政権不祥事「民主主義 根幹揺るがす」 衆院議長、異例の所感

 

 

記者会見する大島理森衆院議長=2018年7月31日、国会で

 

 

 

 大島理森(ただもり)衆院議長は2018年7月31日、国会内で記者会見し、相次ぐ政権不祥事が問題となった7月22日に閉会した通常国会を振り返り、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんや自衛隊日報隠蔽(いんぺい)など国会提出資料がずさんに扱われたことについて「民主主義の根幹を揺るがす問題だ。法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせる恐れがある。立法府と行政府相互の緊張関係の上に成り立つ議院内閣制の基本的な前提を揺るがす」と批判。安倍政権に注文を付ける異例の所感を公表。

 

 大島氏は、厚生労働省の労働時間調査での不適切データ問題にも言及し、加計学園問題や前財務次官のセクハラ問題を念頭に「国民に大いなる不信感を引き起こした。個々の関係者の一過性の問題として済ませずに、深刻に受け止めていただきたい」と強調した。

 

 同氏は、行政を監視する立場にある立法府の責任にも触れ「国民の負託に応える行政監視活動をしてきたか検証の余地がある」と回顧。今後の国会の在り方として「憲法や関係法で与えられた、国会としての正当かつ強力な調査権の一層の活用を心掛けるべきだ」と、与野党に議会制度協議会や議院運営委員会の場で議論するよう求めた。

 

 具体的には40人以上の議員が要請すれば、議長を通じて衆院調査局に調査を求めることができる「予備的調査」の活用を例示。必要であれば関係法改正も視野に入れるべきだと表明した。

 

大島氏は、菅義偉(すがよしひで)官房長官に所感を渡し、再発防止のための制度構築を求めると同時に、所感は与野党各党派にも送付した。

 

 

 

 

大島衆議院議長談話(今国会を振り返っての所感)

 

まず、今般の西日本の豪雨災害により亡くなられた多くの方々に対し、心より哀悼の意を表しますとともに、御遺族の方々にお悔やみを申し上げます。また、被災された方々に対し心よりお見舞い申し上げます。衆議院では10日の本会議で決議を行いました。

先日の台風12号により、被災地の皆様には二次災害の危険など更なる過酷な状況が続きますが、政府におかれましてはこの決議の趣旨を十分尊重して、被災者の方々に寄り添いながら、対応に万全を期していただきたいと思います。

先般の通常国会は、1月22日にはじまり7月22日まで、延長を含めて182日間の会期となりました。

 

1)この国会において、@議院内閣制における立法府と行政府の間の基本的な信任関係に関わる問題や、A国政に対する国民の信頼に関わる問題が、数多く明らかになりました。これらはいずれも、民主的な行政監視、国民の負託を受けた行政執行といった点から、民主主義の根幹を揺るがす問題であり、行政府・立法府は、共に深刻に自省し、改善を図らねばなりません。

 

2)まず前者について言えば、憲法上、国会は「国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関」(憲法41条)として、「法律による行政」の根拠である法律を制定するとともに、行政執行全般を監視する責務と権限を有しています。これらの権限を適切に行使し、国民の負託に応えるためには、行政から正しい情報が適時適切に提供されることが大前提となっていることは論を俟ちません。これは、議院内閣制下の立法・行政の基本的な信任関係とも言うべき事項であります。

しかるに、(1)財務省の森友問題をめぐる決裁文書の改ざん問題や、(2)厚生労働省による裁量労働制に関する不適切なデータの提示、(3)防衛省の陸上自衛隊の海外派遣部隊の日報に関するずさんな文書管理などの一連の事件はすべて、法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせるおそれがあるものであり、立法府・行政府相互の緊張関係の上に成り立っている議院内閣制の基本的な前提を揺るがすものであると考えねばなりません。

 

3)また、行政・立法を含む国政は、「国民の厳粛な信託によるもの」であり(憲法前文)、民主主義国家においては、国政全般に対する国民の信頼は不可欠なものであります。

にもかかわらず、行政執行の公正さを問われた諸々の事案や、行政府の幹部公務員をめぐる様々な不祥事は、国民に大いなる不信感を惹起し、極めて残念な状況となったのではないでしょうか。

