しかし、何が事実と異なるとしているのかは分かりにくい。

 首相らの意向を忖度して便宜を図ったとすれば、あからさまな利益誘導だ。公共事業への信頼性を著しく損なうことになる。

 一方、忖度した事実がないというなら、選挙応援の演説で聴衆を欺いていたことになる。

 塚田氏は自民党麻生派に所属し、知事選に麻生氏が擁立した候補が劣勢とされる中での焦りが背景にあったともいわれる。

 選挙戦での発言とはいえ、所管する事業を自分の裁量で左右できるかのように言うのは、政策を私物化していることにならないか。

 政治家としての資質が問われている。このまま副大臣を続けても職責を果たせるとは思えない。

 だが、安倍氏は発言を「問題がある」と認めながらも、野党からの罷免要求を拒否している。このまま沈静化を待つつもりなのか。

 安倍政権で起きた森友・加計問題では、首相側近の官僚が安倍氏らの意向を推し量って特別の計らいをしたかのような疑惑が持たれている。背景には、安倍氏周辺からの声には従っておいたほうが無難、との空気が行政の内部に満ちている状況があるのではないか。

 塚田氏の発言も、首相らの名前を出すことで行政を支配しているかのように見せようとの思い込みがあったようにみえる。

 有権者の負託を受けた国会議員でありながら、権力者におもねるような発言をして恥じない姿は、異論さえ聞こえてこない現在の自民党を象徴しているようだ。

 

呪い(2019年4月5日配信『京都新聞』―「凡語」)

 

 「カーネル・サンダースの呪い」といえば、関西でよく知られた都市伝説である。店先でおなじみだったあの人形が大阪・道頓堀川の中から見つかったのは、ちょうど10年前の春先のことだった

▼阪神タイガースが1985年に優勝した際に、興奮したファンが投げ込んだ。その後、チームは長く優勝から遠ざかることになる。まるでばちが当たったように

▼妙な符合で良くないことが起こると、人はよく「呪い」を持ち出す。もちろん信じているわけではないが、科学合理主義的な社会へのちょっとした抵抗もあるのだろう。いまささやかれているのは「改元の呪い」

▼改元に関わった内閣は半年以内に退陣する。大正、昭和、平成ともそうだったという。令和ブームに乗ってちゃっかり支持率まで伸ばした現内閣は、浮かれていていいだろうか

▼まさかとは思うが、ありえないような問題が出てきた。国土交通副大臣の「忖度(そんたく)」発言である。長期政権のおごりがむき出しになった。選挙でばちが当たりかねない

▼「呪い」といえば、山崎ハコさんの怖い歌を思い出す方もいるのではないか。わら人形にくぎを刺すというショッキングな内容だが、実は自分にくぎを刺す、つまり自らの愚かさを戒めるいい歌だ。内閣にもお勧めである。 コンコン、コンコン…。

 

山崎ハコ呪い動画

作詞:山崎ハコ

作曲:山崎ハコ

 

コンコン コンコン 釘をさす

コンコン コンコン 釘をさす

たたみが下から笑ってる

コンコン コンコン 釘をさす

わらの人形 釘をさす

自分の胸が痛くなる

 

コンコン コンコン 釘をさす

唄いながら 釘をさす

釘よ覚えろ 覚えろこの唄を

コンコン コンコン 釘をさす

なくなるまでは 釘をさす

涙ポトリと また釘になる

 

コンコン コンコン 釘をさす

わらの人形 血を流す

泣いているように いったい誰の血

コンコン コンコン 釘をさす

私いつまで 釘をさす

誰がこうした うらんで釘をさす

私をこうした うらんで釘をさす

コンコン コンコン 釘をさす

コンコン コンコン 釘をさす

コンコン コンコン 釘をさす

コンコン コンコン 釘をさす

コンコン コンコン コンコン コンコン

コンコン コンコン コンコン コンコン…

 

忖度発言/政権の緩みを放置するな(2019年4月5日配信『神戸新聞』―「社説」)

 

 統一地方選のさなか、とんでもない発言が政権内から飛び出した。北九州市で開かれた福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で塚田一郎国土交通副大臣が、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の地元を結ぶ下関北九州道路の整備について「首相や副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)して、国直轄の調査計画に引き上げた」と公言したのだ。

 森友学園への国有地売却を巡る公文書改ざんや加計(かけ)学園の獣医学部新設問題で、官僚による政権への忖度が疑われ、行政の公平性に厳しい目が注がれている。そんな中で、公共事業の箇所付けを決める国交省のナンバー2が恣意(しい)的な利益誘導を手柄のように語った。あまりの無神経さに驚き、あきれる。

 塚田氏は批判を受けて「事実と異なる発言だった」と撤回、謝罪した。「大勢の会合で熱が入った」とも説明した。それが本当なら、激戦が伝えられる選挙で、うそを交えた応援演説で有権者の支持を集めようとしたことになる。政治家としての責任はより重大である。

