森友学園国有地売却関連記事No2(17年9月〜18年2月)

 

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森友学園事案についての法律相談の文書

 

 

彼の無念晴らしたい 森友疑惑 自殺職員の元同僚(2019年4月24日配信『東京新聞』)

 

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「自殺した男性職員の無念を晴らしたい」と語る田中朋芳さん(左)と喜多徹信さん=大阪市阿倍野区で

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する公文書改ざんなどを巡り、舞台となった財務省近畿財務局OBが本紙の取材に応じ、あらためて真相解明を訴えた。問題を巡っては、大阪第一検察審査会は3月に佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官らの「不起訴不当」を議決。大阪地検が再捜査している。国有地の大幅値引きや改ざんに首相周辺や政治家らの関与や忖度(そんたく)があった疑念は解消されていない。 

 このOBは、近畿財務局で国有財産の管理処分を担う管財部に長年在籍した喜多徹信さん(70)と田中朋芳さん(63)。財務省の指示で改ざんを強要されたという趣旨の遺書を残して昨年3月に命を絶った近畿財務局の男性職員=当時(54)=とは旧知の仲だった。

 学園が取得した国有地が8億円余り値引きされていたことが発覚したのは2017年2月。学園が建設を計画していた小学校の名誉校長に安倍晋三首相の妻昭恵氏が一時就任していた。

 近畿財務局は本省と相談して学園に特例で国有地を貸し付け、その後に大幅値引きをした。喜多さんは「現場だけの判断でできるはずがない」と指摘。田中さんは「値引きの根拠となった地中のごみの処分量の口裏合わせも学園側に依頼していた。マル政(政治)案件だったからだとしか思えない」とみる。

 財務省の調査によると、安倍首相が17年2月17日に「私や妻が関係していたなら首相も議員も辞める」と答弁したのを機に、本省理財局が記録や文書の確認を開始。近畿財務局も本省の指示を受けて、政治家関係者との応接録などを廃棄した。首相答弁の9日後には、本省理財局の要請で近畿財務局職員が政治家関係者の照会状況削除などの改ざんも行った。

 そもそも改ざん前の文書には、昭恵氏との親密ぶりを強調する学園側の発言など、首相周辺や政治家に関する数々の記述があり、改ざんはのべ300カ所以上に及んだ。

 喜多さんは「普通はこんなに記録を残さない。大幅値引きの言い訳がつかないから、あれほどの説明が付されたのだろう。『政治的意図があったのに自分たちのせいにされてはたまらない』という抗議の意思表示だったのでは」と考える。

 喜多さんらが職員に聞いた話では、改ざんを指示された男性職員は、職場の誰が見ても分かるほど顔つきがみるみる変わっていったという。喜多さんは「改ざんを命じられたときも相当抵抗したようだ。やっているのは犯罪。自分の信念や理に反して悔しかっただろう」とおもんぱかる。

 昨年3月2日に公文書改ざんが発覚すると、男性は財務省側の聴取を受けた翌日の同月7日、遺書を残して自殺。前日に男性を見かけた職員は「ひと言でも彼に声をかけていたら」と泣きながら喜多さんに電話してきた。

 公文書改ざんを巡る有印公文書変造・同行使容疑などについて検察審査会は、佐川氏ら当時の理財局幹部を不起訴とした大阪地検の判断を「不当」と議決。値引きを巡る問題でも、政治家らの働き掛けの影響について「さらに捜査を尽くすべきだ」と促した。

 「佐川氏は国会で『学園側との交渉記録を破棄した』と答弁したが、土地代金の支払いが済んでいない段階で破棄するわけがない。佐川氏が改ざんを指示したのは官邸を守るためと考えるのが自然だ」との見方を示す田中さん。「前代未聞の改ざんなのに、最高責任者の麻生太郎財務相が辞任しないのはおかしい。真相を明らかにして、男性の無念を晴らしたい」と決意を語った。

 

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森友学園が300万円詐欺被害 韓国籍の男を起訴(2019年3月23日配信『毎日新聞』)

 

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学校法人「森友学園」の籠池町浪理事長=201712

 

 民事再生手続き中の学校法人「森友学園」(大阪市淀川区)の理事長にうその投資話を持ちかけ、その手数料名目で現金300万円をだまし取ったとして、大阪地検が住所不定の会社役員、朴聡容疑者(37)=韓国籍=を詐欺罪で起訴していたことが、捜査関係者への取材で明らかになった。被告は投資グループの代表を名乗り、学園の経営難につけ込んで理事長に近づいたという。
 起訴内容は2017年10〜11月、学園の籠池町浪(ちなみ)理事長に「5億円を投資し、(経営の)立て直しを手伝いたい」などとうそを言い、計300万円を自分の口座に振り込ませて詐取したとされる。大阪地裁で22日開かれた初公判で、朴被告は「間違いない」と起訴内容を認めた。
 学園は大阪府豊中市の国有地を購入して小学校の開校を計画していたが、購入額が大幅に値引きされたことなどが発覚して国会などで問題化。17年3月に開校を断念し、翌月に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約30億円に上る。
 町浪理事長は、国の補助金などを詐取したとして詐欺罪などで公判中の前理事長、籠池泰典被告(66)の長女。5億円の投資がないことを不審に思った町浪理事長が同年11月、府警淀川署に相談。同署が昨年12月に逮捕していた。

 

「露骨な圧力を見たの初めて」 森友報じた元NHK記者(2019年3月19日配信『朝日新聞』)

 

森友学園問題とその報道について講演する相沢冬樹さん=2019年3月16日、福井市大手2丁目

 

 森友学園問題を報じた元NHK記者で、現在は大阪日日新聞の論説委員を務める相沢冬樹さん(56)が16日、福井市大手2丁目の福井県教育センターで講演し、森友学園問題をめぐるNHKの報道や記者の仕事などについて語った。約90人が聴き入った。

 森友学園問題が明らかになった当時、相沢さんは大阪報道部にいた。当初、NHKでは全国ニュースにならなかった。売却価格の決定過程に関する特ダネは約2カ月、放送されなかった。やっと放送されたその3時間後、「あなたの将来はないと思え」と当時の上司が電話で激怒されている姿を目の当たりにした。

 「露骨に上からの圧力を見たのは初めてだった」と振り返る。その後、考査業務への異動を命じられ、記者を続けるためにNHKを退職した。

 森友学園は土地を売った国と学園を認可した大阪府の問題だと強調。学園側の補助金不正にとびついたメディアがあり、本質が見えなくなったと指摘し、「情報をとれなければ記者の仕事にならないが、何のために報道するかを考えなければ真の記者とは言えない。『世のため人のため』を意識して行動していきたい」と話した。

 

籠池被告夫妻、野党ヒアリングに出席 省庁側は同席拒む(2019年3月18日配信『朝日新聞』)

 

 学校法人森友学園への国有地売却問題をめぐる野党合同ヒアリングが18日、国会内であり、学園前理事長の籠池泰典被告夫妻が出席した。財務省と国土交通省、会計検査院は直前で出席を取りやめたため、籠池被告夫妻のみへのヒアリングとなった。

 野党関係者によると、もともと出席予定だった財務省などからは同日、夫妻が刑事被告人であることなどを理由に「同席できない」との連絡があったという。

 ヒアリングでは、通常は財務省幹部らが座る席に籠池被告がつき、その後ろに妻の諄子被告が着席。問題になった取引の経緯や、安倍晋三首相の妻昭恵氏らとの関係について、野党議員の質問に1時間半にわたって答えた。

 夫妻はヒアリングに先立ち、集中審議が行われた参院予算委員会を傍聴。取引にかかわる決裁文書が改ざんされたことに対し、「国民に対して丁寧な説明をしていくことが重要」との安倍首相の答弁に首をかしげる場面もあった。

 報道陣に傍聴の感想を聞かれた籠池被告は「(安倍首相らは)質問に真摯(しんし)に答えなければならないと思った。問題を風化させてはいけない」などと語った。

 

「昭恵氏付職員、省幹部と面会」 籠池被告主張、森友減額で(2019年3月19日配信『東京新聞』)

  

 学校法人森友学園の前理事長籠池泰典被告は18日、国会内での野党合同会合に出席し、2015年11月、学園が借りていた国有地の賃料引き下げに関し、安倍昭恵首相夫人付の政府職員だった谷査恵子氏から電話で「財務省国有財産審理室長と会って話した。これで前に進んでいきます」と伝えられたと述べた。

 政府は学園側の依頼を受けた谷氏から同月10日、財務省に電話があり、12日に田村嘉啓国有財産審理室長(当時)が折り返し、減額措置には応じられないと電話口で回答した、としている。野党は、籠池氏の発言内容が事実であれば、政府の説明とかみ合わないとして追及する構えだ。

 15日付で谷氏が籠池氏に送ったファクスには減額措置について「ご希望に沿うことはできない」と記載され、減額もされなかった。だが、その後、地中からごみが見つかったとして16年6月、国有地は約8億円値引きされ学園側に売却された。

 籠池氏は会合で、14年4月25日ごろ、国有地を訪れた昭恵氏が籠池夫妻と写真を撮ろうと提案し、谷氏が撮影したとも主張。同月28日、財務省近畿財務局との交渉で籠池氏が写真を見せたところ職員は驚き「上司に見せるためにコピーしたい」と言われて応じたという。

 

「首相夫人付が財務幹部と面会」 籠池泰典氏が主張、森友減額で(2019年3月18日配信『共同通信』)

 

 学校法人森友学園の前理事長籠池泰典被告は18日、国会内での野党合同会合に出席し、2015年11月、学園が借りていた国有地の賃料引き下げに関し、安倍昭恵首相夫人付の政府職員だった谷査恵子氏から電話で「財務省国有財産審理室長と会って話した。これで前に進んでいきます」と伝えられたと述べた。

 政府は学園側の依頼を受けた谷氏から同月10日、財務省に電話があり、12日に田村嘉啓国有財産審理室長(当時)が折り返し、減額措置には応じられないと電話口で回答した、としている。野党は、籠池氏の発言内容が事実であれば、政府の説明とかみ合わないとして追及する構えだ。

 

 野党合同会合に出席し、発言する森友学園の前理事長籠池泰典被告(手前左)=18日午後、国会

野党合同会合に出席し、発言する森友学園の前理事長籠池泰典被告(手前左)=18日午後、国会

 

籠池氏「森友問題はまだ風化していない」 野党6党派のヒアリングで(2019年3月18日配信『毎日新聞』)

 

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学校法人「森友学園」への国有地売却問題についての野党合同ヒアリングで発言する前同学園理事長の籠池泰典氏。左奥は籠池氏の妻諄子氏=国会内で2019年3月18日午後5時27分


 野党6党派は18日、学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題を巡って学園の籠池泰典前理事長からヒアリングを行った。籠池氏は「森友問題はまだ風化していない。解決に導かなければならない」と訴えた。
 籠池氏はこの日、参院予算委員会も傍聴。答弁のため出席した安倍晋三首相の様子について「私の方をちらちらご覧になり、気にされているんだろうなと思った」と述べた上で、「議員の質問はなかなか鋭いものがあった。(首相は)きちんと答えないといけないのではないか」と語った。

 

麻生氏「判決内容を精査」 森友学園巡る開示請求訴訟(2019年3月15日配信『毎日新聞』)

 

 麻生太郎副総理兼財務相は15日の参院予算委員会で、学校法人「森友学園」を巡る情報開示請求に対し財務省が学校名などを公開しなかったのは違法だとして、国に5万5000円の賠償を命じた大阪地裁判決を受け、「判決の内容を精査して、関係省庁と今後の対応を検討したい」と述べた。国民民主党の川合孝典氏の質問に答えた。

 根本匠厚生労働相は予算委で、厚労省による毎月勤労統計の不正調査問題について、特別監察委員会の樋口美雄委員長(独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長)が担当職員の多くに隠蔽(いんぺい)の意図を直接たださなかったことを問題視しない考えを示した。

 厚労省の定塚由美子官房長は樋口氏から「総合的に判断したものであり、適切な対応だった。(組織的な隠蔽を認めなかった追加報告書の)評価や判断が変わるわけではない」と説明を受けたと明らかにした。いずれも立憲民主党会派の小西洋之氏の質問に答えた。

 

相澤冬樹氏、籠池夫妻は「売られたけんかを買った」(2019年3月7日配信『日刊スポーツ』)

 

国や大阪府、大阪市の補助金計約1億7000万円をだまし取ったなどとして詐欺と詐欺未遂の罪に問われた学校法人「森友学園」の前理事長籠池泰典(本名・康博)被告(66)と妻諄子(じゅんこ=本名・真美)被告(62)の初公判が6日、大阪地裁(野口卓志裁判長)で開かれた。

森友学園問題を当初から取材してきた、大阪日日新聞論説委員で記者の相澤冬樹氏(56)が、籠池夫妻の初公判を斬った。

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籠池夫妻は、のっけから検察と国にけんかを売った。いや、彼らの感覚からすれば「売られたけんかを買った」のだろう。

弁護士とともに裁判所に姿を現した籠池前理事長。報道陣のカメラに囲まれても悠然としたその姿は、自分の主張に確信を持っているあかしだろうか。裁判では冒頭、「国策捜査、国策逮捕、国策勾留は絶対許せません」と宣言した。補助金事件は、国会などで問題になっていた国有地の大幅値引き売却から目をそらし、自分たちの口封じをするための国策捜査なのだと。検察側は「裁判と無関係だ」と発言を制止しようとしたが弁護側が反論。いきなり波乱含みで裁判は始まった。弁護側は起訴された内容の多くについて無罪を主張。最後に「権力者の意向を忖度(そんたく)せず、厳格に法を適用する司法であるかが問われている」と指摘した。

 もちろん検察側も有罪を勝ち取るために万全の構えだ。夫妻が共謀して虚偽や水増しの申請により多額の補助金をだましとったと主張した。籠池夫妻と検察のガチンコ対決が法廷で幕を切った。決着には時間がかかるが、「国策捜査」との主張がどこまで認められるのか、世の注目を集めることは間違いない。

 だが私たちは忘れてはいけない。補助金事件は森友事件の本質ではない。本質は国有地の8億円もの大幅値引き売却だ。安倍昭恵首相夫人が名誉校長を務めていた小学校のための…。財務省の説明は根拠に乏しく、関連する公文書は改ざんされていた。だが検察はこれら一連の問題について財務省の関係者らを全員不起訴にした。値引き売却はなぜ? 公文書改ざんは何のため? 命を絶った近畿財務局職員は何を言い残したのか? 事件の真相解明が欠かせない。

 

籠池夫妻、無罪を主張 森友補助金詐取「国策捜査許さない」(2019年3月7日配信『東京新聞』)

 

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 国や大阪府、大阪市の補助金計約1億7千万円をだまし取ったなどとして詐欺と詐欺未遂の罪に問われた学校法人「森友学園」の前理事長籠池泰典(本名・康博)被告(66)と妻諄子(本名・真美)被告(62)の初公判が6日、大阪地裁(野口卓志裁判長)で開かれ、両被告は「補助金詐取の共謀や故意はなかった」とし、起訴内容の大半について無罪を主張した。

 泰典被告は罪状認否で意見陳述し「国策捜査、国策逮捕を絶対許さない。国有地売却の忖度(そんたく)問題の目くらましをしていることを、裁判所もしっかり見てほしい」と訴えた。