 

4)政府においては、このような問題を引き起こした経緯・原因を早急に究明するとともに、それを踏まえた上で、個々の関係者に係る一過性の問題として済ませるのではなく、深刻に受け止めていただきたい。その上で、その再発の防止のための運用改善や制度構築を強く求めるものであります。

 

5)以上のような問題を生起せしめた第一義的な責任は、もちろん行政府にあることは当然でありますが、しかし、そのような行政を監視すべき任にある国会においても、その責務を十分に果たしてきたのか、国民の負託に十分に応える立法・行政監視活動を行ってきたか、については、検証の余地があるのではないでしょうか。国会議員は、私自身も含め、国民から負託を受けているという責任と矜持を持たねばなりません。このような観点から最近、各党各会派や議員グループから、国会改革に関して具体的な提言

がなされていることも、衆議院議長として、承知しているところであります。

 国会を振り返り、私たちは国民から負託された崇高な使命とあるべき国会の姿に思いをいたし、憲法及び国会関係諸法規によって与えられている国会としての正当かつ強力な調査権のより一層の活用を心掛けるべきであります。そして、必要とあれば、その実効性を担保するため、それら国会関係諸法規の改正も視野に入れつつ、議会制度協議会や議院運営委員会等の場において、各党各会派参加の上で、真摯で建設的な議論が行われることを望むものです。

 

 

国会開幕 立法府は復権できるか(2019年1月29日配信『岩手日報』―「論説」)

 

 「民主主義の根幹を揺るがす問題だ。立法府の判断を誤らせる」。昨年の通常国会後、大島理森衆院議長が異例の所感を表明した。

 森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざん、自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)などについて安倍政権に注文を付けたものだ。その指摘は1年後の今国会にも当たるのではないか。

 通常国会が28日、幕開けした。施政方針演説で安倍晋三首相は、厚生労働省による毎月勤労統計の不正問題について陳謝し、「徹底した検証を行う」と約束した。

 毎月勤労統計の不正は、まさに「民主主義の根幹を揺るがす」問題だ。本来は全ての事業所を調査すべきだが、厚労省は東京都で3分の1しか調べていなかった。

 さらには、外部有識者が行うべき問題調査の聴取を、一部は身内の厚労省職員が行っていた。有識者の聴取に厚労省の官房長が立ち会ったことまで判明している。

 不正によって政府は、雇用保険などを少なく受け取った人への追加支給に追い込まれた。対象は2千万人に及び、来年度予算案の閣議決定をやり直している。

 しかも、問題は厚労省にとどまらない。各省庁が56の「基幹統計」を点検した結果、23統計で不適切な事案があった。

 正確な統計から国の政策は作られる。前提となる数字が信頼できなければ、民主的な政治は成り立たない。

 行政府の危機と言うべき事態に、立法府の姿勢が問われよう。民主的な選挙で選ばれた議員でつくる国会は、国民の負託に応えるため行政を監視する責任がある。

 真相究明に取り組む与野党の役割は大きい。野党は根本匠厚労相の罷免を求めるが、立憲民主、国民民主の両党で野党第1会派を巡り対立し、不協和音が聞かれる。

 今国会は夏の参院選を控え、審議日程が窮屈だ。限られた時間に、不正の再発防止から組織の在り方まで議論を深める必要がある。野党は連携して問題解決に臨まなければ国民に見放されよう。

 統計不正以外にも、今国会は消費税増税の是非という大きな論点がある。安倍首相は全世代型の社会保障を訴えたが、社会保障の負担と給付はどうあるべきか、国民が納得する議論は欠かせない。

 安倍「1強」の中で、国権の最高機関たる国会の影は薄い。政権不祥事の追及は中途半端で、乏しい審議での強行採決も相次ぐ。行政府が立法府を見下す例すらある。

 「国民の負託に応える行政監視活動をしてきたか検証の余地がある」。大島議長は所感で国会の責任にも触れた。立法府は復権できるか、今国会は正念場とも言える。

 

