何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくても駄目だ

 

麻生失言・放言2018

 

死にません、なかなか / きちがいみたいな人ばかりだ

 

「警察か防衛出動か射殺か」 武装難民対策

 

自民大勝「北朝鮮のおかげ」 麻生副総理、パーティーで発言

 

「読む人の気知れない」 新聞報道巡り

 

論説 / 麻生氏の過去の主な暴言・失

 

大マスコミに言いたい放題 幼稚な安倍政権の王様気取り(2017年12月19日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 自分たちへの批判は許さない――。この政権の体質がよく分かるトンデモ発言が相次いでいる。

 15日に東京・汐留の共同通信本社で地方紙幹部らを前に講演した安倍は、こんな話をした。

「皆さんの中で最近、学生が集まらなくて大変だという会社があるなら、おそらく政治や経済のニュースが従来型のステレオタイプに陥っているからではないか」

 安倍の念頭には、自分は20代からの支持が高いという自負があったのだろう。つまり、「モリ・カケ」報道やアベノミクス批判など、政権に批判的な報道をしているから、学生が就職したがらないとケチをつけたわけだ。

 その証拠に、10月の衆院選で自民党に投票した人が最も少なかったのが60代だったことを取り上げ、「同年代に嫌われて悲しい」「皆さんの新聞の愛読者層ではないかと思うので、もう少しお手柔らかにお願いしたい」とも言っていた。嫌われたのは新聞報道のせいだというのだ。

 「特別国会でのモリ・カケ追及を何とか乗り切ったと思ったら、世論調査で支持率が3割台に下がり、焦っているのでしょう。支持率低下は国民に不信感を持たれるようなことをしているからであり、身から出たサビなのに、新聞のせいにするなんて、お門違いもいいところです。ましてや、自民党に投票したくなるような報道をしろと迫るようなことを言うのは、冗談にしてもタチが悪すぎる。安倍政権では閣僚が問題発言を繰り返しても、オトモダチ優遇を続けても見逃されてきたことを考えれば、今の大マスコミの報道は手ぬるいくらいですよ。それに文句をつけるのは、あまりに狭量です」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)

■政権と異なる意見はすべて「嘘」か

 ひと昔前なら即座に失職してもおかしくない暴言を連発しているのが政権ナンバー2の麻生財務相だが、その麻生も14日、金田前法相のパーティーで、「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法を「共謀罪」と断じた報道にイチャモンをつけた。

 「議論しているときはボロカスに叩き、今ごろ『やって良かった』と言う。そういう新聞にお金を払って読んでいる人の気が知れない」とやったのだ。問題だらけの共謀罪を「やって良かった」なんて誰が言うものか。完全な難クセ、デマの類いで、新聞攻撃を展開したのである。

 翌日の会見で、この発言について見解をただした東京新聞の記者に対し、麻生の反論がまたムチャクチャだ。

「(東京新聞は)やったら良くないと書いていた。しかしそれは嘘だった」

「(処罰法ができて)結果として良かった。しかし、訂正記事が出ていない」

「あおった記事が結果として違ったら、それだけ世の中を騒がせたわけだ。“社会の公器”の責任は(どうなる)」

 驚くことに、共謀罪を「やって良かった」と言っているのは、新聞ではなく麻生だった。国民を監視下に置きたい政権側の意見だ。それなのに、なぜ、東京新聞が訂正記事を出す必要があるのか。何が嘘だというのか。まったく意味不明だ。こんな理屈が通れば、政権と異なる意見はすべて「嘘」にされてしまう。こういうドーカツまがいの発言を許し、放置している大マスコミも問題だ。

 民主主義の土台である「知る権利」が脅かされている

「安倍首相や麻生財務相らの一連の発言の背後に見えるのは、自分たちがやっていることが絶対だという傲慢、批判は許さないという幼稚な王様気取りです。不都合な報道は『フェイクニュース』扱いし、『俺が言うことだけが真実だ』と、ツイッター発信を続ける米国のトランプ大統領とまったく同じ発想なのです。トランプ大統領は自身に批判的なニューヨーク・タイムズ紙やCNNテレビなどを会見から締め出した。安倍政権も同じことをやりかねません」(政治評論家・本澤二郎氏)

 それでも、米国ではメディアが権力と対峙する姿勢を崩さないから救いがある。

 ニューヨーク・タイムズは記者を増員し、トランプ発言の“ファクトチェック”は各メディアで頻繁に行われている。権力を監視し、暴走にストップをかけるのがメディアの役割だという共通認識ができあがっているのだ。

 かたや日本では、官房長官会見でしつこく食い下がる記者に対して官邸が抗議文を送っても、大マスコミが一致団結して批判の声を上げるわけでもなく、それどころか、「同じ質問をするな」という要求に唯々諾々と従ってしまう。官邸に忖度して、記者クラブが質問打ち切りに協力する始末だから、話にならない。

 おかげで、国際NGO「国境なき記者団」がまとめる「報道の自由度ランキング」で日本は年々順位を下げ、今年は180カ国・地域のうち72位という体たらく。先月14日には、国連人権理事会が、約5年ぶりに日本の人権状況を審査する作業部会を開いた。日本の「報道の自由」問題が初めて取り上げられ、米国などの加盟国から、懸念を示す声が続出したのだ。

気に入らなければ無視、抗議

 日本の「報道の自由」をめぐっては、人権理事会のデービッド・ケイ特別報告者が5月に調査報告を公表。特定秘密保護法や放送法の改正を勧告していた。ところが政府は「特別報告者の見解は、当該個人としての資格で述べられるものであり、国際連合またはその機関である人権理事会としての見解ではない」と閣議決定。それを垂れ流すメディアもあるのが恐ろしい。もちろん、人権理事会から任命された特別報告者の見解は、決して「個人的な見解」などではない。

 「気に入らないものは無視、あるいは抗議したり、『偏向報道』と切り捨てるのが安倍政権のやり方です。国会答弁でも平然と嘘をつき、都合が悪い情報は隠蔽してしまう。メディアを掌握するのは独裁の基本ですが、囲い込みとドーカツで骨抜きにされた日本の大マスコミは、わざわざ政権側が協力要請しなくても、勝手に安倍首相の顔色をうかがって、政権に都合の悪いことは積極的に報道しようとしない。戦時中の大マスコミも、そうやって情報をコントロールし、国民に真実を知らせなかった。軽減税率で首根っこを押さえられた大新聞がこぞって権力にスリ寄り、大政翼賛化した現状は危機的で、まるで“いつか来た道”です」(本澤二郎氏=前出)

 政権が電波法をチラつかせ、「中立、公平な報道を求める」などと言って、ちょっと脅せばテレビも萎縮。選挙になれば政権批判は画面から消えてしまう。それで選挙に圧勝した政権はますます増長し、言論弾圧を強めていく。そういう悪循環が、冒頭の安倍・麻生の傲慢発言につながっている。前出の山田厚俊氏が言う。

「国民の『知る権利』は民主主義の土台です。メディアはその権利を担保する役割を果たさなければならないのに、まず政権におもねり、それでも読者がついてくればOKという姿勢が目立つようになった。大マスコミがここまでヘタってしまって、損をしているのは、本当の情報を知ることができない国民なのです」

 安倍の周辺からは「政権批判は国益を損なう」という声が聞こえてくるが、冗談じゃない。政権と国は別物だ。メディアが政権を持ち上げるだけなら、北朝鮮と変わらない。民主主義が成立しないのである。それこそ国益を損ねることにならないか。批判報道に平気で文句をつけるこの政権は、民主主義というものを理解していないとしか思えない。

 

  

左:山東派と合流後初の夏季研修会で、講演する麻生太郎副総理兼財務相=29日、横浜市

右:閣議を終え会見する麻生太郎副総理兼財務相=29日午前、首相官邸

 

麻生太郎副総理兼財務相は2017年8月29日、自らが率いる自民党麻生派(志公会)の研修会で行った講演で、「何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくても駄目だ」と述べた。ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺の「動機は正しい」と擁護したとも受け取れる発言で。

