元米海兵隊員による沖縄県うるま市の女性会社員(20)レイプ殺人死体遺棄事件

 

那覇地裁;元米軍属に無期懲役 沖縄女性殺害の裁判員裁判(2017年12月1日)=被告控訴

 

シュワブ所属米兵 ホテル内で観光客女性を強姦 那覇署準強姦容疑で逮捕(2016年3月)

沖縄少女暴行事件(2008年2月)

米軍(海兵隊)よる少女〈小学生〉強姦事件(1995年9月)

糸満女性れき殺事件(1972年9月)

由美子ちゃん事件(1955年9月)

 

レイプ目的で数時間かけて女性を物色し、背後から棒で頭を殴る。抵抗されると首を絞めたうえ刃物で殺害。刺し傷は骨にまで達していた。

 

沖縄20歳女性の死は、日米両政府の無作為の罪だ!!

 

意見書・抗議決議 論 

 

米軍撤退を 米軍属女性遺棄 緊急県民集会 「追悼名護市民集会」6月17日

 

「元米兵による残虐な蛮行糾弾! 犠牲者を追悼し米軍基地の撤退を求める集会」

 

怒りと悲しみの沖縄県民大会に呼応する いのちと平和のための6.19大行動

 

米、元軍属の賠償負担拒む

 

事件の経緯

2016年4月28日午後8時ごろ

女性(20)、ウオーキングにでる。その後、連絡とれず

29日

同居の男性、うるま署に届け出る

5月16日

うるま署、元米海兵隊員に対する任意の事情聴取を始める

19日

うるま署、元米海兵隊員(現・軍属)の米国人の男(32)を逮捕

夜、岸田文雄外相と中谷元防衛相が米側に抗議

米国防総省当局者、「恐ろしい悲劇であり怒りを覚える」との声明を発表。遺族に弔意を表すとともに「米軍は地元当局の捜査に全面的に協力している」と表明

20日

午前、安倍晋三首相、菅義偉官房長官会見

午前、自民党県連の具志孝助幹事長ら、外務省沖縄事務所に抗議

午前、石垣市議会臨時会、事件に抗議する決議を全会一致で採択

午、北谷町砂辺の嘉手納基地第1ゲート前で抗議集会に約250人が結集、

午後2時35分ごろ、うるま署、同容疑で逮捕した容疑者の身柄を那覇地検に送致。容疑者、黙秘に転じる

午後3時ローレンス・ニコルソン在沖米四軍調整官とジョエル・エレンライク在沖米総領事らが、県庁に安慶田光男副知事を訪ね、事件について謝罪

「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」、「米軍基地がある限り事件は起きる。すべての基地を撤去すべきだ」と訴える

21日

女性の告別式。800人が参列

夜、中谷元・防衛相、カーター米国防長官と電話で協議

21日夜

うるま署、容疑者の男の自宅を捜索

22日

午後2時から、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」(高里鈴代、糸数慶子共同代表)など抗議集会。2000人が参加

23日

翁長知事、首相官邸で安倍晋三首相と会談し、元海兵隊で米軍属の男による女性遺体遺棄事件に抗議

共産党小池晃書記局長、「知事とも力をあわせてこの問題の解決のために力を注ぎたい」と表明

「オール沖縄会議」、事件に抗議する大規模な県民大会「元米兵による残虐な蛮行糾弾! 犠牲者を追悼し米軍基地の撤退を求める集会」を6月19日に那覇市の奥武山(おうのやま)公園内で開くことを確認

アメリカ太平洋軍のトップ、ハリー・ハリス司令官、およそ5分間にわたって自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長と電話で会談

中部市町村会、日米地位協定の抜本的改定などを求める抗議決議と抗議行動の実施を全会一致で承認(25日に在沖米国総領事などを訪れ、抗議決議を手交)

24日

島尻安伊子沖縄担当相、翁長知事が安倍首相に日米地位協定の改定を求めたことに関し、「県選出の国会議員の立場として抜本的な改定を(政府に)要請している。自民党県連としても改正・改定は求めざるを得ない」との考えを示す

辺野古新基地反対で団結する「オール沖縄」代表の全5人の衆参国会議員、沖縄の全米軍基地を速やかに撤去するよう求める要請書を手渡す

共産党の赤嶺政賢議員、衆院安全保障委員会で、沖縄での米軍属による女性遺体遺棄事件を取り上げ、政府の責任をただす

那覇市議会名護市議会うるま市議会南風原町議会、抗議決議、意見書両案を全会一致で可決。

25日

沖縄県女性団体連絡協議会(女団協)、県内の米軍基地の撤去や事件事故の再発防止の徹底などを要請

午後、容疑者の軍属が働いていた米軍嘉手納基地(北谷町など)ゲート前で約4000人が抗議集会。被害者を悼み、米軍基地負担の軽減を訴え

沖縄市議会、抗議決議、意見書両案を全会一致で可決

夜、オバマ大統領、と安倍首相との会談。大統領、哀悼と遺憾の意を表明

夜、東京・永田町の首相官邸前で緊急の抗議集会が開かれ400人が参加

夜、米・メディア、日米首脳会談で安倍首相が大統領に抗議したことを一斉に報じる

26日

沖縄県議会、事件に抗議するとともに「在沖米海兵隊の撤退」を求める抗議決議と意見書を全会一致で可決

宜野湾市議会、在沖米海兵隊の大幅な削減や基地の速やかな整理縮小、日米地位協定の抜本的な改正を求める抗議決議などを、自民や公明など市政与党の賛成多数で可決。市政野党は「在沖米軍基地を全て撤去すること」を求める意見書と決議案を提案したが、否決

そのほか、浦添市、糸満市、南城市、豊見城市嘉手納町、読谷村、北谷町、八重瀬町、北中城村の各議会も、抗議決議と意見書案を全会一致で可決

翁長知事、日米首脳会談でオバマ米大統領から謝罪の言葉がなかったことについて「今の日米関係を表しているのではないか。日本は独立国家なのか、とみな疑問を持つ」と批判

午後5時半から参議院の講堂で、「女たちは怒っている!沖縄女性殺害に関する緊急集会」が開かれ、300人が参加

平和と社会正義を求めて活動する女性たちで組織する「コード・ピンク」、ワシントンで米軍属女性遺棄事件を受け抗議行動

28日

午前、在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官(沖縄地域調整官)沖縄メディアを対象とする会見、被害者に哀悼の意を表明。「寄り添い、哀悼する期間」として、約1カ月間。基地内居住者には基地外での飲酒、基地外居住者には基地内や自宅以外での飲酒や深夜0時以降の外出を禁止する措置などを講じたと発表

翁長知事、ニコルソン四軍調整官と電話会談で、県民はうつろな気持ちで聞いている」と応じ、実効性に疑問を呈したうえで、日米地位協定の改定が必要との考えも改めて伝える

在沖縄米海兵隊が新任兵士向けに開く研修の発表用のスライドに、米軍基地に反発する沖縄の民意を「感情的だ」「独自のレンズで見ている」などと記載しているが判明

米国の平和活動家や学者ら80人以上、事件の解明と沖縄の米軍基地閉鎖・撤退を米政府に求める書簡を発表

6月1日

午後、沖縄県町村会の高良文雄会長(本部町長)、城間俊安副会長(南風原町長)、新垣邦男副会長(北中城村長)が、那覇市の外務省沖縄事務所を訪ね、米軍属女性遺棄事件への抗議決議を水上正史外務省沖縄担当大使に手渡す

夕、長雄志知事、同県恩納村の遺棄現場を訪れ、手を合わせた。翁長知事は取材に、「守ってあげられなくてごめんと胸の中で語りかけた。事件を起こさせない仕組みを政治が作れなかった。二度と事件を起こさせないため、私が先頭に立ってがんばる」と語る

6月3日

政府は午前、防犯パトロール態勢の強化と、国と地元自治体の円滑な連携を図る協議機関の設置が柱の再発防止策を決定

米軍基地を抱える14都道県でつくる「渉外知事会」(会長・黒岩祐治神奈川県知事)、防衛、外務両省と在日米大使館に日米地位協定の改定などを求め緊急要請

6月4日

中谷元・防衛相、シンガポールで、カーター米国防長官と会談

6月5日

沖縄県警、米軍嘉手納基地所属の海軍兵アイメ・メヒア容疑者(21)を道路交通法違反(酒酔い運転)の疑いで現行犯逮捕

鳩山由紀夫元首相、の女性の遺体が見つかった恩納村の現場を訪れた。鳩山氏は花を手向けた後、手を合わせる

6月6日

安倍首相、政府与党連絡会議で、海軍2等兵曹が酒酔い運転容疑で逮捕されたことについて「綱紀粛正を進める中、誠に遺憾であり、言語道断だ」と発言

米軍、日本に駐留する全海軍軍人に対し、自宅を含む基地内外での飲酒禁止を発令

6月19日に予定している、米軍属による女性遺体遺棄事件に抗議する県民大会の名称を「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し、沖縄から海兵隊の撤退を求める県民大会」に決定

6月8日

「これ以上の基地・軍隊の駐留を認めない!追悼・抗議集会」那覇市で開かれる

6月9日

県警は、死体遺棄容疑で逮捕した米軍属シンザト・ケネフ・フランクリン容疑者(32)を殺人容疑などで再逮捕

県民大会に向け、読谷村実行委員会発足

6月17日

「追悼名護市民集会」

第三者委員会「国地方係争処理委員会」、翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しに対する石井啓一国交相の是正指示の適否を審査したが、地方自治法上の適法性の判断を示さないとの結論を発表

米軍人・軍属の綱紀粛正や米軍基地の整理・縮小、日米地位協定の抜本的な見直しを求める抗議決議、県内41市町村のが出そろう

「国が地方訴えるのは異常」 佐藤元福島県知事ら共同声明へ 全国議員に呼び掛け

米軍、飲酒禁止の規制を緩和し、自宅と午後10時までの基地内の飲食店での飲酒を認めると発表

6月18日

公明党沖縄県本部、元米海兵隊員の軍属による暴行殺人事件の被害者を追悼し、事件に抗議する集会を那覇市の県庁前で開く

6月19日

抗議の沖縄県民大会

怒りと悲しみの沖縄県民大会に呼応する いのちと平和のための6.19大行動

6月21日

県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協、会長・翁長雄志知事)の代表7人、外務省や防衛省などへの要請行動を開始

6月28日

在沖縄米軍は沖縄県うるま市の女性を殺害、遺棄したとして米軍属の男が逮捕された事件を受け、県内の全米軍人に出していた基地外での飲酒や外泊の禁止措置を解除

6月30日

那覇地検、容疑者=死体遺棄罪で起訴=を殺人と強姦(ごうかん)致死の罪で那覇地裁に追起訴

7月4日

フランクリン被告(32)の弁護人が、管轄裁判所を那覇地裁から東京地裁へ移すよう最高裁に請求したと明らかにした。被告は、「沖縄の人の裁判を受けたくない。敵意に満ちており、公正な裁判を受けられない沖縄県民による裁判員裁判では公平な裁判を受けられない」と主張

7月5日

日米両政府,共同文書を発表し、軍属の範囲を例示。(1)米政府予算で雇用された文民(2)米軍の船舶、航空機の乗組員(3)米軍の公式目的で滞在する米政府の雇用者(4)米軍と契約する民間企業の技術アドバイザーやコンサルタント――などとした。

7月6日

被告の元米海兵隊員で軍属の男(32)が殺意はなかったと主張したことを米軍の準機関紙「星条旗」(電子版)が報じた

被告は弁護人を通じ、同紙に7月2日付の手記を寄せ「殺意はなかったし、強姦はしていない」と主張している

7月10日

沖縄選挙区(改選数1)では、元宜野湾市長の伊波洋一氏(64)が35万6355票を獲得し、3選を目指した自民現職の沖縄北方担当相、島尻安伊子氏(51)に、10万6400票差をつけて初当選を果たした。現役閣僚の敗北は、安倍政権にとっても手痛い結果となった

7月11日

在日米海軍、飲酒制限を緩和し、基地の外にある飲食店での飲酒を午前0時まで許可すると発表した。これまでは午後10時までとしていた。午前0〜5時は飲酒を禁止する。自宅での飲酒に制限はない

9月6日

殺人罪などで起訴された元米海兵隊員の軍属シンザト・ケネフ・フランクリン被告(32)の弁護人は、公判前整理手続きで那覇地裁に被告の精神鑑定を申請する方針を明らかに

2017年2月14日

米軍準機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」が、元米兵のシンザト・ケネフ・フランクリン被告(33)が「文化的、社会的な恥を恐れるため日本で性犯罪が報告される率は低く、自分は捕まらないと思っていた」と弁護人に述べていると報じた。

8月17日

弁護側は、被告の刑事責任能力を争わない方針を固めた

12月1日

那覇地裁の裁判員裁判;元米軍属に無期懲役

12日

被告控訴

 

 

2016年5月19日、沖縄県うるま市の会社員、島袋里奈さん(20)が4月に失踪した事件めぐり、沖縄県警は死体遺棄の疑いで、元米海兵隊員の米国人の男(32)=与那原町=を逮捕した。県警は供述に基づき、島袋さんの遺体を恩納村の雑草地で発見した。遺体が白骨化していたため死因の特定には至らなかったが、胴体部分に複数の傷があることが確認できた。

 

 島袋さんは4月28日午後8時ごろ、交際中で同居していた男性に「ウオーキングしてくる」と、スマートフォンの無料通信アプリLINE(ライン)でメッセージを送信。翌29日未明に男性が「今から帰る」とメッセージを送ると、読まれたことを示すマークが表示されたが、返信はなく、男性が同日、うるま署に届け出ていた。

 

男は元米海兵隊員で、空軍嘉手納基地(嘉手納町など)に勤務する米軍属のシンザト・ケネス・フランクリン。

 

 

シンザト容疑者は米ニューヨークの貧しい母子家庭で育ち、幼少期は一時、児童養護施設に預けられていた。海兵隊への入隊は23歳だった2007年7月。補給関連の任務や射撃の指導などを担当し、対テロ戦争への従軍記章も授与されている。米海兵隊員として沖縄に派遣され、その際に沖縄の日本人女性と知り合って結婚した。妻と日本で暮らすために2014年9月に3等軍曹で除隊。姓を「ガドソン」から「シンザト」に改めた。その後、米軍嘉手納基地内でインターネット関連の仕事に携わっていた。生後数カ月の子どもがいる。

 

 県警は、島袋さんの失踪に関与した疑いがあるとして5月16日から任意の事情聴取を始め、19日も続けていた。使用車両の任意提出を受けて調べた結果、車から島袋さんのDNA型が検出された。

 

 シンザト容疑者は、当初、関与を否定していたが、任意で提出した車両内部の捜索後、容疑を認めた。容疑者は、「背後から女性の頭を棒で殴り、襲った」と供述。死体遺棄容疑を認めた上で「首を絞め、刃物で刺して殺害した」と説明。「わいせつ目的で女性を狙い、乱暴した」「車で2〜3時間走り、相手を探した」と供述した。

 

 日本共産党沖縄県委員会は5月19日、元海兵隊員の逮捕を受けて「平穏に暮らす女性を襲い死に至らしめ夢と希望を奪った事件に満身の怒りをもって抗議する。戦後71年復帰44年を経て基地あるが故の事件・事故は後を絶たない。県民の苦しみの元凶である米軍基地は撤去しかない」とするコメントを発表した。