 問題の道路建設構想は、2008年にいったん凍結されたが、12年に第2次安倍政権が発足すると地元自治体や経済界が働きかけを強め、19年度から国直轄で調査が再開された。

 「首相案件」として手心が加えられたのではないか。国民が当然抱くであろう疑惑を晴らすには、国交省が調査再開の経緯を明らかにする必要がある。

 首相の任命責任は免れない。ところが首相は、塚田氏の発言は「問題だ」と認めつつも「しっかり説明し、職責を果たしてほしい」として罷免を拒んだ。身内に甘い判断が、政権の緩みを招いているという自覚はあるのだろうか。

 首相が閣僚らの不祥事を不問に付すのは今回に限らない。就任直後から失言を繰り返す桜田義孝五輪相や、国税庁への口利き疑惑が浮上した片山さつき地方創生相への辞任要求もはねつけてきた。与党が圧倒的多数を占める国会で疑惑の解明は進まず、閣僚の資質に疑問符が付いても責任を問われない。

 これでは政権の緩みと慢心が広がるばかりだ。首相は重く受け止め、資質に欠ける閣僚らの処分に踏み切るべきである。

 

(2019年4月5日配信『神戸新聞』―「正平調」)

 

カモがネギをしょって来る。これにならって言えば、副大臣が“トンデモ失言”をぶら下げて来た。統一選のさなか、野党にしたら垂ぜんのごちそうに違いない。かみつきがいもある

◆「私が忖度(そんたく)した」と口をすべらし、ただいま炎上中の塚田一郎国交副大臣である。安倍首相と麻生副総理の地元で計画される道路について、お二人の気持ちを忖度して整備を進める、といったような発言をした

◆すぐに謝罪していわく、発言は事実でないという。2トップのお膝元への利益誘導を認めるより、有権者の歓心を買う妄言だと思われたほうが傷は浅い−そう考えたのかもしれないが、どっちにしろ救いがたい

◆アヘン戦争の英雄で、清(しん)の大臣を務めた林則徐(りんそくじょ)が勇退したとき、再登板を願う声があがった。その人は世代交代を念頭にこう答えたという。「ほんとうにまだわしを必要とするなら、国家は嘆かわしい状態にある」(陳舜臣著「実録アヘン戦争」より)

◆背景は違えど、政治家の身の処し方を考えさせられる話だろう。自らの言葉に責任を持てないような人が内閣に必要なのかどうか。必要ならばこの国はどうかしている

◆「職責を全うしていきたい」と、塚田氏は述べたそうだ。きのうの発言をきょう覆す人に言われても、ねえ。

 

【国交副大臣発言】「忖度」のまん延を疑う(2019年4月5日配信『高知新聞』―「社説」)

 

 行政の公平性、公正性は政治家の考えでゆがめることができ、首相と副総理の地元に利益誘導した―。そう公然と認めたとしか受け取れない発言だ。

 山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」の整備を巡る塚田一郎国土交通副大臣の発言が、野党から強い批判を浴び、辞任を迫られる事態になっている。

 発言は、福岡県知事選に伴い北九州市で開かれた自民党推薦候補の集会で飛び出した。道路の事業化に向けた、国による2019年度からの直轄調査移行に関して、「安倍首相や麻生副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と述べた。

 下関市は首相、福岡県は麻生氏の地元である。

 塚田氏は、自民党の吉田博美参院幹事長から要望を受けたとも説明している。集会では、首相と麻生氏の地元事業だと指摘があったとして、「私は物分かりがいい。すぐ忖度する。分かりましたと応じた」と紹介した。

 この通りならば、事業を管轄する現職副大臣が政権の中枢に便宜を図ったことになる。公金を厳正に扱うべき立場として言語道断だ。

 塚田氏は、発言は事実と異なるとして撤回、謝罪。3日の衆院厚生労働委員会では、自身の発言は「全て事実ではない」とし、「大勢が集まる会だったので、われを忘れて誤った発言をした」と釈明した。

 仮にそうだとしても、政治家として驚くほどの資質の欠如である。

 そもそも「忖度」は、森友、加計問題を象徴する言葉だ。安倍1強の政治情勢の下で、官僚が首相の意向に配慮し、行政の公正性がゆがめられたのではないかとして、安倍政権は厳しい追及を受けている。

 その「忖度」を軽々しく繰り返し、聴衆の歓心を買おうとしたとするなら、無神経さにあきれる。安倍内閣が森友、加計問題への反省がなく、深刻にとらえていない証左ではないか。

 塚田氏は自ら辞任すべきである。首相も任命責任が問われる。

 ところが、首相は4日の参院決算委員会でも野党が求める罷免を拒否した。「発言は問題だが、本人がしっかり説明し、そのことを肝に銘じて職責を果たしてもらいたい」と強調している。

 安倍政権では、閣僚らの問題発言を本人の撤回、陳謝で済ませるケースが目立つ。財務省幹部によるセクハラを巡る「セクハラ罪という罪はない」など、数々の暴言、失言を繰り返しても、不問に付されてきた麻生氏がそれを象徴する。