 

 麻生氏の発言は、所属議員に政治家の心構えを説く中で出た。ヒトラーへの言及に続き、「国民に確たる結果を残して初めて名政治家だったと言われる。人がいいだけでやれるような職業じゃない」と語った。

 

 麻生氏は講演後の取材に「動機」の意味について「ドイツの繁栄だ」と語った。

 

麻生氏は30日、「ヒトラーは動機においても誤っていたことも明らかだ」「悪しき政治家の例として挙げた。真意と異なり誤解を招いたことは遺憾だ」とし、不適切な発言だったとして撤回するコメントを発表した。

その後、財務省で記者団の取材に応じ「政治家として結果を出すということが大事だ。結果というものがその全てなんだという話をした。この点を強調する趣旨として、あしき政治家の例としてヒトラーという人の例を挙げた」と釈明した。

 

志公会夏季研修会における発言について(財務省HP)

平成29年8月30日 

 8月29日の志公会夏季研修会における私の発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。

 私は、政治家にとって結果を出すことがすべてであるということを申し上げたかったものである。この点を強調する趣旨で、悪しき政治家の例としてヒトラーをあげたところである。私がヒトラーについて、極めて否定的にとらえていることは、私の発言の全体から明らかであり、ヒトラーは動機においても誤っていたことも明らかである。ヒトラーを例示としてあげたことは不適切であり撤回したい。

 

                                             財務大臣  麻生 太郎

 

Statement by Minister Aso on his remarks at the Summer Training of Shikokai

 

It is regrettable that my remarks at the Summer Training of Shikokai on August 29th caused misunderstanding which was totally different from my intention.

My intention was to point out that what matters most for politicians is to bring the best results. I mentioned Hitler as an example of bad politicians in order to emphasize the above−mentioned point. It is obvious from my overall remarks that I am extremely negative toward Hitler, and his motives were definitely wrong as a matter of course. My quotation about Hitler was inappropriate, and I would like to take it back.

 

                                         August 30th, 2017

Taro Aso

                                         Minister of Finance

 

麻生氏は2013年7月29日、民間シンクタンク「国家基本問題研究所」主催の講演会で、憲法改正について、ナチス・ドイツを引き合いに出し、「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」などと発言した。8月1日、発言は撤回されたものの、以後も国内、さらには海外メディアなどからも非難が殺到した。

 

発言要旨

 日本が今置かれている国際情勢は、憲法ができたころとはまったく違う。護憲と叫んで平和がくると思ったら大間違いだ。改憲の目的は国家の安定と安寧だ。改憲は単なる手段だ。騒々しい中で決めてほしくない。落ち着いて、われわれを取り巻く環境は何なのか、状況をよく見た世論の上に憲法改正は成し遂げられるべきだ。そうしないと間違ったものになりかねない。ドイツのヒトラーは、ワイマール憲法という当時ヨーロッパで最も進んだ憲法(の下)で出てきた。憲法が良くてもそういったことはありうる。憲法の話を狂騒の中でやってほしくない。靖国神社の話にしても静かに参拝すべきだ。国のために命を投げ出してくれた人に敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かにお参りすればいい。何も戦争に負けた日だけに行くことはない。「静かにやろうや」ということで、ワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか。僕は民主主義を否定するつもりもまったくない。しかし、けん騒の中で決めないでほしい。」

 

発言全文

僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。

 そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ。ここはよくよく頭に入れておかないといけないところであって、私どもは、憲法はきちんと改正すべきだとずっと言い続けていますが、その上で、どう運営していくかは、かかって皆さん方が投票する議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持(きょうじ)であったり、そうしたものが最終的に決めていく。

 私どもは、周りに置かれている状況は、極めて厳しい状況になっていると認識していますから、それなりに予算で対応しておりますし、事実、若い人の意識は、今回の世論調査でも、20代、30代の方が、極めて前向き。一番足りないのは50代、60代。ここに一番多いけど。ここが一番問題なんです。私らから言ったら。なんとなくいい思いをした世代。バブルの時代でいい思いをした世代が、ところが、今の20代、30代は、バブルでいい思いなんて一つもしていないですから。記憶あるときから就職難。記憶のあるときから不況ですよ。

 この人たちの方が、よほどしゃべっていて現実的。50代、60代、一番頼りないと思う。しゃべっていて。おれたちの世代になると、戦前、戦後の不況を知っているから、結構しゃべる。しかし、そうじゃない。

 しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに、みんなでもう一度考えてください。どこが問題なのか。きちっと、書いて、おれたちは(自民党憲法改正草案を)作ったよ。べちゃべちゃ、べちゃべちゃ、いろんな意見を何十時間もかけて、作り上げた。そういった思いが、我々にある。

 そのときに喧々諤々(けんけんがくがく)、やりあった。30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた。自民党の部会で怒鳴りあいもなく。『ちょっと待ってください、違うんじゃないですか』と言うと、『そうか』と。偉い人が『ちょっと待て』と。『しかし、君ね』と、偉かったというべきか、元大臣が、30代の若い当選2回ぐらいの若い国会議員に、『そうか、そういう考え方もあるんだな』ということを聞けるところが、自民党のすごいところだなと。何回か参加してそう思いました。

 ぜひ、そういう中で作られた。ぜひ、今回の憲法の話も、私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない。

 靖国神社の話にしても、静かに参拝すべきなんですよ。騒ぎにするのがおかしいんだって。静かに、お国のために命を投げ出してくれた人に対して、敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かに、きちっとお参りすればいい。

 何も、戦争に負けた日だけ行くことはない。いろんな日がある。大祭の日だってある。8月15日だけに限っていくから、また話が込み入る。日露戦争に勝った日でも行けって。といったおかげで、えらい物議をかもしたこともありますが。

 僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか。

 昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。

 わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。ぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めてほしくない。

       

菅義偉官房長官は30日の記者会見で「麻生氏自身が機会を捉えて説明すると思う」と述べるにとどめた。

 

 民進党の山井和則国対委員長は30日、「ヒトラーはいくら動機が正しくても駄目だ」と述べた麻生太郎副総理兼財務相の発言について、「ヒトラーを少しは評価していると受け取られかねない大失言。猛省を促したい」と批判。「こういうことが続くようでは国際的に通用する財務相として極めて恥ずかしいし、適性を疑わざるを得ない」と語った。

 

社民党の又市征治幹事長は30日、談話を発表し、「ヒトラーはいくら動機が正しくても駄目だ」と発言し、後に撤回した麻生太郎副総理兼財務相に対し、議員辞職を求めた。「ナチス・ドイツの独裁者をひきあいに政治家の心構えを説くのは言語道断であり、断じて許されない。撤回では済まされない妄言だ」と批判している。

 

 日本共産党の志位和夫委員長は31日、麻生太郎副総理兼財務相がナチス・ドイツの独裁者ヒトラーを引き合いに「いくら動機が正しくてもだめだ」と発言した問題について、「撤回ですませられる問題ではない」と批判し、「安倍首相に罷免を求める」と表明した。

 志位氏は、麻生氏の発言が、「(ナチスの)手口に学んだらどうか」という暴言に続き、2度目であることを指摘。「こうした発言が繰り返されたことは、麻生太郎氏という政治家が、ヒトラーに対するあるシンパシーをいだいていることを、否定しがたい形で明らかにした」と批判したうえで、「『撤回』したというが、弁明会見でも反省はまったくない。ヒトラーは反ユダヤ主義を掲げて政治家としての一歩を踏み出した。『動機』が邪悪だったからこそ『ホロコースト』(ユダヤ人大虐殺)という残虐な結果が引き起こされた。(麻生氏は)そのことをまったくわかっていない」と指摘した。

 さらに志位氏は、「第2次世界大戦後の国際秩序は、日独伊の軍国主義・ファシズムに対する断罪の上に成り立っている。それを否定するような人物に閣僚の資格はない。ヨーロッパでもおよそ通用しない。安倍首相に罷免を求める」と強調した。

 

「ヒトラー発言」影響か? 麻生副総理の訪米が突然中止に

 