 

 岸田文雄外相は19日夜、外務省に米国のケネディ駐日大使を呼び抗議した。「卑劣で残忍で凶悪な行為であり極めて遺憾だ」と米軍の綱紀粛正と再発防止の徹底を求めた。ケネディ氏は「心からの悲しみを伝える。捜査に全面的に協力し、再発防止のために努力する」と応じた。

 岸田氏は会談後、記者団に「米側に遺族・県民の心に寄り添った誠意ある対応を求めたい」と述べた。27日のオバマ大統領の広島訪問への影響は否定した。

 

 中谷元・防衛相も19日夜防衛省にドーラン在日米軍司令官を呼び「非常に遺憾で強く怒りを覚える。言語道断で深刻に受けとめている」と抗議。ドーラン氏は「遺憾の意を覚えるとともに心が痛んでいる」と述べた。

 

 一方、米国防総省当局者は19日「恐ろしい悲劇であり怒りを覚える」との声明を発表。遺族に弔意を表すとともに「米軍は地元当局の捜査に全面的に協力している」と表明した。

 

うるま署は5月20日午後2時35分ごろ、同容疑で逮捕した容疑者の身柄を那覇地検に送致した。

 

シンザト容疑者は、「狙う女性を2〜3時間探し、見つけた女性を背後から棒で殴って襲った」「強姦(ごうかん)し、刃物で刺して殺した」とも供述。遺棄の方法については、遺体をスーツケースに入れて乗用車で運び、雑木林に置く際にケースから出した、などと具体的に説明した。

 

だが、那覇地検に送検された5月20日から、取り調べに黙秘するようになった。殺人容疑などでの立件には物証が鍵となるが、供述を裏付ける刃物などは見つかっておらず、損傷が激しい遺体からは死因も分からないなど今後の捜査は難航する恐れもある。

 

遺体発見現場の近くから女性のものとみられる赤いジョギングシューズが発見されたが、依然として女性のスマートフォンなどの所持品が見つかっていない。

 

警察は21日夜、容疑者の男の自宅を捜索した。

 

うるま署から那覇地検に身柄を送致されるシンザト・ケネス・フランクリン容疑者=20日午後2時32分、うるま市のうるま署

 

安倍晋三首相は20日午前、「非常に強い憤りを覚える。徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい。さぞ無念だったと思う。ご家族のことを思うと言葉もない」と官邸で記者団に述べた。政府は同日午前、官邸で沖縄関係閣僚会議を開き、米側に沖縄県警への捜査協力や綱紀粛正、再発防止を求めることを確認した。

 

 菅義偉官房長官は同日午前の記者会見で、「将来ある若き女性に対する米軍属の残忍で凶悪な事件の発生は許し難く言語道断であり、強い憤りを覚える」と語った。また、19日夜に岸田文雄外相と中谷元防衛相が米側に、抗議とともに綱紀粛正や再発防止を申し入れた点を指摘し「このような事件が再び起こらないように米側に対応を求め続けていきたい」と強調した。

 

 米軍属による女性死体遺棄事件を受け、ローレンス・ニコルソン在沖米四軍調整官とジョエル・エレンライク在沖米総領事らが20日午後3時、県庁に安慶田光男副知事を訪ね、事件について謝罪した。

 ニコルソン氏は「米国を代表し、遺憾の意を伝え、被害者のご冥福を祈る。県警の捜査に全面的に協力している」と謝罪した。その上でシンザト・ケネス・フランクリン容疑者について「米軍や米政府が雇用しているわけではないが、日米地位協定が適用される人物だ。事件は全て私の責任だ」と述べた。

 安慶田副知事は「被害者は20歳のはつらつとした時期に事件に巻き込まれた。家族の心情を考えると居たたまれない。許されるものではない」と強く批判した。その上で「このような非人間的な事件が発生したことは、沖縄が基地と隣り合わせの生活をしないといけないことが大きな原因だ。被疑者が軍人であれ軍属であれ民間人であれ、事件は基地があるゆえに発生した。米軍施設が沖縄にあまりに集中している」と沖縄の過重な基地負担を指摘した。

 

安慶田光男副知事(右)に頭を下げるローレンス・ニコルソン四軍調整官(中央)とジョエル・エレンライク在沖米総領事(左)=20日午後3時すぎ、県庁6階

 

 佐々江賢一郎駐米大使は20日の記者会見で、「極めて遺憾な、言語道断の事件だ」と非難するとともに、米政府に抗議したことを明らかにした。

 米側の再発防止策について「米政府の検討を待ちたい」と指摘。米軍普天間基地の名護市辺野古移設への影響については「(事件に)当面集中すべきで、その他のことを考えるのは時期尚早だ」と述べた。

 

 自民党県連の具志孝助幹事長らは20日午前、那覇市の外務省沖縄事務所に水上正史沖縄担当大使を訪ね、米軍属女性死体遺棄事件に抗議した。具志氏は「いよいよ米軍、軍属を含めて沖縄から出て行けという声が出てきてもおかしくない状況。われわれとしてもどうしようもなく、怒りのやり場がない」と厳しく抗議した。

 水上大使は「何の対策を取ったかよりも結果が全て。最近、米軍犯罪が減ったかと胸をなで下ろしていたが、今回で(犯罪件数を)百件、一万件と書かないといけない。結果を出すために何ができるか気を引き締めて考えたい」と頭を下げた。

 照屋守之県議は、3月の那覇市内での米兵女性暴行事件での再発防止が生かされていないと強く非難し「命が奪われ、取り返しがつかない。綱紀粛正もだめ。安倍首相とオバマ大統領のトップ会談をさせるぐらいが必要だ」と事件の重大さを訴えた。同じく地元の仲田弘毅県議も再発防止を強く求めた。

 

約2万2000人が裁判を起こしている嘉手納爆音訴訟団と中部地区労働組合協議会は20日正午から、北谷町砂辺の嘉手納基地第1ゲート前で抗議集会に約250人が結集、「人殺し基地は沖縄から出て行け」。基地のフェンス越しに拳を突き上げた。途中で、亡くなった女性の冥福を祈り、全員で1分間の黙とうをささげた。

 呼びかけ人の一人、元沖縄市長で嘉手納爆音訴訟団の新川秀清団長(79)は、戦闘機が約10分おきにごう音を鳴らし同基地を飛び立つ中、「多くの県民が女性に元気で帰ってきてほしいと願っていたが、このような結末を迎えてしまった。戦後71年たつが、何も基地問題は解決していない」と憤り、「国は言葉だけで沖縄の基地負担に寄り添うというが、基地問題は半歩も前進していない。ここから抜け出すために県内の全基地の撤去を求めるしかない」「米軍基地の撤去、辺野古新基地をつくらせない、高江ヘリパッド建設阻止をよびかけるとともに「来る県議選、参院選もいまの安倍政治に、自公政権に、私たちはしっかりとした答えを出していこう」と訴えた。

 日本共産党の赤嶺政賢衆院議員は、「女性が無事であってほしいと県民だれもが願っていたが、最悪の結果だ」と述べ、日米両政府には綱紀粛正も再発防止もまじめに取り組む姿勢はなく、県民の怒りが鎮まれば辺野古や高江に新たな基地をつくろうとたくらんでいることは明らかだと厳しく批判。「70年、県民が頑張ってきた粘り強いたたかいで必ず沖縄から基地を撤去するまで頑張り抜こう」と訴えた。イハ洋一参院候補も参加した。

 野国昌春北谷(ちゃたん)町長も参加し、あいさつした。

 

 一方、沖縄の16の市民団体は連名で「沖縄から全ての基地・軍隊の撤退を求める」との要求書を米国大使館や日本政府に送付すると発表。記者会見した学生団体「SEALDs(シールズ)琉球」の玉城愛さん(21)は「同世代の方が殺害され、恐怖と怒りと悲しみで言葉にできない」と涙声で語り、「基地のある沖縄で生きていく者として、日米両政府に私たちの気持ちを訴えていかないといけない」と強調した。

 

 

 

  

緊急抗議集会に次々と結集、嘉手納基地に向かって怒りをぶつける市民ら=20日午後0時20分、北谷町の嘉手納基地第1ゲート前

 

元米兵による死体遺棄事件に抗議し、首相官邸前で声を上げる人たち=20日夕、東京・永田町

 

1995年9月に起きた米兵による少女暴行事件を機に結成された市民団体の「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」のメンバーらは5月20日、「米軍基地がある限り事件は起きる。すべての基地を撤去すべきだ」と記者会見で訴えた。

 

 

高里さんらは当時、同じ県庁で抗議の意思を表明。直後の県民大会のうねりの中心になった。事件から20年余り、若い世代が抗議の輪に加わった。

 

「私も夜、歩きに行く。被害者が家族だったかもしれない。大切な人や友人だったかもしれない」と、名桜大4年の玉城(たまき)愛さん(21)は目にいっぱいの涙をためて、ゆっくりと訴えたうえで、「私の考えをはるかに超えた怒りや悲しみを、沖縄で生きてきた人たちはとても強く感じていると思う」と語った。

 

玉城愛さん(右から2人目)

 

「被害者は私だったかもしれない」女性団体、震える声(2016年5月21日配信『沖縄タイムス』)

 

 一体、いつまで続くの−。沖縄県庁で20日開かれた「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」などの会見には20人近い女性たちが集まった。戦後71年、抗議を重ねても重ねても繰り返される、米軍基地や軍隊があるがゆえの事件事故。女性たちは被害に遭った女性を自らに重ね、こみ上げる悲しみや怒り、むなしさにおえつを漏らした。

 「被害者は私だったかもしれない。私もよく夜に歩いている」。シールズ琉球の玉城愛さん(21)は何度も声を詰まらせながら、言葉を絞り出した。午後8時にウオーキング中、被害に遭った女性と同世代。女性の住んでいたうるま市出身で、彼女の出身地の名護市にある名桜大学に通う学生だ。

 ウオーキングという当たり前の日常すら脅かされる現実。「沖縄で生まれ育ち、将来への夢が彼女にもあったと思う。恐怖と怒り、悲しみで言葉にならない」。充血した目でゆっくり言葉をつなぎ、同世代に向け「このまま黙って無関心でいいの」と訴え掛けた。

 「女たちの会」発足の契機は1995年の米兵暴行事件だった。「20年、何も変わっていない」。高里鈴代共同代表は、怒りを超えて、無念さをにじませる。2カ月前にも那覇市で米兵による暴行事件が起きたばかり。「表に出る被害者一人の背後に、同じ思いをした人が何人いることか」

 糸数慶子共同代表も「米軍の事件事故が起きると日米両政府は必ず『綱紀粛正』『再発防止』というが、パフォーマンスはいらない。日米地位協定の改定どころではない。全ての米軍基地の撤去だ」と言い切った。

 会見では女性たちの多くが「言葉が見つからない」と絶句しつつも、懸命に声を絞り出した。事件が発覚した19日は、午後7時から日付が変わるまで膝をつき合わせ、「沈黙せず声を発せよう」と決めたという。

 琉球大学の阿部小涼教授は「言葉がない。それでも、怒りにして伝える必要があると、私たちはここに集まった」と訴えた。

 

 

1995年の少女乱暴事件時に県知事を務めた大田昌秀(90)は5月21日、琉球新報のインタビューに答え、「日米両政府が再発防止を真剣に考えるなら、米兵の好き勝手を許している日米地位協定を真っ先に変えるべきだ。米軍がいる限り、事件は防ぎようがない。沖縄から米軍を撤退させるべきだ。そうしない限り、必ず同じような事件が起きる」と述べた。再発防止に向け、日米両政府は地位協定改定と県内の全米軍基地撤去を実現すべきだと主張した。

 少女乱暴事件を受けた県民大会壇上で「本来一番に守るべき幼い少女の尊厳を守れなかったことを、心の底からわびたい」と述べたことを振り返り、大田氏は「軍隊の中では『人を殺せ』と教えられているが、『人権を大事にしろ』とは教えられない。こんな軍隊を置いていたら、県民がいつまでも犠牲になるのは当たり前だ」と指摘した。

 大田県政は96年、20年かけて沖縄から全米軍基地をなくす基地返還アクションプログラムを作り、日米両政府に実現を求めた。大田氏は「日米政府がきちんと受け止めて実行していれば、2015年に米軍基地はなくなっていた。こんな事件は起きずに済んだ」と述べた。

 大田氏は「事件が起こる度に司令官が来て『二度と起こさないようにする』と繰り返してきたが、復帰後だけでも500件以上の凶悪事件が起きている」と指摘し、「それなのに日米地位協定を改定しようとせず、『運用改善』で対応できると言う。沖縄に対し、日米両政府が誠意のないことを実証しているようなものだ。沖縄は一体、何なんだということになる。両政府の本気度が問われている」と強調した。

 

 女性の告別式が21日行われ、名護市の葬祭場の会場には約800人の長蛇の列ができた。同級生、幼少時を知る近所の親類、共に働き汗を流した職場の同僚たちなど、元気だったころの女性を知るたくさんの人が喪服姿で参列し、遺影の中でほほ笑む女性に無言の別れを告げた。

祭壇には、成人式の前撮り写真が飾られていた。ピンクのドレスとティアラ(王冠をイメージしたアクセサリー)を着け、黒色の髪を束ねた女性が愛らしく笑っていた。

 告別式の冒頭、多くの参列者を前に喪主の父親があいさつした。「皆さん、写真を見てください。彼女の笑顔を、忘れないでください」。呼吸が乱れ、途切れ途切れに話す父親の声は涙声になった。その言葉を聞いた参列者からもすすり泣く声が漏れた。

告別式は約1時間で終わった。告別式場から出てきた参列者は目を真っ赤に腫らせ、涙で頬をぬらす人もいた。厳しい表情で目を伏せる人、基地がある故の不条理を語る人、むなしさや怒りを吐露する人など、悲しみが式場にあふれた。

 女性の遺骨は両親と交際相手の男性の3人に囲まれ、一台の車で会場を後にした。告別式を終えた後も、高校時代の友人らはその場に残り、女性の写真が飾られたメッセージボードとともに最後の集合写真を撮っていた。

 式には翁長雄志知事や中谷元・防衛相、那覇市の米総領事館の関係者、稲嶺進・名護市長も参列。稲嶺氏は涙を浮かべ、「20年そこそこの人生を一瞬で奪われる不条理を許せない」。(米軍属が容疑者として逮捕されたことについては)「今回に始まったことではない」「とても許せるものではない。米軍関係者は綱紀粛正とか二度とないようにとか言うが、結局なくなっていない」と批判した。

 沖縄県選出の糸数慶子参院議員=無所属=は「これ以上涙を流さないためにも、沖縄に基地を押しつけるべきではない」と語った。

 参列者には父親から「思い出も涙も、尽きることはありません」で始まる礼状が配られた。宝物だった一人娘は「今が一番楽しい時期だった」とした上で「今はいつ癒えるのかも分からない悲しみとやり場のない憤りで胸が張り裂けんばかりに痛んでいます」と記している。

  

 

被害女性の告別式で、出棺を見送り涙を流す参列者たち=5月21日午後2時すぎ、沖縄県名護市

 

 中谷元・防衛相は5月21日夜、カーター米国防長官と電話で協議した。事件について、カーター氏は「大変痛ましく遺憾な事件だ。被害者や遺族に深い心からの謝罪の意を表明する」と述べた。