 検察側は冒頭陳述で、泰典被告は学園の業務全般を総括し、諄子被告は経理担当で預金や帳簿を管理していたと説明。国の補助金は「上限の額が得られるよう設計会社や建設会社と共謀し、虚偽の請負契約書などを作成した」と指摘した。

 

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府や市の補助金は、学園の運営資金に充てるため、実際には幼稚園で特別支援を担当する教員がいないのに勤務しているよう装ったり、「要支援児」ではないのに診断書を偽造したりするなどした、と述べた。

 弁護側は、両被告の関与を認めた設計会社関係者らの供述調書は「不起訴の合意と引き換えで違法に収集した証拠で、排除されるべきだ」と主張。補助金のうち、府と市の一部は虚偽申請だったことを争わないとした上で、より法定刑の軽い補助金適正化法違反罪の適用を求めた。

 起訴状によると、両被告は大阪府豊中市の国有地で予定した小学校の建設費を水増しし、2016年3月〜17年2月に国の補助金約5千644万円を詐取。11〜16年度には学園などが運営する幼稚園の教員数などを偽り、府や市が支給する要支援児の受け入れ補助金計約1億2千万円を詐取したなどとしている。

 森友学園を巡る疑惑では、大阪地検特捜部が昨年五月、国有地売却に関する背任や、財務省の決裁文書改ざんの疑いなどで告発された佐川宣寿元理財局長や同省職員ら計38人を不起訴とした。大学教授らの不服申し立てを受け、検察審査会が不起訴の当否を審査している。

 

籠池被告、10分の持論展開 検察幹部「言わせておけ」(2019年3月7日配信『朝日新聞』)

 

 森友学園の土地取引問題発覚から2年余り。補助金をだまし取ったとする詐欺などの罪で起訴された籠池泰典被告が、法廷にようやく姿を現した。被告は公判でも「国策捜査」の持論を振りかざして検察側と鋭く対立したが、問題の真相解明は道半ばだ。

 「国策捜査そして国策逮捕、国策勾留は絶対許せません」。泰典被告は裁判長から起訴内容の認否を問われると、約10分間にわたり書面を読みあげた。

 大阪府豊中市の国有地に建設を目指していた小学校について、泰典被告は安倍晋三首相と妻昭恵氏の後押しがあったと説明。ところが2017年2月、鑑定価格9億5600万円からごみ撤去費などを差し引き、1億3400万円で国有地が学園に売却されたことが明るみに出た後、「安倍首相は自らの保身にかじを切った」と批判。逮捕後、300日間も自分を拘置所に勾留した今回の事件は、国民の目をそらすための「国策」だった、と主張した。

 さらに泰典被告の弁護側は、被告夫妻と昭恵氏の3人で撮られた写真や、安倍首相が学園との関係をめぐり「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしいという話を聞いている」と国会で答弁した際の議事録を証拠として提出。安倍首相夫妻への忖度(そんたく)から、「籠池夫妻を悪質な詐欺犯とおとしめる訴追があったのではないか」と訴えて、検察側と真っ向から対決する姿勢を見せた。

 

籠池被告、初公判で一部否認 「官邸からの意向と忖度」(2019年3月6日配信『朝日新聞』)

 

 学校法人森友学園(大阪市)の補助金不正事件で、国の補助金など計約1億7千万円をだまし取ったとして詐欺罪などに問われた学園前理事長の籠池泰典被告(66)と妻諄子(じゅんこ)被告(62)の初公判が6日、大阪地裁(野口卓志裁判長)で始まった。泰典被告は起訴内容を一部否認し、大阪地検特捜部による逮捕・起訴を「国策捜査だ」と非難した。諄子被告は無罪を主張した。

 泰典被告は罪状認否で読み上げた書面で、大阪府豊中市内の国有地が森友学園に大幅に値引きした価格で売却されたのは、官邸からの意向と忖度(そんたく)があったからだと訴えた。補助金不正事件で自らが逮捕・起訴されたことについて「国民の目をそらせるために別件逮捕した」と批判した。

 起訴状によると、両被告は2016年2月、学園が大阪府豊中市の国有地に開校を目指した小学校建設工事で、虚偽の契約書を提出するなどして国の補助金約5644万円を詐取。11〜16年度、学園が運営する幼稚園などで病気や障害のある園児に特別な支援をしたと偽るなどして府と大阪市の補助金計約1億2千万円をだまし取ったとされる。

 両被告の弁護側は国の補助金について「業者が主導し、両被告はだます認識も業者との共謀もなかった」と主張。幼稚園への補助金をめぐっても、泰典被告は「実際に特別支援をしており、適法な申請だった」と一部を否認し、諄子被告は不正に関わっていないとして無罪を求めるとみられる。

 一連の問題を捜査した大阪地検特捜部は17年9月までに、両被告を補助金不正問題をめぐる詐欺罪などで起訴。その後、国有地の大幅値引きや公文書改ざんをめぐる疑惑で捜査を続けたが、18年5月に財務省関係者ら38人をいずれも不起訴とした。不起訴が妥当だったか、検察審査会で審査が続い

 

「国策捜査」主張し一句 籠池節、初公判でも(2019年3月6日配信『朝日新聞』)

 

学校法人森友学園(大阪市)による補助金不正事件で、詐欺などの罪に問われた学園前理事長の籠池泰典被告(66)と妻の諄子(じゅんこ)被告(62)の初公判が6日午後2時から、大阪地裁(野口卓志裁判長)で始まる。籠池夫妻は法廷で何を語るのか。一日を追った。

 

今後19人に証人尋問

 法廷でも「国策捜査」の持論を展開し、検察側との対決姿勢を示した籠池泰典被告。第2回公判は5月29日で、この日から7月までの11回の公判で19人に対する証人尋問が始まる。

 証人は校舎の施工に関わった設計業者や建設業者の担当者、幼稚園の元職員などで、捜査段階で籠池被告夫妻が補助金詐取に関与したなど、多くは籠池被告側に不利な内容の供述調書に署名したとみられる。

 被告側は「詐取に関与した業者らを不起訴にする代わりに証拠を提出させるなどの違法な捜査があった」とし、両被告だけを起訴したのは「公訴権の乱用だ」として公訴棄却を求めており、関係者が公判でどう証言するか注目される。

 その後8、9両月に被告人質問があり、10月30日の第15回公判で結審する予定だ。

 

17:00

地裁を離れる籠池被告「言うべきことは言いました」

 午後5時、初公判を終えた籠池泰典被告と諄子被告は大阪地裁を後にした。泰典被告は報道陣に対して「言うべきことは言いました」と語った。

 

16:50

閉廷で籠池被告、深々と一礼

 初公判の終盤は証拠調べへ。検察側は採用された証拠として、国土交通省や大阪府、大阪市の職員らの調書を紹介した。

 午後4時50分、3時間近くに及んだ初公判は閉廷した。籠池泰典被告は裁判長の席の前で深々と一礼し、法廷の外に出た。諄子被告も追うように続いた。

 

16:10

菅長官「国民の信頼が揺るがないよう取り組む」

 安倍政権を揺るがせた一連の森友学園問題。中心人物である籠池泰典被告らの初公判を、永田町はどう見たのか。

 菅義偉官房長官は首相官邸で開かれた午後4時過ぎの記者会見で、籠池氏の初公判について問われ、「個別の事件についてコメントは控えたい。ただ、あらゆる行政プロセスが公平、そして適切に行われるのは当然のことであり、今後ともこうした点に対して国民のみなさんの信頼が揺るぐことがないように取り組んでまいりたい」と語った。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は会見で「当時の行政側の対応もどうだったのかも明らかにしてもらいたい」と指摘した。国有地値引きを巡る一連の経緯について「普通なら認められないものが、まさに忖度(そんたく)も含めて、みんなでよってたかってあの学校ができるように動いた形跡もないことはない」とした上で、「籠池夫妻に対する罪と、大阪府・国が一体どのような動きをしたのか。行政側の動きについてもぜひ明らかにしてもらいたい」と注文した。

 また、同党の舟山康江・参院国会対策委員長も会見で「事実関係を司法の場で明らかにして、全貌(ぜんぼう)解明につなげてほしい。この問題の原因、発端、糸口がどこにあったのかをしっかり注視していきたい」と述べた。

 

16:10

弁護側、捜査に疑義

 検察側の冒頭陳述に続き、弁護側も冒頭陳述を終えた。

 検察側は冒頭陳述で、学園は小学校の校舎建設資金を集めることが困難だったと指摘。そこで2人はできるだけ多くの補助金をだまし取ろうと考え、業者に虚偽の申請を指示したという構図を描いた。幼稚園での詐取金は、運営資金や小学校の建設資金にあてていたと述べた。泰典被告の「国策捜査」批判には耳を貸さず、多額の補助金を詐取したこと自体が重大な犯罪だと強調する構えだ。

 一方、弁護側は冒頭陳述で、国への補助金申請は「業者が考えて主導した」と主張。幼稚園の補助金については、起訴された申請分のうち一部は園児に適切な支援をしていたと訴えた。諄子被告側は不正な申請への関与を一切否定した。

 弁護側の冒頭陳述では、泰典被告が訴える「国策捜査」という言葉は用いなかったが、一連の森友問題をふまえて「疑惑を否定しようとする何者かの思惑により、政権中枢から籠池夫妻をできる限り遠ざけようとする力が働いたのではなかったか」などと特捜部の捜査に懐疑的な見方を示し、裁判所に厳格な事実認定を行うよう求めた。

 

16:00

 初公判の法廷は午後4時を回った。籠池被告夫妻の法廷イラストを手がけるのは、関西の刑事裁判で被告の姿を描き続けている画家の岩崎絵里さんだ。

 岩崎さんは「泰典被告は入廷時から『受けて立つぞ』という意欲がすごかった」と、廷内での被告の様子を語った。諄子被告については、泰典被告が話しているとき、一言一句を聞いているように見えたという。

 

14:20

「安倍首相、保身に舵切った」

 籠池泰典被告は紺色のスーツと金色のネクタイ姿で法廷に入ると、裁判長に深く一礼して席についた。グレーのスカートのスーツを着た諄子被告が続いた。人定質問の後、まずは検察官が起訴状を朗読した。

 午後2時20分ごろから、注目の罪状認否に移った。裁判長から認否を問われた泰典被告。起訴内容の一部を否認し、逮捕・起訴を「国策捜査だ」と非難した。諄子被告は無罪を主張した。

 泰典被告は用意した書面を読み上げた。大阪府豊中市内の国有地が森友学園に大幅に値引きした価格で売却されたのは、官邸からの意向と忖度(そんたく)があったからだと訴えた。補助金不正事件で自らが逮捕・起訴されたことは「国民の目をそらせるために別件逮捕した」と批判。さらに、「安倍(晋三)首相は自らの保身に舵(かじ)を切った」とも指摘した。

 そして、最後を俳句で締めくくった。

 「りんと咲く 日の本一の 夫婦花」

 

 「疑わしきは被告人の利益に」という言葉がある。刑事裁判の鉄則を示している。さらに、有罪判決が確定するまでは「推定無罪」が前提だ。ある人物について有罪の疑いがあるとして「起訴」した検察は、証拠に基づいて、それを立証しなければならない。

 今回は市民が参加する裁判員裁判ではなく、プロの裁判官3人が裁く。裁判ではまず起訴状を検察官が朗読し、被告は「罪状認否」で内容を認めるかどうかを答える。この日、籠池泰典被告は一部を否認し、諄子被告は無罪を訴えた。

 続く「冒頭陳述」では、検察側が裁判で主張する内容を説明。弁護側も自分たちの主張を述べることができる。その後は「証拠調べ」に入る。調書が証拠として採用されれば、その内容の読み上げがあるほか、証人や被告本人に対する裁判官や検察官、弁護人らの質問がある。

 こうした結果を踏まえ、有罪か無罪か、有罪の場合は量刑がどのくらいかを判断する。一審に不服があれば、被告側・検察側双方とも控訴できる。控訴があれば、裁判は二審に移る。

 

14:00

日本維新の会幹事長「いろいろな疑問、明らかになれば」

 日本維新の会の馬場伸幸幹事長(衆院議員)は国会内での記者会見で、初公判への期待について問われ、「いろいろな疑問は残っている。そのへんが明らかになればいい。大阪でもまだその話題が出ることもあるので、真実が何であるをつまびらかにする裁判になってほしい」と述べた。「籠池さんの問題については、我々はまったく関わっていない」とも強調した。

 

14:00

開廷される

 午後2時、大阪地裁本館2階にある201号法廷は開廷時間を迎えた。初公判が始まった。

 

籠池被告、初公判で無罪主張 補助金詐取事件(2019年3月6日配信『日本経済新聞』)

 

学校法人「森友学園」(大阪市)の補助金詐取事件で、詐欺罪などに問われた学園の前理事長、籠池泰典被告(66)と妻の諄子被告(62)の初公判が6日、大阪地裁(野口卓志裁判長)で開かれた。両被告は「補助金詐取の共謀や故意はなかった」として詐欺罪の成立を否定し、諄子被告は無罪を主張した。

籠池被告は罪状認否で、国の補助金について「検察官の主張は事実と反する」と無罪を主張。大阪府と大阪市の補助金では「本来受けるべきでない補助金を一部受け取ったことは否めない」としたが、「まったくのでっち上げではない」と述べた。諄子被告は「私は詐欺行為をしていません。無罪です」と訴えた。

検察側は冒頭陳述で、国の補助金申請に関して「籠池被告がより多くの補助金を受ける目的で、設計業者に建築費を水増しした虚偽の申請をするよう指示した」と指摘。虚偽の契約書作成について「設計業者が両被告に改めて意向を確認すると、指示通りに進めるよう言明した」とし、府や市の補助金詐取は「学園の運営資金に充てる目的だった」と主張した。

籠池被告の弁護人は冒頭陳述で、大阪府市の補助金について、専任で勤務する教職員の人数を偽ったことなど起訴内容の一部を認める一方、「詐欺の故意や諄子被告との共謀はなかった」と強調した。

起訴状によると、両被告は学園が大阪府豊中市に開校を計画していた小学校建設を巡り、虚偽の契約書を提出し、国の補助金5600万円余を詐取。2011〜16年度、幼稚園の運営に当たり、専任で勤務する教職員や「要支援児」の人数を偽り、府と市の補助金約1億2千万円をだまし取ったとされる。

両被告の公判は計15回開かれ、補助金申請に関わった関係者ら19人の証人尋問や被告人質問を経て、10月30日に結審する予定。判決期日は後日指定される見通しだ。

 

地検の捜査や首相官邸への批判を繰り返し 籠池被告 大阪地裁初公判で(2019年3月6日配信『毎日新聞』)

 

 学校法人「森友学園」(大阪市)を巡る補助金詐欺事件で、詐欺などの罪に問われた籠池泰典被告(66)は、6日に大阪地裁で開かれた初公判で、検察側と対決する姿勢を改めて示した。「口封じのため300日も勾留された」。一連の問題で初めてとなる刑事裁判の法廷でも独自の振る舞いを続け、大阪地検の捜査や首相官邸への批判を繰り返した。