自民が政権批判の大島更迭画策(2018年12月10日配信『日刊スポーツ』―「政界地獄耳」)

 

★自民党も官僚制度も議会も、もう秩序がある世界とは言えなくなった。国民は被害者だが、一番の問題はこの政治に慣らされて声も出せなくなった自民党議員と同党支持者だろう。日本にある穏健な保守層を破壊して、長いものに巻かれる社会を否定しなくなった寂しい社会が平成の後期を覆ったといえる。

★共産党委員長・志位和夫がツイッターで指摘しているように「入管法改定、漁業法改定、水道法改定は経団連主導で作成の『骨太方針』に明記されている。安倍政権は『成長戦略』と称して外国人労働者、沿岸漁業、水道事業という公的規制がなければ成り立たない分野にまで規制緩和を押し付けるという『禁じ手』にのめりこんでいる」。ただ、これをネットに書き込むのは国民の声のはず。政治家はそれを議会で声を上げ、議論し食い止めるのが仕事だが、政権は国会審議すら封じ込めた。自民党議員は法案が「生煮えだ」などと匿名では言うものの体を張って止めるものなどない。法案を採決した後に批判する与党議員の後出しじゃんけん論法にもうんざりだ。

★安倍政権の過去6年間にも特定秘密保護法は国民の反対82%が、安全保障関連法は70%、TPP関連法は68%の反対を押し切って成立させた。共謀罪についても審議不十分と感じていた国民は6割に達し、働き方改革法は今国会不要が7割、カジノ法案も反対が65%を数えた。つまり野党どころか国民の声も聴くことはない。先の国会では衆院議長・大島理森が公文書改ざんや自衛隊日報隠蔽(いんぺい)など相次ぐ政権不祥事を挙げ、「民主主義の根幹を揺るがす問題だ。立法府の判断を誤らせる恐れがある」と政権に注文を付ける異例の所感を発表し、再発防止のための制度構築を求めている中、回答も出さずに強行採決ではもう機能不全としか言いようがない。その裏で大島を更迭しようと自民党が画策したことも付記しておきたい。

 

衆院議長「裁定」 与党は重く受け止めよ(2018年12月3日配信『東京新聞』−「社説」)

 

 入管難民法などの改正案の衆院通過を巡り、衆院議長が再質疑を求める異例の発言を行った。審議の在り方を憂う事実上の「裁定」だ。与党は重く受け止め、強引な議会運営を改めるべきである。

 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が衆院を通過した十一月二十七日、大島理森衆院議長が与党の国対委員長を呼び、来年四月予定の施行前に政省令を含めた法制度の全体像を政府に報告させた上で法務委員会で質疑するよう求めた。

 衆参にかかわらず、議長として個別の法案審議の在り方に注文を付けるのは異例だ。法制度の全体像が明らかにならないまま、衆院を通過させなければならない大島氏としては、やむにやまれぬ気持ちだったのだろう。

 議長発言の中で最も重要な点は「政省令事項が多岐にわたると指摘されている」と述べたことだ。

 改正案は外国人労働者の受け入れ見込み数や対象職種などを成立後に定めるとしている。これらは制度の根幹部分であるにもかかわらず、野党の追及に対し、政府側は「検討中」と繰り返した。

 法律に明記せず、政府が政省令で勝手に決めればいいと考えているのなら、唯一の立法機関である国会を冒涜(ぼうとく)するものだ。

 法案審議の過程では、失踪した外国人技能実習生の実態調査結果の集計を法務省が誤っていたことも明らかになった。

 大島氏は今年七月に発表した所感で、財務省の森友問題を巡る決裁文書改ざんや厚生労働省による裁量労働制に関する不適切データの提示などを、法律制定や行政監視における立法府の判断を誤らせる、と厳しく指摘したばかりだ。