 閣僚の辞任が相次ぎ痛手を負った第1次政権の「辞任ドミノ」の経験から、政権への打撃を回避したい思惑もうかがえる。だが、何を言っても責任を問われないのでは、政権の緩み、政治の劣化は増幅しよう。

 安倍政権では、やはり権力中枢への忖度がまん延していると、国民が疑いを深めるのに十分な発言だ。けじめを求める。

 

国交副大臣忖度発言 見識を疑う 政権の緩みが顕著だ(2019年4月5日配信『愛媛新聞』―「社説」)

 

 安倍政権の緩みが顕著に表れている。政権幹部に忖度(そんたく)したことを臆面もなく明らかにし、地元への露骨な利益誘導を自分の手柄のように話す無神経さにはあきれるしかない。

 山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」を巡り、問題発言をした塚田一郎国土交通副大臣である。安倍晋三首相への忖度により、行政の公平性がゆがめられたと批判を受けている加計、森友学園問題への反省はうかがえず、副大臣としての資質を疑わざるを得ない。

 下関北九州道路は、首相の地元下関市と、麻生太郎副総理兼財務相の地元福岡県を結ぶ。2008年に国による調査が凍結されたが、13年度に地元自治体が交通量の調査を再開、国は19年度予算に調査費を計上した。地元では「安倍・麻生道路」とも言われている。

 塚田氏は1日、北九州市で開かれた福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で演説し、副大臣室を訪ねた自民党の吉田博美参院幹事長とのやりとりを紹介。「これは総理と副総理の地元の事業だ」と言われたと明かし、「私は物わかりがいい。すぐ忖度します。分かりましたと応じた」と発言した。所管する国交省の副大臣として便宜を図ることを約束したのであり、野党が批判するのは当然である。

 翌日、「事実と異なるため撤回する」として謝罪したが、これでは納得できない。何が事実で、何が事実でないか明確に説明する必要がある。「国において事業の必要性等を鑑み、直轄調査を実施することとした」と弁明している。実際は関与していなかったと言いたいのなら、演説で自らの力を誇示するために事実を捏造(ねつぞう)したということになり、看過できない。

 しかし、塚田氏は演説で「忖度」という言葉を何度も繰り返している。発言したことは事実で、撤回して済むような話ではない。副大臣の言動として、あまりに軽率で見識を疑う。「大勢が集まる会だったので、われを忘れた」とも言い訳しているが、自分を見失い、うそを言ってしまう人物に重責を任せることはできない。

 長期にわたる「安倍1強」によるおごりが、政権や官庁にまん延している。先月は、横畠裕介内閣法制局長官が国会答弁を撤回、謝罪する問題があった。内閣に対する国会の行政監視の役割を説明する中で、「(委員会で)声を荒らげて発言することまで含むとは考えていない」と野党議員の質問姿勢を批判した。官僚が政権の肩を持ち、野党をやゆして答弁するのは、越権行為と言わざるを得ない。

 塚田氏について首相は「発言は問題だが、本人がしっかり説明し、職責を果たしてもらいたい」と強調、罷免を拒否している。だが、閣僚が問題発言をしても責任を問われないケースが続き、甘い対応がおごりを助長している側面は否めない。政権は自らを律し、国民の不信に誠実に向き合わねばならない。

 

副大臣の「忖度」 あからさまな利益誘導だ(2019年4月5日配信『西日本新聞』―「社説」)

 

 道路や鉄道の建設をひけらかし、政治家が有権者に投票を呼び掛ける。そんな「古い政治」の亡霊を見たような気がする。本人は「忖度(そんたく)」という言葉で、「今の政治」を象徴的に語ったつもりだったのか。

 自民党参院議員(新潟選挙区)の塚田一郎国土交通副大臣が、北九州市で開かれた福岡県知事選の集会で、下関北九州道路について「総理とか副総理が言えないので私が忖度した」などと述べた。

 道路行政を担う副大臣が、選挙の応援演説であからさまに利益誘導を公言するとは、耳を疑う話だ。報道を受けて塚田氏は撤回し謝罪したが、それで済む問題ではあるまい。「1強」政治が続く中で、長期政権のたがが緩んでいるとしか思えない。そもそも国土交通副大臣にふさわしい政治家なのか。安倍晋三首相に任命責任を問いたい。

 関門海峡の両岸を結ぶ新たな道路の計画は、2008年に当時の自公政権が調査中止を決めたが、17年度予算で復活し、19年度予算では国直轄調査費として約4千万円が計上された。

 塚田氏は演説で「下関と北九州ですよ。よく考えてください」と聴衆に問い掛けた。その上で、自民党の吉田博美参院幹事長が副大臣室に来て「塚田、分かっているな。これは(安倍晋三)総理の地元と(麻生太郎)副総理の地元の事業なんだよ」と言われたという。「私は物分かりがいい。すぐ忖度します。『分かりました』と」−などと語った。実名で語るなど具体的で臨場感すらある。