 紺色のスーツに身を包んだ籠池被告は、数十人の報道陣に囲まれながら緊張した表情で法廷へ。被告席に座ってからも、傍聴席を見渡すなど落ち着かないそぶりを見せた。起訴内容の認否では、「教育者として、してはいけないことをした」と反省する一方、詐欺の意図については明確に否定した。

 地検の捜査や長期勾留に加え、安倍晋三首相と妻昭恵氏らへの批判も展開。「忖度(そんたく)に左右されない公正な裁判を受けることができると信じている」と訴えた。現在も接見禁止で家族と会えない不満も漏らし、自作の句まで披露。約10分間にわたって意見を述べ、途中で検察官が「認否とかけ離れている」と抗議する場面もあった。

 一方、妻諄子(じゅんこ)被告(62)はリラックスした表情で入廷。起訴状を読み上げる検察官を終始真っすぐ見つめ、認否を問われると「私は全く関与していない」と潔白を強調した。

 弁護側は、問題の発端となった国有地の売却問題にも触れ、籠池被告が首相夫妻と関係があったことを強調。「政権中枢から籠池夫妻を遠ざけようとする力が働いたのではないか」と指摘した。

 約2年前の問題発覚から社会を騒がせた両被告への関心は高く、54席の傍聴券を求めて約640人が行列を作った。

 

「カツもない」 ゴーン前会長に思いはせた籠池前理事長(2019年2月10日配信『朝日新聞』)

 

 国有地取引の交渉を振り返り、果たして「反省の弁」はあるだろうか――。

 問題発覚直後からの取材班のメンバーとして、森友学園前理事長の籠池泰典被告(66)へのインタビューで聞いてみたかったのは、この点だった。

 一連の取引では、特に賃料の値引きのため、複数の政治家に近畿財務局への働きかけを依頼したことが分かっている。近畿財務局の交渉記録にも籠池前理事長夫妻について「罵倒の言葉が続き」などの記載があり、それを裏付けるような音声データもある。

 インタビュー終盤。政治家の働きかけを「戦艦大和の巨砲」、自身の交渉ぶりを「本音勝負」などと表現し、値引きをどう実現させたか説明する籠池前理事長に尋ねた。

 「今振り返って、やり過ぎたとは思いませんか」

 「いや、当たり前のこと。例えば海外に行って油田を掘削させて欲しいというとき、その国の要人に会ってお願いする。オリンピックとちゃうからね」。即答だった。

 土地の賃料も売買代金も「安い方がいい。努力せんかったらアホやんか」と言い、「最終的に額を決めたのは国」との理屈を強調した。

 一方、隣に座った妻で学園の幼稚園の前副園長、諄子被告(62)は交渉を「今思うと恥ずかしい」と振り返った。「何も分かってなくて、お父さんが『何でだ』と怒ったら、自分も『何でー』と怒って。ああいう心根で学校をやってもうまくいかないし、今の自分の方が好き」と語った。

 補助金詐欺事件に関する質問以外は冗舌だった籠池前理事長が沈黙したのは、完成間近のまま立つ小学校舎の話題の時だった。

 昨年5月の保釈後、敷地の外から校舎を眺めたという。諄子前副園長がその時のことを振り返り、「お父さん、泣いてました」とぽつりと漏らした。籠池前理事長も目を赤くして少し上を向き、「いい校舎やなと」と言葉少なだった。

 保釈直後の記者会見で「相思相愛です」「お父さんと結婚してよかった」と互いに語った夫妻が、息の合ったやり取りをみせる場面も。安倍昭恵氏の印象を尋ねると、籠池前理事長は「すごく庶民的な方」と説明。諄子前副園長が「お父さんの好みのタイプかも。雰囲気、顔とか」と続けると、籠池前理事長が即座に「2番目にな」と返し、顔を見合わせて笑っていた。

 約300日の拘置所生活を振り返り、東京地検特捜部に逮捕、起訴された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の境遇に思いをはせた。籠池前理事長は「かわいそう。食事なんて、ビーフカツも何もないし」、諄子前副園長も「あの中は、外国人は大変だと思う」と案じていた。

 身ぶり手ぶりに、独特の言い回しの「籠池節」を加え約4時間。だが本人は話し足りない表情だった。

 詐欺事件の詳細もそうだが、取引の過程にも不明な部分はなお多い。3月6日からの公判で何を語るのか、注目したい。

 

柳瀬元首相秘書官、NTT系の非常勤取締役に(2019年2月7日配信『日本経済新聞』)

 

NTTは7日、学校法人・加計学園を巡る問題で国会に参考人招致された元首相秘書官の柳瀬唯夫氏が、海外事業を統括する中間持ち株会社の非常勤取締役に就いたことを明らかにした。

NTTの澤田純社長は同日の決算会見で、柳瀬氏について「昔から知り合いで特に米国に広い人脈を持っている。いろいろなことがあったが、海外事業を強化する上でメリットが大きいと考え、私からお願いした」と語った。

NTTは2023年度の海外事業の売上高を250億ドル(約2兆8千億円)と17年度から4割近く増やす目標を掲げている。

就任は2月1日付。柳瀬氏は18年7月に経済産業審議官を退任した。同氏はシャープのパソコン事業子会社であるダイナブック(東京・江東)の非常勤取締役に就任したことも明らかになっている。

 

柳瀬元首相秘書官、ダイナブックの非常勤取締役に(2019年1月12日配信『日本経済新聞』)

 

学校法人・加計学園を巡る問題で国会に参考人招致された元首相秘書官の柳瀬唯夫氏が、シャープのパソコン事業子会社であるダイナブック(東京・江東)の非常勤取締役に就任したことが分かった。シャープは2018年10月に約40億円を投じ、東芝から東芝クライアントソリューションの株式80.1%を取得。1月1日付で主力ブランド「ダイナブック」と同じ社名に変更した。柳瀬氏は18年7月、経済産業審議官を退任していた。

 

自民内からも「根拠、もう崩れている」 森友への値引き(2018年10月11日配信『朝日新聞』)

 

 「驚くべきことは、森友学園のごみについて(与党側は)『もう終わったことである』と」――。立憲民主党の蓮舫氏は11日の参院予算委員会の理事懇談会後、記者団にこう憤った。

 理事懇では、森友学園への国有地売却で大幅値引きの根拠となった地下のごみの深さに疑義が生じている問題がとり上げられた。ところが蓮舫氏によると、与党側は24日に開会予定の臨時国会で委員会のメンバー構成が変わることを理由に、真相究明に消極的な姿勢を示したという。

 蓮舫氏は「確かに構成はリセットされるかもしれないが、政治課題はリセットされない」と強調した。

 朝日新聞は11日付朝刊で、大幅値引きの根拠となった地下のごみの深さについて、「3・8メートルまで」に存在する証拠とされた写真が、実際には「3メートルまで」を計測していた疑いを報じた。野党側は、この写真付き報告書を証拠として提出していた国土交通省に、事実関係を確認するよう求めた。

 一方、自民党の参院予算委員会の理事の一人は理事懇談会後、国有地売却の大幅値引きについて「根拠なんて、もう崩れているでしょ」と、報道陣が手にしていた朝日新聞の11日付朝刊を指さしながら述べた。

 

森友への値引き根拠揺らぐ ごみ深さ、3.8mない疑い(2018年10月11日配信『朝日新聞』)

 

森友学園側から国に提出され、国会に示された「深さ3・8メートルからごみが出た根拠」とされる写真のうちの1枚(菅野完氏提供)

 

 

 森友学園への国有地売却問題で、大幅な値引きの根拠となった地下のごみの深さについて、「3・8メートルまで」に存在する証拠とされた写真が、実際には「3メートルまで」を計測していた疑いがあることがわかった。複数の関係者が朝日新聞の取材に証言した。国はこの写真が、3メートルより深い場所にごみが存在する証拠として国会に示していた。

 ごみが深さ3メートルより深い場所にあることで、国は約8億2千万円の撤去費用が生じるとして値引きをしていたが、3メートルまでしか確認できなければ、値引きの正当性があらためて揺らぐことになる。

 

公文書改ざん:自殺の近畿財務局職員の父との主な一問一答(2018年10月10日配信『毎日新聞』)

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却にかかわる部署に所属し、今年3月に自殺した財務省近畿財務局職員の男性(54)の父親(83)=岡山県=が毎日新聞の取材に応じた。男性の父親との主な一問一答は次の通り。

−−亡くなったことをどのような経緯で知ったのですか。

 ◆3月7日、息子の妻から「夫が病院へ行っている」と電話があった。その時は、まだ息があるんだろうと思っていた。親族の車に乗って息子の家へ行ったが、「すぐには会えない。病院から連絡があるまで待って」と言われ、その日は息子の家に泊まった。翌日、病院から連絡があり、対面した。息子は移動式のベッドの上に寝かされていて、眠っているかのような表情だった。その時、亡くなっていることが初めて分かった。

−−遺書はありましたか。

 ◆私宛てのA4くらいのサイズの紙が7、8枚。パソコンで打ったような活字で書かれていた。上司の指示で森友学園の仕事をし、本省の指示で書類を作らされ、嫌だったというようなことが書いてあった。(自殺は)上の指示を嫌とは言えなかったことを苦にしたのが原因だろう。

−−息子さんの同僚とは話しましたか。

 ◆同僚のような人たちは葬儀場に入らず、待合室に大勢いたが、話さなかった。普通、上司なら祭壇へ名前とか上げてくれるでしょうが、そういうのがなかった。地方で働いていた時の同僚の人はあいさつしてくれた。その人はその後も家に何回か拝みに来てくれた。亡くなった時の同僚とか、上司とかとは話したことはない。

−−どんな息子さんでしたか。

 ◆真面目がとりえで。高校卒業後、国鉄に入って7〜8年勤め、民営化の時に転職して大蔵省に入った。地方の事務所にいた時は夜間大学に行き、教員免許を取った。亡くなった妻は「あっちこっちに転勤ばかりさせられて可哀そう。学校へ勤めたら」とよく言っていた。母親思いで、晩年施設に入っていた妻に会うため、月に1回は帰って来ていた。妻は認知症で、段々と人のことも分からないようになっていたが、息子は顔を拭いたり、鼻の掃除をしたりしていた。普通はそこまでしないと思うが、そんなことまでやっていた。元気が良く、体は大きくないけど、いつも大きな声だった。冗談もよく言っていた。

−−息子さんと最後に会ったのはいつですか。

 ◆今年2月の中ごろに帰ってきた時。2人でこたつに入り、しょうもない話をした。普段は大きな声でしゃべるけど、その時は小さいな、おとなしいなという感じがした。しかし、まさか死を考えていたとは想像もしなかった。けど、やっぱりその時には考えていたのかなあと思う。いきなり死のうなんて思わないだろうから。どこまで書類を作るのに関わっていたのか知らないけど、よっぽどあれを苦にしていたんだろうなあ。

−−今思うことは。

 ◆母親と一緒のところ(墓)に入れて、喜んでいるだろう。こういう仕事に携わっていたので、こんな結果になってしまった。残念だ。他の仕事であればこんなことにはならなかったのに。佐川宣寿(のぶひさ)さん(前国税庁長官)が辞めた時は少し気が楽になった。ただ、何の罪にも問われなかったのは、残念だ、当時の責任者なのだから。取り返しのつかない結果になってしまった。息子は帰ってこない。息子は、一人で書類を作っていたわけでもないのに、他の人が名乗り出ないのも釈然としない。

 

公文書改ざん:自殺・近畿財務局職員の父「真相知りたい」(2018年10月9日配信『毎日新聞』)

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却にかかわる部署に所属し、今年3月に自殺した財務省近畿財務局職員の男性(54)の父親(83)=岡山県=が毎日新聞の取材に応じた。男性は上司の指示で公文書を改ざんしたことを遺書につづっていたが、背景については依然多くの謎が残る。父親は「真相が知りたい」と願う一方で、「他の仕事をしていたら、こんなことにはならなかったのに」と嘆く。

 男性は長男で、岡山で生まれ育ち、高校卒業後に国鉄へ就職した。その後、1987年の国鉄民営化を機に転職。当時の大蔵省に地方採用の「ノンキャリア」として入庁した。体は大きくないが、大きな声で話し、冗談もよく言う明るい性格だったという。

 最後に会ったのは、今年2月半ば。実家に帰ってきた男性と二人きりで、こたつに入ってとりとめのない話をした。「普段よりおとなしい感じはしたが、まさか死を考えていたとは」

 3月7日、男性の妻から「夫が病院へ行っている」と電話を受け、神戸市の男性宅へ駆け付けた。病院から連絡があるまで待つ間、家に残されていたという自分宛ての遺書を見た。A4サイズくらいの紙7、8枚にパソコンで打ったとみられる活字が印刷されていた。本省の上司からの指示で森友学園関係の文書の改ざんに関わり、それが嫌だったという趣旨の内容が記されていた。

 病院から連絡があったのは翌日。ようやく男性と対面できたが、既に亡くなっていた。ベッドの上で、まるで眠っているかのような穏やかな表情だった。命日は、月は違うものの、4年前に亡くなった妻と同じ7日。晩年に妻は施設に入っていたが、男性は月に一度は顔を見せ、丁寧に顔を拭くなどきめ細やかに世話していたことを今も思い出す。

 佐川宣寿(のぶひさ)・前国税庁長官が辞任したと知った時は「少し気が楽になった」。しかし、その後に大阪地検特捜部が、他の職員とともに佐川氏を不起訴にしたことについては「何の罪にも問われなかったのは残念。当時の責任者なのだから」と話した。

 男性の葬儀の日、近畿財務局のかつての同僚があいさつをしてくれ、その後も何度か家にお参りへ来てくれた。しかし、亡くなった時の同僚や上司とは話したことがない。「書類を一人で作ったわけでもないだろう。当時一緒に仕事をしていた人たちは誰一人名乗り出ようとせず、真相を明らかにしてくれない」。今も釈然としない思いを抱える。

◇改ざんへの強い抵抗感

 国有地売却を巡る決裁文書の改ざんについて、財務省は6月、当時理財局長だった佐川宣寿・前国税庁長官が主導したとする調査報告書を公表。理財局が近畿財務局に要請し、改ざんに協力させたという。

 報告書によると、改ざんが始まったのは昨年2月26日。国会で森友問題が大きく取り上げられる中、国会審議がさらに紛糾するのを避けるため、政治関係者からの照会の事実や過去の国会答弁との関係で問題となりそうな箇所を書き換えたとしている。

 一方、「財務局職員はそもそも改ざんへの強い抵抗感があった」とも指摘。財務局の統括国有財産管理官の配下職員には、作業に関与させないことにしたと経緯を記している。これらの職員が自殺した男性を指すのかは不明だが、麻生太郎財務相は記者会見で、男性も理財局から改ざんの指示を受けていたことを明らかにしている。

 佐川氏は男性の自殺直後の3月、国税庁長官を辞任。大阪地検特捜部は5月、虚偽公文書作成容疑などで告発された佐川氏ら38人を不起訴処分にした。

 

森友追及に狼狽…安倍首相の「急所」はやっぱり昭恵夫人(2018年2月27日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 26日の衆院予算委員会は5時間の集中審議が行われたのだが、安倍首相がいつにも増して動揺、狼狽する場面があった。その内容はズバリ、昭恵夫人に関する質問だった。