「日米経済対話」の事前協議として8月4日に、麻生副総理が訪米し、ペンス副大統領と会談する予定だったが、急に中止となった。

 9月1日午前の記者会見で麻生副総理が明らかにした。弾道ミサイル発射を続ける北朝鮮情勢への対応を優先した日本側の判断と説明している。安倍晋三首相と河野太郎外相は6〜7日にロシアを訪問するため、6日は首相と副総理が2人とも日本に不在の可能性があった。

 

麻生副総理兼財務相の妄言を断固糾弾する(談話)

社会民主党幹事長 又市征治

 1.麻生太郎副総理兼財務相は昨日、自民党麻生派の研修会で講演し、「動機は問わない。結果が大事だ。何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくても駄目だ」、「確たる結果を残して初めて、名政治家だったと。人が良いだけでできる仕事ではないと、皆さんもよく分かっている」などと述べた。ナチス・ドイツの独裁者をひきあいに政治家の心構えを説くのは言語道断であり、断じて許されない。麻生氏は本日、「ヒトラーを例示としてあげたことは不適切であり撤回したい」とのコメントを出したが、撤回ではすまされない妄言である。

 2.麻生氏は、ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺について、「動機は正しい」というが、アーリア人優位の人種差別主義およびユダヤ人排斥・絶滅政策は正しかったが、その手法が駄目だったとでもいうのか。ドイツやフランス、イスラエルでは、ホロコーストを否定し、ナチスを支持するような一切の発言や表現は法的に規制されている。麻生氏のドイツの「負の歴史」に関する無理解にあきれるばかりである。国際的にも問題を生じさせかねない。

 3.また、麻生氏は、「国民に確たる結果を残して初めて名政治家だったと言われる。人がいいだけでやれるような職業じゃない」とも語ったが、ユダヤ人大虐殺や第2次世界大戦を「確たる結果」とし、ヒトラーを「名政治家」だったとするのは全く理解できない。人種差別や大虐殺、戦争は、政治に携わる者として断じてあってはならないことと深く胸に刻む必要がある。

 4.麻生氏は2013年にも、憲法改正について、ナチス・ドイツを引き合いに出し、「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」などと発言している。麻生氏の度重なる暴言・妄言の背景には、国民の声を無視し暴走を続けるアベ政治そのものの体質がある。社民党は、暴言・妄言を繰り返す麻生氏を断固糾弾するとともに、麻生氏の閣僚および議員の職を辞するよう強く求める。

 

 

麻生太郎氏また失言…精神障害者に差別的な表現

 

 「ヒトラー発言」で批判を浴び、撤回したばかりの麻生太郎副総理兼財務相が2日、再び、「失言」した。愛媛県西条市での講演で、祭りに打ち込む人を表現した際、精神障害者に対する差別的な表現を使った。

 

差別的な表現が飛び出した講演は、今後の安倍政権の行方を占うトリプル衆院補選(10月10日告示、10月22日投開票)の1つ、衆院愛媛3区補選の応援の一環で行ったものだ。

 

麻生氏の応援で訪れた愛媛県西条市での講演で、熱心に祭りに参加する人を「(精神障害者に対する差別的な言葉の)きちがいみたいな人ばかりだ」と述べ、精神障害者を差別する表現を使った。補選は祭りと時期が重なり、麻生氏は「ここでは今から国民体育大会(愛顔(えがお)つなぐえひめ国体)があり、その後お祭りもある。ここのお祭り大変だ。そういった時に選挙なんてやれる。選挙を一生懸命やっている人はお祭りを一生懸命やっている人。選挙どころではない。俺のとこ(の選挙区(福岡8区=飯塚市・直方市・中間市・遠賀郡等)の祭り)は7月14日だけど、この時になったら、ほとんどきちがいみたいな人ばっかりだ」と語った。

麻生氏は講演後、記者団から指摘され、「不適切でした」と述べた。

 

麻生氏は3日、愛媛県新居浜市で記者団前日の講演で祭りの参加者を「きちがいみたいな人ばかりだ」と精神障害者を差別する表現を使ったことについて、「私たちの地元では、みんなよく『祭りきちがい』というに、表現をする。祭りの例の中での話だった」と釈明。「表現は適切ではなかった」として撤回した。

 

衆院愛媛3区(新居浜市・西条市・四国中央市等)補選は、麻生派に所属していた白石徹氏の死去に伴う補選。同氏の次男の寛樹氏が自民党公認候補として出馬する。

 

注;きちがい=気違い、気狂い。「常軌を逸した変な人」「行動や言動が他の者と大きく異なる人」「異常者」などを意味する蔑称の一種。多くの報道機関において放送禁止用語に指定されている。「気が狂う」の類義語にあたり、「頭おかしい」の意味になる。

 

 

講演する麻生太郎副総理=2日午後、愛媛県西条市 / 新居浜太鼓祭り

 

 

「警察か防衛出動か射殺か」 武装難民対策

 

 

講演する麻生太郎副総理=23日、宇都宮市

 

 麻生太郎副総理は2017年9月23日、宇都宮市内での講演で、朝鮮半島から大量の難民が日本に押し寄せる可能性に触れたうえで、「武装難民かもしれない。警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか。真剣に考えなければならない」と語った。

 

 麻生氏は、北朝鮮有事について「今の時代、結構やばくなった時のことを考えておかないと」と指摘。「難民が船に乗って新潟、山形、青森の方には間違いなく漂着する。不法入国で10万人単位。どこに収容するのか」と強調した。その上で「対応を考えるのは政治の仕事だ。遠い話ではない」と述べたうえで、シリアやイラクの難民の事例を挙げ、「向こうから日本に難民が押し寄せてくる。動力のないボートだって潮流に乗って間違いなく漂着する。10万人単位をどこに収容するのか」と指摘。さらに「向こうは武装しているかもしれない」としたうえで「防衛出動」に言及した。

 

 防衛出動は、自衛隊法により、日本が外国から武力攻撃を受けるか、武力攻撃の明白な危険が切迫している「武力攻撃事態」などの場合に認められており、難民に対する発動は想定していない。

 

防衛出動=外部からの武力攻撃に際して日本を防衛するために、自衛隊が内閣総理大臣の命令に基づいて出動すること(自衛隊法76条)。内閣総理大臣が出動を命ずるためには、事前に安全保障会議と閣議に諮ったうえで、国会の承認を得なければならない。ただし、緊急の場合は、国会の承認を事後にただちに得ることを条件として、出動を命じうる。防衛出動時には、自衛隊は必要な武力を行使することができる(同法88条)。また、自衛官は、定年、任用期間を延長され、予備自衛官は防衛招集を受ける(同法45条・70条)。さらに、自衛隊の任務遂行上必要ある場合には、物資の収用、業務従事命令等が発せられうる(同法103条)。防衛出動発令下では、自衛官の離隊・抗命などは7年以下の懲役または禁錮(きんこ)に処せられる(同法123条)。なお、防衛出動は、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められる場合にも発令されうるので、濫用の危険性も指摘されている。

 一種の軍事行動と解されるが、戦時国際法上の宣戦布告には該当せず、自衛権を行使することはできても、交戦権は認められない。

 防衛出動以外の自衛隊の行動と防衛出動の大きな違いは、「武力の行使」にある。防衛出動時には、自衛隊法88条に基づき、出動自衛隊は「わが国を防衛するため、必要な武力を行使」することができる。

 なお、日本国憲法下において過去に防衛出動が行われたことはこれまで一度もない。

 

自衛隊法76条(防衛出動)

 内閣総理大臣は、次に掲げる事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 (平成15年法律第79号)第9条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。

一  我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態

二  我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態

2  内閣総理大臣は、出動の必要がなくなつたときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない。

 

 

 

 安倍内閣は11月14日の閣議で、麻生太郎副総理兼財務相が朝鮮半島有事の際に武装難民が日本に押し寄せる可能性に言及したうえで「警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか」などと発言したことについて、「有事の際に想定され得る様々な自体について、聴衆の問題意識を喚起する趣旨からなされたものと承知している」との答弁書を決定した。立憲民主党の初鹿明博衆院議員の質問主意書に答えた。