 犯人逮捕後、日米の閣僚が協議するのは初めて。中谷氏は「米軍属の卑劣な行為による極めて残忍で凶悪な事件の発生は言語道断で、極めて遺憾だ」と強く抗議。米軍人・軍属の綱紀粛正と再発防止策を要請した。カーター氏は「二度とこのような事件が起きないように米軍人・軍属による事件事故の再発防止に取り組んでいく」と応じた。事件の捜査に全面協力する意向も示した。

 

「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」(高里鈴代、糸数慶子共同代表)などは22日午後2時から、被害女性への追悼と米軍の撤退を求める抗議集会を開いた。黒や白い服装で、喪章をつけた約2000人が、沖縄県北中城(きたなかぐすく)村の在沖米軍司令部がある米軍キャンプ瑞慶覧(ずけらん)の石平ゲート前(北中城石平)を埋め尽くし、被害者に黙とうした。

参加者は「ただ安心して安全に沖縄で暮らしたいだけ」「基地はいらない、アメリカに持ち帰って」など、それぞれの思いを込めた自作のプラカードなどを持ってゲート前に立ち、静かに怒りをぶつけた。

 安全な社会を実現するため沖縄から全ての基地・軍隊の撤退を求める米大統領や安倍首相らあての要求書が読み上げられた後、参加者は基地のフェンス沿いを歩き、15分おきに基地に向かって一斉にプラカードを掲げた。

 涙を流しながら歩く人や、「にんげんがたのしくへいわにくらせますように」と願いを紙に書いた子どもたちの姿もあった。

 73歳の女性=沖縄市=はベトナム戦争当時、米軍人の住宅でハウスメイドをしていて、風呂上がりの雇い主の米兵に暴行されそうになった経験を語り、「普段は非常に紳士的だった人が出征前だからか、おかしくなってしまった。こういう恐怖の世の中を変えるには、もう基地は撤去するしかない」と話した。

 那覇市の女性(67)は「戦場で人を殺す訓練をする人がたくさんいる基地を置いて、何度犯罪が起きても再発防止とか、通り一遍のことしか言わない日本政府にも今回の事件を招いた責任があると思う」と怒りを込めた。

 

 

参加者は、被害女性20の魂を表現した黒いチョウチョのイラストや「すべての米軍基地はいらない」と英語で書かれたプラカードを、15分おきに基地へ向かって掲げ、抗議した。

 

 

 

沖縄県の翁長雄志知事は5月23日、首相官邸で安倍晋三首相と会談し、元海兵隊で米軍属の男による女性遺体遺棄事件に抗議した。翁長氏は冒頭、「事件は基地あるゆえの犯罪であり、大きな怒りと悲しみを禁じ得ない」と指摘。沖縄の現状を伝えるため、今週来日するオバマ米大統領と面談する機会を設けるよう求めた。安倍首相からは綱紀粛正やケネディ米駐日大使への抗議したことなどの言及はあったが、面会要請についての応答はなかった。

沖縄県の翁長雄志知事は23日、元米海兵隊員の軍属が逮捕された女性遺棄事件を巡り、翁長氏が米大統領との面会設定を求めたことに菅義偉官房長官が困難との認識を示したことに反発。「在日米軍を支える県民の思いを心の中に押し込めることができないくらい爆発状態だ」と述べた。

翁長氏は「日米安全保障体制を一番支える沖縄の人権や自由(の確保)を、これまでの日米両政府がどれだけ目に見える形でやってくれたのか」と疑問を呈した。

 

在日米大使館関係者は23日、ケネディ大使が沖縄県を訪問する方向で調整していることを明らかにした。訪問の明確な時期については明かさなかったが「大使と沖縄県双方にとっていつがいいかを検討している」と述べた。ケネディ大使の訪問は、同県の女性死体遺棄事件で米軍属の男が逮捕されて以来初めて。

 

沖縄県議会米軍基地関係特別委員会(新垣清涼委員長)が23日午前10時から開かれ、米軍属女性死体遺棄事件について審議。比嘉京子氏(社大)への答弁で渡真利健良県警刑事部長は、シンザト・ケネス・フランクリン容疑者による自供の現状について「死体遺棄事件には死という事実がある。(被害者が)死に至った原因については(容疑者)自ら殺害したということまでは話をしている」と述べ、同容疑者が殺害の事実を認めていると明言した。その上で、現在は死体遺棄事件での捜査をしており、殺害の詳細については現在捜査中だと答えた。

 委員会は午後、事件に対する抗議の意見書と決議案の内容を話し合う。

 

日本共産党の小池晃書記局長は23日、国会内の記者会見で、翁長・安倍会談について問われ、「知事とも力をあわせてこの問題の解決のために力を注ぎたい」と表明した。

 翁長知事が安倍首相に対し「事件は絶対に許されるものではない。米軍基地があるが故の犯罪だ」と強く抗議し、日米地位協定の抜本的見直しと、来日するオバマ大統領と直接話す機会を求めたことについて、小池氏は「要求は当然のものであり、支持する」と表明。「党としても解決策は基地撤去しかないと繰り返してきた。日米地位協定については、まさにこのような犯罪の温床になっており、抜本的な改定を求めている」と述べた。

 また、来月にも沖縄で数万人規模の県民集会を開く動きについて、小池氏は「当然の怒りだ」と強調。「この許しがたい犯罪に対して、党派を超えて沖縄県民の怒りの声をあげることが非常に大事になってきている。基地のない沖縄のために島ぐるみの結束をはかろうと訴えていきたい」と語った。

 

沖縄県名護市辺野古の新基地建設に反対する市民団体や政党、企業で構成する「オール沖縄会議」は23日、事件に抗議する大規模な県民大会「元米兵による残虐な蛮行糾弾! 犠牲者を追悼し米軍基地の撤退を求める集会」を6月19日に那覇市の奥武山(おうのやま)公園内・沖縄セルラースタジアム那覇で開くことを確認した。

 米軍基地の撤退や米軍普天間基地の「県内移設断念」「閉鎖・撤去」を求めた「建白書」を実現させる大会と位置づけ、10万人規模の結集をめざすとしている。

 

 遺体が発見された恩納村安富祖(おんなそん あふそ)の雑木林には連日花束やジュースなどの供え物を手にした人たちが多く訪れている。被害女性の父親も23日、現場を訪れた。

 父親たちは、女性の名前を呼びながら「みんなと一緒におうちに帰ろう。ここにいたらいけないよ。一緒についてきてね」などと泣きながら語りかけた。

このあと父親が報道各社の取材に応じ、「娘の魂を拾いに来ました。娘がどうやって遺棄されたか、どういう場所なのか、実際に見たかったです」と話した。

さらに、「娘がどんな思いで命を落としたのか、どんな痛みと苦しみと恐怖の中で娘が亡くなったかと考えると耐えられません。今は悲しみも強いのですが、容疑者への憎しみもあり、悲しみと憎しみがいろいろと混じり、どういう気持ちか心の整理がつきません」と声を詰まらせながら語った。

基地従業員や親子連れなど多くの人が手を合わせ、事件が繰り返される現状に悔しさをにじませ、被害女性に思いを寄た。

 また現場では、海兵隊の退役軍人が、膝をついて黙とうをささげる姿も見られた。

 

 

遺体遺棄現場近くで献花し、手を合わせる市民=23日、恩納村安富祖

 

 沖縄にあるアメリカ軍基地を管轄するアメリカ太平洋軍のトップ、ハリー・ハリス司令官は、事件を受けて23日、およそ5分間にわたって自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長と電話で会談を行った。

この中でハリス司令官は、「大変痛ましく遺憾な事件であり、被害者とご遺族に心から謝罪の意を表明する。アメリカ太平洋軍として、日本政府に協力する」などと話し、謝罪した。

 

ハリー・ハリス司令官

 

 島尻安伊子沖縄担当相は24日の閣議後会見で、米軍属の男による女性遺体遺棄事件を受け、翁長雄志知事が安倍首相に日米地位協定の改定を求めたことに関し、「県選出の国会議員の立場として抜本的な改定を(政府に)要請している。自民党県連としても改正・改定は求めざるを得ない」との考えを示した。

 また、「政府としても外務省が米国政府と努力を積んでいることは承知している。こういった残忍で重大な事件に関しては身柄の引き渡しなどで地位協定が立ちはだかるおそれがある」として、抜本的改定を求めていくとした。

 一方、県内で開催の動きがある同事件の抗議集会への参加に関しては、「県民大会の詳細が出ていないので、現時点でコメントは控えたい」と述べるにとどめた。

 

 辺野古新基地反対で団結する「オール沖縄」代表の全5人の衆参国会議員は24日、国会内で中谷元・防衛相と会談し、県内で起きた元海兵隊員の米軍属による女性遺体遺棄事件を受けて抗議するとともに、沖縄の全米軍基地を速やかに撤去するよう求める要請書を手渡した。

 参加したのは、赤嶺政賢(日本共産党・沖縄1区)、照屋寛徳(社民党、沖縄2区)、玉城デニー(生活、沖縄3区)、仲里利信(無所属、沖縄4区)の衆院議員4氏と、糸数慶子参院議員(無所属、沖縄)

 要請書は、▽被害者遺族と関係者への謝罪と補償▽辺野古新基地建設の断念、普天間基地の即時閉鎖撤去、在沖米軍基地の撤去▽日米地位協定の全面改正―を要求した。

 照屋氏は事件について、「『基地あるがゆえの犯罪だ』というのが、県民の思いだ」と強調。仲里氏は「私は日米安保容認の立場だったが、今回はなんとしても基地撤去か、目に見える形で縮減がなければいけない」と訴えた。

 中谷防衛相は「米側に抗議すると同時に、再発防止・綱紀粛正に努めていく」と繰り返すにとどまり、県民の間で日に日に高まる全基地撤去の声にはコメントしなかった。

 

抗議する5人の「オール沖縄」国会議員(左から玉城、赤嶺、右から糸数、仲里、照屋の各氏)=24日、国会内

 

 日本共産党の赤嶺政賢議員は5月24日の衆院安全保障委員会で、沖縄での米軍属による女性遺体遺棄事件を取り上げ、政府の責任をただした。

 赤嶺氏は、「何の罪もない被害女性の命と未来を奪った卑劣な蛮行を絶対に許すことはできない」と強調。「綱紀粛正・再発防止」を繰り返す政府に対し、3月の那覇市内のホテルでの女性暴行事件が、外出を禁止された米兵による犯行だったことをあげ、「再発防止」として米軍が設けた「リバティー制度」(夜間外出規制)の「抜け穴」はただされたのかと追及。同制度では、午前1時〜5時の制限時間後に基地に戻れば違反に問われません。赤嶺氏はこの問題を、3月の外務委員会で指摘した。

 外務省の森健良北米局長は、同制度は「完ぺきではない」と認めたものの、再発防止策を議論する日米のワーキングチーム(作業部会)で、米側から「抜け穴はない」と説明されたとして問題はないとの考えを示した。また、ワーキングチームは議論を交わす場であり、結論を出す場でないことを明らかにした。

 赤嶺氏は、22日にも外出禁止時間帯に米海軍兵が酒気帯び運転で現行犯逮捕されていることをあげ、「米軍は、重大な事件を起こした翌日でさえ、『再発防止策』を破って事件を起こしている。『綱紀粛正・再発防止』という言葉にたいし、『またそれをいうのか』と沖縄県民が怒るのは当然だ」と糾弾した。

 中谷元・防衛相は、「軍属には再発防止策が徹底されていない」と釈明。一方、警察庁は統計資料のある1989年から2016年4月末までに、全国で231件の米軍属による刑法犯が発生していることを明らかにした。

 赤嶺氏は、「県民にとっては、軍人も軍属も日米地位協定で保護されており同じだ」と批判。「地位協定と広大な米軍基地があるもとで、軍事優先の社会ができあがっている。再発防止といっても『机上の空論』だ」と強調し、日米地位協定の抜本的見直しと辺野古新基地の撤回を求めた。

 

質問する赤嶺政賢議員=5月24日、衆院安保委

 

 沖縄県女性団体連絡協議会(女団協)の大城貴代子会長らは25日午前、那覇市の外務省沖縄事務所を訪ね、米軍属女性死体遺棄事件に抗議し、県内の米軍基地の撤去や事件事故の再発防止の徹底などを要請した。

 これに対し同事務所の中野大輔副所長は「米国側へ捜査への全面協力、綱紀粛正、実効性のある再発防止を申し入れている」と回答した。その上で「こういう事件が起こり理解を得るのは難しいと思うが、失われた県民の信頼を取り戻していきたい」と話した。

 女団協の大城会長は「綱紀粛正という言葉が県民の人権を守るものでないことは明らかだ」と憤り、具体的な策を講じるよう強く求めた。

 女団協は同日、嘉手納町の沖縄防衛局にも抗議・要請を行った。

 

 日米首脳会談開催の5月25日、沖縄県では女性会社員遺体遺棄事件に抗議する集会が開かれた。容疑者の軍属が働いていた米軍嘉手納基地(北谷町など)ゲート前には、約4000人が集まり、被害者を悼み、米軍基地負担の軽減を訴えた。

 平日午後にもかかわらず、ゲート側の沿道を300メートルにわたって埋め尽くした人垣。犠牲者、遺族の無念さや、命を救えなかった悔しさを訴える発言が続くたび、すすり泣きが聞こえた。

 黙とう後、参加者らは幾度となく再発防止の徹底と綱紀粛正を求めてきたにもかかわらず、米軍人や軍属の事件事故が後を絶たないと指摘。「県民は怒りの限界点を超えた。これ以上の基地の重圧に耐えることはできない」と訴え、米軍の撤退を求めた。

 その上で@大幅な米軍基地の整理縮小A日米地位協定の抜本的な改定B普天間飛行場の閉鎖と撤去、5年以内の運用停止C危険なオスプレイの配備撤回D辺野古の新基地建設断念―の5項目を要求する抗議決議を採択した。

主催者を代表して、「オール沖縄会議」共同代表の稲嶺進名護市長は「彼女は希望に満ちた人生が待っていたはずだった」と沈痛な面持ちで訴え、「我々は戦後71年間、米軍基地に苦しめられてきた。沖縄に基地が集中する状況を変えない限り、事件は続く。もうガッティンナラン、許してはいけない県民の怒りを今まで以上に結集し、世界中に訴え続け、沖縄の現状を変えよう」と呼び掛けた。

 同じく共同代表で、シールズ琉球の玉城愛さんは「なぜ私たちの命がこんなに軽視されるのか。基地のある沖縄で生きたくない。戦前、戦後、復帰後を生き抜いてきたウチナーンチュの心を忘れず、基地をなくしたいの声を沖縄だけにとどめるのではなく、日本、世界に訴えていきましょう」と力を込めた。

 県選出衆院議員の照屋寛徳氏と赤嶺政賢氏、玉城デニー氏、仲里利信氏らが登壇、県議らもあいさつした。日本共産党の赤嶺氏は、被害者の「助けて」の叫びに、一度も向き合おうとしない日本政府の当事者意識のなさを痛烈に批判。アメリカに抗議しても基地問題にメスを入れない安倍政権を絶対に許さず、「基地のない沖縄をつくるたたかいを大きく広げていこう」と力を込めた。

 

 

 

 

 

 