 正しい情報の提供は法案審議の大前提であるにもかかわらず、安倍内閣は同じ過ちを繰り返したことになる。国民の代表である国会を、どこまで愚弄(ぐろう)するのだろう。

 残念なことは不備のある法案や情報であるにもかかわらず、短時間の審議で衆院を通過させたことだ。与党としての矜持(きょうじ)はどこに行ってしまったのか。

 かつて与党が衆院の委員会採決を強行した後、議長が補充質疑などを求める裁定を下したこともあった。

 今回の「裁定」は来年の通常国会での再質疑を求めるものだが、せっかく裁定するのなら、衆院通過前に委員会審議のやり直しを求めることはできなかったのか。

 現状は立法府の危機にほかならない。大島氏は議長としての指導力を一層、発揮すべきである。

 

衆院議長所感から 民主主義の道理を考える(2018年8月15日配信『北国新聞』−「社説」)

 

 今年で73回目を数える終戦記念日は、敗戦国の日本が主権在民の民主主義国家に向かって新たな一歩を踏み出した日でもある。戦没者を追悼し、平和を祈念するとともに、国民主権の民主主義の道理を考え、深く心に刻む日としたい。

 先の通常国会が閉幕した後、大島理森衆院議長が、異例の所感を発表した。森友問題をめぐる財務省の決裁文書改ざん、裁量労働制に関する厚生労働省の不適切なデータ提示などを取り上げ、政府と国会に原因究明と再発防止の取り組みを強く求めたのである。

 防衛省の日報問題を含む行政府の不祥事は、法律の制定や行政監視を担う立法府の判断を誤らせる恐れがあり、まさに民主主義の根幹を揺るがす事態である。

 国民が有する主権は、国会(立法府)を通して発動されるのであり、議院内閣制にあっては、内閣が主権発動の代理機関とも位置づけられる。日本国民は欧米に比べて主権意識が希薄とされるが、国民主権が国会を通して行使される民主主義の原理原則を、国会、内閣を預かる議員はあらためて厳粛に受け止めてほしい。

 官僚の務めは、法律の制定など国会、内閣による主権の発動が適正に行われるよう補助することであろう。財務省の決裁文書改ざんなどは、国民主権の道理をないがしろにする、傲慢さの現われと言わなければならない。

 戦後の日本は、この民主主義とその下での平和を最高の価値として国を築いてきた。幸い国と国民の安全は保たれ、平和、民主主義の価値を維持できているが、終戦の日にちなみ、あらためて考えたいのは、国と国民の安全を守ることが主権者の最大の義務であり、主権者が国民の民主主義国であれば、その守り手は国民自身であるということである。

 日本と違って、そうした民主主義の道理は欧米では常識として認識されている。国民の国防義務論を説くものではないが、安倍晋三首相と石破茂氏が対決する自民党総裁選や国会の憲法改正論議は、まず民主主義の原則をわきまえた上で行ってもらいたい。

 

衆院議長談話 正論が物語る政治の危機(2018年8月14日配信『西日本新聞』−「社説」)

 

 「三権の長」の一人として「ここはもの申しておかねば禍根を残す」と判断したのだろう。

 大島理森衆院議長が、先に閉会した通常国会について異例の談話(今国会を振り返っての所感)を公表した。

 財務省による決裁文書の改ざんまで引き起こした森友学園問題▽厚生労働省による裁量労働制を巡る不適切データの提供▽防衛省による陸上自衛隊の海外派遣部隊の日報に関するずさんな文書管理−など、一連の疑惑や不正を例に挙げて、大島議長は、こう喝破した。

 「法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせるおそれ」があり、「立法府・行政府相互の緊張関係の上に成り立っている議院内閣制の基本的な前提を揺るがす」。

 まさに正論である。「議院内閣制の前提を揺るがす」とはすなわち、日本の政治が危機的状況に陥っている−という深刻な現状認識にほかならない。私たちも全く同感だ。

 行政権を行使する内閣(行政府)の存立は、国民から選出された議員で構成する国会(立法府)の信任に基づく。これが議院内閣制だ。内閣は国会の多数派によって形成され、内閣は国会に対し連帯して責任を負う。