 

麻生氏発言「大変遺憾」=「国粋主義的認識」と批判―韓国

 

麻生氏の発言に対して、韓国外務省報道官は9月26日、「難民保護に関する国際規範にそぐわず、大変遺憾に思う」とする論評を出した。

 論評は麻生氏の発言について、「北朝鮮難民に関連し、偏狭な発言をしたのは国粋主義的認識に基づいたもの」と批判。緊迫する朝鮮半島情勢に関し、「不要な誤解を与え、半島の平和と安全にマイナスの影響を及ぼす発言」を自制するよう求めている。 

 

自民大勝「北朝鮮のおかげ」 麻生副総理、パーティーで発言

 

 麻生太郎副総理は2017年10月26日夜、衆院選の自民党大勝に関して「明らかに北朝鮮のおかげもありましょうし、いろんな方々がいろんな意識をお持ちになられたんだろう。特に日本海側で遊説をしていると、つくづくそう思った」と語った。北朝鮮情勢が緊迫する中での衆院解散に批判があっただけに、野党からは「おかげ」発言への批判が出ている。

 

 麻生氏は、27日の閣議後会見で、26日の東京都内の会合で自民党が大勝した先の衆院選結果に関し「明らかに北朝鮮のおかげもある」とあいさつしたとされることについて、「記憶がない」と述べた。麻生氏は北朝鮮に関して発言をしたことは認めながらも、「北朝鮮からの度重なるミサイル発射や核実験に対応するのは、どのような政府が良いのかということを国民が考えて選んだ要素がある」と発言の趣旨を説明した。

 

 立憲民主党の長妻昭代表代行は同日午前、記者団に「とんでもない発言」として国会で追及する考えを示した。

 

希望の党の玉木雄一郎衆院議員も「不謹慎だ。副総理の発言としていかがなものか」と述べた。

 

「読む人の気知れない」 新聞報道巡り麻生氏

 

 麻生太郎副総理・財務相は2017年12月14日、自民党の金田勝年前法相のパーティーで、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法を巡る報道を取り上げ「議論している時はぼろかすにたたき、今ごろになって『やっておいて良かった』という。そういう新聞にお金を払って読んでいる人の気が知れない」と述べた。

 

麻生氏は具体的な新聞名は上げず、報道内容の説明もしなかった。

 

同法は先の通常国会で、与党が参院委員会採決を省き、本会議採決を強行して成立。法相だった金田氏は不安定な答弁を批判された。麻生氏は金田氏について「答弁を多分2000回ぐらいやった結果、ごちゃごちゃしたあの法案は通った。もうちょっと評価されてしかるべきだ」と述べた。

 

 

<麻生氏の過去の主な失言>

 

2008年9月14日

(8月末の豪雨で甚大な被害が出た岡崎市と隣の安城市も名指した)「(岡崎の豪雨は1時間に140ミリだった)安城や岡崎だったからいいけど、名古屋で同じことが起きたら、この辺全部洪水よ」(自民党幹事長時代、JR名古屋駅前での総裁選立候補者による街頭演説で)

両市と岡崎市議会は抗議文を送り、両市の市民からは「被災者感情を分かっていない」など怒りの声があがった。

麻生事務所、岡崎、安城市におわび文を16日午前に投函(とうかん)。災害に関するお見舞いに続いて「(麻生幹事長)本人の不用意な発言で、岡崎、安城市の皆さまに大変不快を抱かせたことについて心からおわび申し上げます」との内容とだったが、失言の理由については触れていない。

11月19日

「自分で病院を経営している(福岡県飯塚市の株式会社麻生飯塚病院)から言うわけではないが、医者の確保はたいへんだ。(医師には)社会的常識がかなり欠落している人が多い。うちで何百人と扱っているからよくわかる」と地方の医師不足の原因をもっぱら医師側の「常識の欠落」に求めた。

さらに「正直これだけ(医師不足が)はげしくなれば、責任はお宅ら、お医者さんの話ではないのか。しかも、お医者さんを『減らせ減らせ、多すぎだ』と言ったのはどなたでしたか」と過去の医師会の立場を批判した(首相時代、全国都道府県知事会議で)。

2013年7月29日

(靖国神社参拝などが騒がれることについて「もっと静かに(気づかれないように)やろう」ということの例に)「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうかね」(副総理兼財務相時代、東京都内の講演で)

隣諸国や野党、人権問題の活動家などから、猛烈な抗議を受け、8月1日の記者会見の席で、麻生氏は自分が誤解されていると語り、第2次世界大戦後に制定された現憲法の改正論議が「喧騒にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪しき例」とならないように、というのが自分の真意だと語ったうえで、「ナチス政権に関する発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。」とし「意見を撤回したい」と語った。

2016年6月17日

「お金を何に使うかをぜひ考えてほしい。金は使わなきゃ何の意味もない。さらにためてどうするんです?」「90歳になって老後が心配とか言っている人がテレビに出ていたけど、『お前いつまで生きているつもりだ』と思いながら見ていた」(同、北海道小樽市の講演で)

民進党の岡田克也代表は、「国は年金や医療、介護制度で、高齢者の不安に応えなければならない。私は非常に怒っている」と、共産党の志位和夫委員長は、「人間の尊厳をどう考えているのか。血も涙もない」と批判した。

2017年6月24日

「(秘書への暴行が問題になった埼玉4区選出の豊田真由子衆院議員は)学歴だけ見たら一点の非もつけようのないほど立派だったけど。あれ女性ですよ女性」。(豊田氏が議員になる前に勤めていた厚生労働省の関係者の話として)「どこかで引き取ってくれないかと思ったら永田町で引き取ってもらったんですよと(言われた)」と語った。また、豊田氏を含め不祥事が続出する自民党の衆院当選2回議員(魔の2回生)に関しては「(初当選した2012年衆院選で)119人もの新人が通りましたから、こりゃいろいろいるんです」と指摘(新潟県新発田(しばた)市で開かれた自民党麻生派議員会合で講演で)。

 民進党の蓮舫代表は同日のツイッターに「国会が閉じると言いたい放題です。『あれ女性です』とはどういうことか。その前にまず謝罪ではないのか」と書き込んだ。

 

 

推敲と杜撰(2017年11月6日配信『北海道新聞』−「卓上四季」)

 

唐の詩人、賈島(かとう)がロバで道を行く途中、「僧は推(お)す月下の門」という詩句を思いついた。さて、「推す」がいいか、いや、「敲(たた)く」がいいか―。夢中で考えているうちに大文豪、韓愈(かんゆ)の行列に突き当たり、「敲く」がよいと教えられた(大修館書店「社会人のための漢詩漢文小百科」)

▼学生時代に習った方も多かろう。「推敲(すいこう)」の語源となった故事である。言葉の一つ一つを大切にしたことがよく分かる

▼それに比べると、詩との違いは大きいとはいえ、いかにも軽い。昨今の一部政治家の発言だ。失態を覆い隠そうと「自虐ネタ」に置き換えた末に墓穴を掘ったり、深く考えないまま口にして批判を浴びたり

▼身内でそれをかばう向きも。自民党の二階俊博幹事長は、衆院選での自民党大勝を「北朝鮮のおかげ」と言い放った麻生太郎副総理の発言を「ジョーク」と取り繕った。ジョークと言うほど気の利いた発言には聞こえないが

▼影響力ある政治家の一言が局面を大きく変えた例は少なくない。麻生氏のおじいさん、吉田茂元首相の「バカヤロー」発言しかり。最近では小池百合子東京都知事の「排除いたします」か

▼前掲書の「推敲」と同じページには「杜撰(ずさん)」も載っていた。北宋の詩人、杜黙(ともく)が撰(せん)した(作った)詩に規則外れが多かったのが語源とか。政治家には自らの影響力を自覚し、杜撰ではなく言葉を吟味した発言をお願いしたい

 

(2017年11月6日配信『南日本新聞』−「南風録」)

 