 ところが、きのうの参院決算委員会で塚田氏は「大勢の人が集まる会で、許されないことだが、事実とは異なることを述べた」と改めて発言を撤回し、謝罪した。この釈明も疑問だが、もし真実だとすれば、うそをついて有権者の歓心を買おうとしたことになる。このことだけでも副大臣失格と言えよう。

 「忖度」と言えば、森友、加計(かけ)学園問題を想起させる。疑惑の闇に包まれたままの問題だ。

 党の推薦候補を応援する選挙演説とはいえ、自らの役職や立場を踏まえず、「忖度」という言葉をもてあそぶような政治感覚は常軌を逸している。

 安倍首相は、きのうの同委員会で「政治家が有権者の前で事実と異なる発言をしたのは重大な問題だ」と塚田氏の非を認めた。しかし、「既に撤回して謝罪している」などとして、野党の罷免要求を退けた。

 内閣の要職に就く政治家の失言や放言が後を絶たない。撤回・謝罪すれば、任命権者は擁護し、政治家は責任を取らない。すると、また…。悪循環は、いいかげんに断ち切るべきだ。

 

副大臣「忖度」発言 政権の自浄能力問われる(2019年4月5日配信『熊本日日新聞』―「社説」)

 

 塚田一郎国土交通副大臣(参院新潟選挙区)が1日、北九州市で開かれた福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で、同市と山口県下関市を結ぶ「下関北九州道路」の国による直轄調査への移行に関し「安倍晋三首相や麻生太郎副総理が言えないので、私が忖度[そんたく]した」と発言した。

 事実とすれば、熊本をはじめとする被災地を含め、多くの地域が早期実現を待ち望んでいる公共事業の優先順位が、恣意[しい]的に決められていることを公言したことになる。塚田氏は、2日になって発言は事実と異なるとして撤回、謝罪した。だとすれば、今度は知事選という重要な選挙で有権者を欺く話を堂々と展開したことになる。

 どちらにしても、公共事業を所管する副大臣としてあるまじき言動であり、著しく資質を欠いていると言わざるを得ない。

 首相と麻生氏の地元を結ぶ下関北九州道路の建設構想は福田政権当時の2008年、国の財政難などから凍結された。だが、12年に第2次安倍政権が発足すると地元自治体や経済界が実現への働き掛けを活発化。国は19年度予算に調査費を計上し、直轄での調査再開を決めた。

 福岡県知事選は、3選を目指す現職に、麻生氏が推す新人が挑む構図。麻生派に属する塚田氏は集会で、麻生氏や首相の名前を出して支持者の歓心を買い、自民党の政治力と自身の手柄を誇示したかったのだろう。不見識さにあきれるばかりだ。

 安倍首相は4日の参院決算委で、「発言は問題だが、本人がしっかり説明し、このことを肝に銘じ職責を果たしてほしい」と述べ、野党が求めている塚田氏の罷免要求を拒否した。野党などからは麻生氏への配慮だとする見方も出ている。麻生氏は安倍政権を支える大黒柱。首相は、森友学園問題に絡み公文書を改ざんした財務省トップとしての責任が問われる麻生氏を閣内にとどめたままだ。

 政権内では、閣僚や官僚の問題発言がやまない。首相はそのたびに本人が撤回、謝罪することで不問に付してきた。今回もそれで政権への風当たりがやわらぐのを待つ考えだろう。そうした態度を国民がどう見るか。政権の自浄能力が問われている。

 

(2019年4月5日配信『熊本日日新聞』―「新生面」)

 

建前と本音。建前は方針、原則のことだが、表向きだけの方針、という意味もある。本音は本心から出た言葉、あるいは口に出しては言わない本心。多くの場合、建前はうそで、本音が思っている本当のことである

▼本音が出たと思った人も多かったろう。山口と北九州を結ぶ道路の整備をめぐる塚田一郎国土交通副大臣の発言である。安倍晋三首相と麻生太郎副総理の地元であることから、2人の意向を「忖度[そんたく]して」国直轄の調査に引き上げたと語った

▼舞台は北九州市での福岡知事選応援演説。話の筋は微細だ。塚田氏は「大勢が集まる会だったので我を忘れて誤った」と撤回した。しかし「我を忘れる」とは物事に熱中し、半ば無意識となること。後に続くのはやはり本音だろう

▼よしんば誤ったとしても、有権者を前に、副大臣として便宜を図ったと思われるような作り話をする人に政治家の資格などあるまい。それとも選挙の応援演説なんてその程度、ということだろうか

▼失言、撤回…。麻生副総理を引き合いに出すまでもなく政治の世界では茶飯事だ。政治家には建前として撤回しておけばいいという慢心、国民の側にも建前と本音、虚実が入り交じる政治は“どっちでもいい”という慣れ、諦めがあるのかもしれない

▼塚田氏の発言について安倍首相は「問題」としたものの、罷免は拒否した。さて問題はうそを言ったから? 真実だったから? 「しっかり説明を」は建前で本音は国民よりわが身、「4選の邪魔をするな」だったりして。