 ところが国有地を格安価格で森友学園に売却した財務省は、決裁文書を改ざんし、国会へ提出した。理財局長の国会答弁と帳尻を合わせるためだった。

 これでまともな国会審議などできるわけがない。日報や不適切データ提供も同様に国会の信任を著しく損なってしまった。

 そこで大島議長は一連の問題について経緯と原因を早急に究明するよう政府に求めた。「一過性の問題」とせずに「再発の防止のための運用改善や制度構築」を促している。

 同時に議長談話の矛先は国会にも向く。第一義的な責任は行政府にあるが、「行政を監視すべき任にある国会」は「その責務を十分に果たしてきたのか」という問いである。

 国民の代表が集う国会を軽視してはばからない政府。その政府で相次ぐ失態や不祥事を巡る原因究明や責任追及が後手に回る国会。双方に問題提起することで「国民の声」を代弁しているともいえよう。

 こう考えてくると、道理にかなう議長談話があぶり出すのは、従来の常識と懸け離れた政治のいびつさではないか。いわば当たり前のことを国会閉会後に、衆院議長があえて談話として公表せざるを得ない現実こそ深刻に受け止めねばなるまい。

 行政府と立法府の健全な緊張関係を取り戻し、国民の負託に応えるにはどうすべきか。政府と国会は真剣に考えるべきだ。

 

国会改革 監視機能強化が急務だ(2018年8月5日配信『北海道新聞』−「社説」)

 

 国会審議の在り方を見直し、行政府に対する監視機能の強化を掲げる「国会改革」を、先の通常国会で自民党の小泉進次郎衆院議員ら若手有志と、立憲民主党が相次いで提言した。

 森友・加計問題が象徴するように、安倍1強政治の行き過ぎやゆがみを正すべき立法府の地盤沈下が著しい。改革は急務である。

 気になるのは、小泉氏らの提言に、首相や閣僚の国会出席の負担軽減など審議の「合理化」を目指すような内容が含まれることだ。

 立法府の復権という大義名分を与野党がしっかり共有しないと、空洞化がますます進みかねない。

 大島理森衆院議長は先週、財務省による決裁文書改ざんなどで政府に苦言を呈する異例の所感を公表し、国会改革に各党の「真摯(しんし)で建設的な議論」を促した。

 数に物言わせる与党の国会運営を容認している衆院議長の責任は大きい。政府への苦言も、国会閉会後では遅きに失した感がある。

 そこは指摘した上で、所感の内容自体はうなずける。

 国民の負託に応えるために国政調査権の一層の活用を心掛けるべきだと提唱。記者会見では、具体策として40人以上の議員の要求で衆院調査局に調査を命じられる「予備的調査」を例示した。

 森友・加計のような問題は、立法府としての真相究明に与党も野党もない。議長の問題提起を特に与党側は重く受け止めるべきだ。

 小泉氏らの提言も、行政の公正性に疑義が生じた場合に国政調査権を発動する特別調査会を設置することを目玉にした。

 内閣の説明責任強化のためとして、形骸化が指摘される党首討論を隔週で、国民がテレビを見やすい夜に開催することも提案した。

 ただ調査会設置を前提に、予算委員会などはスキャンダル追及より政策本位で審議し、党首討論以外に首相や閣僚の国会出席を減らすとの趣旨には問題がある。

 政権の信頼性に関わるスキャンダル追及はどんな場でも妨げられてはならない。首相と閣僚が国会に出席するのは憲法上の義務だ。

 立憲民主党は、党首討論は質問者の発言時間だけを数え、2時間程度を確保するよう求めている。

 野党提出法案を週1回審議することや、国会に招致する政府参考人の範囲の拡大も盛り込んだ。

 充実した国会審議には、野党の意見を与党が可能な限り尊重する謙虚な姿勢が欠かせない。各党は早急に協議を開始し、合意できるものから実行に移すべきだ。

 