 石垣市議会(知念辰憲議長)は5月20日午前、臨時会を開き、事件に抗議する決議を全会一致で可決した。

 決議は事件について「前途ある若者の未来を断ち切り、親族や友人、関係者、県民を悲しみと怒りに陥れた」と糾弾した上で「度重なる米軍人や軍属による事件・事故は県民に不安と恐怖を与えている。再発防止策を講ずるよう要請してきたが効果を上げていない。より抜本的な対策が強く求められる」と指摘し、事件の全容解明を求め、厳重に抗議している。宛先は米国大統領、駐日米国大使、首相、外相など。

 

中部市町村会(会長・島袋俊夫うるま市長)は5月23日、北中城村のEMウェルネスリゾートコスタビスタ沖縄ホテル&スパで5月臨時会を開き、日米地位協定の抜本的改定などを求める抗議決議と抗議行動の実施を全会一致で承認した。25日に在沖米国総領事などを訪れ、抗議決議を手交した。

 抗議決議では「多くの米軍基地を抱える中部市町村会は、住民の人権、生命、財産を守る立場から事件に厳重に抗議する」とした。抗議項目では(1)事件の全容解明と事件に関する情報の開示(2)遺族への謝罪と完全補償(3)再発防止策の徹底と効果のある綱紀粛正(4)日米地位協定の抜本的改定―を求めた。宛先は在沖米国総領事や沖縄防衛局長など。

 抗議行動では外務省沖縄事務所の沖縄担当大使、在日米軍沖縄地域調整官、沖縄防衛局長にも手交。臨時会合には中部の全10市町村の首長が参加した。

 

 被害女性の遺棄現場のある恩納村議会(仲田豊議長)は23日、「沖縄県民に大きな衝撃と不安を与えた」として、事件の再発防止や日米地位協定の改定を求める意見書と決議を全会一致で可決した。

 恩納村議会の決議は「これまで再三抗議要請しているにもかかわらず、事件が繰り返されることに激しい憤りを禁じ得ない」と強調。(1)事件の徹底究明と捜査への全面協力(2)米軍人・軍属などの綱紀粛正を徹底し、実効性のある再発防止策を速やかに公表(3)遺族に対する早急な謝罪と補償(4)日米地位協定を抜本的に改定―などを求めた。宛先は抗議決議がオバマ米大統領、意見書は安倍晋三首相ら。

 

沖縄県議会は23日、米軍基地関係特別委員会を開いて抗議決議案と意見書案を協議した。要請内容に「米軍普天間飛行場の県内移設断念」や「米海兵隊の撤退」を盛り込むかをめぐって社民、共産両党など県政与党と自民党が決裂。26日の臨時議会で、過半数を占める与党案が可決される。

 

名護市議会(屋比久稔議長)は24日の臨時議会で抗議決議、意見書両案を全会一致で可決した。内閣総理大臣や外務大臣、防衛大臣、米国大統領、米国国防長官、在日米軍司令官ら関係閣僚宛て。

 抗議決議と意見書では「事件は沖縄に基地が集中することに起因する」と指摘。「人権を無視した蛮行で、我々県民は怒り心頭に発し、基地の全面撤去を求める声もある」として、@被害者への謝罪、完全な補償A日米地位協定の抜本的な見直しB在沖米軍基地の整理・縮小と米兵の削減―を求めている。

 議会冒頭、全員で被害者へ黙とうした。

 

那覇市議会(金城徹議長)は24日の5月臨時会で、米軍属による女性遺体遺棄事件に関する抗議決議・意見書の両案を全会一致で可決した。宛先は米大統領、米国防長官、米国務長官、駐日米国大使、首相、防衛相ら。

 

うるま市議会は24日午前の臨時会で、抗議決議と意見書を全会一致で可決した。

抗議決議では「またしても市民が犠牲となる凶悪事件が発生したことは断じて許せず、激しい憤りを覚える」と批判。「渾身の怒りを込めて厳重に抗議する」とし、遺族への謝罪や、米軍属の管理体制と責任の所在を明らかにすることなどを求めた。

うるま市議会と島袋俊夫うるま市長は同日午後、沖縄防衛局などに抗議文を提出した。

 

南風原町議会(宮城清政議長)は24日午前、臨時会を開き、基地の整理・縮小や日米地位協定の抜本的な見直しなどを求める意見書案と抗議決議案をそれぞれ、全会一致で可決した。

抗議決議などでは「事件は、将来に夢を抱く若い女性の命を奪い、県民に大きな衝撃を与えた」と指摘。日米両政府に「事件が戦後70年余も繰り返される事態を重く受け止め、県民の犠牲を断ち切るべく抜本的な対策を講じるべきだ」と求めている。

 

米軍嘉手納基地がある沖縄市議会は25日、臨時会で抗議決議と意見書を全会一致で可決した。安倍晋三首相やオバマ米大統領らに対し、米軍構成員らの教育徹底や日米地位協定の抜本的な改定を求めている。

決議では「事件が起きるたびに綱紀粛正を図ると繰り返してきた米軍の取り組みには何の実効性もなかったと断じざるを得ない」と指摘。「基地あるが故の事件に沖縄の人々の我慢はとうに限界を超えていることを強く認識すべきであり、今後断固としてこのような悲劇が起こり得ないよう明確な犯罪防止策が求められている」と訴えている。

 

沖縄県議会や嘉手納基地の地元の嘉手納、北谷両町議会は26日、全会一致で同様の決議を可決する。

 

オバマ大統領は25日夜、ベトナム訪問を終えて中部国際空港に到着。ヘリで志摩市に入った直後に安倍首相との会談に臨み、当初30分を予定した会談は1時間近くに及んだ。このうち約20分は大統領ら少人数の会合で行われ、沖縄の事件のみを協議し、その後に全体会合でオバマ氏の広島訪問や世界経済などについて意見をかわした。

首相は沖縄県で起きた米軍属の男による死体遺棄容疑事件について米側に抗議し、実効性のある再発防止策を講じるよう求めた。オバマ氏は事件を受け、哀悼と遺憾の意を表明した。

会談後の共同記者会見で、安倍首相は19日に米軍属の男が女性の死体遺棄容疑で逮捕された事件に関し、「オバマ大統領に日本の首相として断固抗議した」と述べた。

首相は事件について「大きな衝撃を受けた国民感情をしっかり受け止めてもらいたい」と指摘。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題についても「沖縄のみなさんの気持ちに寄り添うことができないならば前に進めることはできない」と述べ、日米同盟への悪影響に懸念を示した。

これに対し、オバマ大統領は「米国は非常に暴力的な犯罪に衝撃を受けている。言い訳はできず、再発防止にできることはすべてやりたい」と発言。沖縄の基地負担の軽減に日米で取り組むことで一致した。記者会見の公式の通訳は、オバマ大統領が事件に関して発言した「regret」を「哀悼」と訳したが、米側がその後、「遺憾」が正しいとして日本側に修正を申し入れた。

日米地位協定の見直し要求に対し、首相は会見で「地位協定のあるべき姿を不断に追求していく」と述べるにとどめ、オバマ大統領も「日米地位協定が、日本の法体系のもとでの完全な捜査や司法に必要な措置を何ら妨げてはいないと指摘しておきたい」と、改定に否定的な見方を示した。

 

 

 首脳会談は26日に開幕する主要国首脳会議に合わせて、当初は26日午前の開催が見込まれていたが、沖縄県内での反基地感情のうねりが高まっている現状を踏まえ、首脳レベルで迅速に対応する必要があるとして、オバマ氏の来日直後に設定された。

 

 東京・永田町の首相官邸前で25日夜、緊急の抗議集会が開かれ400人が参加した。参加者らは「これ以上沖縄に基地をつくるな」と、事件への怒りと米軍基地の撤去をアピールした。

呼び掛けた「沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック」の青木初子さん(68)は「沖縄はいつもないがしろにされてきた。沖縄の人の命と暮らしと人権を守る動きを東京からも広げよう」と訴えた。

 

 

米主要メディアは、25日夜の日米首脳会談で安倍晋三首相が米軍属女性死体遺棄事件について抗議したことを一斉に報じた。安倍首相が共同記者会見で「深い憤り」などと厳しい言葉を用いて抗議したことを伝えるとともに、オバマ大統領が「深い遺憾の意」を表明したことを報じた。一方、沖縄では事件を受け抗議集会が開催されるなど「抗議の声が広がっている」とした。

ワシントン・ポスト(電子版)は安倍首相の抗議を受けオバマ大統領が「厳粛な表情で立っていた」と会見の様子を伝えた。また事件が米国の現職の大統領として初めての広島訪問について、日本国民の間で高まっていた期待感をそぐ恐れがあると指摘している。

ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は在日米軍関係者5万人のうち、半数以上が沖縄に集中していることなどに触れ、事件が駐留米軍への批判をあおったと分析した。ブルームバーグ(電子版)も、沖縄で事件が抗議の引き金となっていると伝えた。

米軍準機関紙「星条旗」(電子版)は、日米首脳会談で日米地位協定の改定に言及しなかったことついて翁長雄志知事が強く非難したことを報じた。

 

 沖縄県議会は5月26日の臨時本会議で、事件に抗議するとともに「在沖米海兵隊の撤退」を求める抗議決議と意見書を全会一致で可決した。県政野党の自民などは退席した。米軍普天間飛行場の閉鎖・撤去や県内移設断念も求めている。

可決した抗議決議と意見書は@被害者への謝罪と完全な補償A日米首脳で沖縄の基地問題と事件・事故対策を話し合うB米軍普天間飛行場の県内移設断念C在沖米海兵隊の撤退と米軍基地の大幅な整理縮小D日米地位協定の抜本改定E米軍人・軍属などの凶悪事件発生時に、訓練と民間地域への立ち入りと米軍車両の進入の禁止措置―などを求めている。

意見書は首相、外相、防衛相、沖縄担当相。決議は駐日米大使、在日米軍司令官、四軍調整官、在沖米総領事宛て。 

採決では、翁長知事の県政与党である社民・護憲や県民ネット、共産に加え、翁長県政と一定の距離を置く公明、維新の会が賛成した。

一方、自民会派と嶺井氏は、すべての海兵隊の撤退や普天間の県内移設断念を要求項目に盛り込むことに反発。独自に普天間飛行場の辺野古移設断念を「閉鎖・返還」とし、在沖海兵隊の撤退を「大幅な削減および米軍基地の速やかな整理・縮小」を図ることをそれぞれ求めた上で、事件の根絶や謝罪、補償などを日米両政府に求める修正案を提出したが、賛成少数で否決された。

与党案の採決では自民党会派と嶺井光(無所属)、呉屋宏氏(同)両氏が「全会一致の採決にするために」として退席した。

 これまで、普天間飛行場の撤去を求めた決議は例があるが、在沖米軍基地面積の4分の3を占め、沖縄に駐留する米軍の中核を担っている在沖海兵隊すべての撤退要求を沖縄県議会として決めるのは、1972年の本土復帰後初めて。

 

抗議決議と意見書を可決する与党、公明、維新の県議ら=26日午前11時2分

 

 米軍普天間飛行場のある宜野湾市議会も26日午前の臨時会で、在沖米海兵隊の大幅な削減や基地の速やかな整理縮小、日米地位協定の抜本的な改正を求める抗議決議などを、自民や公明など市政与党の賛成多数で可決した。市政野党は「在沖米軍基地を全て撤去すること」を求める意見書と決議案を提案したが、否決された。

 

 そのほか、26日正午すぎまでに決議をしたのは浦添市、糸満市、南城市、嘉手納町、読谷村、北谷町、北中城村の各議会。遺族への謝罪と補償、日米地位協定の改定などを求める抗議決議と意見書案を全会一致で可決した。読谷村議会は「基地の撤去」も盛り込み可決した。

 

 同日午後には豊見城市と八重瀬町の議会でも抗議決議と意見書が可決された。

 

豊見城市議会(大城吉徳議長)の抗議決議では「(米軍人や軍属などによる)事件が繰り返されることに激しい憤りを禁じ得ない」として、遺族への謝罪と完全補償、再発防止に向けて実効ある抜本的な施策を講じること、日米地位協定の抜本改定、在沖米軍基地の整理縮小の促進を米大統領らに求めた。

 

翁長知事は26日に県庁で記者会見し、日米首脳会談でオバマ米大統領から謝罪の言葉がなかったことについて「今の日米関係を表しているのではないか。日本は独立国家なのか、とみな疑問を持つ」と批判した。

 会談で、安倍晋三首相が米軍普天間飛行場の返還について「辺野古への移設が唯一の解決策」と伝えたことには「20歳の女性がああなった中で話すこと自体、沖縄の民意を含め、県民に寄り添うことに何ら関心がないということが見透かされる」と述べた。

 翁長氏は「首相が言う『日本を取り戻す』中に沖縄は入っているのか。県民の生命、財産は入っているのか。日本は法治国家ではなく沖縄をほっておく『放置国家』ではないか」とも述べた。

 

26日午後5時半から参議院の講堂で、「女たちは怒っている!沖縄女性殺害に関する緊急集会」が開かれ、300人が参加した。

沖縄選出の糸数恵子参議院議員が沖縄から駆けつけ、「基地があるがゆえの米軍による事件や事故が絶えません。沖縄が本土復帰してから今日まで約6000件の事件が起きている。『沖縄の全ての基地を撤去してください』と亡くなった女性の父親は訴えています」「不平等な日米地位協定がある限り、どれだけ沖縄の人が殺されても、涙を流してもどうすることもできない。抜本的改正をどんなに求めても政府には聞いていただけない」とのべ、日米地位協定の改定と辺野古への新基地建設中止、米軍基地の撤去を求めた。  

沖縄出身の日本人を夫に持つオーストラリアの女性のキャサリン・ジェーン・フィッシャーさんは、米兵に暴行を受け、日本では捜査さえもされず、加害者は逃亡。ジェーンさんは、10年以上の年月をかけ、執念で加害者を見つけだし、アメリカで裁判をおこし勝訴した経緯を涙ながらに語り、地位協定の改定を訴えた。

作家の落合恵子さんは「今回の許し難い事件を含め、今まで延々と続いてきた全ての沖縄にまつわる事件は、沖縄以外に住んでいる私たちに『お前はどうするのか』を問うている」と語り、「あと何度憤りと悲しみにみちた集会を行わなければならないのでしょうか。選挙で変えていきましょう」と語りかけた。

女性と人権全国ネットワークの佐藤かおり共同代表は抗議声明を紹介、「女たちの平和と戦争資料館」の池田恵理子さんや日本共産党の紙智子参院議員、池内さおり、梅村さえこ、本村伸子の各衆院議員があいさつ。社民党の福島みずほ参院議員が「米軍基地の撤去を実現しましょう」と呼びかけた。

 

 

 

 

 

 平和と社会正義を求めて活動する女性たちで組織する「コード・ピンク」が5月26日、ワシントンで米軍属女性遺棄事件を受け抗議行動を実施した。メンバーはマイクを使ったアピールではなく「基地反対」などと書かれたプラカードを掲げて沖縄からの米軍基地撤去を無言で訴えた。同時に事件の犠牲となった女性の遺影を掲げ、犠牲者に擬して地面に横たわり抗議の表明をする「ダイ・イン」で深い悲しみと怒りを表現した。