晩秋や初冬の天気は人生の晩年に似ていると、亡き気象エッセイスト倉嶋厚さんが書いている。時雨、木枯らし、小春日和を繰り返す時期だ。こうしたリズムを刻みながら、厳しい冬に向かうことを人の一生になぞらえたのだろう。

 先の衆院選では、朝鮮半島から吹いてくる風が注目された。韓国でいう「北風」である。核・ミサイル開発を進める北朝鮮絡みの動きが選挙戦に影響を与える現象をこう呼ぶそうだ。

 「北風」は安全保障意識を刺激するために、保守政党に有利に働くとされている。安倍晋三首相にもこうした計算があったのかもしれない。選挙中は北朝鮮の脅威を「国難」と強調した。

 果たして自民党の大勝後、麻生太郎副総理兼財務相が「明らかに北朝鮮のおかげもありましょう」と述べた。すぐに「国民が危機に対応できる政府として(自民党)を選んだ」と釈明したが、あからさまな本音が出たのではないか。

 北朝鮮がミサイルを飛ばす度に支持が増えると告白したも同然だろう。ノンフィクション作家の保阪正康さんは「危機感をあおった成功体験により、今後は危機的な状況が意図的に作り出されるのではないか」と指摘する。

 そうなればいつか来た道だ。時の政権が北朝鮮問題を声高に叫び始めたら、何らかの政略が潜んでいるかもしれない。北朝鮮の動向はもちろん「北風」の政治利用にも目を凝らしたい。

 

北風の効用?(2017年10月29日配信『朝日新聞』−「天声人語」)

 

 愚かという意味のほかに、程度が極端な場合にも使われるのが「ばか」という言葉である。「ばか力」や「ばか笑い」などがその手の用法だ。常識を外れたという語感もある。「ばか正直」も代表的な例である

▼こちらの発言も、かなりの正直ぶりと受け止めた。総選挙から4日後、麻生太郎副総理兼財務相が自民党が大勝した理由について、こう口にした。「明らかに北朝鮮のおかげもありましょうし、いろんな方々がいろんな意識をお持ちになられたんだろう」

▼北朝鮮情勢の切迫を歓迎し、利用したとしか聞こえない。まるで手品の種明かしのような……と言いたくなるが、そのやり口は見え見えであった。なにしろ解散を決めた安倍晋三首相がつけた名前が「国難突破解散」という大仰さなのだから

▼首相は選挙に向けた演説でも、北朝鮮への圧力を強めると訴えることが多かった。麻生氏も北朝鮮で軍事紛争などが起きた場合を想定して、「大量の難民を覚悟しなきゃならない」「武装難民かもしれない」と語っていた

▼韓国の政界でよく使われる言葉に、「北風」がある。国内の政治を左右する北朝鮮がらみの風という意味だ。1992年には、大統領選挙が迫るなかで北朝鮮のスパイ網が摘発されたことがあった。保守系の金泳三(キムヨンサム)氏が当選する助けになったと言われている

▼存在する危機を受け止めて対処することと、あおり立てることは、似て非なるものである。北風の利用が、日本の政界に定着しないことを祈りたい。

 

「見ざる、言わざる、聞かざる」で知られる日光東照宮の三猿…(2017年9月6日配信『西日本新聞』−「社説」)

 

 「見ざる、言わざる、聞かざる」で知られる日光東照宮の三猿。約40年ぶりに塗り直されて、以前より目がパッチリと。「言わざる」の目の幅は3割も大きくなった。昔の姿に近づけたそうだが、印象が変わってしまい残念だ、との声も

▼三猿は、悪いことを「見ない」「言わない」「聞かない」という教えを表す。この「言わざる」の戒めを守れぬ人が多い永田町である。政治家の失言が後を絶たない

▼麻生太郎副総理兼財務相がまたも。祭りに一生懸命になる人を指して、ここに書くのもはばかられる、精神障害者に対する差別的な言葉を使った

▼麻生氏は先日「何百万人も殺したヒトラーは、いくら動機が正しくても駄目だ」と発言し撤回したばかり。以前は、ナチス政権時代の話題で「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。あの手口を学んだらどうか」と述べ、批判を浴びた

▼ナチス、ヒトラー擁護に聞こえる発言は民主国家の政治家にとってタブー。まして障害者を傷つけるような言葉など論外だ。首相を経験し、現政権の要でもある重鎮ならば、模範となって当然で、誤解を招く軽口は厳に慎むべきであろう。何を言っても撤回すれば済むと考えているのなら、これほど国民をばかにした話もない

▼九州選出の政治家だけに、なおさら残念だ。自身の言葉が世の中にどう受け止められるか、目をパッチリと開き、耳を澄ませてほしい。

 

言う人、言わない人(2017年9月4日配信『愛媛新聞』−「地軸」)

 

 風の色が一変し、緑陰に入ればひんやり心地よい秋の到来。 だが近ごろは、ひんやりを通り越してぞくりと寒気も

▲祭りの参加者は「気違いみたいな人ばかり」―失言の人・麻生太郎副総理兼財務相が、西条市の講演で信じ難い差別的表現を口にした。すぐ撤回したが、発した言葉は消せない

▲先週「何百万人を殺したヒトラーは、いくら動機が正しくても駄目」と発言、撤回したばかり。4年前は改憲問題でナチス政権を引き合いに「手口を学んだらどうか」と言い放った。政治家は「言葉の人」。なぜ不穏な言葉が漏れ出るのか、本音を想像すればさまつなこと、とは到底思えない

▲逆に「言わない言葉」が雄弁にその人を物語ることも。安倍晋三首相は全国戦没者追悼式で5年続けて「不戦の誓い」の文言を外した。小池百合子都知事は、関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付をやめ、虐殺の有無を問われても「さまざまな見方がある」「歴史家がひもとくこと」と頑として認めない

▲震災直後、数千人が軍や自警団などに殺された事件は、国も報告書で認める「負の歴史」。なかったことにしようとするなら、差別容認にもつながる

▲ついには自民党の竹下亘総務会長が、北朝鮮のミサイル発射計画を巡り「広島はまだ人口がいるが、島根に落ちても何の意味もない」と述べた。「言う人」の恐ろしさ、「言わない人」の冷酷。今年の秋は心までしんと冷え渡る。

 

麻生氏ヒトラー発言 撤回して済む話ではない(2017年9月2日配信『琉球新報』−「社説」)

 

 政治家の劣化を露呈した。発言を撤回して済む話ではない。

 麻生太郎副総理兼財務相が、横浜市で開いた麻生派研修会の講演で「(政治家を志した)動機は問わない。結果が大事だ。何百万人を殺したヒトラーは、いくら動機が正しくても駄目だ」と述べた。

 ナチス・ドイツの独裁者を擁護しているとも受け取られかねない。閣僚としてだけでなく政治家としての適性を疑う。かつて首相を務めたこともある人物だけに影響は大きい。麻生氏は直ちに議員辞職すべきだ。安倍晋三首相の任命責任も問われる。

 麻生氏は「例示として挙げたことは不適切であり撤回したい」として発言を撤回するコメントを発表した。しかし今回の発言が、うっかり失言したとは考えにくい。

 麻生氏は4年前もドイツのナチス政権時代に言及して「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気が付かない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」と発言して批判を浴び、撤回した経緯があるからだ。

 ヒトラーが持っている反ユダヤ主義という動機が、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を引き起こしたことは歴史的事実だ。

 ヒトラーの人種思想によると、最高・最良の人種はアーリア人種とされる。アーリア人種の中でゲルマン人、とりわけドイツ人には特別の価値があるとした。これに対して「ユダヤ人は価値の低い人種であるのみならず、アーリア人種の壊滅を目的としている『敵対人種』。アーリア人に敵対しているのだから徹底的に抹殺されねばならない」(「ナチス・ドキュメント」)という、完全に倒錯した人種差別の発想である。