衆院議長の所感 これはただ事ではない(2018年8月5日配信『岩手日報』−「論説」)

 

 先の通常国会に関し、大島理森衆院議長が表明した異例の所感を、政府はじめ与野党の国会議員はどう受け止めているだろうか。

 所感は森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんや自衛隊日報隠ぺいを「民主主義の根幹を揺るがす問題」と指摘。立法府の判断を誤らせる恐れがある−と、安倍政権に反省と改善を促す一方で「立法府も国民の負託に応える行政監視をしてきたか、検証の余地がある」と振り返った。

 所感の表明は、閉幕から約10日後の先月31日だった。政府が公文書管理の在り方を見直して再発防止策をまとめ、財務省が新人事を発表したタイミング。一連の幕引きムードに対し、依然として政権に厳しい世論を大島氏が強く意識したのは間違いない。

 これを「ガス抜き」にとどめるか、深刻に捉えるかは、ひとえに政府、与党次第。9月改選が迫る自民党総裁選に向けた動きが本格化する折、直接的に首相を選ぶ政権党の責任として大島氏の課題認識を共有し、政策論議に反映させるべきだろう。

 森友、加計学園問題で浮き彫りになったのは、「1強」首相への忖度に象徴される政と官のゆがんだ関係だ。森友学園を巡る財務省の文書が改ざんされ、国民を代表する国会を欺いた問題の根は、その延長線上にある。

 背景には、省庁の幹部人事を官邸が一手に握る仕組みが指摘される。1強政治の長期化により、官僚が政権におもねる傾向が強まっているのは想像に難くない。

 政府は問題を官僚の責任に押し込めたが、改ざんの目的など政治に関わる疑惑は解明されないまま。だが先の財務省人事では、そうして処分を受けた人物が順当に昇格するなど、主要ポストの配置から反省の色は読み取れない。

 加計学園問題も同様、首相の関与疑惑のカギを握る柳瀬唯夫経産審議官を退任させたことには「疑惑隠し」との批判がつきまとう。

 政治の責任があいまいのうちに幕引きの動きが加速する状況に、立法府の長として大島氏が義憤を感じたとしても不思議はない。

 所感の中で、40人以上の議員が要請すれば議長を通じ衆院調査局に調査を求めることができる「予備的調査」の活用など、国会の権威回復へ議論を求めたのは「多弱」野党へのげきとも映る。

 大島氏は衆院青森2区選出で、当選12回。自民党幹事長や農水相などを歴任した。昨年10月の衆院選後は、安倍首相(党総裁)の判断で「1期で交代」の慣例によらず、議長に再選された経緯がある。その重鎮の政権への苦言。これはただ事ではないと思うのが、当然の反応だ。

 

「大島所感」検証を(2018日配信日刊スポツ』―「政界地獄耳」)

 

★衆院議長・大島理森は先月31日、国会内で会見し所感を発表し、通常国会を振り返った。厚労省の労働時間調査での不適切データ問題に言及し、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんや自衛隊日報隠蔽(いんぺい)、加計学園疑惑や前財務次官のセクハラ問題を念頭に「政府は深刻に受け止めてほしい。再発防止のための制度構築を強く求める。個々の関係者の一過性の問題として済ませず、深刻に受け止めていただきたい」と要望。国民の思いを代弁した形だ。

★相次ぐ政権の不祥事について、野党の追及にもかかわらず、政府与党は真摯(しんし)に向き合わず、衆院議長から極めて厳しい、安倍政権への反省と改善を促す異例の所感となった。「民主主義の根幹を揺るがす問題だ。立法府の判断を誤らせる恐れがある。国民に大いなる不信感を引き起こし、極めて残念な状況となった」と苦言。「国民の負託に十分に応える立法・行政監視活動を行ってきたか、検証の余地がある」とも指摘した。