〈妻や私、事務所が関係していたら総理も国会議員も辞める〉

 この発言についてあらためて追及したのは、立憲民主党の本多平直議員。問題視したのは、昭恵夫人付職員だった谷査恵子氏が森友学園の籠池理事長(当時)の要望を受け、財務省に問い合わせ、籠池氏にFAXで回答した一件だ。政府側は「ゼロ回答だった」と過去に答弁しているが、本多氏は、「ゼロ回答だったから、昭恵氏が関わっていないと言えるのか?」と詰めたのだった。

 答弁に立った安倍首相は落ち着きがない。「関わっていない」と一言で済むものを、グダグダ言い訳を並べたうえ、「議員でおられなかったからご存じないかもしれませんが」と、本多氏が昨年10月の総選挙まで浪人中だったことをあげつらい、揚げ句には、「質問の意味がわからない」と言い出す始末。

 そこで本多氏が、今回の昭恵夫人の件とは関係ないが、と前置きしながら、「例えば収賄や斡旋利得でも、結果が出なくても捕まる」と、ゼロ回答イコール関わっていないことにはならない旨を説明すると、今度は安倍首相は、その部分だけを捉えて猛反発。「斡旋利得を例として出されたら答えられない」「関係ないのならなぜ例に出すのか」とムキになる。

 最初の質問だけで、ここまでナント10分以上である。

 この狼狽ぶり。背景には安倍首相がここへきて「昭恵夫人と森友の関わり」に関して微妙に答弁を変えてきていることがある。安倍首相は「国有地の払い下げや認可には関わっていない」としきりに強調するのだ。谷氏の財務省への問い合わせにより「国有地の貸し付け」には関わってしまっているので、安倍首相は姑息にも、売却と貸し付けとを区別して逃れようとしているのである。

 ■一転「全く無関係と申し上げたことはない」

 本多氏はこの点も突いた。「では(昭恵夫人は)貸し付けの時期には関わっていたということですね?」と確認すると、安倍首相はさらに動揺し、「答弁の最中に何か言われるのは……」「ヤジはやめていただけますか」とすぐに答えられない。結局、「その(貸し付けの)段階で(昭恵夫人は)名誉校長を引き受けていたわけですから、全く無関係ということは申し上げたことはない」と認めざるを得なかったのである。

「『総理も国会議員も辞める』とたんかを切ったのは、逆に言えば当時からこの問題は『ヤバイ』と思っていたから。昭恵夫人については、安倍首相の知らない話が相当あるらしい。安倍首相は国会で夫人に関する質問をされるのが一番イヤで、かなりストレスになっているようです」(安倍首相に近い議員)

 本多氏は質問の最後に昭恵夫人の国会招致を求めた。野党は安倍首相の“急所”をもっと攻めるべきだ。

 

国・森友「口裏合わせ」(2018年2月16日配信『しんぶん赤旗』)

 

宮本岳氏 「値引き背景に昭恵氏関与」

 日本共産党の宮本岳志議員は15日の衆院予算委員会で、学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐって、国と学園側が2016年3月30日に開いた会合を録音したとみられる音声データの全内容を示し、国と学園側が値引きの「口裏合わせ」をしていた証拠を突き付けました。

 財務省は音声データの内容の一部について「事実関係の確認をした」と認めていましたが、「一部が切り取られている」「(会合は)さまざまな資料の提出をお願いしたいということ」などの言い訳を繰り返してきました。宮本氏は、会合の全体を記録した2時間分の音声データを事前に財務省側に渡して確認を求めたと強調。このなかで、国側の職員が「ストーリーはイメージしている」と切り出し、学園側の工事業者が「事実を伝えることが(森友)学園さんの土地(の価格)を下げることに反するなら、そちらに合わせる」と話していることを具体的にあげ、「これはただの『資料の提出』ではなく、価格を下げるのに役立つ資料だけだすということだ」と迫りました。財務省の太田充理財局長は「資料、情報の提出をお願いして必要な手順の協議をしていた」と繰り返すだけで、宮本氏が示した事実に対しては何の反証もできませんでした。

 宮本氏は「口裏合わせ」までして国有地をタダ同然で売り払った大本には、森友学園が計画していた小学校の名誉校長を務めていた安倍晋三首相の妻の昭恵氏の関与があったと指摘。事実を隠し続けた財務省の佐川宣寿・前理財局長(現・国税庁長官)の証人喚問を求めました。

宮本氏が示した音声データ(抜粋)

 国側の職員 うちも3メートルまでは国も試掘している。その下は何もやってないので。その下にあるごみというのは、国が知らなかった事実なんで、そこはきっちりやる必要はあるというストーリーはイメージしている。

 工事業者 ちょっと待ってください。そこは語弊があるので。3メートル下から出てきたかどうかは分からない。下から出てきたとは確定、断言できてない。そこにはちょっと大きな差がある。認識をそういうふうに統一した方がいいのであれば合わせる。でもその下から出てきたかどうかは、工事した側の方から、確定した情報としては伝えるのは無理。

 国側の職員 ○○さん(設計業者)もどこから出てきたか、判然としないという話で今までは聞いている。ただ今後、資料を調整する中でどういう整理をするのがいいのか協議させていただけるなら、そういう方向で話し合いをさせていただければありがたい。

 工事業者 虚偽をわれわれは言うつもりもないので、事実だけを伝える。ただ、その事実を伝えることが(森友)学園さんの土地(の価格)を下げることに反するならそちらに合わせることはやぶさかでない。

 国側の職員 言い方としては混在と。9メートルまでの範囲で。

 工事業者 9メートルというのはちょっと分からない。そこまでの下は。

 学園の弁護士 そこは言葉遊びかもしれないが、9メートルの所までガラ(ごみ)が入っている可能性を否定できるかと言われたら否定できない。そういう話だ。

 工事業者 その辺をうまくコントロールしてもらえるなら、そのへんにわれわれは資料を提供させてもらう。

 国側の職員 虚偽にならないように、あれが大事やと、混在していると。ある程度、3メートル超も一定あると。出るじゃないですか、ということ。

 工事業者 あると思う。

 国側の職員 そんなところにポイントを絞りたい。

 学園の弁護士 責任問題に発展しないように頑張っていただけるという意味での信頼を持っている。半分はわれわれのためにやってもらえると。半分はご自身のために頑張ってください。

 

佐川国税庁長官 喚問しかない(2018年2月16日配信『しんぶん赤旗』)

 

「森友」虚偽答弁は明白

幕引き図る安倍政権

 所得税や法人税の確定申告の受け付けが始まる16日、財務省や国税庁をはじめ、全国の税務署を包囲するデモなどが予定されています。最大の怒りの矛先は、8・2億円もの不適正な値引きが行われた「森友学園」への国有地売却をめぐる国会での虚偽答弁が明らかになった佐川宣寿前財務省理財局長(現国税庁長官)。そして、その佐川氏を「適材適所」といってかばい、疑惑の幕引きを図ろうとする安倍晋三首相や麻生太郎財務相です。 


国有地の不適正売却

意図的に隠蔽か

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(写真)籠池泰典理事長(当時)夫妻と懇談し記念写真をとった安倍昭恵氏=2014年3月15日(昭恵氏のフェイスブックから)

 佐川氏は国会で、問題の国有地売却交渉についての文書も面談の記録もすべて「廃棄し、残っていない」と一貫して答弁。売却価格の決定や価格そのものについても「適正だった」と説明していました。ところが、その答弁は、この間判明した内部文書や調査などでことごとく虚偽だったことが明らかになっています(表)。会計検査院も、値引きの“根拠”とされたゴミの量は「最大7割も過大」だったと指摘し、売却価格についても「十分な根拠がない」と指弾しています。

 国有財産=国民の財産である国有地を、特定の学校法人に法外な安値で売却した責任をだれ一人とっていないのは異常です。

 国有地売却をめぐっては、安倍首相の妻・昭恵氏付の政府職員が国有地の「売買予約付定期借地契約」などについて森友側の要望を財務省に伝え、回答を得ていた事実も判明しています。安倍首相や夫人と癒着関係にある学園への不正な国有地売却が行われた可能性のある記録を意図的に隠蔽(いんぺい)していたのではないか――。これこそが、佐川氏に問われている疑惑です。

「自発的な納税義務」

国民には履行迫る

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(写真)質問にこたえる佐川宣寿理財局長=2017年3月1日、参院予算委

 佐川氏は昨年7月、次官級の国税庁長官に“栄転”しました。

 その佐川氏は、国税庁に記者会見記録が残っている9人の歴代長官のなかで唯一、長官就任時の記者会見を行っていません。就任後も一度も会見に応じていないのです。

 驚くべきは、1月15日付の税理士業界紙「税理士界」に掲載された対談記事での佐川氏の発言です。「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」

 国民に対して忠実に職務を行うべき行政機関の幹部として、政権の疑惑にかかわる記録を隠蔽しながら、国民には「自発的な納税義務の履行」を迫る姿勢が納税者の怒りを呼ぶのは当然です。

 同記事で佐川氏は「納税者や税理士の皆様から信頼される組織運営」「適正・公平な課税・徴収の実現」に努めるなどとも表明しています。

 税務署で確定申告についての相談電話を受けている千葉県の派遣労働者の男性は「1日に20〜30本の電話を受け、そのうち1割がクレームです」「麻生(太郎財務)大臣は、『クレームはあるかもしれない』といっているが、あきれて腹が立ちます。大臣こそ適材ではない」と語ります。

「適材適所」「有能」と答弁

擁護する首相ら

 そんな佐川氏をかばっているのが安倍政権です。安倍首相は、佐川氏の国税庁長官起用は「他の全ての人事と同じく、適材適所の考えに基づいて行った」(1月24日の衆院本会議答弁)と胸を張りました。

 佐川氏の証人喚問要求を拒否する理由について、麻生財務相は「前職(理財局長)のことを国税庁長官として答える立場ではない」(13日、衆院予算委員会)などと説明。佐川氏本人については「極めて有能な役人だ」(15日、同委)と持ち上げる始末です。

 国民を前に会見にも応じられず、納税者の怒りを買って全国の税務署での徴税業務に影響を与えている人物がどうして「適材適所」「有能」だなどといえるのでしょうか。

昭恵氏含む証人喚問要求

野党各党は一致

 日本共産党は、昨年の特別国会で宮本岳志衆院議員が、国有地売却価格をめぐり国側職員と森友学園関係者が“口裏合わせ”を行っていた音声データを明らかにしましたが、今通常国会でも、「森友」疑惑追及の手は緩めていません。1日の参院予算委員会では辰巳孝太郎議員が新たな音声データの内容を示し、籠池泰典理事長(当時)が近畿財務局などとの面談で、昭恵氏から電話で「頑張ってください」と言われたと伝えていたことを明らかにしました。

 厳しい追及のもと、財務省は新たに計20件、300ページに上る内部記録を開示しました。近畿財務局担当者が森友側の要望をなんとかしてかなえようと法務担当者に相談を繰り返した記録です。何らかの“力”のもとで同学園を“特別扱い”していたのは明らかです。

 佐川氏の隠蔽と不適正な土地の売却の実態が明らかになったもとで、野党は昭恵氏に加え、佐川氏の証人喚問要求でも一致しています。

異様な売却の“背景”

便宜図った事情は

 日本共産党の小池晃書記局長は13日の記者会見で、佐川氏の虚偽答弁問題について「問題は、なぜ佐川氏が事実を隠し続けたのかだ」と指摘。国民の財産をできるだけ安く売ろうという異様な対応をした背景には、森友学園側に便宜を図らなければいけない事情があったのではないか。「それを明らかにするには、佐川氏と安倍昭恵氏の証人喚問は不可欠だ」と強調しました。

 

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財務相、佐川氏招致を否定 更迭不要、森友問題で衆院予算委(2018年2月13日配信『東京新聞』)

 

 麻生太郎副総理兼財務相は13日午前の衆院予算委員会で、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する国会答弁で批判を受けている佐川宣寿国税庁長官の国会招致に否定的な考えを示した。「国税庁長官として適任と判断した。(今後も)職責を果たしてもらいたい」と言明。首相も「財務相が答弁した通りだ」と述べ、野党の求める更迭は不要だとの認識を強調した。

 昨年の通常国会で、佐川氏は財務省理財局長として森友学園との交渉記録を「廃棄した」と繰り返し答弁した。麻生氏は「前職の折にさまざま答えているが、前職のことについて国税庁長官として答える立場ではない」と述べた。

 

財務省公表の森友新文書「面会記録ではない」 麻生氏(2018年2月13日配信『朝日新聞』)

 

 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、学園側との交渉経過が含まれる20件約300ページ分の文書を財務省が9日に公表したことについて、麻生太郎財務相は13日の衆院予算委員会で「(学園側との)面会記録ではない」とし、交渉の記録を「廃棄した」と説明してきた佐川宣寿・前理財局長(現・国税庁長官)の答弁に問題はないとの認識を示した。

 新たに公開した文書は、学園が土地を買う前に賃貸の交渉をしていた2013年8月15年4月に、近畿財務局内部で契約の法的な課題を検討した際の記録。交渉の経緯として、学園側に貸し付け料の概算額を伝えたとする記載や、学園側から再三の値引き要求があったことを示す内容も含まれていた。

 立憲民主党の長妻昭氏は予算委で、文書が学園側との交渉記録にあたると指摘。国会で交渉記録の提出を求められた際に「面会等の記録は廃棄した」と説明してきた財務省の佐川氏の答弁を問題視した。

 麻生氏は「(文書に)必要な情報として相手方の主張や当方の考え方が含まれている」としつつ、「具体的に相手方とのやりとりを記録した面会記録ではない」と述べた。財務省から今後新たな文書が出てくる可能性を問われると、「今後も(開示の)要請があり、仮に該当する資料があれば、提出に向けて努力する」と答えた。

 また麻生氏は、佐川氏を国税庁長官にあてた人事について、「多種多様な課題の解決にあたってきた人物で、適任だ」と改めて説明。記者会見が開かれていないことも「前職(理財局長)のことについて国税庁長官として答える立場ではない」とした。

 

佐川長官の国会招致不要=山口公明代表(2018年2月13日配信『時事通信』)

 

公明党の山口那津男代表は13日の記者会見で、学校法人「森友学園」への国有地格安売却問題をめぐり、野党側が求めている佐川宣寿国税庁長官の国会招致は必要ないとの認識を示した。

 山口氏は「長官の立場で(財務省)理財局長の所管事項に答弁するのは、かえっておかしい」と指摘した。 

 

佐川国税庁長官を国会招致すべき66%共同世論調査(2018年2月12日配信『共同通信』)

 

 共同通信社が10、11両日に実施した全国電話世論調査によると、学校法人「森友学園」の国有地売却問題を巡り、これまで財務省の担当局長として国会答弁をしてきた佐川宣寿国税庁長官の国会招致に関し、招致すべきだは66・8%、必要ないは23・2%だった。

 

佐川長官の喚問「協議する」 自民の豹変は“昭恵夫人隠し”(2018年2月11日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 佐川宣寿国税庁長官の国会招致が実現するか――。これまで、かたくなに佐川長官の国会招致を拒否してきた安倍自民党が突然、態度を変えている。

 9日、自民党の森山裕国対委員長が、「参考人招致の問題について重く受け止め、対応を協議したい」と記者団に明言したのだ。「対応を協議する」とは、永田町用語では「国会招致に応じる」とほぼイコールだ。なぜ、豹変したのか。どうやら、巧妙な“アッキー隠し”らしい。

