国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例

 

一橋大アウティング訴訟

 

「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」が、2017年12月の国立市議会で可決され、2018年4月1日から施行された。

すべての人が性別にかかわらず、一人がひとりが自分らしく、地域でいきいきと暮らすことができる社会を築くため、市と市民と教育関係者と事業者等のすべての方々が一体となって「女性と男性と多様な性が平等に参画する社会」をめざすための条例である。

 

条例制定の経過

2016年7月14日に「国立市男女平等推進市民委員会」に条例の策定について諮問し、計10回の市民委員会を開催。この間、20176年5月1日から21日までの期間に、広く市民の意見を募るためにパブリックコメントを行うとともに、市内4か所でのタウンミーティングを行い、同年8月10日に答申を受領した。

 

本条例は、この「国立市男女平等推進市民委員会」の答申を踏まえ、策定した。

 

条例の特徴

1 性的指向、性自認等を定義を加えた

好きになる相手の性別(性的指向)や自身の性に対する自己認識(性自認)についての定義を、初めて知る方でもわかりやすく条文に表記した。

 

2 性的指向、性自認等の公表の自由は個人の権利とした

性的指向、性自認等を公表(カミングアウト)するかしないかの選択は、個人の権利。他者が本人の意に反して、勝手に公表(アウティング)することは認めない。

 

3 複合差別に対する支援

性別に加えて、しょうがいや外国にルーツがあること等、さまざまな理由により差別を受けて、特に困難な状況におかれている方への支援について表記した。

 

4 教育関係者の責務

男女平等参画意識の形成は、子どものころからの周囲の影響を大きく受ける。生涯を通じて男女平等参画について学ぶ機会が得られるよう、教育関係者の責務について表記した。

 

5 女性のエンパワーメントの推進

女性が本来持つ力をあらゆる場所で発揮できる社会をめざし、女性のエンパワーメントを推進していく。

 

6 「くにたち男女平等参画ステーション」開設

女性と男性及び多様な性の平等参画を推進するための拠点施設として、2018年5月に「国立駅前くにたち・こくぶんじ市民プラザ」内に「くにたち男女平等参画ステーション」を開設した。

この施設は、男女平等参画に関する相談支援を中心に啓発や情報発信を行い、企業や関係機関・団体との連携をとおして、男女平等参画の実現とともに、女性のエンパワーメントの推進、DV(ドメスティック・バイオレンス)に関する予防啓発などに努める。また、市の男女平等・男女共同参画推進の拠点として、「自分らしくいきいきと暮らすことのできる社会の実現」を目指す。

 

 

 

 

パンフレット「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」(PDF:6.5MB)

 

 

国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例

 

目次

前文

第1章 総則(第1条−第8条)

第2章 基本的施策(第9条−第16条)

第3章 推進体制(第17条・第18条)

第4章 雑則(第19条)

付則

 

我が国では、日本国憲法において個人の尊重と法の下の平等がうたわれており、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を批准し、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)を制定するなど、男女平等の実現に向けて、国際社会と連動しながら様々な取組がなされてきた。

本市においては、昭和60年に婦人問題に関する初の計画となる「国立市婦人問題行動計画」を策定し、その後、名称を「国立市男女平等推進計画」へと変更し、男女平等に関する施策を総合的かつ計画的に進めてきた。さらに、まちづくりの基本理念として「人間を大切にする」を掲げ、全ての人を孤立や排除から援護し、社会の一員として包み支え合う地域社会の実現を目指している。

しかしながら、固定的な性別役割分担意識やそれに基づく社会慣行、性別を理由とした人権侵害や暴力は今なお根強く存在しており、女性と男性の間の格差解消に至るには多くの課題が存在している。また、性的指向や性自認等を理由とする差別や偏見等の課題もあり、より一層の取組が必要とされている。

よって、全ての人が性別の壁を越えて、互いの人権を尊重し合い、あらゆる分野において個性と能力を十分に発揮し、自分らしく生きることができる社会を築くため、市、市民、教育関係者及び事業者等が一体となって男女平等参画社会を実現することを決意し、この条例を制定する。

 

第1章 総則

(目 的)

第1条 この条例は、男女平等参画の推進に関する基本理念を定め、市、市民、教育関係者及び事業者等の責務を明らかにし、並びに市の施策の基本的事項等を定めることにより、市の男女平等参画に係る施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって全ての人が、性別等を理由とした人権侵害や暴力を受けることなく、その個性と能力を十分に発揮して自分らしく生きることができる社会を実現することを目的とする。

 

(用語の意味)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意味は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 男女平等参画 全ての人が、性別、性的指向、性自認等にかかわりなく個人として尊重され、その個性と能力を発揮し、社会のあらゆる分野における活動に参画することをいう。