  抗議行動はコード・ピンクのメンバーで母親が県出身のアリス・クリマ・ニューベリーさん(22)が企画した。ニューベリーさんは「この悲しみや怒りは言葉で表現することができない。米国市民にも沖縄の現状を知ってもらいたい」と語った。抗議行動には退役軍人で組織する「ベテランズ・フォー・ピース」など米市民団体のメンバーや、辺野古新基地建設に反対する海外有識者の呼び掛け人の一人、ブラウン大のスティーブ・ラブソン名誉教授、全米女性連盟創設者のステファニー・オートレバ弁護士らも参加した。

 

抗議行動を実施した「コード・ピンク」のメンバーら=26日、ワシントンのユニオン駅

 

 在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官(沖縄地域調整官)は5月28日午前、北中城(きたなかぐすく)村のキャンプ瑞慶覧(ずけらん)で記者会見を開いた。米軍がらみの事件・事故を受け、在沖米四軍調整官の沖縄メディアを対象とする記者会見は異例。

 ニコルソン氏は、「事件に対する沖縄と米国の立場に違いはない。身の毛のよだつ犯罪で、到底受け入れられるものではない」「衝撃と深い悲しみを言い表す言葉が見つからない」とも述べ、被害者に哀悼の意を表明。「日米同盟は両国の安全保障にとって不可欠な基盤。この地域においても確固たる平和と安定をもたらしてきた」と強調し、「私たちと、(沖縄の)みなさまのコミュニティーの間に、どうかくさびを打ち込まないで」と呼びかけ、同席した在沖縄米軍幹部らと黙とうをささげた。

だが、県議会が在沖米海兵隊の撤退を求める決議を可決したことに関する受け止めを問う質問には「より大きな問題であり、きょうの会見には適さない」として言及を避けた。

ニコルソン氏は再発防止策について、具体案を出さなかったが、翁長雄志知事と同10時から電話会談することを明らかにし、「県や市町村から提案があれば検討する」と述べ、地元自治体と再発防止策を協議する意向を示した。

 ニコルソン氏は「寄り添い、哀悼する期間」として、沖縄に駐留するすべての米軍人、軍属、その家族に27日から6月24日までの約1カ月間。基地内居住者には基地外での飲酒、基地外居住者には基地内や自宅以外での飲酒や深夜0時以降の外出を禁止する措置などを講じたと発表した。日米地位協定の対象となる全軍人・軍属とその家族に適用される。基地の外でのアルコール類の購入や、パーティーなども禁じた。基地外に住む軍人・軍属以外は基地外での宿泊も禁止した。その上で、「罰するためのものではなく、犠牲者やその家族に深く思いをはせ、沖縄の住人としての責任を再認識するもの」「若い兵士には何のための期間か、私自ら質問していく」などと説明した。

またニコルソン氏は、沖縄の地域と分断されたくない。沖縄の地域と対話するために今後も記者会見を開きたい」とも語ったが、「容疑者の軍属は適用外だった。悲惨な事件が指針で防げるものではない」との認識を示し、より踏み込んだ綱紀粛正策は「常に検討する」と述べるにとどめた。

ジョエル・エレンライク在沖総領事のほか、各軍や施設の司令官が出席した。

 

なお、ローレンス・ニコルソン四軍調整官とジョエル・エレンライク在沖米総領事は2016年3月16日午後、沖縄県庁を訪れ、米海軍兵による沖縄観光客の女性に対する準強姦事件について、「この事件は我々にとって非常に恥である」と翁長知事に謝罪していた。翁長知事は「女性の人権を踏みにじる重大な犯罪であり、決して許すことはできない」と強い憤りを伝えた。また、観光客の安全、安心に力を入れているにもかかわらず、観光客を被害者とする事件の発生に「観光に重大な影響を及ぼしかねない」と伝えた。

ニコルソン氏は「半年前の着任あいさつで、兵士の高潔な行動を優先事項とすることを約束した。事件に対し、知事や県民の感じている怒り以上に私も怒りを感じている」と述べた。

 

 翁長知事は同日、在沖縄米軍トップのニコルソン四軍調整官と電話で会談した。ニコルソン氏は米兵の午前0時以降の外出禁止を含む綱紀粛正策を説明。翁長氏は「誠意は認めるが、再発防止につながるか、県民はうつろな気持ちで聞いている」と応じ、実効性に疑問を呈したうえで、日米地位協定の改定が必要との考えも改めて伝えた。

 

沖縄平和運動センターの山城博治議長は「見え透いた対症療法だ」と批判。「県民感情に押されての対応だろうが、本気度が伝わらない。外出禁止は日没後の午後8時以降にすべきだし、期間も少なくとも半年間だ」と指摘。県婦人連合会の平良菊会長も「事件のたび、米軍は同じことを言うばかり。基地がある限り事件は起きる」とやりきれない心境をにじませた。今回も「民間に住む米兵や軍属を一体どう監視するの。言うだけ、やるだけでなく、本気で取り組んで」と訴えた。

 

 一方、沖縄市の青年団協議会の奥村幸博会長は「今回の女性遺体遺棄事件はとても怒りを覚える。ただ、活性化を目指す沖縄市にとって外出禁止の措置は残念でもある」と心境を吐露。コザゲート通り会の長嶺将信会長も「二度と起きないよう徹底してもらわなければ困る。万全の再発防止策をしっかりと講じてほしい」と訴えた。

 

 

新たな規制措置について発表する在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官(手前右)=28日午前9時すぎ、米軍キャンプ瑞慶覧

 

 在沖縄米海兵隊が新任兵士向けに開く研修の発表用のスライドに、米軍基地に反発する沖縄の民意を「感情的だ」「独自のレンズで見ている」などと記載していることが5月28日、分かった。英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏(41)が、海兵隊への情報公開請求で入手した。経済的に基地に依存し、県民の多くが基地撤去を望んでいないとする記述もある。

 「沖縄の文化認識研修」と題され、沖縄の歴史や風土を学び、沖縄との関係を深めることが目的だと説明。スライド形式で「2016年2月」「2014年2月」と記載されたものもある。

 スライドは、沖縄の人々について「一般的に限られた情報源しか持っておらず、情報を得るための努力をしない」と説明。「住民の大半は沈黙しているが、反基地を訴える少数派の声が地元メディアによって増幅されている」と記述し、「多くの人々にとって軍用地料が唯一の収入で、土地の返還を望んでいない」としている。

 米兵による事件や事故については「歴史やその解釈が反基地の物語を生み出し、事件や犯罪、事故など全てを否定的に捉えさせ、必要以上の注目を集める」と指摘。「メディアや地元の政治は半分の事実と不確かな容疑を語って負担を強調しようとする」と批判する一方、米兵に対し繁華街などでの行動について「突然身についた(異性にもてるという)『ガイジンパワー』によって我を忘れ、社会的に許容されない行動をとってしまう」と注意喚起している。

 日本政府の基地問題への対応について「交渉や話し合いは(計画の)実現よりも結果を取り繕うことを重視する官僚によって主導されている」との見方を示した。米軍普天間飛行場の移設問題に関し、政府の県内移設方針を「本土に代替地を見つけられないから」と解説。移設先とされる名護市辺野古については「漁業やジュゴンに悪影響を与えることから評判が悪い」としている。

 ミッチェル氏は「米軍が沖縄の人々を見下していることを示しており、新任兵士の認識や態度にも悪影響を与えかねない」と指摘。翁長知事も、沖縄が基地問題を政治利用していると説明していることについて「上から目線の最たるものだ」と批判している。

県は6月中に県職員が米軍の研修を視察する調整を進めており、在沖縄米軍トップのローレンス・ニコルソン沖縄地域調整官は28日の記者会見で「沖縄社会と対話し、不適切だという指摘があれば議論したい」と話した。

 

 

新任兵士向けに開く研修の発表用のスライド。沖縄の文化認識研修」と題された在沖縄米海兵隊の資料。基地容認、反対双方の意見がある沖縄の政治風土について解説している

 

 米国の平和活動家や学者ら80人以上は5月28日までに、沖縄県で起きた米軍属による女性死体遺棄事件の解明と沖縄の米軍基地閉鎖・撤退を米政府に求める書簡を発表した。署名者には言語学者のノーム・チョムスキー氏らが含まれている。

 書簡は「沖縄県民に対する米軍関係者による犯罪と米軍基地の存在によって環境が損なわれる状況が70年以上続いてきた」と指摘。米軍基地の「完全撤退」を要求した。さらに、オバマ政権に対し、こうした犯罪や基地閉鎖の問題に取り組むため、沖縄県の翁長雄志知事と協議するよう促した。

 

米軍属女性遺棄事件を受けて米国の有識者や平和運動家ら83人が出した緊急声明文(2016年5月31日配信『琉球新報』−「社説」)

 

【日本語訳】

  私たちは沖縄での元海兵隊員による若い女性に対する女性暴行と殺人にぞっとさせられる。最近の若い女性への性犯罪や殺人を含む米軍人による沖縄の人々への犯罪や、米軍基地が存在する環境が原因となった被害は70年にわたって起き続けている。米国は第2次世界大戦終結以降から、プレゼンスを維持しており、現在、33の米軍施設と約2万8千人の米軍人がこの島にとどまっている。

 私たちの多くは沖縄を訪れたことがあり、あの美しい島から米軍基地を完全に撤退することを要求することにおいて、平和を愛する人々を支持する。さらに、私たちはこれらの犯罪への対処、または米軍基地の閉鎖のために翁長(雄志)県知事と話し合うことをオバマ政権に促す。

 

English

 We are horrified by the recent rape and murder of a young woman from Okinawa by a former U.S. Marine. Crimes against Okinawans by U.S. military personnel — including sexual crimes and the recent murder of a young woman — and damage caused to the environment by the presence of U.S. military bases have been occurring for over 70 years. The U.S. has had a presence in Okinawa since the end of WWII and currently 33 U.S. military facilities and about 28,000 U.S. military personnel remain on the island.

 Many of us have been to Okinawa, and stand with the peace-loving people there in demanding the complete withdrawal of U.S. military bases from that beautiful island. Further, we urge the Obama administration to hold discussions with Okinawa Prefecture Governor Onaga to address these crimes and to shut down U.S. military bases.

 

 県町村会の高良文雄会長(本部町長)、城間俊安副会長(南風原町長)、新垣邦男副会長(北中城村長)が6月1日午後、那覇市の外務省沖縄事務所を訪ね、米軍属女性遺棄事件への抗議決議を水上正史外務省沖縄担当大使に手渡した。

高良会長は「女性の人権を踏みにじり、残忍極まりない凶悪な蛮行だ。県民に強い衝撃と不安を与えている」と事件を非難し、遺族への謝罪と完全な補償、日米地位協定の抜本的な改定、在沖米軍基地の整理縮小と海兵隊を含む米軍兵力の削減を求めた。

城間氏は南部市町村会会長としても、同会の抗議決議を手渡した。

水上氏は「『綱紀粛正、再発防止と言いながら、また事件が起きたじゃないか』という指摘に返す言葉がない。政府一体となり米軍も含めて問題をどうするか検討している」と述べた。

高良氏は地位協定について「県民は今までの対応では簡単に納得しない」と述べ、運用改善ではなく抜本改定を求めた。

同会は沖縄防衛局と在沖米総領事館にも抗議した。

 

翁長雄志知事は6月1日夕、同県恩納村の遺棄現場を訪れ、手を合わせた。翁長知事は取材に、「守ってあげられなくてごめんと胸の中で語りかけた。事件を起こさせない仕組みを政治が作れなかった。二度と事件を起こさせないため、私が先頭に立ってがんばる」と語った。

 

女性の遺体が遺棄された現場で手を合わせる沖縄県の翁長雄志知事=1日午後7時9分

 

 政府は6月3日午前、米軍属が逮捕された沖縄の女性遺棄事件を受けた関係省庁の局長級会合を首相官邸で開き、再発防止策を決定した。防犯パトロール態勢の強化と、国と地元自治体の円滑な連携を図る協議機関の設置が柱。米軍基地への反発が広がる沖縄県で県議選投開票を5日に控える中、迅速な取り組みを示す狙いがある。

 対策を決めたのは、安倍首相が県民の安全確保策を検討するよう指示したのを踏まえ、菅氏が5月26日に設置した「沖縄県における犯罪抑止対策推進チーム」。

 菅義偉官房長官はあいさつで「できるものから速やかに実行に移してほしい」と指示した。パトロール態勢の強化策では、政府が非常勤職員を雇用し「沖縄地域安全パトロール隊」を創設。沖縄県警は本年度中に警察官100人、パトカー20台を増やす。防犯カメラや街路灯増設も検討する。

 子どもの防犯教育の充実や、通学路の見守り活動など地域の取り組みも支援。ICタグを活用し、児童の登下校状況や不審者情報を教職員と保護者が共有するシステムの構築も目指す。

 安慶田光男沖縄県副知事は、「一歩前進とは捉えるが、根本的な解決になっていない」と述べたうえで、「日米地位協定を改定し、協定に守られているという米軍関係者の意識を改革しない限り事件はなくならない」と指摘した。 

 

米軍基地を抱える14都道県でつくる渉外関係主要都道県知事連絡協議会(「渉外知事会」。会長・黒岩祐治神奈川県知事)は6月3日、防衛、外務両省と在日米大使館に日米地位協定の改定などを求め緊急要請した。沖縄県側が最も強く求めている協定改定について、黄川田仁志外務政務官は、沖縄県内で警察官やパトカーを増強するなど政府がまとめた対策を説明。日米地位協定については「問題に一つ一つ対応し、あるべき姿を追い求めていく」と述べるにとどめた。

 要請書では、(1)実効性のある徹底かつ具体的な再発防止策の実行(2)日米地位協定改定の速やかな着手(3)沖縄県をはじめ、米軍基地所在自治体の負担軽減―の3点を求めた。

 黒岩会長は協定改定について「(政府側は)あるべき姿を目指すというが、われわれからすると改定はあるべき姿と解釈していると伝えた」と述べ、継続して要望していく考えを示した。

 要請に参加した安慶田光男副知事は「米軍人、軍属は地位協定に守られているという認識がある。沖縄は復帰以前から植民地的支配に置かれ、そういう(意識)がまだ抜けきれない。改定しないと事件の再発防止は難しい」と述べ、政府側の姿勢を疑問視。米国とヨーロッパでは協定改定がなされていることに触れ「どうして日本国だけできないのかと疑問を感じる」と改定の必要性を強調した。

 

 米軍属女性遺棄事件を受け抗議決議と意見書を可決した宜野座村議会(小渡久和議長)は3日、那覇市の外務省沖縄事務所に水上正史外務省沖縄担当大使を訪ね、事件の再発防止や日米地位協定の抜本的な改定を求めた。小渡久和村議会議長は「綱紀粛正と言っても何も変わらない。沖縄の人の切実な心を理解してほしい」と訴えた。

 水上氏は「1人の命が失われた事実を重く受け止めている。米側とも協議しながら再発防止に努めていく」と述べた。

 

 嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は3日、那覇市の外務省沖縄事務所を訪ね、米軍属女性遺棄事件を受けて再発防止や日米地位協定の抜本的改定などを求めた。

野国昌春会長(北谷町長)らが水上正史外務省沖縄担当大使に要請書を手渡し「米軍が講じてきた綱紀粛正や教育などがいかに無力で実効性のない対応策だったかを改めて証明した」と指摘し、要請内容の実現を求めた。席上、桑江朝千夫副会長(沖縄市長)は米軍属2人を含む4人が覚せい剤取締法違反などで逮捕・起訴された事件に対しても抗議した。