 

率直すぎる忖度発言(2019年4月5日配信『宮崎日日新聞』―「くろしお」)

 

 狂言「素襖落(すおうおとし)」。主人が使用人を伯父の元へ使いにやる。「あした伊勢神宮参りに出発するからお誘いしろ」という要件。使用人は「あまりに急で無理でしょう」と驚いた。

 主人の言い分がおもしろい。「私もそう思うが、以前に約束したので一応義理を通す」。誘われる方も迷惑だろうが、伯父も心得ていて適当な返事で誘いを断る。そして使用人が主人に同行すると思って、はなむけに酒でもてなした。使用人は酔って調子に乗る。

 3人の登場人物が十分に意思疎通せずに義理と忖度(そんたく)で行動し、時々ちぐはぐな結果を招く。このあまりに日本的ともいえる駆け引きは狂言だから笑えるが、公平公正で透明性が求められる政治の世界に持ち込んでは許されるはずがない。

 “主人”の地元でテンションが上がったのか、塚田一郎国土交通副大臣の率直すぎる「忖度発言」にはあきれた。道路整備で便宜を図ったと受け取られかねない発言。撤回したとはいえ、顔に泥を塗られた格好の安倍首相が、特に責任を問わないのも狂言のようだ。

 道路は住民の一大関心事。単なる失言と捉える人は少ない。首相の意向を忖度して便宜を図ったのなら大問題。喜ばせようと有権者をだましたとしてもアウト。何より、公然と利益誘導をほのめかす国会議員がいることにあぜんとする。

 ただ発言のあった北九州市に限らず、公共事業をどれほど取ったかで議員を評価する空気が選挙区にあるなら、有権者にも反省すべきところがある。忖度ともども、こういう昭和や平成の政治に横行した負の遺産は令和に残さなくていい。

 

 

政治家は言葉が命…(2019年4月5日配信『沖縄タイムス』−「大弦小弦」)

 

 政治家は言葉が命。何に関心を持って動き、私たちの暮らしの将来像をどう描いているのか。人々が集う場での演説は格好の見せ場のはず。そこで「われを忘れて、事実ではない」ことをべらべら話すようでは、その資質が疑われよう

▼道路整備を巡る塚田一郎国土交通副大臣の発言が批判にさらされている。安倍晋三首相や麻生太郎副総理のお膝元の「下関北九州道路」を国の直轄調査に移すことについて「首相や副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と述べた

▼またしても飛び出した「忖度」発言。「安倍1強のひずみ」という論評はあちこちで目にするが、正直驚くというより、さもありなんと思えるのは、こちらも慣らされてきたということか

▼発言は、自民党が分裂した福岡県知事選の応援演説だった。麻生氏が推す新人候補が劣勢とされる中、麻生派の塚田氏にとって、はやる気持ちもあったにせよ、発言撤回で水に流せるとも思えない

▼事実であれば、予算の私物化による露骨な利益誘導であり、そうでないなら、うそをついての選挙応援となり、有権者への背信行為にほかならない

▼あの政治家は大げさだから話半分に聞いておこう。これなら、かろうじて有権者の信頼をつなぎ留められそうだ。あの人の話はうそかもしれない。そう疑われたら政治は成り立たない。

 

綸言汗のごとし(2019年4月4日配信『北海道新聞』―「卓上四季」)

 

「政治は言葉である」。言語学者金田一秀穂さんの言葉だ。政治家が発言すること自体、政治活動にほかならない。にもかかわらず、今の政治の世界では日本語がぞんざいに扱われ、おろそかにされていると指摘する(雑誌「Journalism」2018年9月号)

▼特に「あの人やその周囲の人々には、お分かりではないらしい」と手厳しい。あの人とは安倍晋三首相、周囲の人々とは麻生太郎財務相ら政権幹部の面々だ

▼この方も「周囲」の一人。政権幹部の意向を忖度(そんたく)し、下関北九州道路事業の調査を国の直轄にしたと述べた塚田一郎国土交通副大臣。山口県下関市は安倍氏、北九州市は麻生氏の地元。「(2人は)言えないので、私が忖度した」と語った

▼さらに自民党幹部に「総理と副総理の地元の事業だ」と言われ、「私は物わかりがいい。すぐ忖度する。分かりましたと応じた」とも。予算の私物化、究極の「忖度政治」だろう

▼ところが、野党から批判を受け、一転「発言は事実と異なる」と取り消した。忖度はしていなかったということか。自分のことを自分でしゃべっておいて、事実ではなかったとはこれいかに

▼「われを忘れてしまった」と釈明するが、撤回して済む話ではない。「綸言(りんげん)汗のごとし」と言う。一度口にした言葉は、汗が戻らないように取り消すことはできない。現職の副大臣として、かみしめた方がいい。

 

塚田副大臣 不見識極まる忖度発言(2019年4月4日配信『朝日新聞』ー「社説」)

 