 「安倍首相は国会で“モリカケ疑惑”を追及されることを本気で嫌がっています。とくに、昭恵夫人の国会喚問を求められることに強いストレスを感じている。そこで“昭恵喚問”を消し去るために、佐川長官をいけにえとして差し出すつもりだろう、とみられています。佐川長官は理財局長時代、安倍首相を守るために平然と虚偽答弁を重ねたように、答弁はお手のモノ。参考人招致されてもボロは出さないでしょう。安倍官邸は、佐川長官の国会招致に応じることで、森友疑惑をジ・エンドにするつもりです。参考人招致しても新事実が出てこなければ、野党が昭恵夫人の招致を要求しても、“佐川長官の招致に応じたから十分だ”“参考人招致しても新事実は出てこない”と突っぱねられると計算しているようです。実際、参考人招致しても野党の追及が不発に終われば、森友問題は“終わった感”が広がるでしょう」(官邸事情通)

佐川長官や国税庁にとっても、参考人招致に応じることは、決してマイナスではないという。

「週明けの2月16日から確定申告がスタートします。国会で“資料は廃棄した”と開き直った佐川長官は就任以来、会見も開いていない。このままでは、現場の職員が納税者から強い反発を受けるのは確実です。佐川長官が形だけでも国会で“国民に誤解を与えたことは申し訳ない”と頭を下げれば、納税者の批判も少しは沈静化できる。一度も会見を開いていない佐川長官もケジメをつけたことになります」(霞が関関係者)

 絶対に野党は、昭恵夫人の喚問逃れを許してはダメだ。

 

佐川国税庁長官は完全“アウト” 昭恵夫人は? 財務省がメールなど300ページ以上の新規文書を公開(2018年2月9日配信『AERA』)

    

 財務省は9日、学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、学園との交渉文書などを新たに20件、計300ページ以上にのぼる資料を国会に提出した。同省の佐川宣寿・前理財局長(現・国税庁長官)は国会で「廃棄した」と説明していたが、答弁の“ウソ”がまたもや明らかになった。

 同省は1月、神戸学院大の上脇博之教授による情報公開請求で5件の文書を開示したことで、約8億円の値引きについて同省と学園側が価格交渉していた疑いがさらに強まっていた。今回開示された資料を見ても疑念は深まるばかりだ。

 佐川氏は、昨年4月の国会で「パソコン上のデータは短期間で自動的に消去されて復元できないようなシステムになってございます」と答弁。メールについても、送受信から60日が経過したメールを自動削除していると同省は説明していた。

 ところが、今回公開された資料の中には、2014年9月1日付で近畿財務局の職員が局内の関係者に送ったメールも含まれていた。その内容は、学園との賃貸借の契約書案などに関するもので、文書の添付ファイルとともに、同省の統括法務監査官に向けて「素人が考えたものですので、これをたたき台にして、ご指導がいただければと思います」と書かれていた。

 同省は、公文書管理法の規定に基づいて保存が必要なメールは残しているとも説明している。だが、なぜ、添付ファイル以外にこのメールが「保存が必要」と判断されて残っていたのかは不明だ。ほかにも交渉過程に関係するメールが残されているのではとの疑問も残る。

 これだけではない。学園が小学校建設後に生徒が集まらず、経営が行き詰まることも想定して交渉方法を検討していた。 

 2015年2月6日付の「定期借地契約の想定問答等について(1統)」と題された文書には、「校舎は完成したものの、生徒が集まらないなどの理由で学校経営が立ち行かなくなり、森友学園が校舎を取壊して更地返還ができなくなった場合に国はどのように対応するのか」など、森友学園が債務不履行になった場合のことを近畿財務局内で議論していた。

昭恵夫人が関与するまでは強気の交渉だった財務省

 同年4月2日には、学園側が軟弱な地盤を理由に貸付料の減額を求めてきたことに対し、同省が法務担当者への法律問題の照会文書として、「『無理に本地を借りていただくなくてもよい』と投げかけることも考えている」と、学園側に契約破棄も選択肢に入れた強気の交渉をしていたことが記述されている。これに対して同省の法務担当者は「行政府の裁量の範囲」と、法律上は問題ないと回答している。

 ところが、安倍昭恵首相夫人が同年9月5日に小学校の名誉校長に就任したころから同省の対応が変化しはじめる。同年11月には、昭恵夫人付の政府職員が財務省に問い合わせをしていたことがすでに明らかになっているが、12月には交渉内容が一変している。

 同年12月1日には、賃貸契約から売買価格の交渉に変化していて、近畿財務局は法務担当者に対して、事前に「売買価格を学校法人に提示して買受けの可否を判断させるなどの調整が必要」と書いている。

 もはや財務省は言い逃れはできない状態だ。与党からも財務省批判が出ている。参院予算委員会の石井準一・与党筆頭理事(自民党)は、「廃棄した」とされた文書が新たに提出されたことについて「委員会の権威を傷つけるもの」と批判。これまで与党は佐川氏の国会招致に否定的だったが、このまま拒否を続けられるかは見通せなくなっている。

 「財務省が公表した一連の資料で佐川氏の”虚偽”答弁は明白です。森友事件で大阪地検に近畿財務局の資料は押収されているので、逃れられないと判断し、自発的に出したのでしょう。与党は昭恵夫人に飛び火しないよう、国会に佐川氏を呼び、幕引きを図るシナリオも考えているようです」(霞が関関係者)

 まもなく確定申告もスタートする。9日には、中小・零細企業の団体である全国商工団体連合会(全商連)が主催となり、財務省前への抗議が行われた。約30人が集まり、森友疑惑の解明や佐川氏の罷免を求める要請書を財務省に提出した。全商連関係者は怒りをこうあらわにする。

佐川氏罷免を求めるデモも開催

 「これまで消費税問題などでも要請書を出したことがあるが、その時は職員がきちんと対応して、回答ももらえた。それが今回は『回答はできない』とあらかじめ言われた。こんなひどい対応ははじめてです」

 「納税者一揆」を掲げたデモも予定されている。

 市民団体「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」は、確定申告が始まる16日に、国税庁周辺で佐川氏の罷免を求める集会を開く。市民の会は、昨年に佐川氏の罷免を求める2万筆の署名を集めた。

 今年に入っても批判の声がやまず、デモを開催することになった。同日には、札幌、大阪、神戸でもデモや抗議行動が予定されているという。

 市民の会の発起人である醍醐聡東大名誉教授(会計学)は、こう話す。

「すでに佐川氏がウソの答弁をしていることは明らかでしたが、今回の文書公開は“ダメ押し”です。佐川氏は、16日までに罷免されるのが当然ですが、安倍首相がそれでも『適材適所』と言っています。こんなことは許してはならず、国民が行動で示すしかありません」

 醍醐氏のもとには、すでに参加希望者やマスコミからの問い合わせが殺到しているという。

 一年のうちで最も税金が身近になる季節になり、納税者を欺き続ける佐川氏に対し、国民の怒りは爆発寸前だ。

 

森友関連の文書、新たに20件 検査院検査には提出せず(2018年2月9日配信『朝日新聞』)

 

 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、財務省は9日、学園側との交渉内容が含まれる新たな文書20件、計約300ページを国会に提出し、公表した。学園側の要求に応じられるか、同省が内部で検討している内容。同省は昨年実施された会計検査院の検査に対し、これらの文書を提出していなかった。

 昨年2月の問題発覚後、国会も関連文書の提出を求めてきたが、同省の佐川宣寿・前理財局長(現・国税庁長官)は交渉記録を「廃棄した」と説明していた。

 財務省が新たに提出したのは、学園が土地を買う前に賃貸契約を結ぶ交渉をしていた2013年8月〜15年4月に近畿財務局内で作成された文書。9日、参院予算委員会の理事懇談会と衆院予算委理事会に提出し、報道陣にも公表した。

 財務局は、学園の要求を受けて将来土地を売る前提で賃貸契約を結ぶことを検討。文書は、担当部署からの法的な問題の照会に、法務部門がどう回答したかの記録で、学園の要望内容も記されている。佐川氏は国会で「賃貸価格について学園側に先に伝えて交渉することはない」としていたが、文書には、契約前に「国の貸付料の概算額を伝える」との記載があった。財務省は「金額そのものは伝えていない」と取材に答えた。

 会計検査院は昨年3月、土地の売却価格の妥当性などについて検査を開始し、財務省に関連文書を要求。検査院は昨年11月に報告書を公表したが、財務省が今回公表した20件を検査院に提出したのは昨年12月以降だった。検査院幹部は「検査結果には影響しない」との見方を示す一方、「検査に提出するべき資料も含まれているだろうから、遺憾だと言わざるを得ない」としている。

 財務省は18年1月にも、大学教授らの情報開示請求に対し、それまで公開していなかった学園との交渉内容が含まれる5件の文書を開示した。同省は2月1日の参院予算委で「情報開示請求への対応の過程で文書があることに気づいた」と説明。ほかにも同様の法的な検討についての文書があると認め、「(文書中に)不開示情報がないか確認している」として確認が終わり次第、国会に提出する考えを示していた。

 立憲民主党の辻元清美国会対策委員長は9日、自民党の森山裕国対委員長と国会内で会談し、佐川氏の証人喚問を要求した。森山氏は会談後、記者団に対し、「重く受け止める」と述べた。ただ、国税庁長官は事務次官級で通常は国会で答弁しないことから、「おかしな前例を作ってはならない」とし、慎重姿勢を崩さなかった。

 交渉関連記録が新たに続けて出てきたことで、佐川氏の答弁の整合性が問われている。今後は与党が佐川氏の参考人招致や証人喚問に応じるかが焦点になる。佐川氏に対する批判も高まっており、今後の展開によっては佐川氏の進退問題につながる可能性もある。

 

森友文書、新たに20件300ページ 財務省が提出(2018年2月9日配信『朝日新聞』)

 

 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、財務省は9日、学園側との交渉内容が含まれる新たな20件の文書を国会に提出した。計約300ページに及ぶ。昨年2月の問題発覚後、国会は関連文書の提出を求めてきたが、同省の佐川宣寿・前理財局長(現・国税庁長官)は交渉記録を「廃棄した」と説明していた。

 財務省が新たに提出したのは、学園が土地を買う前に賃貸契約を結ぶ交渉をしていた2013年9月〜15年4月に省内で作成された文書。9日、参院予算委員会の理事懇談会と衆院予算委理事会に出した。

 同省は1月、大学教授らの情報開示請求に対し、それまで公開していなかった学園との交渉内容が含まれる5件の文書を開示。省内で法的な問題がないか、担当部署間で検討した内容などが記され、学園側の要求なども書かれていた。

 同省は2月1日の予算委で「開示請求への対応の過程で文書があることに気づいた」と説明。ほかにも同様の法的な検討についての文書があると認め、「(文書中に)不開示情報がないか確認している」として確認が終わり次第、国会に提出する考えを示していた。

 参院予算委員会の石井準一・与党筆頭理事(自民党)は9日、文書が提出されていなかったことについて「委員会の権威を傷つけるもの。財務省に重く受け止めるよう、猛省を促した」と述べた。1日の予算委で文書提出を求めた共産の辰巳孝太郎参院議員は「国会が求めた資料が出されずに今まできたのは重大」と批判している。

 交渉関連記録が新たに続けて出てきたことで、森友問題をめぐる安倍政権の姿勢が改めて問われることになる。自民党内では危機感が高まっており、佐川氏の国会招致に応じるかが焦点になる。

 麻生太郎財務相は9日午後の衆院予算委員会で、「交渉に関して法的な論点について近畿財務局内で検討を行った法律相談の文書で、交渉記録ではない」と説明した。「意図的に隠したものではない」とも語った。立憲民主党の山内康一氏の質問に答えた。

 

佐川国税庁長官、言行不一致? 旧大蔵省広報室長時代「情報開示を」 森友学園巡る答弁では「資料は廃棄」(2018年2月3日配信『毎日新聞』)

 

 

 確定申告が本格化する2月。国税庁長官として徴税事務のトップに立つのは、学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、国会答弁の食い違いが明らかになっている佐川宣寿前財務省理財局長だ。記者会見を開いていない佐川氏が、内部で説いてきた財務・国税職員のあるべき姿とは。

 「今月は国有財産特集です。厳しい財政事情の下、活用方法や売却状況に関心が集まっており、理財局は積極的に情報開示を行っています」。旧大蔵省の広報誌「ファイナンス」に1999年11月、こんな編集後記が載った。筆者は当時、同省広報室長だった佐川氏。税収の減少を補うため、遊休資産の売却を急ぐことに理解を求めていた。

 財務省が大阪府豊中市の土地を大幅に値引きして学園に売却したのは17年後の2016年6月。佐川氏はその直前、理財局長に就任した。不透明な売却を巡る国会答弁は、資料を示して国民に理解を求める姿勢とはほど遠いものとなる。

 昨年3月の参院予算委員会。佐川氏は「売買契約の締結をもって事案が終了しており、面会の記録などは残っていない」と説明を避けた。しかし近畿財務局は今年1月、本省との協議内容を記した内部文書を開示。国会への資料提出に否定的だった佐川氏の言動には疑問符が付く。また、学園との交渉では「価格をこちらから提示したことも先方からの希望もない」としていた。この点でも財務省はその後、担当者が学園側に「ゼロに近い額まで努力する」などと打診する音声データが事実だと認めている。

 昨年8月、佐川氏は長官として仙台国税局を訪れ、「公務員に対する国民の目はますます厳しくなっている」と訓示。「行政文書・情報の管理の徹底」を指示した。元国税調査官で「税務署の裏側」の著書がある税理士の松嶋洋さん(38)は「税務調査では『資料は廃棄した』という言い訳は通らない。佐川氏への反発から納税者の協力が得られなくなれば、実務が回らなくなる」と懸念を語る。

 日本税理士会連合会の1月15日付の機関紙「税理士界」に佐川氏の年頭インタビューが掲載された。「ささいな問題でも対応を誤れば組織の信頼を失ってしまう。納税者や税理士から信頼される組織運営を進めたい」と語り、「信頼」の維持に気を配る姿勢を示した。確定申告では、税務署が納税者から提出された領収書などを調査し、納税額が確定する。自身への反発が強まれば、現場の負担になりかねない。

 野党は佐川氏に対する証人喚問要求を強めているが、安倍晋三首相は2日の衆院予算委員会で「国会で決めることだ」と距離を置いた。1月24日にも佐川氏の起用を「適材適所だ」と述べている。醍醐聡東京大名誉教授(会計学)は「値引きを『根拠不十分』とした会計検査院に政府は反論できていない。それでも『適材適所』というのはふまじめだ」と指摘する。

 佐川氏は今後も、森友問題について説明することはないのか。国税庁広報広聴室は毎日新聞の取材に対し、「所管行政に関わらない事柄に関する質問は答える立場にない。(徴税事務は)適正な申告に理解をいただけるよう努める」と回答した。

 

籠池氏と連携 森友音声データから見えた昭恵夫人の“役割”(2018年2月3日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 安倍首相が、森友学園への国有地払い下げ問題についての昭恵夫人の関与を改めて否定した1日の参院予算委。共産党の辰巳孝太郎議員は、学園と国との交渉過程の音声データに、籠池泰典前理事長が「昭恵夫人からの電話があった」と発言していると明らかにした。

 共産党は委員会後、音声データを公開。3時間にも及ぶ交渉から聞こえてきたのは、高圧的な籠池夫妻と低姿勢の役人たち――そして、籠池氏と昭恵夫人の密な連携ぶりだった。

 籠池氏は2016年3月15日、小学校建設予定地の「新たなゴミ」について、昭恵夫人の名前を挙げて、財務省に直談判。翌日、籠池夫妻は工事業者らとともに、近畿財務局、大阪航空局と打ち合わせを持った。音声データはその時のものだ。

■財務省役人は昭恵夫人の存在を認識

 籠池氏は終始、強気。近畿財務局の池田統括官が「地下埋設物の撤去工事に関しては(籠池)理事長に伝わっていない点は反省」と低姿勢に出ると、籠池氏は「反省しているの。民間企業やったらすんませんでしたで土下座する話よ」「国の役人は謝れへんのか」とケチョンケチョン。池田統括官は「申し訳ございませんでした」と謝罪した。

 当時、財務省の役人は、昭恵夫人が小学校の名誉校長であることを知っていた。1日の予算委で太田理財局長が認めている。籠池氏の背後に首相夫人を見ていたと考えれば、役人の異常な低姿勢もうなずける。

 ハイライトは交渉の最終盤。「新たなゴミ」をどうするのか、大詰めを迎えていた。

籠池 全部取るとなるとナンボ? それ出してくださいよ。

工事業者 とにかく何千万という単位ではないですよ。

籠池 えーなんでそんなになるんかなー。昨日、我々が財務省から出た途端に、安倍夫人から電話がありましてね。「どうなりました? がんばってください」って言ってはったけど、何て答えたらええのか、分からへんわ。どうしよ。そちらの案は?