 水上氏は日米地位協定について「改定には一定の時間がかかり、運用改善でできるのであれば迅速性も柔軟性もあるので、それで対処してきた」と政府の立場を説明した。

 

 中谷元・防衛相は6月4日、シンガポールで、カーター米国防長官と会談した。米軍属女性遺棄事件を受け、米軍関係者の法的な取り扱いなどを定めた日米地位協定に関し、適用対象となる「軍属」など米軍関係者の範囲を明確にする協議を近く始めることで一致した。中谷氏は県が再発防止のために求めていた地位協定の改定には踏み込まなかった。防衛省が同日夜、発表した。

 今後の協議は、日米の外務、防衛当局によるハイレベル会合で実施し、早急に取りまとめると確認した。事件の再発防止策として(1)軍属を含む地位協定上の地位を有する米国人の扱いの見直し(2)監視態勢強化(3)教育・研修の強化−に取り組む考えで一致した。中谷氏は事件を防げなかったとして米軍への抗議の意思を伝えた。カーター氏は「米国民を代表し、おわびを申し上げたい」と述べた。

 

 5月27日から6月24日までを服喪期間として、全軍人・軍属とその家族に基地外での飲酒を禁止しているさなかの、そして4日の日米防衛相会談で再発防止策の協議で合意したばかりの6月5日、沖縄県警は米軍嘉手納基地所属の海軍兵アイメ・メヒア容疑者(21)を道路交通法違反(酒酔い運転)の疑いで現行犯逮捕し、発表した。呼気から基準値の約6倍のアルコールが検出された。当初、「酒を飲んで運転していたが、酔ってはいない」と容疑を一部否認していた容疑者は「ビールを2杯飲んだ」と容疑を認めているが、供述は二転三転している。

同署によると、4日午後11時40分ごろ、二等兵曹が運転する車が嘉手納町水釜の国道58号を南向けに逆走し、北上車線の車と正面衝突する事故を起こした。この事故で35歳の女性が胸骨骨折の疑いの重傷を負った。衝突の反動で二等兵曹の車は後続の他の車にもぶつかった。

 

逮捕された容疑者が所属する嘉手納基地(町面積の82%を米軍基地が占める)嘉手納町の當山(とうやま)宏町長は、同基地勤務の軍属の男が女性会社員の死体遺棄容疑で逮捕された事件に触れ、「基地外の飲酒が禁止されている中での飲酒運転で、いったいどうなっているのかとむなしささえ感じる。日米地位協定の抜本的見直ししかない」と憤った。

 

 沖縄平和運動センター議長の山城博治(ひろじ)さん(63)は「今回の飲酒事故は『米軍は綱紀粛正はしない』というメッセージにも受け取れ、開いた口が塞がらない」と語った。

 

中谷防衛相は、「やはり意識の問題だ。沖縄で勤務している米軍関係者一人ひとりがしっかりとした自覚と日本の法律を守る意識を持つように申し入れしたい」と述べたと、シンガポールのホテルで記者団の質問に答えた。

 

岸田文雄外相は5日、米国のケネディ駐日大使に「米側が再発防止・綱紀粛正に取り組むと確約し、現地で『哀悼期間』を設けて綱紀粛正に努めるとしていた矢先に、(新たな)事件が発生したのは極めて遺憾だ」と伝えた。ケネディ氏は「『哀悼期間』にこのような事件が起きたことに非常に怒りを感じる」とし「極めて遺憾であり謝罪したい」と述べ、捜査への協力を約束した。

 

鳩山由紀夫元首相は5日、米軍属女性遺棄事件で被害者の女性の遺体が見つかった恩納村の現場を訪れた。鳩山氏は花を手向けた後、手を合わせた。

鳩山氏は5日、酒酔い運転で米兵が逮捕されたことについても触れ「基地はもういらないと県民の皆さんが考えるのも当然だと感じている」と強調し「日米地位協定も運用改善ではなく、抜本的な改定が必要だ。それができなければ県民から差別を受けているという声が出ても当然だ」と述べた。鳩山氏は5日に来県し、3日亡くなった玉城義和県議の自宅で焼香した後、恩納村の現場を訪れた。

 

安倍晋三首相は6日の政府与党連絡会議で、海軍2等兵曹が酒酔い運転容疑で逮捕されたことについて「綱紀粛正を進める中、誠に遺憾であり、言語道断だ」と述べた。米軍属が逮捕された女性遺棄事件を受けた哀悼期間中だった点も強調した。在日米海軍は全兵士を対象に、基地内外での飲酒を即時禁止し、勤務時間外の行動に関しても、自宅と勤務先の往復などに制限すると発表した。

公明党の山口那津男代表は「沖縄で事件が重なっていることは誠に遺憾だ。米側に地位協定の議論も含めて効果のある対策を強く求める」と指摘した。

 

米海軍第7艦隊司令官のジョセフ・アーコイン中将と在日米海軍司令官のマシュー・カーター少将は6日、日本に駐留する全海軍軍人に対し、自宅を含む基地内外での飲酒禁止を発令した。米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)所属の海軍2等兵曹による飲酒運転事故などを受けた措置。

在日米海軍司令部(神奈川県横須賀市)によると、飲酒禁止は階級を問わず対象とし、「無責任な行動が日米同盟に悪影響を及ぼすことを、全海軍将兵が理解したと両司令官が確信するまで継続する」という。

 

元米海兵隊員の軍属による女性遺体遺棄事件で沖縄県警特別捜査本部は、死体遺棄容疑で逮捕した男(32)を6月9日にも殺人容疑で再逮捕する方針を固めた。容疑者は当初、「女性をナイフで刺した」と供述したが黙秘に転じ、ナイフは見つかっていない。同捜査本部は6日、凶器が遺棄された可能性の高い、うるま市州崎の水路を捜索したが発見には至らなかった。

 

沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に反対する団体などでつくる「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」は6日、那覇市内で幹事会を開き、19日に予定している、米軍属による女性遺体遺棄事件に抗議する県民大会の名称を「元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾! 被害者を追悼し、沖縄から海兵隊の撤退を求める県民大会」とすることを決定した。

大会は午後2時から。那覇市の奥武山(おうのやま)陸上競技場をメイン会場とすることも決めました。競技場周辺や、近くにある野球場についても活用を検討する。

「オール沖縄会議」が主催し、大会の趣旨と目的に賛同する全ての団体と個人に共催を呼びかける。

大会名称に「海兵隊の撤退」を盛り込んだことについて、稲福弘事務局長は「県民の怒りは頂点に達している。県民の感情により近い大会を開催すべきだと主張がたくさんあり、タイトルを決めた」と説明した。

 

6月7日までに沖縄県議会と35市町村の議会が抗議や意見書を可決した。残る6町村も6月中に決議する予定で、県議会と県内の41市町村の全議会が事件に対する抗議決議や可決する見通しになったことが、沖縄タイムスのまとめで分かった。県議会と全市町村議会が同じ案件で抗議決議すれば、2012年のオスプレイ配備反対以来、4年ぶりとなる。

 

6月8日、「これ以上の基地・軍隊の駐留を認めない!追悼・抗議集会」那覇市で開かれ、集会賛同団体の代表10人がリレートークで切実な思いを語った。米兵からの性被害を告白する人の話に涙を流す人も。参加者は静かに耳を傾け、共感の拍手で応えた。 が「もう涙は見たくない」「被害をなくすためには軍隊の撤去しかない」。米軍属女性遺棄事件に関するでは、

ワンストップ支援センターの設立を強く望む会(ソーハート)の金城葉子共同代表は、友人宅で開かれた夕食会後、「家まで送る」と言われ、車内で襲われたと、17歳の時に米兵から受けた性暴力の被害を語った。

3年前に被害を公にし、性被害のワンストップセンター設立に尽力した。「当時は単に私と米兵だけの問題だと思っていた。でも、今は米軍基地があるが故の被害だったと思っている。被害を黙っている人はたくさんいる。米軍基地をなくすまで、一緒に頑張っていく」と力を込めた。

 

 

県警は6月9日、死体遺棄容疑で逮捕・送検していた米軍属シンザト・ケネフ・フランクリン容疑者(32)を殺人容疑などで再逮捕した。

 発表によると、シンザト容疑者は4月28日頃、うるま市内の路上で歩行中の女性を見つけ、殺意を持って棒で殴って襲撃。草地に連れ込んで首を絞めて刃物で体を刺すなどし、乱暴しようとしたが、その目的を遂げずに殺害した疑い。

当初の調べに、「女性を棒で殴り、首を絞めてナイフで刺し、動かなくなった女性を遺棄した」と供述。県警は供述通りに、同県恩納おんな村の雑木林から女性の遺体を発見した。

女性の遺体には胴体の骨に刃物によるとみられる複数の傷が確認されており、県警は骨の損傷程度から、強い殺意を持って襲ったとみている。

シンザト容疑者は逮捕翌日の5月20日から黙秘に転じ、書面への署名も拒んでいるという。これまでの捜査で凶器とされる刃物の特定はできていないといい、県警は女性のスマートフォンの位置情報が途絶えたうるま市内の工業地帯付近を重点的に捜索。襲撃に使われた可能性がある棒や、女性宅の鍵を発見した。

 

翁長知事は9日、米軍属が殺人などの疑いで再逮捕されたのを受け「非人間的で、女性の人権をじゅうりんする極めて卑劣な犯罪は断じて許せず、強い憤りを感じる。被害者や家族の無念を思うと、心が痛む」とのコメントを発表した。

同時に、長年にわたって繰り返される米軍関係者の事件・事故に「県民の怒りは限界を超えつつある」と指摘。国土面積の0・6%にすぎない沖縄に在日米軍専用施設の74・46%が集中し、米軍基地があるが故の事件や事故が長年繰り返されてきたと述べ、「米軍人・軍属等による事件の抜本的な解決を図るため、日米両政府に日米地位協定の見直し、米軍基地の整理縮小など、過重な基地負担の軽減を求める」と、改めて表明した。

 

元軍人らでつくる「ベテランズ・フォー・ピース」(VFP)琉球・沖縄支部など2団体は6月9日、県庁で記者会見を開き、元海兵隊員で米軍属の男による女性遺体遺棄事件を受け、「沖縄県民女性に対する犯罪に関する声明」を発表した。

声明文では、日米両政府が繰り返す「再発防止」が政治的パフォーマンスに過ぎず説得力がないと批判。また、軍人は良き隣人であるのと同時に軍人として「効果的な殺人者」となるよう教育される矛盾を抱えているとし、日ごろから非公式に演習場や酒場で「命や女性を軽視する考えが軍曹から伝えられている」と指摘した。

同支部のダグラス・ラミスさん(沖縄キリスト教学院大学大学院客員教授)は「容疑者は軍曹であり、軍人教育の役割を担っていた。この事件は命や女性を軽視する教育の結果」と非難した。

 

米軍属女性暴行殺人事件を受け那覇市の奥武山陸上競技場で2016年6月19日に開催される県民大会に向け、読谷村(よみたんそん)実行委員会が6月9日、発足した。村内の25団体で構成し、村民一丸となって取り組むことを確認した。県民大会運営事務局によると、県民大会に向けた市町村単位の実行委員会発足は初めて。他市町村でも既存の島ぐるみ会議などを活用して大会参加に向けた動きが今後さらに加速していく。

委員長に石嶺伝実村長、副委員長に伊波篤村議会議長、知名定弘村老人会会長、池原美枝子村婦人会長、仲宗根悟県議が就任した。

石嶺委員長は「戦後70年余り、日本復帰から44年を迎える今日でも過重な基地負担の中で度重なる米軍人の事件事故が発生している。心の底から怒りが込み上がってくる」と語気を強め、大会の成功に向けて協力を呼び掛けた。

 読谷村で県民大会に向けた実行委員会が設置されるのは1995年の少女乱暴事件を受けた県民大会以来4回目で、2012年の米海兵隊オスプレイの県内配備に反対する大会以来4年ぶり。

 

発足後、記者会見する県民大会読谷村実行委員会の石嶺伝実委員長(前列中央)=9日午後、読谷村役場

 

米軍属女性暴行殺人事件で犠牲になった女性を悼む「追悼名護市民集会」が6月17日午後6時半から、名護市大南の市屋内運動場(21世紀の森体育館隣)で開かれることが決まった。被害者の同級生や女性団体、区長会会長・各支部長、市議ら各種団体でつくる実行委員会が11日夜に同市内で開かれ、稲嶺進市長が実行委員長に就いた。

 被害者の御霊(みたま)を慰め、遺族に寄り添うことが目的。抗議ではなく、追悼集会として祈りをささげる。登壇者は稲嶺市長や同級生らで調整している。被害者や遺族へのメッセージを書くスペースや献花台を用意する。

  政治的な立場に関わらず市民全体で犠牲になった女性を悼む集会を目指す。のぼりや旗の持ち込み、チラシ配布、許可外の撮影などを禁止する。

  市民集会は市各種団体女性代表ネットワーク協議会(比嘉サダ子会長)など6団体が6月3日、稲嶺進市長や屋比久稔議長に開催を求める要望書を提出していた追悼式

 

 翁長知事は6月16日、同県うるま市の女性を殺害した疑いなどで米軍属の男が逮捕された事件に抗議するため、19日に那覇市で開催予定の県民大会に参加する意向を明らかにした。

 知事はこれまで参加について明言してこなかったが、県庁で記者団に「参加することがより多くの県民の期待に応えることになる」と話した。

 県民大会は、米軍普天間飛行場の県内移設計画に反対し、翁長知事を支える政党や団体、企業などで組織する「オール沖縄会議」が主催。事件への抗議とともに米海兵隊の撤退などを要求する。自民県連と公明県本部が不参加の意向を示しており、1995年の米兵による少女暴行事件後のような超党派での開催は困難となった。

 

翁長知事は6月16日、県庁で共同通信の単独インタビューに応じ、米軍属が逮捕された女性暴行殺害事件に抗議する6月19日の「県民大会」で、在日米軍の法的地位を定める日米地位協定の抜本改定を訴える意向を表明した。米軍基地外での事件・事故は基本的に日本の司法制度で裁かれる必要があると強調し、具体的な改定内容に踏み込んだ。

 同時に、県民大会の後に米国を訪問し、事件に抗議する沖縄の民意を直接、米側に伝える考えも明らかにした。

 事件を受け、日米両政府は地位協定の対象となる米軍属の範囲を明確化する方向で協議に入ったが、翁長氏は「不十分だ」と批判した。

 

 米軍属が逮捕された女性暴行殺害事件で犠牲になった女性を追悼する集会が6月17日夜、女性の出身地の沖縄県名護市で開かれた。会場の運動施設には市民ら1000人余りが集まり、冒頭と終わりの2度、静かに黙とう。献花台には色とりどりの花がささげられ、記帳台には女性へのメッセージをつづる人々の列ができた。

 稲嶺進市長や女性の友人らも参加。「いつ癒えるか分からない悲しみと、やり場のない憤りで、胸が張り裂けんばかり」とする、被害女性の両親が寄せた言葉も読み上げられた。

 

 

犠牲になった女性を追悼する集会で黙とうする参加者=17日夕、沖縄県名護市

 

 竹富町議会(新博文議長)は17日、6月定例会最終本会議で、米軍属による女性暴行殺人事件に抗議し、米軍人・軍属の綱紀粛正や米軍基地の整理・縮小、日米地位協定の抜本的な見直しを求める意見書を全会一致で可決した。これで県内41市町村の抗議決議が出そろった。