 麻生氏発言は、後に撤回したものの反ユダヤ主義という「動機」は正しかったと言っているのに等しいのである。

 麻生氏は「私の言った真意と異なった話が伝えられているのでこういう騒ぎになった」と不満をにじませた。

 話をすり替えてはならない。騒ぎになったのは誤った発言をしたからである。本当は反省していないが、騒ぎになったから発言を撤回したのだろうか。

 おそらく欧米でこのような発言をすれば、発言撤回だけでは済まないだろう。

 米国では、人種差別によって社会が分断されている。バージニア州で開かれた白人至上主義団体の集会で、反対した市民との衝突で死傷者が出た。米国第一主義を掲げるトランプ大統領が、双方に非があると発言し、人種差別団体と抗議の市民を同列視するような認識を示した。このため与党からも大統領としての資質が疑われた。

 安倍首相は内閣改造で、資質を不安視された法務相や防衛相などを一掃した。しかし、失言は収まらず今度は副総理だ。小手先の対応では国民は納得しない。

 

麻生副総理「ヒトラー発言」(2017年9月1日配信『福井新聞』−「論説」)

 

止まらぬ安倍政権の劣化

軽率な発言や失言を繰り返す麻生太郎副総理兼財務相がまたもや問題発言だ。批判を浴びると慌てて撤回した。ユダヤ人を虐殺したナチス・ドイツの独裁者ヒトラーを例示して「動機」は正しかったと受け取られかねない内容である。

 安倍政権の重鎮であり続ける元首相の資質が問われて久しいが、閣僚の失言、舌禍が相次ぐ政権は国民の信任を失いつつある。すべては任命責任を負う安倍晋三首相の政治体質に起因するのではないか、そう思わざるを得ない。

 麻生氏は先月29日、横浜市で開いた自身の麻生派研修会で講演。「少なくとも(政治家を志した)動機は問わない。結果が大事だ。何百万人も殺したヒトラーは、いくら動機が正しくても駄目だ」と述べた。

 政治家の心得を指南した発言だが、よほどヒトラーに関心があるのか、2013年7月の都内講演でも「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気がつかなかった。あの手口を学んだらどうかね」と発言し国際問題に発展した。

 注目すべきはこれが憲法改正に関する発言だったことである。改憲議論の重要性を強調するため、あしき例として引き合いに出したと言うのだが、まるで改憲の重さを理解していない。国民主権に関わる問題だ。

 今回の発言もうなずけない。果たして政治家を志すのに「動機」はどうでもよく「結果」だけが大義なのか、人格を疑う。

 麻生氏は発言を「不適切だった」として撤回したものの、「真意とは異なった話に伝えられている」と釈明した。反省はなく「(講演で)ヒトラーをほめたように聞こえた人はいない」と反論してみせた。

 この発言は一種のメディア攻撃にも聞こえる。程度こそ違え、トランプ米大統領がフェイクニュース(偽報道)とメディアたたきを繰り返すのと似ている。

 おそらく、発言撤回は官邸の意向だろう。近くペンス米副大統領らとの面会が予定され、訪米直前の火種になることを懸念したとみられる。また進退問題に発展すれば、支持率回復に躍起の安倍政権にとって大きな痛手、長期政権戦略にも影響してくるからだ。

 「驕(おご)る安倍政権、止まらぬ閣僚失言」―こんな見出しが何度も新聞紙上に躍った。立て直しを図った内閣改造でも江崎鉄磨沖縄北方担当相が「素人は素人」「しっかりお役所の原稿を読む」と臆面もなく述べた。弱点が噴き出す構図は何ら変わらない。

 この頂点に安倍首相がいる。国会では野党議員に「早く質問しろよ」とやじを飛ばし、街頭では都議選で抗議を続ける一団を「こんな人たち」と批判した。

 森友、加計学園問題では官邸政治の在り方に疑惑が及んだ。麻生氏はじめ都合の良い人材を囲い込む中で露出するのは、保身と排外主義的な言動である。政権最大の政治リスクは安倍首相そのものではないか。もうこれ以上、政治を劣化させてはならない。

 

麻生氏失言 副総理の自覚を問いたい(2017年9月1日配信『西日本新聞』−「社説」)

 

 撤回すれば済む話ではない。ヒトラーを評価しているとも受け取られかねない麻生太郎副総理兼財務相の発言である。

 問題の発言は3日前に横浜市で開いた自身が率いる自民党麻生派研修会の講演で飛び出した。

 「(政治家を目指した)動機は問わない。結果を出してもらわないといけない。何百万人も殺しちゃったヒトラーはいくら動機が正しくても駄目なんだ」

 ファシズム政党のナチスを組織して第2次世界大戦を引き起こし、数百万人といわれるユダヤ人の大量虐殺に及んだ独裁者のヒトラーに、果たして「正しい動機」などあったのだろうか。

 欧米では戦後72年たった今もヒトラーやナチスは厳しい批判の対象だ。一方、米国で起きた白人至上主義団体と反対派の衝突で、反対派に車で突入した容疑者はヒトラー崇拝者だったとされるなど「ナチスの亡霊」に苦しんでいる。

 こうしたことを首相や外相など要職を歴任し留学経験もある麻生氏が知らないはずはない。なぜ、こんな発言をしてしまうのか。

 麻生氏はその翌日、「あしき政治家の例として挙げた。真意と異なり、誤解を招いたことは遺憾だ」とするコメントを発表し、前日の発言を撤回した。

 麻生氏は2013年にも、憲法改正に絡み「ある日気付いたら、(民主的とされた)ワイマール憲法がナチス憲法に変わっていた。あの手口を学んだらどうかね」と発言して、国内外から批判を浴びて撤回したことがある。

 失言を繰り返す麻生氏は、どんな乱暴な発言も撤回すれば済むと勘違いしてはいないか。

 政治家がいったん口にした言葉は人の心から消えない。撤回しても波紋を広げる。その重みや痛みを衆院当選12回の麻生氏はまだ分からないのだろうか。

 閣僚から若手議員まで問題発言が後を絶たない。範を示す立場の副総理まで失言とはあきれてしまう。こうした言動が国民の政治不信を深めている。全ての政治家はその職責を改めて自覚すべきだ。

 [麻生副総理] 適性を疑う軽率な発言(2017年9月1日配信『南日本新聞』−「社説」)

 

 政権ナンバー2の発言として、到底見過ごすことはできない。

 麻生太郎副総理兼財務相が、「(政治家を志した)動機は問わない。結果が大事だ。何百万人を殺したヒトラーは、いくら動機が正しくても駄目だ」と述べた。

 ヒトラーはユダヤ人虐殺(ホロコースト)など人類史に残る残虐行為で知られるナチス・ドイツの独裁者だ。その「動機」を肯定したと受け取られても仕方のない発言である。

 翌日、不適切だったとして発言を撤回したものの、それで済む話ではない。国際的な批判も招く恐れがある。

 ナチスを引き合いにした発言が問題になるのは、麻生氏が安倍政権の重鎮として副総理兼財務相に就任してから2度目だ。

 2013年7月に、憲法改正に絡み「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。(ナチスの)あの手口を学んだらどうか」と発言した。ユダヤ系団体をはじめ海外から批判の声が相次ぎ、政府は沈静化に追われた。

 同じ過ちを繰り返すのは、反省のない証拠ではないのか。ナチスを信奉しているのではないかと疑われるような軽率な発言に、閣僚の適性を疑わざるを得ない。

 今回の発言は麻生派の研修会で出た。釈明で麻生氏は、「ヒトラーは動機においても誤っていたことも明らかだ」「あしき政治家の例として挙げた」とする一方で、「(例示以外の発言は)撤回するつもりはない」とも述べた。

 釈明を聞いても、ヒトラーを持ち出す必然性は理解できない。

 ヒトラーは不況や対外危機で閉塞(へいそく)感の漂う1930年代のドイツで極端な民族主義を訴えて台頭し、民族浄化と称して人種差別や障害者差別を推進した。

 迫害や侵略戦争による犠牲者を思えば、ナチスの理念や政策に安易に言及するのは禁物だ。特に政治家がナチスやヒトラーに触れるなら、歴史認識への疑義を招かないよう細心の注意を払うのは国際的な常識といえよう。