国 額を聞かないと。我々としては産業廃棄物を撤去すると。

終了間際、籠池氏は総理夫人との“連携ぶり”を役人に見せつけたが、これはあながち、籠池氏のハッタリとも思えない。というのも、誰とでも親しみやすい昭恵夫人は連絡を密に取るタイプだからだ。

 昭恵夫人と籠池夫人は2016年6月4日から17年3月16日まで、昭恵夫人から34通、籠池夫人から49通もメールのやりとりをしている。森友問題が世間で騒がれてからも数週間メールを続けていたほどだ。国と重要な協議を済ませた籠池氏に電話の1本入れても不思議ではない。

 籠池氏が財務省を出た途端の電話というのも、小学校建設についての昭恵夫人の並々ならぬ関心をうかがわせる。安倍首相は「私や妻が関係していたら首相も国会議員も辞める」と答弁しているが、電話が本当なら、昭恵夫人と籠池氏が連携を取って国との交渉を進め、役人もそう見ていたことになる。

昭恵夫人は電話をしたのか――安倍首相は「質問の事前通告をすれば、確認する」と答弁したが、人づての確認では真相はわからない。いよいよ昭恵夫人本人の証人喚問が必要になってきた。

「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」のメンバー、醍醐聰東大名誉教授が言う。

「もちろん、佐川長官の罷免や昭恵夫人の証人喚問は必要です。ただ、森友疑惑は昭恵夫人や佐川長官の問題で片付けてはなりません。疑惑が深まるばかりなのに、他人事を貫き、とぼけ続ける安倍首相や麻生財務相の責任が一番重い」

 通常国会で野党は安倍首相と麻生財務相のクビを取りにいくべきだ。

 

文書「全て廃棄」→存在 値引き「適正」→過大の疑い 佐川氏答弁 次々破綻(2018年2月2日配信『東京新聞』)

 

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 国有地が格安で売却された森友学園問題で、財務省の佐川宣寿国税庁長官が理財局長当時に答弁していた内容が国会審議で次々と破綻している。一方、安倍晋三首相は佐川氏の国税庁長官への昇格を「適材適所」と強調。政府・与党は佐川氏の証人喚問などの国会招致に応じない構えだ。

 財務省の太田充理財局長は1日の参院予算委員会で、国有地売却を巡り学園側との交渉に関する内部文書を、昨年11月の会計検査院の報告前日まで提出しなかったことについて「文書に気付かなかった。おわびする」と釈明。公表した5件以外にも、同様の文書があると明らかにした。

 佐川氏は理財局長当時の国会答弁で「交渉記録は廃棄し、残っていない」と全て廃棄したとの認識を繰り返してきた。

 共産党の辰巳孝太郎氏は1日の参院予算委で「われわれは国会で再三提出を求めてきたのに出してこなかった。明らかな隠ぺいで、政権は隠ぺいを許容している」と批判した。

 破綻している佐川氏の答弁は、これだけではない。8億円もの大幅値引きでの売却について、国有地の地下で見つかった新たなごみの量を推計した結果を「適正」と主張したのもそうだ。会計検査院の報告も「十分な根拠が確認できない」としている。

 値引きに至る経緯も同様だ。佐川氏は「価格を提示したこともなく、先方からいくらで買いたいといった希望があったこともない」と事前の価格交渉を否定していた。だが実際は、近畿財務局の担当者が売買契約前に学園の籠池泰典前理事長と協議し、籠池氏から値引きを求められると「ゼロに近い金額まで努力する作業をやっている」と伝えていたことが分かっている。

 立憲民主党の枝野幸男代表は1月24日の衆院本会議で、佐川氏の一連の国会答弁を「虚偽」と指摘し、更迭を求めた。

 

森友疑惑 籠池氏発言の音声記録 辰巳議員が示す 参院予算委(2018年2月2日配信『しんぶん赤旗』)

 

“昭恵氏から頑張れと電話”

 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、同学園理事長だった籠池泰典被告=詐欺罪で起訴=が、安倍晋三首相夫人の昭恵氏から「頑張ってください」と電話があったことを近畿財務局などに伝えていたことを示す新たな音声データが明らかになりました。日本共産党国会議員団が独自に入手し、辰巳孝太郎議員が1日の参院予算委員会で示したもの。安倍首相は事実関係について答えられなかったため、辰巳氏は昭恵氏の証人喚問を求めました。

 辰巳氏が暴露したのは、籠池被告と妻の諄子被告=同前=が財務省の田村嘉啓国有財産審理室長と面会し、国有地の取引をめぐって談判した翌日(2016年3月16日)に録音された音声データ。近畿財務局、大阪航空局の職員と面会した籠池被告が「昨日、われわれが財務省から出た途端に、安倍夫人から電話がありましてね。『どうなりました? 頑張ってください』って」と激励の電話があったと発言している様子が録音されていました。当時、昭恵氏は同学園が計画した小学校の名誉校長でした。

 辰巳氏は「昭恵氏は、籠池氏に電話をしたのか」「なぜ、昭恵氏が、籠池氏が財務本省に行ったことを知っているのか」と追及。安倍首相は「何年も前の話だから、本人に聞いたって覚えているかどうかわからない」としか答えられませんでした。

 参院予算委で辰巳氏は、15年11月ごろには昭恵氏付きの政府職員が田村国有財産審理室長に森友学園への国有地取引について問い合わせ、16年3月の面会の際には田村室長が籠池被告に「われわれとしても応援の気持ちでやっている」と述べていたことを指摘。国有地の売却に昭恵氏が関与していた疑いは強まったとして、昭恵氏の証人喚問を求めました。

 また、辰巳氏の質問に対し、財務省の太田充理財局長は、これまで公開した以外にも売却交渉に関する内部文書が存在することを明らかにしました。

 

論戦ハイライト 参院予算委(2018年2月2日配信『しんぶん赤旗』)

 

首相渋々“昭恵氏に聞く”

森友疑惑 辰巳議員の追及

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(写真)安倍晋三首相らに質問する辰巳孝太郎議員(右手前から2人目)=1日、参院予算委

 国有地が学校法人「森友学園」(大阪市)に“タダ同然”で売却された問題。1日の参院予算委員会で日本共産党の辰巳孝太郎議員は、新たに入手した音声データに同学園小学校名誉校長だった安倍晋三首相夫人の昭恵氏の関与をうかがわせるやりとりがあることを示して追及し、同氏の証人喚問が不可欠だと迫りました。

「丁寧な説明」崩壊

 辰巳氏は、財務省近畿財務局の内部記録が1月末に開示されたことについて、佐川宣寿同省理財局長(現国税庁長官)が交渉記録を「全て廃棄した」と説明してきたことは「完全に虚偽答弁だ」と批判。この記録を、同省が会計検査院に検査報告(昨年11月22日)の前日になるまで出していなかったことも、「会計検査の妨害であり、疑惑の隠ぺいだ」と指摘しました。

 「総理!」と繰り返し首相に答弁を求めた辰巳氏。首相はなかなか答弁に立ちません。

 辰巳 これでは総理のいう「丁寧な説明」の前提が崩れるのではないか。

 太田充理財局長 検査の過程では(記録の存在に)気づかなかった。

 麻生太郎財務相 太田の方から説明した通りの経緯だ。

 首相 ただいま財務大臣が答弁した通りだ。

 議場からは「どこが『丁寧な説明』か」との声もあがりました。

 辰巳氏は、ウソを繰り返した佐川国税庁長官の更迭を求めましたが、首相らは拒否。辰巳氏は「隠ぺいを容認する政権だ」と述べ、佐川氏の証人喚問を求めました。

「応援の気持ちで」

 辰巳氏は、学園理事長だった籠池泰典被告=詐欺罪で起訴=が、国有地の地中から“新たなゴミが見つかった”として対応を求め財務省本省へ直談判した際の音声データの記録(2016年3月15日)を読み上げました。この中で、理財局の田村嘉啓国有財産審理室長(当時)が「われわれとしても応援の気持ちでやっている」と応じたことについてただしました。

 辰巳 このときすでに田村氏は、昭恵氏と森友学園とのかかわりを認識していたか。

 理財局長 森友学園の(小学校)名誉校長をしていることをホームページなどで承知していた。

 辰巳 名誉校長として昭恵氏が森友学園とのつながりをもっていたことを認識していたわけだ。

「頑張って」と電話

 さらに辰巳氏は、籠池被告が財務省本省への直談判の翌日3月16日に近畿財務局などとやりとりをした音声データを入手したとして追及しました。

 辰巳氏は、籠池被告が「昨日(直談判した15日)、われわれが財務省から出たとたんに、安倍夫人から電話がありましてね。『どうなりました? 頑張ってください』って」と発言していることを紹介。「昭恵氏自身が籠池氏に電話して、直談判の中身をたずね、『頑張ってください』と応援の気持ちを伝えていたということではないか」とただしました。

 辰巳 昭恵氏は3月15日の籠池氏の直談判の直後に、籠池氏に電話したのか。

 首相 事前通告してください。

 辰巳 昭恵氏に聞いてもらえるかどうかというシンプルな質問だ。

 首相 何年も前の話であり、本人に聞いても覚えているかどうか分からない。次の質問の機会に事前通告していただければ当然、聞く。

 「昭恵氏に聞いて」と繰り返し求めた辰巳氏に、安倍首相はしぶしぶ「聞く」と口にしました。辰巳氏は「昭恵氏が土地売買に積極的に関与し、国有地のタダ同然の売り払いという『満額回答』となったのではないか」と指摘。真相解明のため、昭恵氏が国会で直接語るべきだとして証人喚問を求めました。

 

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森友、昭恵夫人が進捗尋ねる電話 首相は信ぴょう性に疑問呈す(2018年2月1日配信『共同通信』)

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題を巡り、新たに明らかになった音声データの中で、籠池泰典前理事長らが財務省に直談判した後、安倍晋三首相の昭恵夫人から「どうなりましたか」と交渉の進捗を尋ねる電話があったと発言していることが1日、分かった。共産党の辰巳孝太郎氏が国会質疑でこうしたデータを基に、昭恵氏の関与を追及したが、首相は籠池氏の発言の信ぴょう性について疑問を呈した。

 首相はこれまでに「私や妻が関係していたら首相も国会議員も辞める」と答弁している。野党は昭恵氏が交渉に関わった可能性があるとみて、追及を強める構えだ。

 

籠池氏「財務省から出た直後、昭恵氏から電話あった」(2018年2月1日配信『朝日新聞』)

 

 学校法人・森友学園(大阪市)への国有地売却問題で、学園の籠池泰典前理事長が2016年3月、財務省の担当室長と面会した直後、安倍晋三首相の妻、昭恵氏から「電話があった」と前理事長が語る新たな音声データがあることがわかった。共産党の辰巳孝太郎議員が独自にデータを入手したとして、1日の参院予算委員会で内容を明らかにした。

 籠池前理事長は16年3月11日、小学校を建設中だった国有地で「新たなごみ」が見つかったと財務省近畿財務局に報告。同月15日に同省本省で田村嘉啓・国有財産審理室長(当時)と面会し、昭恵氏の名前を挙げながら対応を求めていた。

 辰巳氏によると、音声データは田村氏との面会翌日、籠池前理事長夫妻と近畿財務局の協議を録音したもの。前理事長は「財務省から出た直後、学園の名誉校長を務めていた昭恵氏から電話があり、『どうなりました。頑張ってください』と伝えられた」と語っているという。

 参院予算委で辰巳氏に事実関係を尋ねられた安倍首相は「事前に質問の通告を受けていない」と即答せず、今後確認する意向を示した。

 田村氏との面会直後の同年3月ごろ、前理事長は国との協議で「棟上げに首相夫人が来る」と言及し、土地の値段を安くするよう求めていた。この協議で国の担当者は「(ごみへの補償は)きっちりやるというストーリー」と発言。国は同年6月、不動産鑑定価格からごみ撤去費8億1900万円などを値引きした1億3400万円で土地を売却した。

 

森友の音声データ、安倍晋三首相が信用性を疑問視 「ころころ言うこと変える人」(2018年2月1日配信『産経新聞』)

 

 財務省の太田充理財局長は1日の参院予算委員会で、学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、情報公開請求に基づきこれまでに公開した同省近畿財務局の内部文書以外に、土地売却に問題がないか検討した新たな内部文書が存在すると明らかにした。内容を確認した上で早期に開示する意向も示した。会計検査院への文書提出が遅れたことには「おわび申し上げる」と陳謝した。

 財務省は当初、交渉記録について「全て廃棄した」と説明していた。情報公開請求を受け、交渉に関する内部文書が次々と見つかっている。

 共産党の辰巳孝太郎氏は、国と森友側の交渉を巡り、新たな音声データを入手したと述べた。安倍晋三首相夫人の昭恵氏から籠池泰典前理事長に「どうなりましたか。頑張ってください」と励ます電話があったと前理事長が話す内容だとした。首相は「ころころと言っていることを変える人物の証言だ」と、信用性を疑問視した。昭恵氏から100万円の寄付を受けたとする森友側の主張について首相は、前理事長の偽証だとの認識を示した。

 

「森友」まだ文書存在 理財局長認める(2018年2月1日配信『毎日新聞』)

 

 財務省の太田充理財局長は1日の参院予算委員会で、学校法人「森友学園」への国有地売却問題に関する内部文書が、これまでに開示した5件以外にも存在すると明らかにした。太田氏は「公表によって法人などに被害を生じさせないか確認するなど、鋭意作業をしている」と述べた。共産党の辰巳孝太郎氏への答弁。