 

米海軍第7艦隊と在日米海軍は6月17日、日本国内すべての海軍兵を対象に続けていた飲酒禁止の規制を緩和し、自宅と、午後10時までの基地内の飲食店での飲酒を認めると発表した。ただ、階級の低い海軍兵は基地内の1人での飲酒が禁じられ、同伴者が必要になる。

第7艦隊のジョセフ・アーコイン司令官は「勤務時間外の各自の行動がもたらす戦略的影響を海軍将兵たちが理解したことを示したため、緩和措置を取った」とのコメントを発表した。

 

公明党県本部(糸洲朝則代表)は18日、元米海兵隊員の軍属による暴行殺人事件の被害者を追悼し、事件に抗議する集会を那覇市の県庁前で開いた。1500人が過重な基地負担の軽減や事件・事故の実効性ある解決策を日米両政府に求めた。

 

米軍属女性暴行殺人事件を受け、県内基地所在市町村長で構成する県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協、会長・翁長雄志知事)の代表7人が6月21日、上京し、外務省や防衛省などへの要請行動を開始した。同日午前は外務省で武藤容治副大臣に対して日米地位協定の改定などを求めた。午後から防衛省や在日米大使館、首相官邸などに要請した。

要請で翁長知事は「沖縄に(基地は)置いておいて、日米安保体制を守ると言うが、(本土側は)自分のところに来るのは嫌だという。そういう見方をすることが大きな乖離(かいり)につながっている」などと述べ、地元と本土側との事件に対する認識の違いなどを指摘した。その上で武藤副大臣に「もう綱紀(粛正)とか、そういうことで(済ますの)はやめてください。日米地位協定の改定、基地の縮小をしっかりやっていただきたい」などと訴えた。

 

 沖縄県の翁長雄志知事は6月27日、県庁で記者会見し、米軍属が飲酒運転事故で26日に逮捕されたことについて「憤りや悲しみを表現することもむなしい」と強い不快感を示した。また、「綱紀粛正、再発防止を全力でやるという話があったが、いとも簡単にこういうことが起きる」と非難した。

 知事は、安慶田光男副知事を通じて在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官に抗議した。

 

 6月26日、参院選沖縄選挙区の自民党候補の応援で沖縄入りしていた菅官房長官は遺棄現場を訪れ、献花台に花束を手向け、手を合わせた。

 

在沖縄米軍は6月28日、沖縄県うるま市の女性を殺害、遺棄したとして米軍属の男が逮捕された事件を受け、県内の全米軍人に出していた基地外での飲酒や外泊の禁止措置を解除した。

一方、兵士の飲酒や夜間外出に関する規制「リバティー制度」の追加措置を同日、発令した。追加措置は軍曹級以下に課していた午前1〜5時の外出禁止を、全階級に拡大した。在沖米軍人が同時間外に外出していた場合、例外なく規則違反となる。

28日以降の米軍の規制は他に(1)午前0時以降の基地外での飲酒禁止(2)浦添市キャンプ・キンザーより南の地域での宿泊禁止(公務を除く)(3)軍E−5(軍曹級)以下の兵士の外出は同伴者を義務付け−など。

在沖縄米軍は5月27日から約1か月間、基地の外での飲酒禁止などを通達。日米地位協定が適用される軍属や家族らにも従うよう求めていた。しかし、6月4日には海軍2等兵曹の女が乗用車を運転して2人を負傷させる事故を起こし、翌5日に酒酔い運転容疑で逮捕され、同26日には軍属の男が酒気帯び運転容疑で逮捕された。

 

米議会調査局は6月28日、日米関係に関する報告書を公表し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設について「5月の殺人事件の後は特に地元住民の反対があり、合意履行に心配が残る」と、米軍属による女性暴行・殺人事件の影響に懸念を示した。

報告書は「事件の容疑者が元海兵隊員だった事実が、1995年にあった海兵隊員による少女暴行事件の記憶を呼び起こした」と指摘した。 

報告書はまた、オバマ大統領の広島訪問に関し「2国間関係の強さを示した」と明記。「訪問は日本国民には広く歓迎され、米国での批判は抑制的だったようだ」と強調した。

 

那覇地検は6月30日、元海兵隊員で軍属のシンザト・ケネフ・フランクリン容疑者(32)=死体遺棄罪で起訴=を殺人と強姦(ごうかん)致死の罪で那覇地裁に追起訴した。

起訴状は、シンザト容疑者は4月28日午後10時ごろ、うるま市の路上でウォーキングしていた女性の頭を棒で殴打し、首を絞め、刃物で首を数回刺すなどして強姦しようとしたが未遂に終わり、この一連の行為で死亡させ、殺害したとされる。

 

カービー米国務省報道官は6月30日の記者会見で、公式な発言を避けた上で「何度も言うが、われわれ全員が激しい怒りを覚えている」と強調。「ケネディ駐日大使が事件の捜査で、日本当局と米軍側の双方と緊密に連絡を取り合っている」と語った。

 

シンザト被告の弁護人が7月4日会見を開き、管轄裁判所を那覇地裁から東京地裁へ移すよう最高裁に請求したと明らかにした。

請求書によると、沖縄で県議会や多くの市町村議会で抗議決議が採択された点に触れ「県民は悲しみを共有し、心は憎悪で凝り固まっている」と指摘。裁判員に選ばれる県民が「厳罰に処すべきという予断を持ち、公平な裁判をできない恐れがある」とした。

弁護人の高江洲(たかえす)歳満(としみつ)弁護士によると、被告は「沖縄の人の裁判を受けたくない。敵意に満ちており、公正な裁判を受けられない」と話しているという。高江洲弁護士は「県民全てが被害者家族と同じ意識を持っており、裁判員として欠格だ」と語った。

また、同弁護士は、犯行内容からシンザト被告は精神状態に問題があった可能性があるとし、精神鑑定を求める意向を示した。

刑事訴訟法では「地方の民心、訴訟の状況その他の事情により裁判の公平を維持することができない虞(おそれ)があるとき」は、被告は管轄移転の請求をできるとしている。1995年の少女乱暴事件では、論告求刑公判の直前に被告側が管轄移転請求を求めた。約1カ月後に最高裁が請求を却下したが、その間審理は中断した。

 

岸田文雄外相と中谷元・防衛相は7月5日午前、都内の外務省飯倉公館で、ケネディ駐日米大使、ドーラン在日米軍司令官と会談し、沖縄県での米軍属による女性暴行殺害事件を受けた対策で合意した。日米地位協定で保護される軍属の範囲を明確に定め、実質的に対象を狭める。日本側が裁判できる余地を広げ、沖縄に配慮する。

日米両政府は共同文書を発表し、軍属の範囲を例示。(1)米政府予算で雇用された文民(2)米軍の船舶、航空機の乗組員(3)米軍の公式目的で滞在する米政府の雇用者(4)米軍と契約する民間企業の技術アドバイザーやコンサルタント――などとした。

この合意で、軍属から除外された民間企業従業員の犯罪は日本側に裁判権が移る。日本の在留資格を持つ場合は以前から軍属の対象外だが、確実に除外するための手続き導入を明記した。軍属の範囲を定期的に検証する作業部会の設置でも合意。在日米軍による軍人・軍属らを対象とした教育や研修を強化し、再発防止を徹底する。

会談で、ケネディ氏は「重要な目標を達成できた。基地周辺の住民との信頼と友情にふさわしいあり方に努める」と強調。岸田氏は会談後、「両政府でさらに具体化すべく協議し、法的拘束力のある政府間文書作成を目指す」と述べた。

合意について翁長雄志知事は同日午後、記者団に「協議の行方を注視し、実効性のある内容であるか政府に説明を求めていく」と考えを述べた。一方、名護市の稲嶺進市長は、「小手先の対応にしか思えず、やりましたよというポーズを示している感じとしか受けとれない。(沖縄が求めている抜本的改定との)乖離(かいり)があまりにも大きすぎる」と批判。「(今回の見直しで)事件事故が減ることはないと思う。一番大事なのは(米軍人らの)意識。教育が軍属まで行き届くのだろうか」と懸念を示した。

在沖米軍関係者数は2013年3月末時点で52092人、そのうち軍属は1885人で全体の約3・6%。軍属の適用除外となる人数は明らかにされていないが、対象は全体の数%とみられる。

 

被告の元米海兵隊員で軍属の男が殺意はなかったと主張したことを米軍の準機関紙「星条旗」(電子版)が6日に報じた。

被告は弁護人を通じ、同紙に7月2日付の手記を寄せ「殺意はなかったし、強姦はしていない」と主張している。

 

米軍基地容認派と反対派の事実上の一騎打ちとなった沖縄選挙区(改選数1)では、元宜野湾市長の伊波洋一氏(64)が35万6355票を獲得し、3選を目指した自民現職の沖縄北方担当相、島尻安伊子氏(51)に、10万6400票差をつけて初当選を果たした。現役閣僚の敗北は、安倍政権にとっても手痛い結果となった。

 

 元海兵隊員で米軍属による暴行殺人事件を受け政府が始めた防犯パトロール業務に就くため、防衛省が沖縄に派遣した約70人の職員が、実際には米軍北部訓練場のヘリパッド建設への抗議活動への警備だけに従事している。

 

同省は、政府が米軍属事件を受けて6月から県内で始めた防犯パトロールや、7月からのヘリパッド工事再開に備えて沖縄防衛局の人員不足を予想し、本省と地方防衛局の職員計約60人を7月13日以降、県内に派遣した。一部は高江の警備にも充てる方針を示していたが、実際には全員が高江の警備だけに就いている。

  

パトロールは車両約20台で当たっており、同省は沖縄防衛局の職員で対応できているとする。車両が100台規模まで増やされれば、派遣職員を充てることもあると説明している。

 

防衛省関係者はパトロールに充てない理由を「応援の職員は地理に詳しくないため」としている。防衛局関係者によると、国が再開の意向を示している米軍キャンプ・シュワブの陸上部工事の再開時には、シュワブゲート前にも派遣する。

 

殺人罪などで起訴された元米海兵隊員の軍属シンザト・ケネフ・フランクリン被告(32)の弁護人は9月6日、公判前整理手続きで那覇地裁に被告の精神鑑定を申請する方針を明らかにした。裁判員裁判の前に行われる整理手続きの日程は12日にも決まる予定といい、手続きの中で鑑定の必要性を主張するという。

 

2017年2月14日、米軍準機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」が、元米兵のシンザト・ケネフ・フランクリン被告(33)が「文化的、社会的な恥を恐れるため日本で性犯罪が報告される率は低く、自分は捕まらないと思っていた」と弁護人に述べていると報じた。

弁護人は「当初の供述は、直前に多量の睡眠薬を飲み、幻聴・幻覚の影響があった可能性がある」と話しているという。

シンザト被告は、女性を襲ったのは「棒で殴って意識を失わせ、スーツケースに入れてホテルに連れて行き、暴行しようと思った」からと述べているという。また弁護人の言葉として「その時、その場所にいたことが彼女の落ち度、というのが彼の考えだ」とも伝えている。

 

元米海兵隊員の軍属(33)の弁護側は8月17日までに、被告の刑事責任能力を争わない方針を固めた。那覇地裁への精神鑑定請求も行わない。犯行時に、善悪の判断ができない心神喪失や耗弱状態だったことを証明する有力な証拠が集まらなかった。

弁護側は起訴されている強姦致死と死体遺棄の両罪は認める一方、犯行時に殺意がなかったことなどを理由に殺人罪の成立は争う方針。公判では殺意の有無が大きな争点となるし。

弁護側は、被告にうつ病の病歴があり、少年時には米国内で注意欠陥多動性障害(ADHD)とも診断されたことなどを理由に、刑事責任能力を争う準備を進めてきた。しかし弁護側によると、うつ病や注意欠陥多動性障害と診断されたのは犯行時から10年以上前で、弁護側は当時被告を診察した医師の診断書を取り寄せたものの、犯行時の精神状態に与えた影響を直接証明する資料は集め切れていない。

弁護人の高江洲歳満弁護士は「手持ちの資料では、犯行時に心神喪失・耗弱だったという主張はできないとの結論に達した」と説明。一方で「地裁が量刑を判断する際、病歴や診断歴を考慮してもらうよう主張する」と述べた。

那覇地検は2016年6月9日に、被告を死体遺棄罪で起訴。同月30日に殺人と強姦致死の両罪で追起訴した。被告は裁判員裁判で審理される。

 

 

米、元軍属の賠償負担拒む 沖縄・うるま女性殺害事件(2018年3月16日配信『朝日新聞』)

 

沖縄県うるま市で2016年4月、会社員の女性(当時20)が殺害された事件で、那覇地裁が元米軍属の被告(34)に遺族への損害賠償を命じたにもかかわらず、本人に支払い能力がないうえ、米国政府も負担しない方針であることが分かった。米軍が雇用する軍属の事件では、日米地位協定に基づいて米側が補償金を負担する仕組みがあるが、この被告は米軍との雇用関係がなかったためという。

 複数の日本政府関係者が明らかにした。外務、防衛両省は在日米軍などに支払い要請を続けている。

 この事件で殺人罪などに問われたケネフ・フランクリン・シンザト被告は、昨年12月に那覇地裁で求刑通り無期懲役の判決を受けた。刑事裁判に続いて同地裁は今年1月、被害者支援のための「損害賠償命令制度」に基づき、被告に遺族への賠償を命じる決定を出した。非公開の手続きのため賠償額は明らかになっていないが、遺族側の代理人は「請求通りにおおむね認められた」としている。

 日米地位協定では、米軍人らによる公務外の不法行為について本人に支払い能力がない場合、被害者側が米国政府に補償金を請求できる制度がある。被告側が「裁判所が決めた賠償額を支払う能力がない」という趣旨の主張をしたことから、遺族側はこの制度に基づき米国政府に補償金を請求する準備を進めている。

 

☆ 那覇地裁;元米軍属に無期懲役 沖縄女性殺害の裁判員裁判(2017年12月1日)=被告控訴

 

 沖縄県うるま市で2016年4月、女性会社員=当時(20)=を暴行し殺害したとして、殺人などの罪に問われた元米海兵隊員で軍属だった被告(33)の裁判員裁判があった。

被告は、2016昨年4月28日午後10時ごろ、うるま市の路上でウオーキング中だった女性を乱暴目的で襲い、頭を棒で殴打。ナイフで首付近を刺すなどしたが、目的を遂げられず、一連の暴行で殺害したとしている。

 事件をめぐっては、沖縄で反基地感情がわき起こり、日米地位協定の見直し議論が再燃。両政府は201712年1月、軍属の範囲を縮小する補足協定を結んだ。

 被告は殺人罪について無罪を主張する一方、強姦致死と死体遺棄の罪は認め、公判は殺意の有無が争点だった。

 検察は公判で、被告は女性の頭を棒で5〜10回殴って首を絞め、首をナイフで何度も刺すなど「死亡の危険性が高い行為を繰り返した」と指摘。殺意はあったとして、無期懲役を求刑した。被告が逮捕後に首付近を刺したと認めた点も「不利益な供述をしており、十分な信用性がある」と主張していた。