★官房長官・菅義偉に所感は手渡されたが、ジャーナリスト・江川紹子はネットで「大島衆院議長の所感を伝える各紙(毎日5面、朝日4面、読売4面)。立法機関の長がわざわざ記者会見まで開いたというのに、こんな扱いの報道でいいんだろうか…」と、各紙の扱いの小ささに疑問を呈した。この国会は、大島が指摘する“相当問題の多い”議会だったが、森友・加計学園疑惑など一連の政権の対応とそれを守ろうとする官僚が、国会で平気でうそをつくことを、途中からメディアは飽きたかのように扱わなくなった。

★まさに大島の所感の記事の扱いが、それを象徴しているのではないかとの指摘に、政府も答えるべきだが、メディアも真摯に受け止めるべきではないのか。大島所感を、きちんと検証すべきだ。

 

大島衆院議長が異例の所感 常識をあえて説く深刻さ(2018年8月2日配信『毎日新聞』−「社説」)

 

 大島理森衆院議長が先の通常国会を振り返る異例の所感を公表した。

 政府による公文書の改ざんや隠蔽(いんぺい)、誤ったデータの提供などが相次いだことについて「民主的な行政監視、国民の負託を受けた行政執行といった点から、民主主義の根幹を揺るがす問題」と指摘した。

 そのうえで議長は行政府と立法府の双方に自省を求めている。

 議院内閣制のもとでは、国民が民主的な手続きによって国会議員を選び、その多数派から首相を選出することにより、内閣の持つ行政権に正当性が付与される。主権を有する国民からの委任の連鎖だ。

 だからこそ国会は立法権のみならず、国民に代わって行政を監視する権限を持つ。内閣は自らの生みの親である国会に対し、行政権の行使について連帯責任を負うのである。

 所感は特別なことを言っているわけではない。国政に参画する者であれば当然わきまえておくべき常識だ。それをあえて唱えなければならないところに問題の深刻さがある。

 国民を代表する立法府を行政府が欺いていたにもかかわらず、内閣はその責任を一部の官僚に押しつけ、だれも政治責任を取らない。

 立法府の側では与党が一貫して真相究明や責任追及に消極的だった。与党である前に議会人であるという自覚が極めて乏しい。その結果、立法府と行政府をつなぐ責任の糸がぷっつりと切れてしまった。

 立法府と行政府との緊張感を取り戻すにはどうすればよいのか。議長の所感は憲法62条に基づく国政調査権のさらなる活用を提起している。

 森友・加計問題では少数派の野党が求めた証人喚問などの調査権行使が与党の数の力で阻まれた。

 ドイツ連邦議会では4分の1の議員が申し立てれば調査委員会が設置される。日本の国会でも調査権の発動要件を緩和する議論が必要だ。

 自民党出身の議長が抱く危機感をよそに、自民党内では国会が閉会したら何事もなかったかのように9月の党総裁選へ向けて「安倍3選」の動きが加速している。

 過去の自民党政権で国民からの厳粛な信託がこれほど軽んじられたことがあっただろうか。

 「安倍1強」の長期政権下で国会はその権威を失いつつある。

 

衆院議長「苦言」 国民からの声と聞け(2018年8月2日配信『東京新聞』−「社説」)

 

 民主主義の根幹を揺るがす問題−。森友問題など相次ぐ政権不祥事を巡り、大島衆院議長が安倍政権に注文を付ける異例の所感を公表した。国民からの声と、政権は真摯(しんし)に受け止めるべきである。

 立法府は危機にある。三権の長の一人がようやく、そう認識するに至った。大島理森衆院議長が7月22日に閉会した「今国会を振り返っての所感」を公表した。注目すべきはその内容である。

 財務省の森友問題を巡る決裁文書の改ざん▽厚生労働省による裁量労働制に関する不適切なデータの提示▽防衛省の陸上自衛隊の海外派遣部隊の日報に関するずさんな文書管理−を挙げ、これらは法律制定や行政監視における立法府の判断を誤らせる恐れがあり、議院内閣制の基本的な前提を揺るがす、と厳しく指摘した。

 「国権の最高機関」であり「国の唯一の立法機関」の国会が、法律を誤りなく制定し、行政監視の責務を果たすには、行政府たる内閣が国会に対し、行政情報を正しく伝えることが大前提だ。