 財務省は当初、国会で「記録を廃棄した」と説明していたが、毎日新聞などの情報公開請求に対し、近畿財務局内の法的な「相談記録」などを開示した。一方、会計検査院への文書提出は、昨年11月の検査報告公表の前日だった。太田氏は「請求への対応の過程で存在に気付き、大至急提出した。おわび申し上げる」と陳謝した。

 また、学園が設置を計画した小学校の棟上げ式に安倍晋三首相の妻、昭恵氏を招待していたと主張していることに関し、首相は「招待されていない」と否定した。

 

財務省「森友で新文書」 会計検査院への提出遅れを陳謝(2018年2月1日配信『共同通信』)

 

 財務省の太田充理財局長は1日の参院予算委員会で、学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、情報公開請求に基づきこれまでに公開した同省近畿財務局の内部文書以外に、土地売却に問題がないか検討した新たな内部文書が存在すると明らかにした。内容を確認した上で早期に開示する意向も示した。会計検査院への文書提出が遅れたことには「おわび申し上げる」と陳謝した。

 財務省は当初、交渉記録について「全て廃棄した」と説明していた。情報公開請求を受け、交渉に関する内部文書が次々と見つかっている。

 

財務省「森友学園関係と認識」 首相夫人付照会に(2018年2月1日配信『共同通信』)

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題で2015年11月、財務省理財局の国有財産審理室長だった田村嘉啓氏が安倍昭恵首相夫人付の政府職員から照会を受けた際、「森友学園に関係しての照会であったことは認識していたと思う」とする見解を、同省が共産党の宮本岳志衆院議員に文書で示していたことが31日、分かった。

 同省の佐川宣寿前理財局長(現国税庁長官)は昨年3、5月に国会で、照会は「(国有地賃料についての)制度に関する一般的な問い合わせ」などと説明。森友学園関連と田村氏が認識していたかどうかは「私は承知していない」と明言せず、あいまいなままだった。

 

記録不提出は違法…会計検査院が引導渡す佐川長官のクビ(2018年1月31日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 森友学園への「国有地格安払い下げ」をめぐり、近畿財務局が学園との交渉を記録した内部文書を開示した一件。国会で「廃棄した」と繰り返した佐川宣寿国税庁長官(当時は理財局長)の大ウソ答弁がハッキリしたが、近畿財務局は会計検査院の資料要求にも応じていなかったことになる。これは明らかな違法行為で懲戒モノ。会計検査院が、麻生財務相に、佐川長官罷免を進言する可能性だってあるのだ。

 29日の衆院予算委で立憲民主の川内博史議員は、昨年11月22日に会計検査院が国会に提出した「国有地売却」の検査報告書を取り上げた。報告書にはこう書かれている。

<本件土地処分等に係る協議記録等について提出を求めたところ、近畿財務局は、売買契約終了後等に廃棄することとしていたことから確認することができなかったとしている>

 ところが、内部文書は存在しており、<できるかぎり学園側と価格の事前調整に努める>などと生々しい記録が残されていた。会計検査院の河戸光彦院長のこの日の答弁によると、近畿財務局から相談記録が提出されたのは、ナント国会報告前日の11月21日。検査の過程では出されていなかったため、もちろん報告書には反映されていない。

 これはどう見ても検査妨害である。

 会計検査院法では、会計検査院の求めを受けた省庁は書類の提出が義務付けられている(26条)。その上、故意または重過失により、提出に応じない場合は、監督責任者に懲戒処分を要求することができる(31条)。

 つまり、近畿財務局の不提出は違法行為で、会計検査院は、麻生財務相に「佐川をヤメさせろ」と言えるわけだ。

 佐川長官罷免の署名活動をする醍醐聰東大名誉教授が言う。

「麻生大臣は国会で『わざとではない』と強弁していましたが、国会報告前日に出したのは“提出した”というアリバイづくりとしか思えない。検査過程では故意に隠していた可能性が高い。仮に故意でないとしても、これだけ注目されている検査で、準備期間も十分にあったはずです。存在している書類を用意できないというのは明らかに重大な過失にあたります。会計検査院は、近畿財務局に検査妨害され、コケにされたのです。それでも、麻生大臣に佐川長官の懲戒要求をしなければ、それこそ政権に忖度したと言われかねません」

 「佐川長官辞任」署名は2万筆を超えた。いくら、安倍政権が「適材適所」と繰り返しても、会計検査院が罷免を求めれば、状況は一転する。2月16日からは確定申告が始まる。懲戒要求について河戸院長は「事実関係を踏まえ、慎重に検討する」と含みを持たせたが、コケにされた“番犬”は「佐川ヤメロ」と吠えるのか。

 

「棟上げに首相夫人」と値下げ要求 森友、国との協議で(2018年1月27日配信『朝日新聞』)

 

 

学校法人・森友学園(大阪市)への国有地売却問題で、29日からの衆参両院の予算委員会では安倍晋三首相の妻、昭恵氏と問題との関係が改めて焦点になる。2016年春、土地の売買をめぐる国との協議でも学園が「棟上げに首相夫人が来る」と言及し、値段を安くするよう求めていたことが新たにわかった。 

この協議で国の担当者は「(ごみへの補償を)きっちりやるというストーリーはイメージ」と発言していた。

 財務省は昨年11月、特別国会で「ストーリー」という発言などの協議内容の一部を事実と認めている。朝日新聞がノンフィクション作家の菅野完氏から協議を録音した音声データの提供を受けて分析したところ、財務省が認めた内容とその前後のやりとりが記録されており、当時建設中の小学校の名誉校長だった昭恵氏への言及が判明した。

 財務省の国会答弁によると、協議があったのは16年3月下旬〜4月。学園側が「地中深くから新たなごみがみつかった」とし、「ごみ撤去費を反映させた評価額で土地を買い取る」と申し入れた以後とみられる。国側は財務省近畿財務局と国土交通省大阪航空局の職員が出席した。

 音声データによると、学園側は小学校建設の工期がごみ問題によって「2週間以上遅れている」と説明。籠池泰典前理事長=詐欺罪で起訴=が「棟上げのときに首相夫人が来られることになっている」「どうするの僕の顔は」と発言し、学園の関係者が「死ぬ気で値段を下げるところに取り組んで欲しい」と続けた。約4分の別のやりとりを挟み、財務局の担当者が「(新たなごみの補償を)きっちりやるストーリー」と説明していた。

 財務省は「個別の発言を確認していないが、協議は学園に資料の提出をお願いするためのものだった。相手方の発言によって国の対応が変わるようなことはなかった」としている。

 

野党、「森友・加計」改めて照準=29日から予算委質疑(2018年1月27日配信『時事通信』)

 

 国会は週明けから、2017年度補正予算案に関する質疑が衆参両院の予算委員会で行われ、1問1答形式で論戦が本格化する。立憲民主党など主要野党は、昨年に続き学校法人「森友・加計」問題に照準を合わせ、安倍晋三首相の関与や公文書管理の在り方を改めて追及。「働き方改革」法案や防衛力増強に関しても政府の姿勢をただす。

 補正の実質審議は、衆院予算委で29、30両日、参院予算委で31日、2月1日にそれぞれ行われる。テレビ中継される基本的質疑の質問時間配分は衆院で与野党「1対2」となった。

 29日の衆院予算委は、午前の与党質問に続き、午後から立憲の長妻昭氏ら3人、希望の党の後藤祐一氏ら2人が質問に立つ。森友学園への国有地売却をめぐり、政府が「廃棄済み」と説明していた文書の存在が明らかになったことを受け、立憲は「隠蔽(いんぺい)」と批判。財務省理財局長として売却に関わった佐川宣寿氏を国税庁長官に昇進させた任命責任もただす。

 野党側はスーパーコンピューター開発会社による補助金不正受給や、JR東海発注のリニア中央新幹線工事をめぐる談合も取り上げ、政権幹部の関与に迫る構え。首相に近い同社の葛西敬之名誉会長の参考人招致も要求している。昨年、森友・加計問題で内閣支持率が一時急落した経緯を踏まえ、再び政権に「失点」を負わせたい考えだ。

 立憲などは、働き方法案で残業時間の上限を「月100時間未満」としている点を「過労死容認」と断じ、退勤から出社まで一定の時間を空ける「インターバル規制」を設けるよう主張。また、性能上は敵基地攻撃にも転用可能な長距離巡航ミサイル導入について、「専守防衛を逸脱しかねない」と批判する。

 

「森友と事前調整努める」財務局に内部文書 売買額巡り(2018年1月26日配信『朝日新聞』)

 

 

 学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却をめぐり2015年12月、財務省近畿財務局が売買金額について「できる限り学園との事前調整に努める」との方針を内部文書に残していたことがわかった。同省は国会などで事前の価格交渉はなかったと説明してきたが、整合性を疑わせる内容となっている。

 この文書は、財務局が今月、上脇博之(ひろし)・神戸学院大教授の情報公開請求に対して開示した文書の一部で、交渉担当者から法務担当者にあてた「照会票」(15年12月1日付)。これへの法務担当者の回答は請求の対象期間外に作成されたとみられ、開示されていない。

 財務局は15年5月、学園が10年以内に国有地を買い受けるとの条件で定期借地契約を結んだ。当時は売買価格は決まっておらず、売却前に不動産鑑定士による鑑定を踏まえて決める手順だった。照会票はその7カ月後に作成され、交渉担当者がその先の「事務処理手順(案)」について法務担当者に確認を求めていた。

 交渉担当者は「学園の資金繰りの問題などから国の提示金額で買い受けできない場合も考えられる」と記載。さらに、事前に「売買価格を提示して買い受けの可否を判断させるなどの調整が必要」、鑑定評価後に学園が買わないという事態にならないよう「売買金額については、できる限り学園との事前調整に努める」と記載していた。

 この国有地をめぐっては16年3月、学園が「地中から新たなごみが見つかった」と報告する一方、購入を申し出た。この年の5月ごろ、財務局の担当者が学園側に「1億3千(万円)」という金額を出し、「ゼロに近い金額まで努力する」などと発言していた音声データが、昨秋明らかになっている。

 財務省の佐川宣寿(のぶひさ)・前理財局長は昨年3月、国会で「(価格を)提示したことはない」と答弁。その後、佐川氏の後任が音声データの内容は認めたが、国が負担した汚染土の除去費1億3200万円を下回る額での売却は考えられないという趣旨だと説明。「価格交渉ではない」との姿勢は崩していない。

 朝日新聞はこの文書について24日、財務局に質問状を送付。財務局の担当者は25日、「回答を準備中で、現時点ではコメントできない」と話した。

 上脇教授は「国が学園に都合のいいストーリーを作っていたことを示す文書だ。国には説明責任があり、国会で真相を解明してほしい」と話している。

 

森友と「金額調整努める」 国有地売却 財務局に内部文書(2018年1月26日配信『東京新聞』)

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題を巡り、10年以内に学園が国有地を買い取る条件で、国と定期借地契約中だった2015年12月、財務省近畿財務局が将来の売却に向けた手順を検討し「(学園と)売買金額の事前調整に努める」との方針を内部文書に記していたことが分かった。

 学園は16年3月、国有地の地中からごみが見つかったと近畿財務局に申告。これを機に売却交渉が進み、学園側と近畿財務局の担当者が価格について協議したとみられる音声データの存在が明らかになった。財務省は価格交渉を否定しているが、内部文書についても説明が求められそうだ。

 内部文書は、上脇博之(かみわきひろし)神戸学院大教授の情報公開請求に対し開示された15年12月1日付の「照会票」。学園は15年5月、国有地の定期借地契約を締結しており、近畿財務局の売却担当者が、学園から購入の意思表示があった場合の事務手続きについて法務担当者に確認を求めている。

 売却担当者は不動産鑑定士の鑑定評価を踏まえ予定価格を決めるとした一方、「予算を必要とする不動産鑑定士の鑑定評価まで行った後に学校法人が買わないとする結果にならないよう売買金額については、できる限り学校法人との事前調整に努める」と記していた。

 上脇教授は「なぜ国側はこれほど低姿勢なのか。学園が買える値段で話を進めるのは常識的にはあり得ない」と話した。

◆「法律相談の記録」財務相が認識

 麻生太郎財務相は26日の閣議後の記者会見で、学校法人「森友学園」への国有地売却問題を巡り財務省近畿財務局と森友学園の交渉経緯を記した文書が開示されたことに関し、「法律相談の記録と承知している」と述べ、交渉記録には当たらないとの認識を示した。

 文書は、近畿財務局が大学教授による情報公開請求に対し、開示した。近畿財務局は「開示文書は内部の検討資料で交渉記録ではない」と、これまでも説明している。

 

森友交渉巡る文書開示 「内部資料」財務局が保管(2018年1月23日配信『東京新聞』)

 

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 学校法人「森友学園」の国有地売却問題を巡り、財務省近畿財務局が学園との交渉について、法令上の問題がないか対応を検討した文書を保管していたことが分かった。上脇博之(かみわきひろし)神戸学院大教授の情報公開請求に開示した。財務省は交渉に関する資料を「破棄した」と国会で答弁してきた。

 近畿財務局は「開示文書は内部の検討資料で交渉記録ではない」と説明しているが、詳細な経緯が記されていた。上脇教授は「交渉内容が含まれた文書があるのに、国民に知らせてこなかったのは問題だ。国の説明は不十分だ」と批判した。

 文書は財務局の売却担当者から法務担当者への質問を記した「照会票」と、回答をまとめた「相談記録」で2015、16年度分の計74枚。

 学園側は15年5月、大阪府豊中市の国有地について、小学校開校のために財務局と定期借地契約を締結。だが、くい打ち工事中に地中からごみが見つかり、16年3月11日、財務局に報告した。

 同24日付の照会票によると、学園は開校が遅れる恐れがあるとして「土地を安価に買い受けることで問題解決を図りたい」と要請。「無理であれば、事業を中止して損害賠償請求せざるを得ない」と主張した。

 ごみ撤去の法的責任を問われた法務担当者は、同31日付の相談記録で「明確な回答は困難」としつつも、賠償請求の可能性があり「速やかに方針を決定し、義務違反を免れる策を講じることが望ましい」と回答した。

 4月22日付の照会票では「賠償請求されない具体的な手法を検討したい」と記載。5月19日付の相談記録で法務担当者は「(学園が)今後損害賠償(請求)を一切行わないとの特約付きの売買契約を締結し直す方がリスクは少ない」と答えた。

 国有地は16年6月、ごみの撤去費として8億円余りを値引きされ、国の責任を免除する特約を付けて1億3400万円で学園に売却された。

 財務省の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)は昨年2月の衆院予算委員会で交渉記録は「残っていない」と述べ、その後も同省は同様の答弁をしてきた。

◆国、あまりに不親切

<神戸学院大の上脇博之教授の話> 森友学園と財務省近畿財務局との交渉記録については、昨年3月から情報公開請求してきた。訴訟や請求のやり直しを経た上で、やっと交渉に関連した文書が開示された。説明責任を尽くすべき国の姿勢はあまりに不親切で、意図的に隠したと言われても仕方がない。関連文書は保存されているのに、肝心の交渉記録が1年未満で破棄された判断には整合性は全くなく、違法な処分が疑われる。

 

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森友学園との交渉記録存在=「廃棄」主張、開示請求で判明−国有地売却・近畿財務局(2018年1月22日配信『時事通信』)