 弁護側は、女性が首を刺されたことは、解剖結果などからも立証されていないと反論。殴ったのは1回だけで、首を絞めたことも「強姦目的で死ぬほど絞めるはずがない」と殺意を否定した。被告の逮捕後の供述については「動揺、混乱があり、不正確」とし、女性が被告と草むらに倒れた際、頭を打って死亡した可能性があると主張していた。

被告は初公判の罪状認否の後、黙秘を続けていたが、最終陳述では「私は悪い人間ではない。このようなことになったのは私の意図したことではない」と述べていた。  

柴田寿宏裁判長は、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。

ケネフ・フランクリン・シンザト被告(33)が12月12日、判決を不服として福岡高裁那覇支部に控訴した。

被告はこの日の接見で「本当のことを言ったのに認められなかった」と述べ、殺人罪を適用した一審判決への不満を示したという。

 

 

沖縄遺棄事件 米軍に指一本ふれず(2016年6月5日配信『しんぶん赤旗』)

 

県民愚弄の「再発防止」策

   元海兵隊員の米軍属による女性遺体遺棄事件を受け、政府が3日に発表した「再発防止」策は、パトロール強化や監視カメラの設置などの取り締まり策が主で、当事者の米軍には指一本ふれない異常な内容になっています。「全基地撤去」や日米地位協定の改定をはじめとした抜本策を求める県民の要求からはほど遠いばかりか、それを県議選・参院選を前に大々的に打ち出すやり方は県民を愚弄(ぐろう)するものですらあります。

治安にすり替え

 A4判2枚にまとめられた「沖縄県における犯罪抑止に関する対策について」は、冒頭で同事件にふれているものの、主眼はあくまで一般的な犯罪対策です。そもそも対策チームの設置要項には「米軍」の文字すらなく、基地あるがゆえの犯罪が最初から沖縄の治安問題にすり替えられています。

 「再発防止」の環境整備では、監視カメラや街灯の増設に加え、学校の防犯教育や、地域ぐるみでの子どもの見守り活動の充実、不審者情報の共有体制の構築などをあげました。1995年の米兵らによる少女暴行事件を受け、同県金武町では街灯約1000本や監視カメラが国の補助金で設置されました。しかし、その後も米軍犯罪は起きており、根絶策にならないことは証明済みです。

 いま大問題になっているのは、沖縄の世論を「論理的というより感情的」(海兵隊の研修資料)などと見下した、米軍の新兵教育のほうです。こうした研修をただしもせず、国が県民に教育や対策を求めるなど、責任転嫁もはなはだしいものです。

 パトロール体制の強化では、県警の体制強化のほか、内閣府の出先機関である沖縄総合事務局で非常勤職員を雇用し、車両100台規模の緊急パトロール隊を組むとしています。場所は「繁華街等」とあるだけで、米軍対策どころか県民監視に悪用される可能性もあります。

国民守らぬ自公

 日米両政府は反基地世論の拡大を防ぐため、矢継ぎ早に対応をとっていますが、日米地位協定や基地削減といった米軍の既得権益にふれることには一切否定的な姿勢を示しています。安倍晋三首相は5月25日の日米首脳会談で、こうした県民の声を取り上げないばかりか、同盟強化や辺野古新基地の推進方針だけをオバマ大統領に伝えました。

 自公政権が事件を防ぎ、国民の命を守る立場にないことは明らかです。

 

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米軍基地反対のうねり拡大 沖縄“怒りの1カ月半”が始まった(2016年5月28日配信『日刊ゲンダイ』)

    

 沖縄県議選が27日告示され、定数48に対し、71人が立候補した。投開票は来月5日。焦点は翁長雄志知事の支持派が過半数を維持できるかだが、直前に起きた米軍属による女性遺棄事件を受けて、空気がガラリと変わったという。

 「県議会の現有勢力は、47議席中(欠員1)、知事支持派が24、中立を含む非支持派が23です。そのため、当初、知事支持派が過半数を維持するのは厳しいという見方もありました。しかし、事件後は米軍基地反対のムードが高まり、自公など非支持派が追い詰められています。特に公明党が焦っていて、支持団体の創価学会は、『沖縄の知り合いに連絡をするように』という指令を全国で出しているようです」(地元関係者)

  日米首脳会談で地位協定の改定が言及されなかったこともあり、沖縄県民の女性遺棄事件への怒りは収まるどころか、むしろ広がっている。

 県議会は26日、事件に抗議する決議を全会一致で可決。「米軍普天間基地の県内移設断念」とともに「全ての米海兵隊の撤退」を初めて決議したのだが、公明党は賛成、自民党は反対せず、議場から退席するしかなかった。

 県議選の後は、6月19日に大規模県民大会も決まっている。7月10日投票が予想される参院選まで、これから1カ月半、沖縄県内で米軍基地反対の機運がこれまで以上に盛り上がるのは間違いない。

 沖縄選出の元衆院議員・瑞慶覧長敏氏がこう言う。

 「米軍基地反対のうねりは、確実に参院選まで続くでしょうし、それ以降も終わりません。若い女性の命が奪われたことについて、県民は怒り以上に、『どうして止められなかったのか』という“悔しさ”でいっぱいです。5月22日に米軍司令部前で行われた追悼集会は大雨の中、不便な場所にもかかわらず2000人近くが集まりました。数万人規模を目標にしている6月19日の県民大会も、かなりの人数が集まると思います」

 参院選で改選を迎える島尻安伊子沖縄・北方担当相にとっても、厳しい1カ月半となりそうだ。

 

米軍関係の事件・事故で戦後 日本人 少なくとも1600人超死亡(2016年5月27日配信『しんぶん赤旗』)

 

大半は沖縄県内

 戦後、米軍や軍属などによる事件・事故で死亡した日本人の数は、日本政府などが把握しているだけで1600人を超えることが分かりました。大半が沖縄県内で発生したものとみられます。

 4月28日に同県うるま市で発生した元米海兵隊員の軍属による女性遺体遺棄事件は、日米両政府がおびただしい数の悲劇を顧みず、基地を押し付け続けてきた結果によるものです。

 防衛省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料によれば、同省が日米地位協定18条(旧日米行政協定を含む)に基づく損害賠償業務の関係上、把握している日本人の死亡者数は、サンフランシスコ講和条約が発効した1952年度から2015年度までの合計で1091人に達します。このうち約82%にあたる891人が71年度までに死亡。事故の大半は、72年5月15日の沖縄の本土復帰以前に発生していることになります。

 防衛省は講和条約発効以前については把握していないとしていますが、沖縄県が83年にまとめたとみられる資料によれば、日本が終戦を迎えた45年8月13日から、講和条約発効前日の52年4月27日までの死亡件数(人数)は574件、傷害は630件となっています。

 二つの資料の数を単純に合計すると1665人になります。

 ただ、これらは、米軍の占領当局や日本政府が布令や法律に基づいて賠償を行った範囲にすぎません。無権利状態に置かれていた復帰前の沖縄で、遺族が泣き寝入りした事例ははるかに多いとみられます。

 加えて、終戦直後から講和条約発効までの日本本土での死亡者数はいまだ不明です。

 二度と悲劇を繰り返さないため、日米両政府は基地の存在に伴う人的被害の全容を解明する必要があります。

 

沖縄県民蔑視の海兵隊資料(2016年5月27日配信『しんぶん赤旗』)

凶悪事件多発を無視

「米兵の犯罪少ない」明記

 日本共産党の志位和夫委員長は26日の記者会見で、英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が情報公開請求で入手した在沖縄米海兵隊の研修資料(写真)を暴露し、「(沖縄の世論は)論理的というより感情的。二重基準、責任転嫁」などとした記述をあげ、「沖縄県民蔑視」だと厳しく批判しました。


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 これに加えて同資料では、米兵が起こす犯罪について「きわめて低い」と断言していることが判明しました。また、「綱紀粛正」を求める記述は一切、見当たりません。

 日本政府は元米海兵隊員の軍属による女性遺体遺棄事件を受けて「再発防止策」の強化を表明。教育の徹底を求めるとしていますが、このような教育は逆に犯罪を増長させるものでしかありません。

 研修資料のうち、「犯罪」と書かれた項目では、「兵士による不作為と非民主的軍政という(本土)復帰前の記憶がいまだに(沖縄を)支配している」と述べ、米兵の犯罪が多発していたのは過去の話だと一蹴。「米兵の人口あたりの犯罪はきわめて低いが、そのような見方(の人々)に対して、われわれが思う以上に反論するのは難しい」と述べています。

 さらに、米兵の犯罪率が低いとの見方を示した上で、「このような低い犯罪率は、もしわれわれ(米軍)がいなかったら、このような事件は起こらなかったと主張する人々にとっては無関係なものだ」と述べています。

 沖縄県では、本土復帰後も米軍関係者による刑法犯検挙数が5896件に達し、うち殺人や強盗、強姦(ごうかん)など凶悪犯罪も574件あります。これらを「ひじょうに少ない」とする驚くべき見方です。

 

在沖縄海兵隊の研修資料・スライド「沖縄文化認識トレーニング」から

 ●…沖縄の政治問題の大部分は米軍駐留に関係している。はっきりいえば、沖縄の政界は米軍基地問題を、多く地方レベル・国政レベルの問題に関するテコとして利用している。

 ●…メディアや現地の政界は、負担を強調しつづけて今後の一定の課題のために、政治的な恩恵を引き出すために、半分の真実や未確認の主張を熱心に報道したがることがわかるだろう。

 ●…沖縄の政治問題の大半は米軍基地の存在に関係したものであり、もっとはっきり言えば、沖縄の政治は基地問題を、地方および国の多くのレベルの問題について、テコとして使っている。

 ●…反軍事の目標をもつメディアによって増幅された特定のできごとが、世論のバランスを大きく変えうる。

 ●…(沖縄主要2紙は)内向きで狭隘(きょうあい)な視点、反軍事のプロパガンダを推進している。

 ●…われわれの観点からすれば、(県民の)議論は、論理的というより感情的。二重基準。多分に「責任転嫁」現象を伴って、責任やイニシアチブを取ろうとしない。

 ●…伝統的に、地主の多数は、米軍基地の土地の早期返還を望んでいない。高い地代、地主の高齢化、土地を経済的に利用することの能力欠如によるものだ。

 

広大な基地あるが故(2016年5月27日配信『しんぶん赤旗』)

 

女性遺棄 翁長知事が議会報告

 

沖縄県の翁長雄志知事は26日開かれた県議会(臨時会)で元海兵隊員による遺体遺棄事件について報告しました。

 米軍属を被疑者とする死体遺棄事件に関し、お亡くなりになられた被害者の御冥福をお祈りするとともに、御遺族に対し、心よりお悔やみを申し上げます。

 今回の事件は、将来への大きな夢を抱き、社会の一員として地道に努力している若者の尊い命を奪う、実に痛ましいものであり、御本人や御家族の無念さを思うと、心が痛みます。

 県は、これまで数十年にわたり、米軍人・軍属等による事件・事故が発生する度(たび)に、綱紀粛正、再発防止及び教育の徹底等を米軍等に何度も繰り返し強く申し入れてきましたが、現状は、全く変わらないと言っても過言ではありません。

 3月に那覇市内で準強姦事件が発生した際にも、このような事件が二度と起きないよう、在沖米軍全軍に対し、早急に、より一層の綱紀粛正及び人権教育の徹底を含め、再発防止について万全を期すよう強く要請してきたばかりであります。

 それにもかかわらず、このような凶悪な事件が発生したことは、国土面積の約0・6%に過(す)ぎない沖縄県に、在日米軍専用施設面積の約74%に及ぶ広大な米軍基地があるがゆえであります。

 このような沖縄の現状を日米両政府は十分に認識し、日米地位協定を見直すとともに、基地の整理縮小など、過重な基地負担の軽減に真摯(しんし)に取り組んでいただくことが、抜本的な解決につながるものであります。

 県としては、米軍等に対し強く抗議し、今後、捜査の進展を踏まえつつ、厳しく対処していくとともに、御遺族の方の心情や意向にも十分配慮し、適切に対応してまいります。

 

沖縄女性遺棄事件(2016年5月25日配信『しんぶん赤旗』)

 

橋下前大阪市長とおおさか維新

女性蔑視発言に反省なし

 

 沖縄県で起きた元米海兵隊員による女性遺体遺棄事件で、過去の「風俗活用」発言を正当化する人物がいます。おおさか維新の会の法律政策顧問を務める橋下徹・前大阪市長です。

 橋下氏は2013年5月13日、旧日本軍による「慰安婦制度は必要だった」と持論を展開しました。同日午後には、沖縄の米軍普天間基地を視察した際に司令官に、米兵による性犯罪抑止策として「もっと日本の風俗業を活用してほしい」と勧めたことを明らかにしました。

 「問題解決の方法として(風俗利用を)検討するのはばかげている」(米国防総省当局者)など、世界中から厳しい批判を受け謝罪に追い込まれました。

 しかし今回、橋下氏は自身のツイッターに「(以前に)風俗の活用でも検討したらどうだ、と言ってやった。まあこれは言い過ぎだとして発言撤回したけど、やっぱり撤回しない方がよかった」と投稿。何の反省もなく、開き直っています。

 おおさか維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)は23日、「(橋下氏の提案に対して)米軍の方がタブーにしておこうということでは、軍人のストレスは解消されない」と語り、橋下氏に同調しました。

 基地があるがゆえに米軍による犯罪・事件が続いてきた沖縄の歴史を無視し、女性を男性の性欲を処理する対象として捉える橋下氏と、おおさか維新の会の主張は、女性はもちろん男性をもおとしめるものです。

 基地撤去こそ米兵犯罪をなくす最も有効な解決策という声に背を向け、沖縄での米軍新基地建設に固執する安倍政権。米兵犯罪の本質から目をそらさせようとする点で、おおさか維新の会は、やはり安倍政権の危険な補完勢力です。異常な人権感覚を恥じない、おおさか維新の会に、改憲勢力として期待を寄せる安倍首相の姿勢もまた問われます。

 

 

沖縄女性遺棄事件 東京の新聞はどう伝えたか(2016年5月21日配信『沖縄タイムス』)

 

元海兵隊員で米軍属の男による遺体遺棄事件について、在京の全国紙、ブロック紙(東京版)は20日付の朝夕刊で多くの面を使って事件の衝撃を伝えた。朝日、毎日、東京は1面トップで、読売は2番手、日経は3段の見出しで報じた。政治面では、沖縄県と国が対立する辺野古新基地建設問題や政治に及ぼす影響を、社会面では度重なる米軍絡みの事件に対する県民の怒りや、捜査の状況など多面的に伝えている。

 事件の影響では「怒る沖縄辺野古へ波及」(朝日)、「高まる反基地感情」(東京)など、1995年の米兵による暴行事件も引き合いに、基地負担の軽減や日米地位協定改定を求める世論が強まるとの見通しを示した。

 一方、来週に控えたオバマ米大統領の来日や参院選への影響を懸念する政府側の声も取り上げている。岸田文雄外相がケネディ米駐日大使を呼び出し抗議したことに関連し「日米迅速な対応強調」(毎日)など、影響を最小限にとどめたい政府の思惑を報じた。

 社会面では「許せない」(朝日)、「沖縄怒り 『またか』」(読売)など、相次ぐ事件に対する県民の憤りや、被害者の知人らの悲しみの声を多く伝えた。各紙で米軍関係者による事件を年表にして基地被害の多さを示したほか、“事件の遠因”と指摘される地位協定の問題点を解説する記事もあった。

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