(2) 市民 市内に居住する者、市内で働く者、市内で学ぶ者その他市内で活動をする者をいう。

(3) 教育関係者 市内において学校教育、社会教育その他のあらゆる教育に携わる個人及び法人その他の団体をいう。

(4) 事業者等 営利又は非営利にかかわらず、市内で事業活動を行う個人及び法人その他の団体をいう。

(5) 性的指向 異性を対象とする異性愛、同性を対象とする同性愛、男女両方を対象とする両性愛、いずれも対象としない無性愛等の人の恋愛や性愛がどのような性を対象とするかを示す概念をいう。

(6) 性自認 自分が女性又は男性であるか、その中間であるか、そのどちらでもないか、流動的であるか等の自らの性に対する自己認識をいう。

(7) 複合差別 性別に起因した困難を抱えていることに加えて、しょうがいがあること、外国にルーツを持っていること等、複合的な困難を抱えている状況に置かれることにより生じる差別をいう。

(8) ドメスティック・バイオレンス等 配偶者、交際相手、パートナー等の親密な関係にある者又は親密な関係にあった者からの身体的、精神的、社会的、経済的又は性的な暴力及び特定の人に対して行うつきまとい行為をいう。

(9) セクシュアル・ハラスメント 性的な言動等によって、相手や周囲の者に不快感若しくは不利益を与えること又は相手の就労環境その他の生活環境を害することをいう。

(10) 積極的改善措置 社会のあらゆる分野における活動に参画する機会について、性別による格差が生じているとみられる場合に、格差是正のために必要な範囲において、当該機会を積極的に提供することをいう。

(11) エンパワーメント その人の本来持つ力を発揮できるように支援し、環境を整えること、又は個人として若しくは社会集団としてあらゆる段階の経済、政治その他の分野における意思決定の場に参画できるようにすることをいう。

 

(基本理念)

第3条 市、市民、教育関係者及び事業者等は、次に掲げる事項を基本理念として、男女平等参画を推進する。

(1) 性別、性的指向、性自認等による差別的取扱いや暴力を根絶し、全ての人が、個人として尊重されること。

(2) 性的指向、性自認等に関する公表の自由が個人の権利として保障されること。

(3) 全ての人が、性別による固定的な役割分担意識に基づく社会制度や慣行にとらわれることなく、その個性と能力を発揮し、自らの意思と責任により多様な生き方を選択できること。

(4) 全ての人が、性別にかかわりなく、あらゆる分野における活動方針の立案及び決定に平等に参画する機会が確保されること。

(5) 学校教育、社会教育その他のあらゆる教育の場において、生涯を通じた男女平等参画意識の形成に向けた取組が行われること。

(6) 全ての人が、相互の協力と社会の支援の下に、家庭生活、職場及び地域における活動の調和の取れた生活を営むことができること。

(7) 全ての人が、妊娠、出産等の性と生殖に関する健康と権利を認め合い、生涯にわたって自分らしい生き方を選択できること。

(8) 性別による差別的取扱い及び複合差別を理由として、困難な状況に置かれている人を支援するための取組が行われること。

(9) 国際社会及び国内における男女平等参画に係る取組を積極的に理解すること。

 

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下単に「基本理念」という。)に基づき、男女平等参画社会を実現するための施策を総合的かつ計画的に実施するために必要な措置を講じなければならない。

2 市は、男女平等参画を推進するに当たり、市民、教育関係者、事業者等、国及び他の地方公共団体その他の関係機関等と連携し、及び協力しなければならない。

 

(市民の責務)

第5条 市民は、基本理念に基づき、男女平等参画について理解を深めるとともに、家庭、学校、職場、地域その他の社会のあらゆる分野の活動において、男女平等参画の推進に努めるものとする。

2 市民は、市が実施する男女平等参画の推進に関する施策に協力し、共に

実現するよう努めるものとする。

 

(教育関係者の責務)

第 6 条 教育関係者は、男女平等参画の推進に果たす教育の重要性を認識し、基本理念に基づいた教育を行うよう努めるものとする。

2 教育関係者は、市が実施する男女平等参画の推進に関する施策に協力し、共に実現するよう努めるものとする。

 

(事業者等の責務)

第7条 事業者等は、基本理念に基づき、事業活動を行うに当たり、積極的に男女平等参画の推進に努めるとともに、全ての人が家庭、地域及び職場における活動の調和の取れた生活を営むことができるよう環境の整備に努めるものとする。

2 事業者等は、市が実施する男女平等参画の推進に関する施策に協力し、共に実現するよう努めるものとする。

 

(禁止事項等)

第8条 何人も、ドメスティック・バイオレンス等、セクシュアル・ハラスメント、性的指向、性自認等を含む性別を起因とする差別その他性別に起因するいかなる人権侵害も行ってはならない。