 政権中枢への忖度(そんたく)が行政の公平性をゆがめているのではないか。森友・加計問題などで、そんな厳しい視線が注がれるなか、こんなにも堂々と、忖度による利益誘導を認めるとは、驚き、あきれるほかない。

 関門海峡で本州と九州を新たに結ぶ「下関北九州道路」をめぐる、塚田一郎・国土交通副大臣の発言である。

 塚田氏は1日、北九州市であった福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で、副大臣室を訪ねてきた自民党の吉田博美参院幹事長とのやりとりを紹介した。

 吉田氏「塚田、分かってるな。これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」

 塚田氏「分かりました」

 塚田氏は「総理とか副総理がそんなこと言えません。でも、私は忖度します」と続け、事業化の調査費用を19年度予算から全額国の負担としたことを、自らの手柄のように語った。

 塚田氏は2日、一連の発言は事実と異なるとして撤回・謝罪した。きのうの国会では、「首相、副総理の地元の案件だから特別な配慮をしたことはない」と釈明。吉田氏の発言についても、そのような趣旨のものはなかったと否定した。

 しかし、それが本当だとしても、地元への利益誘導で支持者の歓心を買おうとした事実は消えない。臆面もなく「忖度した」と何度も集会で繰り返した振る舞いは、政治家として不見識極まると言わざるを得ない。

 塚田氏が自ら辞任しないのであれば、安倍首相が速やかに更迭すべきだ。

 しかし、首相はこの発言を軽く見ているようだ。きのうの国会でも「すでに撤回し、謝罪した。まずは本人からしっかりと説明すべきだ」とかばう姿勢に終始した。

 忖度による政策判断などあってはならないと思っているのであれば、きちんとけじめをつけるのが当然ではないか。

 横畠裕介内閣法制局長官が先月、国会答弁の撤回・陳謝に追い込まれたことがあった。

 内閣に対する国会の監督機能についての野党議員の質問に、「このような場で声を荒らげて発言するようなことまでとは考えておりません」と皮肉まじりに答えたのだ。

 全国民の代表である国会議員の質問に、閣僚は誠実に答える義務がある。ましてや、閣僚を補佐する立場の官僚が質問を揶揄(やゆ)することは許されない。しかし、参院予算委員長による厳重注意で済まされた。

 

「安倍・麻生道路」に忖度 政権の緩みが止まらない(2019年4月4日配信『毎日新聞』−「社説」)

 

 露骨な利益誘導と受け取られるようなことを選挙の応援演説で自慢げに語る無神経さにあきれる。福岡県知事選の集会で飛び出した塚田一郎副国土交通相の問題発言だ。

 塚田氏は今年度予算で「下関北九州道路」の建設計画に国直轄の調査費をつけたことを強調した。安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相の地元を結ぶことから「安倍・麻生道路」とも呼ばれている計画だ。

 塚田氏は副大臣室を訪れた自民党の参院幹部から「何とかしてもらいたい」と求められたという。「総理とか副総理がそんなことは言えない。私が忖度(そんたく)した」と語った。

 公共事業の予算措置に忖度を働かせるというのは言語道断だ。しかも、それを自身の手柄のように語る振る舞いには、公金を厳正に扱うべき立場にある自覚が感じられない。

 塚田氏は「発言は事実と異なる」と撤回し、菅義偉官房長官は記者会見で「二度とこのようなことがないように厳重注意した」と述べた。

 だが、安倍政権では横畠裕介内閣法制局長官が野党をやゆした国会答弁など、政権内の緩みと言うほかない失言が続いている。

 塚田氏の発言があったのは新元号が発表され、政権全体が高揚感に包まれていた1日の夜だ。手ごわい対抗勢力のいない「安倍1強」の全能感がモラルをマヒさせていないか。

 今回の統一地方選では野党の弱体化を背景に、自民党内の勢力争いが表面化した保守分裂の知事選が目立つ。福岡知事選もその一つで、3選を目指す現職に麻生氏の支持する新人が挑む構図だ。塚田氏は麻生派に所属しており、利益誘導をひけらかすことで麻生氏の影響力を誇示できると考えたのかもしれない。

 しかし、麻生氏が財務省のトップとして公文書改ざんの責任を問われていることを忘れてはならない。

 森友・加計問題では官僚による首相への忖度が疑われ、いまだに真相は解明されていない。塚田氏が忖度という言葉を冗談めかして使ったこと自体、政権内でことの重大性が共有されていない証左だろう。

 そもそも道路の建設計画は2008年にいったん凍結されていたものだ。公共事業の箇所付けで政治家が影響力を競った土建政治の時代に自民党は回帰したいのだろうか。

 

塚田氏忖度発言 撤回で幕引きとはいかぬ(2019年4月4日配信『新潟日報』―「社説」)

 