 もちろん思想、信条の自由や言論、表現の自由は日本国憲法で認められている。

 だが、政治家は自らの発言が引き起こす結果に責任を持たなければならない。麻生氏の発言が日本の国際的な信頼を傷つけたことは明らかだ。

 安倍第3次改造内閣は「結果本位の仕事人内閣」を掲げて先月発足した。首相経験のあるベテラン閣僚の不用意な発言の責任は極めて重い。失言と撤回、謝罪の繰り返しで国民をこれ以上失望させてはならない。

 

麻生副総理の発言(2017年9月1日配信『しんぶん赤旗』−「主張」)

 

国際社会に通用しない暴言だ

 安倍晋三内閣の副総理・財務相でかつて首相や外相も経験した麻生太郎氏が、8月29日の自らの派閥研修会で「(政治は)結果が大事だ。何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくてもだめだ」と発言し、ヒトラーの「動機」を評価するのかと批判を浴び、撤回しました。ヒトラーとはいうまでもなく戦前のドイツでナチスを率い独裁政治を行い、ユダヤ人などの大虐殺(ホロコースト)や周辺国への侵略で第2次世界大戦を引き起こした人物です。結果は批判しても「動機」を評価するようでは国際社会に通用しません。

繰り返し「動機」正しいと

 麻生氏は派閥研修会翌日の30日になって発言を撤回するにあたり、「ヒトラーは動機についても誤っていた」などと言い訳しています。しかし麻生氏の弁解は言葉通り受け取れません。麻生氏は当初の講演で、「いくら動機が正しくても、何百万人も殺しちゃったヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくてもだめなんですよ」と2回も「動機」が正しかったと発言しており、翌日になって突然その「動機」が間違っていたと言い出しても、全くつじつまが合いません。

 もともと戦後長く首相の座にあった吉田茂首相の孫にあたり、自らも首相などの政治経歴を持つ麻生氏が、ヒトラーを評価するような発言をすれば、国内はもとより国際的にも孤立化を招くことは百も承知のはずです。にもかかわらず麻生氏は今回だけでなく2013年にもヒトラーに言及して批判を受けており、麻生氏のヒトラーに対する肯定的な評価は根っからのものという以外にありません。

 麻生氏は13年の講演で「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に代わった。誰も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうかね」と発言しました。発言自体は12年末に政権に復帰した安倍政権に改憲をけしかける意図だったとみられますが、戦前のナチスの独裁は、「誰も気が付かないうちに」ワイマール憲法がナチス憲法に変わったものではありません。ヒトラーがナチスを動員し、ワイマール憲法のもとで当時の大統領や議会に圧力をかけ、「緊急事態令」や「全権委任法」などを乱発して、暴力的に憲法を停止させたのが実態です。「ナチス憲法」などというものは存在しません。

 麻生氏は30日になって発言を撤回した際にも「ナチスは民主主義のルールにのっとって選ばれた政権だ」などとのべています。麻生氏は当時のナチスが選挙結果だけでは議席が足りず、国会から共産党議員などを締め出すために、国会議事堂放火事件をでっち上げたことにさえ目をつむるのか。麻生氏のナチスの「動機」発言は口先で取り消したり言い逃れたりしても許されない、根の深いものというほかありません。

政権全体の責任問われる

 繰り返される麻生氏の暴言に対し、閣僚の任命権者である安倍首相がとがめだてせず、菅義偉官房長官も「副総理が説明する」(30日)と全く問題にしようとする姿勢がありません。もともと日本の侵略戦争を肯定・美化してきた安倍政権の姿勢が、麻生氏の発言の背景にあるのは明らかです。

 安倍首相は麻生氏を罷免し責任を明確にすべきです。さもなければ首相を含め安倍政権の姿勢が国内外で問われることになります。

 

麻生副総理 あまりにも言葉が軽い(2017年8月31日配信『朝日新聞』−「社説」)

 

 首相や外相を歴任した政治家として、あまりにも軽すぎる発言である。

 麻生副総理兼財務相がおととい、自らの自民党派閥の研修会でこう語った。

 「(政治家になる)動機は私は問わない。結果が大事だ。いくら動機が正しくても、何百万人も殺しちゃったヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくてもダメなんですよ」

 何が言いたいのかよくわからないが、ヒトラーが率いたナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)に、正当な動機があったとの考えを示したとも受け取られかねない。

 麻生氏はきのう「ヒトラーを例示としてあげたことは不適切であり撤回したい」とするコメントを出した。「私がヒトラーについて、極めて否定的にとらえていることは発言の全体から明らかであり、ヒトラーは動機においても誤っていたことも明らか」としている。

 理解不能である

 ならばなぜ「動機が正しくても」と2度も繰り返したのか。

 ナチスは強制収容所にユダヤ人を移送し、ガス室などで殺害し、数百万人が犠牲になった。残虐極まる蛮行に正しい動機などありえるはずがない。

 欧米では、ナチスやヒトラーを肯定するような閣僚の発言は直ちに進退問題につながる。安倍政権の重鎮である麻生氏が、このような発言を国内外に発信した責任は重い。

 ナチスを引き合いに出した麻生氏の発言は、今回が初めてではない。

 2013年には憲法改正をめぐり、「ある日気づいたら、ワイマール憲法がナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」と発言。批判を浴びると、「誤解を招く結果となった」と撤回した。

 麻生氏はきのうのコメントでも「私の発言が誤解を招いたことは遺憾だ」と釈明した。

 発言が問題視されると、誤解だとして撤回し、とりあえず批判をかわす。自らの発した言葉への反省は置き去りにし、また過ちを重ねる……。

 麻生氏に限らず、そんな軽々しい政治家の言動を何度、見せつけられてきたことか。

 政治家にとって言葉は命である。人びとを動かすのも、失望させるのも言葉によってだ。

 その言葉がこれほどまでに無神経に使い捨てられている。

 そんなものかと、この状況を見過ごすことは、この国の政治と社会の基盤を掘り崩すことにつながる。

 

麻生副総理の「ヒトラー発言」 撤回して済む話ではない(2017年8月31日配信『毎日新聞』−「社説」)

 

 どうしてこんな発言を繰り返すのか。全く理解できない。

 麻生太郎副総理兼財務相が、ナチス・ドイツの独裁者、ヒトラーの動機は正しかったと受け止められる発言をし、きのう慌てて撤回した。

 だが、「誤解を招いた」と撤回すれば済む問題ではない。なぜ、わざわざ大量虐殺を生んだナチスのヒトラーを持ち出す必要があるのか。まさに麻生氏の動機に疑問を抱く。

 発言は自ら率いる自民党麻生派の研修会で飛び出した。

 「少なくとも(政治家になる)動機は問わない。結果が大事だ。何百万人も殺しちゃったヒトラーは、いくら動機が正しくてもダメなんだ」

 「ヒトラーの動機」とは何を指すかは不明だが、同派所属の議員に政治家としての心得を指南する文脈の中での発言だった。

 批判を受けて麻生氏は「真意と異なる」「あしき政治家の例としてヒトラーをあげた」等々と釈明する撤回コメントを発表した。

 しかし、発言の真意をそう受け取れというのは無理がある。

 麻生氏は2013年にも憲法改正に関し、ナチス政権を引き合いに出したうえで「手口を学んだらどうかね」と語って後に撤回している。その反省はなかったというほかない。

 この発言の際には、ユダヤ系人権団体が批判声明を出すなど国際問題となり、政府は沈静化に追われた。にもかかわらず繰り返すのは、どこかでナチスを評価したがっているのではないかと疑わざるを得ない。

 加えて、政治家になる動機は問わないという発言にも問題がある。最近の「議員の劣化」状況を持ち出すまでもなく、結果だけでなく、政治家を目指す動機も大切だ。

 米国では白人至上主義団体と反対派との対立が続き、人種差別問題が改めて深刻になっている。

 反対派に車で突入して死傷者を出した事件の容疑者はヒトラーの崇拝者だった。そしてトランプ大統領が当初、双方に非があると発言し、批判を浴びたのは記憶に新しい。

 そんな国際的な現状認識が麻生氏にあったようにも思えない。

 日本国内の一部にもナチスを肯定するような言説がある。麻生氏らの姿勢がこうした傾向を助長しているとすれば責任は重大だ。

 