 しかし、国有地が格安で売却された森友学園の問題を巡り、財務省は国会に改ざんした文書を提出し、当時の佐川宣寿理財局長は国会で虚偽答弁を繰り返した。その後の証人喚問では偽証も指摘される。行政府の側がこんなことを繰り返せば、国会がまともに国政調査の機能を果たせるわけがない。

 法案審議も同様だ。新しい法律をつくるには、その必要性を示す「立法事実」が必要だが、それが不適切なデータに基づくものならば、国民に不利益な、誤った法律をつくることになりかねない。

 大島議長の指摘はまっとうで、国民の多くが同じ問題意識を持っていることだろう。所感は、菅義偉官房長官に渡されたという。安倍晋三首相はじめ行政府の側は、議長の指摘を国民からの声と重く受け止め、真剣に対応すべきだ。

 秋に召集が見込まれる臨時国会以降は、これまでのような不誠実な態度が許されてはならない。

 行政府と同様、国会側の責任も不問に付すわけにはいかない。特に与党議員は、森友・加計問題への首相らの関与の解明に後ろ向きで、国政調査の責任を十分に果たしたとは言えないからだ。

 議長所感だけでなく各党派などから国会改革の提言が相次ぎ、問題点はすでに明白だ。立法府の立て直しに必要なのは、やる気と実行力。大島氏は自民党副総裁まで務めたベテラン議員だ。政治指導力を自ら発揮すべきである。

 

衆院議長所感  緊張感取り戻す契機に(2018年8月2日配信『京都新聞』−「社説」)

 

 国権の最高機関の長である衆院議長の提言は、安倍晋三首相や国会議員にどう聞こえるのだろう。

 大島理森衆院議長が、相次ぐ不祥事に揺れた通常国会について、異例の所感を公表した。

 森友問題をめぐる財務省の決裁文書改ざん、陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)などを挙げ、「民主主義の根幹を揺るがす」「立法府の判断を誤らせるおそれがある」とした。

 特に安倍政権に対しては、問題を起こした経緯や原因の究明と再発防止への制度づくりを求めた。

 大島氏の指摘は、行政府が立法府を欺いた前代未聞の不祥事への危機感といえる。安倍政権は深刻に受け止める必要がある。

 とりわけ、経緯や原因の究明については、問題に真摯(しんし)に向き合う意思があるかどうかの試金石といえよう。逃げずに実行すべきだ。

 ただ、国会が終わった今ごろになって議長が所感を示したことには疑問も残る。問題が明るみに出た段階で機動的に乗り出していれば、その後の国会運営も違った展開になったのではないか。

 参院では参院定数6増法案などに関し、野党が伊達忠一議長の不信任案を提出する一幕があった。

 仲介役を期待されながら調整に動かなかった伊達氏の姿勢には「自民党いいなり」と厳しい声が上がり、与党の議長経験者からも「努力不足」の苦言が出た。

 議長が出身政党の意向に気兼ねして議事運営が不公平と見なされるようでは、言論の府である国会議員を束ねる役割は果たせない。責任と誇りを持ち、リーダーシップを取るべきだった。

 今後の国会の在り方について、大島氏は「正当かつ強力な調査権の活用」に言及した。具体的には40人以上の国会議員の要請で衆院調査局に調査を求めることができる「予備的調査」を例示し、国会の調査機能充実を求めた。

 予備的調査は、国政調査権に基づく調査と違って強制力が伴わないが、官公庁に資料提出などの協力を求め、拒否された場合はその理由を述べさせることができる。

 限界はあるが、工夫次第では少数会派にとっても疑惑追及の重要な武器になりそうだ。こうした方法を駆使し、行政府と立法府の間に緊張感を取り戻したい。

 個々の議員も自覚が必要だ。特に与党議員は、所属政党の決定に唯々諾々と従い、審議を軽視している面はないだろうか。

 多様な問題を提起し、論じ合うことこそ、国民の代表である議員の本分とわきまえてほしい。

 

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