 首相や副総理に配慮して、2人の地元に利益誘導した。そう認めたとしか受け取れない発言だ。発言の主は、現職の国土交通副大臣である。見過ごしになどできるわけがない。

 発言は既に撤回されたとはいえ、わだかまりが残っている国民や県民は少なくあるまい。まずは事実関係について、誠意ある説明を求める。

 参院新潟選挙区選出の塚田一郎国交副大臣による道路事業を巡る発言が、野党から強い批判を浴び、辞任を迫られる事態となっている。

 発言は、1日に北九州市であった福岡県知事選の自民党推薦候補の集会でのものだ。

 塚田氏は山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」が事業化に向け本年度から国直轄調査に移行したことに関し、「安倍晋三首相や麻生太郎副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と語った。

 この道路は2008年3月に当時の自公政権が調査中止を決めたが、17年度から地元自治体による調査が再開された。19年度予算で、国は調査費として約4千万円を盛った。

 下関市は首相の地元、福岡県は麻生氏の地盤だ。額面通りに解釈すれば、道路事業を所管する国交省の副大臣が便宜を図ったことになる。問題視されるのは当然だ。

 塚田氏は2日、発言の撤回と謝罪に追い込まれ、3日の衆院内閣委員会でも「事実と異なる発言で多くの皆さまに大変なご迷惑をお掛けした。国民の皆さまにもおわび申し上げたい」と謝罪した。

 だが、これでは到底納得できない。「事実と異なる」とはどういう意味か。副大臣が、所管事業に関して国民にいいかげんな説明をしていたのか。

 塚田氏は、自民党の吉田博美参院幹事長と面会した際に「これは総理と副総理の地元の事業だよ」と言われたと明かし、「私は物分かりがいい。すぐ忖度する。分かりましたと応じた」と話した。

 これらの発言のどこまでが事実で、どこからが事実ではないのか。なぜ、そんな話をしたのか。国民が理解できるよう、記者会見などの場できちんと説明し、疑問に答えてもらいたい。

 首相や菅義偉官房長官も説明責任を果たすよう求めている。逃げは許されない。

 今回の問題の背景には、これまで指摘されてきた「安倍1強政権」のおごりや緩みがあるようにも感じられる。

 「忖度」は、首相官邸の意向を官僚がおもんぱかったとされる森友、加計学園問題を象徴するキーワードだ。これら二つの問題を巡り、安倍政権は厳しい批判にさらされた。

 にもかかわらず、聴衆へのアピールを狙うかのように副大臣が「忖度」の言葉を使う。森友、加計問題への反省は言葉だけだったのか。

 塚田氏は自民党県連会長でもある。自らに課せられた重い責務を自覚し、批判に正面から向き合わなければならない。

 

この身の程知らず 更迭すべきなのに(2019年4月4日配信『日刊スポーツ』―「政界地獄耳」)

 

★「いいこと言った」と思ったら怒られた。1日、国土交通副大臣・塚田一郎が北九州市での集会で、下関と北九州を結ぶ「下関北九州道路」の整備で国の直轄調査への移行に関し「安倍総理と麻生副総理の地元の事業」「安倍晋三首相や麻生太郎副総理が言えないので、国直轄の調査計画に引き上げた。私が忖度(そんたく)した」と発言した。塚田は2日、「事実と異なるため撤回し謝罪する」というコメントを文書で出した。

★与党は火消しにおおわらわだろうが国民の前に姿も現さず、この発言をなかったことにしようとする本人、任命した首相・安倍晋三、自民党の火消し係、それを中途半端に攻撃して追い詰めない野党議員。すべて国民の政治不信の元凶だ。日常茶飯に起こる程度の低い舌禍、軽口、冗談にならないような不規則発言、加えてセクハラやパワハラの類、ここ数年、政治の世界はごまかしたり改ざんしたり頬かむりして正すことをせず、あいまいにやり過ごしてきたものばかりだ。国民に反対の多い法案の強行採決、公文書改ざん、不正統計、政治の世界はうそ、ごまかしのオンパレードではないか。野党も国民もあまりの件数の多さに問題の重大さを忘れ、まひしてしまっている。

★だが、こんな程度の政治に胸を張り、新たに新元号をいただく時代を受け入れていたら、この国はどんどんだめになるのではないか。ひとつひとつの問題に決着をつけ、曲がりなりにも内閣の一員が道路建設は首相と副総理の地元だから忖度したなどという疑念を想起させただけで、本来内閣は恥ずかしくて恥ずかしくてこの身の程知らずの副大臣を直ちに更迭すべき事案のはずだ。陳謝撤回で済ませていては年号は変わっても、この国に新時代は訪れない。

 

副大臣「忖度」発言(2019年4月4日配信『しんぶん赤旗』−「主張」)

 

安倍政権の体質自体が問題だ

 北九州市と山口県下関市を新たに結ぶ「下関北九州道路」計画をめぐり、塚田一郎国土交通副大臣が、安倍晋三首相と麻生太郎副総理・財務相を「忖度(そんたく)」して、計画の調査を国の事業に格上げしたと発言しました。自民党推薦の福岡県知事候補を応援する集会の中での発言です。あけすけな利益誘導にほかなりません。しかも、首相と副総理の意向をくんで道路行政を動かしたことを所管官庁の副大臣自身が公然と語ったものであり、ことは重大です。本人の発言撤回や謝罪で済む話ではありません。安倍政権の姿勢と体質自体が厳しく問われます。