2 何人も、性的指向、性自認等の公表に関して、いかなる場合も、強制し、若しくは禁止し、又は本人の意に反して公にしてはならない。

3 何人も、情報の発信及び流通に当たっては、性別に起因する人権侵害に当たる表現又は固定的な役割分担の意識を助長し、是認させる表現を用いないよう充分に配慮しなければならない。

 

第2章 基本的施策

(計画の策定)

第9条 市は、男女平等参画に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な計画(以下「推進計画」という。)を策定し、これを公表するものとする。

2 市は、推進計画の策定に当たっては、あらかじめ第17条に規定する国立市男女平等推進市民委員会の意見を聴くとともに、市民等の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

3 市は、原則として毎年1回、推進計画に基づく男女平等参画に関する施策の実施状況を公表するものとする。

 

(広報啓発及び調査研究)

第10条 市は、市民、教育関係者及び事業者等に対して、男女平等参画について理解を深めるために必要な広報及び啓発を行うものとする。

2 市は、男女平等参画の推進に関して必要な調査研究並びに情報の収集及び提供を行うものとする。

 

(積極的改善措置)

第11条 市は、性別による固定的な役割分担の意識があると認める場合又は性別を起因とする理由により参画する機会に不均衡があると認める場合にあっては、積極的改善措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(家庭生活と社会活動の調和)

第12条 市は、全ての人が性別にかかわりなく、家事、育児、介護等の家庭生活における活動と職場、地域、学校等における活動の調和の取れた生活を営むことができるよう、必要な支援を行うものとする。

 

(女性のエンパワーメント)

第13条 市は、女性が自分自身の生活と人生を決定する権利を保障し、あらゆる参画の機会において、女性個人が持つ力を十分に発揮できるよう、女性のエンパワーメントのために必要な支援を行うものとする。

 

(活動及び教育における支援)

第14条 市は、男女平等参画の推進に関する取組を行う市民及び事業者等に対し、必要な支援を行うものとする。

2 市は、学校教育、社会教育その他の生涯を通じたあらゆる教育の場において、男女平等参画社会を支える意識の形成を図るために必要な支援を行うものとする。

 

(防災施策における推進)

第15条 市は、防災、災害対応、復興その他の災害に関するあらゆる局面において、男女平等参画の視点を取り入れた施策の推進及び被災者支援を行うよう努めるものとする。

 

(拠点施設の整備)

第16条 市は、男女平等参画の推進を図るための拠点施設を整備するものとする。

 

第3章 推進体制

(推進委員会)

第17条 男女平等参画を推進するため、市長の附属機関として、国立市男女平等推進市民委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

2 委員会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項について審議する。

(1) 市における男女平等参画の推進に関すること。

(2) 推進計画の進捗状況に関すること。

(3) 前2号に掲げるもののほか、男女平等参画を推進する施策に関し市長が必要と認める事項

3 委員会は、男女平等参画の推進に関し、必要と認める事項について調査及び研究を行い、市長に意見を述べることができる。

4 委員会は、市長が委嘱する10人以内の委員をもって組織する。

5 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、委員が欠けた場合における後任の委員の任期は、前任者の在任期間とする。

6 前各項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

 

(苦情又は相談への対応)

第18条 市民、教育関係者及び事業者等は、市が実施する男女平等参画に関する施策に係る苦情又は相談があるときは、その旨を市に申し出ることができる。

2 市は、前項の規定による苦情又は相談の申出について、必要に応じて委員会の意見を聴いて、適切な措置を講ずるものとする。

3 市は、第1項の規定による苦情又は相談の申出に対し、当該苦情を申し出た者に係る情報を保護するとともに、公平かつ適切に対応するものとする。

 

第4章 雑則

(委 任)

第19条 この条例に定めるもののほか、条例の施行について必要な事項は、

市長が別に定める。

 

付 則

(施行期日)

1 この条例は、平成30年4月1日から施行する。

(国立市男女平等推進市民委員会条例の廃止)

2 国立市男女平等推進市民委員会条例(昭和61年3月国立市条例第1号)は、廃止する。

(経過措置)

3 この条例の施行の際、現に男女共同参画社会基本法第14条第3項の規定により策定されている国立市第5次男女平等・男女共同参画推進計画については、第9条第1項に規定する推進計画とみなす。

4 この条例の施行の際、現に第2項の規定による廃止前の国立市男女平等推進市民委員会条例(以下この項において「旧条例」という。)第3条の規定により国立市男女平等推進市民委員会の委員に委嘱されている者は、この条例の施行の日に、第17条第4項の規定により委員会の委員に委嘱されたものとみなす。この場合において、その委嘱されたものとみなされる

委員の任期は、同条第5項の規定にかかわらず、同日における、旧条例第4条に規定する国立市男女平等推進市民委員会の委員としての任期の残任期間と同一の期間とする。

 

 

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