「ナチカル」という言葉がある…(2017年8月31日配信『毎日新聞』−「余禄」)

 

 「ナチカル」という言葉がある。メディア史研究の佐藤卓己(さとう・たくみ)さんの編著書「ヒトラーの呪縛」(中公文庫・上下)が指摘した日本のマンガや映画、ポップスなどが好んで用いるナチスの文化(カルチャー)をいう

▲なるほど親衛隊風の服や、かぎ十字風のマーク、ナチ式敬礼などをインパクトのある意(い)匠(しょう)として利用してきた日本の大衆文化である。ユダヤ人虐殺をはじめナチスのまがまがしい記憶の薄い日本の社会ならではのイメージ消費だろう

▲だが昨年、人気アイドルグループのナチ風コスチュームがネットで世界中に拡散し、ユダヤ系人権団体の批判を受けて謝罪に追い込まれた。今やナチスの所業への認識を欠いたナチカルの国内消費は国際的指弾を覚悟せねばならない

▲こちらはアイドルグループならぬ一国の副総理だ。「(政治は)結果が大事だ。何百万人殺したヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくてもだめだ」。こう語った麻生太郎(あそう・たろう)氏が「ヒトラーは動機も誤っていた」として発言を撤回した

▲ヒトラーの動機が「正しい」とも受け取られる失言だったが、麻生氏は以前も憲法をめぐって「ナチスの手口」に学べと発言して後に撤回している。まさか麻生氏がナチスの支持者とは思わないが、ナチカルマニアなのかもしれない

▲首相も務めた日本の指導的政治家が、ことナチスについて軽率な発言をすればどんな国際的波紋が起こるかを知らないはずがない。失われるのは日本の世界的な信用だ。まことに政治は「結果責任」である。

 

ヒトラーから離れられない麻生(2017年8月31日配信『日刊スポーツ』―「政界地獄耳」)

 

★副総理兼財務相・麻生太郎のヒトラー失言は即座に撤回されたものの、この元首相は、その失言の多さで失脚したも同然。自民党を下野させたにもかかわらず、学習しない。現在は副総理としての資質が、再度問われることになった。

★思えば首相在任中は漢字が読めないとか、失言のオンパレードで、時の官房長官・河村建夫が連日、麻生の失言の言い訳やフォロー、経緯の説明、解説に明け暮れた。前後を省いたり、政治家としてさまざまな立場の人たちを見渡して話すことができず、重大な資質が欠落していると言わざるを得ない。

★いちいち挙げたら切りがないが、麻生のヒトラー賛美は今に始まったことではない。例題にナチスやヒトラーをすぐ出す麻生は、絶えずそこに思いがあるからだろう。ヒトラー礼賛が念頭にない限り、その場の例題には出てこない。今回は29日の自民党麻生派の研修会で出た「(政治家は)結果が大事だ。何百万人殺しちゃったヒトラーは、いくら動機が正しくてもダメなんですよ」の発言だが、思わず出た軽口ととらえることはできない。逆に原稿があるなら、なお問題だ。

★13年7月、麻生が副総理兼財務・金融相時代の講演で、憲法改正について触れ「ドイツのワイマール憲法も、いつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうかね」と発言。08年8月の党幹事長時代には「審議をしないとどうなるか。ドイツでは昔、ナチスに1度(政権を)やらせてみようという話になった」と、すぐに例題に使おうとする確信犯だ。

★30日午前、麻生は「ヒトラーを例示として挙げたことは不適切であり、撤回したい」との文書を発表したが、今後麻生内閣があるとしたら、第三帝国を夢想しているのだろうか。お粗末極まりない。

 

ヒトラー発言に米怒り 麻生副総理は経済対話で大幅譲歩も(2017年8月31日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 訪米直前に「動機は正しかった」と、ヒトラーを称賛した麻生副総理。発言は最悪のタイミングだ。アメリカのユダヤ人権団体サイモン・ウィーゼンタール・センターは、「不快であり失望した」とカンカンになっている。

 さすがに麻生副総理もヤバイと気づいたのだろう。財務省のホームページ上に、ヒトラー発言を撤回するコメントをわざわざ英語で載せている。来週、ペンス副大統領と「日米経済対話」に向けての事前協議を行う麻生副総理は、完全に弱みを握られた形だ。元外交官の天木直人氏はこう言う。

 「もし、アメリカの副大統領が『ミスター麻生とは会いたくない』と会談を拒否したら、麻生発言は世界中で大きなニュースとなり、アメリカの副大統領と会えないとなったら、麻生副総理は辞職せざるを得なくなるでしょう。安倍政権を支えている麻生副総理が引責辞任となれば、安倍内閣も総辞職に追い込まれる可能性が高い。つまり、アメリカは安倍内閣を倒す生殺与奪の権を握ったということです。あのアメリカが、このカードを利用しないはずがない。公式の会談の場では一切触れなくても、非公式の1対1の場面では、ペンス副大統領は<こちらは発言を問題にしてもいいですよ>と恫喝してくるはず。麻生副総理は、日米経済問題で大きな譲歩をせざるを得なくなる可能性が高いと思う」

 「ヒトラー称賛」発言をしたことで、麻生副総理が“ポスト安倍”に就く可能性は完全に消えてなくなった。

「麻生副総理がヒトラー発言をするのは、これで2回目です。アメリカ政治にユダヤ系が大きな影響力を持っているのは周知の事実です。トランプ大統領もイスラエルとは良好な関係です。麻生副総理が首相に返り咲くことは許さないはずです」(天木直人氏)

 弱みを握られた麻生副総理は、来週のペンス副大統領との会談でとんでもない無理難題を押しつけられることになる。

 

「ナチスの手口に学べ」“舌禍”で片付けられない麻生の恐ろしさ」(2013年7月31日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 「ナチスの手法に学べ」――。麻生副総理の発言が波紋を広げている。29日、都内の講演会で憲法改正について語り、「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。あの手口を学んだらどうか。(国民が)騒がないで、納得して変わっている。喧騒の中で決めないで欲しい」と言った。ナチスを参考にしろとは“舌禍男”の麻生らしい言葉だが、単なる失言で片付けるわけにはいかない。

ワイマール憲法は1919年、第1次大戦に敗れたドイツで成立。主権在民や男女平等の自由選挙などをうたった進歩的な内容だった。この憲法を骨抜きにしたのがヒトラー率いるナチスだ。33年、ヒトラー政権が樹立し、「全権委任法」を可決させた。

この法律は内閣が自由に立法権を行使できるというもので、以後、ナチスは他国への侵攻やユダヤ人虐殺などに暴走し、ワイマール憲法は事実上消滅した。麻生の発言は、同じ手法で日本国憲法を改定すればいいという意味に解釈できる。「当時のドイツといまの日本は酷似しています」と言うのは政治評論家の本澤二郎氏だ。「ドイツ人は敗戦で多額の賠償金を取られ、経済が停滞して意気消沈していました。そこに強い国家を標榜するヒトラーが登場。国民の圧倒的な人気を得て政権を掌握し、ナチスの前に立ち向かったのは共産党だけという状況でした。

現在の日本も同じ。長いデフレ不況で気分がふさいでいた国民は詐欺的なアベノミクスに引き付けられ、参院選で自民党を大勝させた。安倍政権を真っ向から批判するのが共産党くらいという点も似ています」。行き着く先は「96条改定→平和憲法破棄」なのだが、いまの日本人はその危うさを理解しているのだろうか。社会学者で作家の岳真也氏が言う。「長引く不景気の中で、日本人はアベノミクスに一筋の光を見いだし、何も考えずに心酔している。

批判精神も希薄になっています。これは為政者にとってすごく好都合な状況。大衆は安倍政権の操り人形みたいなものです」。これぞ安倍―麻生の正体なのだ」。

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