「安倍・麻生道路」の異名

 「下関北九州道路」計画は、安倍首相の地元である下関市と、麻生副総理の地盤である北九州市を、道路でつなぐという構想です。すでに関門海峡には二つの道路が通っており、無駄な公共事業だという批判の中で2008年に凍結されましたが、安倍首相の政権復帰後に計画は再び動きだし、17年度から自治体の調査費がつきました。さらに19年度から国直轄調査として費用を国が全額負担することになりました。

 1日夜、北九州市内で開かれた集会での塚田氏の問題発言は、国直轄の調査に格上げされた経過を生々しく語ったものです。

 塚田氏は、副大臣室で自民党の吉田博美参院幹事長から「これは総理と副総理の地元の事業だ」と言われ、「分かりました」とすぐに答えたことを明らかにし、「総理とか副総理がそんなこと言えません。でも私は忖度します」「私は麻生太郎命、筋金入りの麻生派」「できるだけ早くみなさまのもとに、橋が通るように頑張りたい」などと述べたと報じられています。

 もともと「下関北九州道路」をめぐっては、安倍首相が昨年10月に早期実現を求める発言をしたと伝えられるなど、地元では「安倍・麻生道路」と呼ばれています。

 道路行政を担当する国交省の副大臣という立場の者が、政権トップとナンバー2をおもんぱかって、国の事業にわざわざ引き上げ、予算も手当てしたというのなら事態は深刻です。この道路計画は総額2000億〜2700億円とされる巨大開発事業です。政権中枢の政治家の地元だから公共事業をもっていくというのは、文字通りの利益誘導です。この計画は、ただでさえ税金の無駄遣いと大問題になっている事業です。それがこんな形ですすめられてきたとなれば、まさに、政治の私物化です。

 選挙応援で、その“政治力”を自慢し、自民党が推薦する知事候補の票獲得につなげようという発想は「利権政治」そのものです。

 塚田氏は「忖度した」などの一連の発言は事実と異なるとして、撤回・謝罪しましたが、事実関係の説明はなく、説得力はありません。副大臣の資格がないのは明白で、即刻辞任すべきです。

あいまいにできない

 「職責を果たしてもらいたい」と塚田氏を擁護し、罷免を拒む安倍首相の姿勢は重大です。

 塚田氏の発言は、首相の意向に沿う形で政治や行政をゆがめた「森友」「加計」疑惑にも通じる安倍政権の体質自体の問題ではないのか―。安倍政権下で相次いで発覚した疑惑の解明と合わせて、今回の問題も絶対にあいまいにすることはできません。

 

あきれかえった忖度発言(2019年4月3日配信『日本経済新聞』―「社説」)

 

政治家の発言には責任が伴う。しかも統一地方選挙の期間中であればなおさらだ。欧米などで公正さを疑わせる非常識な政治家の発言を聞く機会が増えているとはいえ、日本でも耳を疑うあきれかえった発言が飛び出した。

塚田一郎国土交通副大臣は1日に北九州市で開かれた集会で、同市と山口県下関市を結ぶ「下関北九州道路」の国直轄の調査について「安倍晋三首相や麻生太郎副総理が言えないので私が忖度(そんたく)した」と発言した。

塚田氏はその後、発言は事実と異なるため撤回し謝罪すると文書で発表した。もし道路の建設計画に何らかの政治的な配慮が働いたのなら重大である。本人の説明通りだとしても、行政の公平性に疑念を抱かせた責任は重い。

 発言は7日投開票の福岡県知事選の自民党推薦候補を応援する集会でのものだ。言及した道路は、安倍首相の選挙区である下関市と、麻生氏の中選挙区時代の地盤だった北九州市を結ぶ。塚田氏は自民党の参院議員(新潟選挙区)で、麻生派に所属している。

 福岡県知事選は保守系の現職と新人の2候補が競り合っている。地元への利益誘導にあえて触れることで、自らの陣営が推す候補の戦いを有利にしようとする意図を疑わせる。選挙演説に多少の誇張はつきものだとしても、今回の発言は論外である。野党はすぐに副大臣の辞任を要求した。

 首相は3日の衆院内閣委員会で、塚田氏の発言を巡り「副大臣としての公正性が疑われてならないのは当然だ。行政への信頼を傷つけてはならない」と強調した。同時に「すでに撤回し謝罪した。まずはしっかり説明すべきで、そのことを肝に銘じて職責を果たしてもらいたい」と語った。

 7年目に入った安倍政権では森友、加計両学園の問題などを通じて、政権幹部への過度の忖度が行政の公正さをゆがめているとの指摘が出ている。長期政権のおごりや緩みを自ら厳しく戒めていく姿勢が問われている。

 

 

 

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