 

 学校法人「森友学園」に国有地が格安で売却された問題で、財務省近畿財務局が学園側との交渉に関する文書を保管していたことが22日、分かった。同省はこれまで、国会などで「交渉記録は廃棄した」と説明しており、内部の記録が明らかになるのは初めて。文書について、同省担当者は「近畿財務局内部の法律相談記録で、学園側との交渉記録ではない」としている。

 記録の廃棄などを追及している上脇博之神戸学院大教授の情報公開請求に開示した。文書は、同財務局内で、交渉担当者が大阪府豊中市の国有地から見つかったごみへの対応を法務担当者に問い合わせた照会票や相談記録。2016年3〜5月に作られ、A4判で計約40ページ。

 3月24日付文書では、学園側からごみ撤去費が膨大になるとして「撤去費を評価に反映させ、土地を安価に買い受けることで問題解決を図りたい」と提案されたことを記載。学園側が「開校時期が遅れれば大変なことになる」「無理であれば事業を中止して損害賠償請求せざるを得ない」と主張したとも記されている。

 交渉担当者は「価格に反映させることも資料次第で可能」とし、「法的にどういう責任を負うか」と相談。法務担当者は「速やかに方針を決定し、義務違反を免れる方策を講じることが望ましい」と回答していた。

 大半の文書では、事案概要などの形で学園の主張や交渉経緯が説明され、4月22日付文書では、学園側代理人が「(国有地を)買い受ける場合、損害賠償請求などは一切行わない」と約束したことなども記載していた。

 

公文書クライシス;「森友」メール、国は1通も「なし」 際立つ不透明さ(2018年1月21日配信『毎日新聞』)

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡って、担当省庁の財務省と国土交通省、両省の出先機関が交わした電子メールを情報公開請求したところ、1通も開示されなかった。あったものを廃棄したのか、メールを全く使わなかったのかについても両省は明らかにしなかった。学校設立の認可を担当する大阪府は3通を開示しており、政府のメールの扱いの不透明さが際立つ結果となった。

 毎日新聞は昨年9月、▽財務省近畿財務局▽国土交通省大阪航空局▽財務省本省▽国交省本省−−の4政府機関を対象に、大阪府豊中市の国有地が売りに出された2013年6月以降、売却に関係して4機関の間で送受信されたメールと、出先機関と森友学園が交わしたメールを全て公開するよう請求した。請求文書の特定が「不十分」とされたため「交渉の経過が分かるメールすべて」の公開を求めたところ、12月までに4機関から「不存在」「保有が確認できない」との回答があった。

 民進党が入手した森友学園の内部資料には、近畿財務局の職員が学園側とやりとりしたメールが含まれていた。資料にあった▽職員が「瑞穂の國記念小學院開校に向けご協力いただきありがとうございます」などと書いて学園側の弁護士らに送った16年4月1日のメール▽2人の職員が同4月15日に設計業者からCC(同報メール)で受信したとみられる「書類提出」と題するメール−−の公開も請求したが、財務局はいずれも「不存在」と回答した。

 近畿財務局は土地売却の手続きを、大阪航空局は土地の価格算定を担当し、土地に埋まったごみの撤去コストなどについて学園側と協議した。土地売却問題が国会で取り上げられると、両省の本省局長がたびたび答弁を求められていた。学園側とだけでなく、省庁間や本省と出先の間でメールが一切使われていなかったとは考えにくい。

 なぜメールが存在しないのか、4機関に責任ある職員への面談取材を申し入れたが、いずれも「(開示しないとの)通知書に書いた通りで、それ以上の回答は控えたい」として応じなかった。

 一方、大阪府私学課に土地売却に関する全メールの公開を請求をしたところ、森友学園に送ったメールが5本あると回答。昨年2月23日〜27日の3本が開示された。学園の籠池泰典理事長(当時)が保護者に宛てて書いたとされる手紙の内容が事実かどうか学園側に問い合わせるような内容だった。残り2本は「捜査機関に提出している」として非公開とされた。私学課は「これ以外のやり取りは、メール以外の手段だった」と説明している。【日下部聡】

 財務省や国土交通省などが毎日新聞に出した通知書や大阪府が開示したメールはここで読めます(大阪府のメールに記されていた法人・個人のメールアドレスは毎日新聞が黒塗りにしました)。

 

 財務省の不開示決定通知書

 国土交通省の不開示決定通知書

 近畿財務局の不開示決定通知書

 大阪航空局の不開示決定通知書

 大阪府私学課が開示したメール

 

 

<近畿財務局>森友交渉の文書開示 内部で検討の詳細な記録(2018年1月20日配信『毎日新聞』)

 

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省近畿財務局が学園との交渉について、役所内部で検討した詳細な文書を保管していたことが明らかになった。財務局が19日、毎日新聞の情報公開請求に開示した。財務省はこれまで国会で、学園との交渉内容について「記録を廃棄した」として詳しい説明を拒んでいた。文書の存在が初めて確認された。

 開示されたのは、財務局が2016年3〜5月に作成した「照会票」と「相談記録」。毎日新聞が昨年9月、「学園との面談・交渉に関する文書」として請求していた。国有地の売却担当者が、学園との交渉経緯を記した上で、財務局の法務担当者に、国の対応に法律上の問題がないか質問し、回答を受けた内容が記されている。

 3月24日付の文書によると、学園は17年4月開校予定だった小学校建設のために借りた国有地から廃棄物が見つかったとして、財務局に「開校が遅れたら大変なことになる」などと対応を要求。学園は「土地を安価に買い受けることで問題解決を図りたい」「無理であれば事業を中止して損害賠償請求をせざるを得ない」などと安値売却を持ちかけていた

 これを踏まえ、財務局の売却担当者が「国は貸主として法的にどういう責任を負うか」と質問。法務担当者は学園から契約解除や損害賠償請求などの可能性があるとして、「速やかに方針を決定した上で、義務違反を免れる方策を講じることが望ましい」と早期の対応を促していた。

 さらに、4月22日付の文書では、学園側弁護士から「価格が折り合って買い受ける場合、損害賠償請求などは行わない」と提案されたことを記載。財務局の売却担当者が学園からの賠償請求を免れる方法を質問、法務担当者は売買契約書の文案を添削していた。

 国有地を巡っては、財務局が16年6月、鑑定評価額からごみ撤去費約8億円を値引きし、学園に1億3400万円で売却したことが明らかになっている。

 近畿財務局は19日、毎日新聞の取材に「(相談記録などの文書は)面談・交渉記録とは考えていない。面談・交渉記録に関連して、財務局が保存・作成している文書として開示した」と回答した

 ◇説明なく不誠実

 NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長の話 財務省はこれまで国会で、学園との面談・交渉記録などを「廃棄した」と答弁してきたが、交渉経緯の一端を記した「相談記録」などの文書を開示せず、存在を説明してこなかったのは極めて不誠実だ。今後の国会では、これまでの答弁や財務省の姿勢が厳しく問われるべきだ

 

「森友」疑惑隠し 佐川長官が語る国税庁の“使命”(2018年1月15日配信『しんぶん赤旗』)

「適正・公平な課税」?

「信頼される組織運営」?

日税連会長対談で

 佐川宣寿国税庁長官が、日本税理士会連合会発行の業界紙「税理士界」(15日付)で、「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」など、同庁の“使命”を大いに語っています。

 佐川氏といえば、学校法人「森友学園」への国有地売却での約8億円もの大幅値引きの疑惑について、理財局長として財務省内に「記録がない」「適切に処理された」などと繰り返し、具体的説明を拒否し続けた人物。昨年7月には国税庁長官に“栄転”し、歴代長官が恒例として応じてきた就任記者会見も行わず、公の場では口を閉ざしていました。

 その佐川氏が、長官就任後初めて紙上で応じたのが、今回の同連合会の神津信一会長との“新春対談”です。司会者から、「組織のリーダーとして心掛けていること」を問われた佐川氏は、「些細(ささい)な問題でも対応を誤れば、組織の信頼を失ってしまいます」「リスク管理として、必ず上司に報告するよう徹底させています」などと答えています。

 「租税教育」への取り組みについての質問には、「次代を担う児童・生徒が、国の基本となる租税の意義や役割を正しく理解し、社会の構成員として、社会のあり方を主体的に考えることは、納税に対する納得感の醸成と民主国家の維持・発展にとって大変重要」だとして、「租税教育の充実」を支援するとしています。

 さらに、全国の税理士会員へのメッセージや今年の抱負を求められ、「納税者や税理士の皆様から信頼される組織運営」「適正・公平な課税・徴収の実現に努めてまいります」と応じています。

 疑惑隠しに貢献して出世した形での佐川氏の長官就任には、国民のあいだに怒りが広がっています。

 佐川氏の長官就任後には、財務省近畿財務局が実際には存在しない地下3メートルより深い地中のゴミが大量に出たなどの値引きのための“筋書き”による「口裏合わせ」を主導していたことを示す音声データの存在が新たに判明。国有地売却をめぐる事前の価格提示や交渉を一貫して否定していた佐川氏の国会答弁は“虚偽”だったことが事実上明らかになっています。

 財務省幹部として行った“虚偽答弁”について十分な説明もせず、不正な国有地売却の疑惑を放置したまま、「公平な課税」や「租税教育」「信頼される組織運営」などを語っても、「自発的な納税義務」への国民の「納得感」など到底得られないでしょう。

 

近畿財務局、森友文書一部開示へ 過去の請求に「廃棄」(2018年1月13日配信『朝日新聞』)

 

 学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却に関して国が作成した文書の開示を請求した大学教授に対し、財務省近畿財務局が、今月4日付で一部を開示する決定を出していたことがわかった。近く開示されるという。

 上脇博之・神戸学院大教授は、学園と国が売買交渉をしていた期間の「学園からの意見、要請に基づき庁内で作成した報告文書、回覧文書」などについて、昨年9月に開示請求。これに対し、財務局が開示決定した文書ファイルは計12件。決定通知書に添付された表題一覧によると、2015、16年度の「相談記録」との文書も含まれていた。

 財務省はこれまでの情報公開請求に対し、売却額や学園が開設を目指した小学校の設置趣意書を開示。一方、今回の請求の一部は昨年12月に先行して開示・不開示の決定があり、「学園との面談、交渉記録」は「保管期間満了で廃棄」として不開示決定していた。

 会計検査院は昨年11月、「学園との具体的なやりとりの内容は確認できず、妥当性の検証を十分にできなかった」と指摘した。

 

佐川国税長官に批判の声やまず 今年の確定申告は混乱必至(2018年1月10日配信『日刊ゲンダイ』)

 

「国会でおかしな説明をしていた人がいま国税庁長官をしている。これから確定申告だが、その前にしっかりとケジメをつけないといけない」

 これは、7日のNHK「日曜討論」に出演した立憲民主党の枝野幸男代表の発言。“おかしな説明をしていた人”とはもちろん、財務省の理財局長だった佐川宣寿国税庁長官のことである。

 いよいよ確定申告のシーズンがやってくる。今年は2月16日から3月15日だ。森友問題での佐川氏のデタラメな説明や資料廃棄を理由に、全国の税務署の窓口などで、納税者の“反乱”が拡大、大混乱する可能性がある。すでにこれまでにも税務署には、「来年からは資料を提出しない」「おたくのトップは認められている」などという不平不満の声が寄せられているという。

 佐川氏は昨年11月、全国税労働組合との団体交渉の場に出席。同組合の機関紙によれば、冒頭、次のような弁明があったらしい。

〈現場において納税者から様々なご意見がよせられていることも承知している。職員の皆さんには、特に年明け以降ご苦労をおかけすることとなる。職員の皆さんのご尽力は、納税者と信頼ある税務行政を築くうえで大変重要であり、この件に関して、まず私自身、心から感謝の気持ちをお伝えしたい〉

 長官就任の記者会見も開かず、国会に出てきて説明もしない。逃げまくる佐川氏こそ、税務行政の信頼を失墜させている張本人だ。国税職員は「『ご苦労をおかけする』の一言で済まされるのか」と、さぞ憤ったことだろうが、納税者の怒りは職員以上だ。

 立正大客員教授で税理士の浦野広明氏がこう言う。

「ただでさえ今の税務行政は『弱きをくじき、強きを助ける』になっているのに、そこへ佐川氏のいいかげんな態度が加わり、納税者の苛立ちは増すばかりです。国税庁長官は任期1年が慣例。佐川氏は、『今年6月まであと少し乗り切れば……』という感覚でいるのでは。財務省キャリアの国税庁長官は官僚の中でも特別扱いですから、庶民のことなど眼中にないでしょう。モリカケ問題と連動させて、野党は佐川氏をもっと追及して欲しい」

 通常国会は今月22日召集予定。枝野代表が佐川氏のクビを本気で取りに行くなら、納税者は大喝采だ。

 

「森友保育園」認可取り消し(2017年12月27日配信『毎日新聞』)

 

 大阪市は12月27日、運営に必要な保育士が確保できず改善されなかったとして、森友学園系列の高等森友学園保育園(大阪市淀川区)の認可を児童福祉法に基づき、31日付で取り消すと発表した。市は今月、園を運営する社会福祉法人に弁明の機会を設ける聴聞を実施したが、事業継続に向けた具体的な計画は示されなかった。

 

籠池夫妻、勾留5カ月 接見禁止、冤罪被害者の本読む(2017年12月21日配信『朝日新聞』)

 

 国などの補助金を詐取したとして、大阪地検特捜部が詐欺罪で起訴した森友学園(大阪市)前理事長の籠池泰典被告(64)と妻の諄子被告(61)の勾留が、7月31日の逮捕以来、5カ月に及んでいる。弁護人は11月に保釈請求したが、大阪地裁は却下。弁護人以外との面会ができない「接見禁止」が続く。

 関係者によると、夫妻はそれぞれ大阪拘置所(大阪市都島区)の独居房に収容されている。弁護人を通じて2人の状況を伝え聞く親族の男性によると、泰典被告は同特捜部の郵便不正事件で冤罪(えんざい)被害に遭った村木厚子さんに関する本を読んでいるという。運動不足で体調がよくないともいい、男性は「取り調べは終わっているのに、不当な勾留だ」と批判している。

 公判前整理手続きが進行中で、初公判の時期も見通しが立っていない。保釈や面会が認められない理由について、複数の検察関係者は、夫妻間や関係者との口裏合わせによる証拠隠滅の恐れを挙げる。

 学園が国から取得した土地で目指した小学校建設や幼稚園運営に絡み、国などから詐取したとされる補助金額は約1億7千万円。特捜部は設計などに携わった業者の関与を認定しつつ、直接利益は得ていないとして不起訴(起訴猶予)としており、関係者が連絡を取り合い、公判前に事実がうやむやにされるのを防ぐ意図があるとみられる。

 他の特捜事件でみると、ライブドアの証券取引法違反事件で有罪になった堀江貴文さんの最初の勾留は約3カ月。郵便不正事件で虚偽有印公文書作成・同行使の容疑をかけられた村木さんは約5カ月だった。いずれも全面否認していた。

 一方、昨年12月に大阪地検特捜部が立件した詐欺・背任事件で、松山市の住職の男が黙秘し、接見禁止が解けたのは公判で主張を明らかにした今年11月で、勾留は今も続く。地検幹部は「罪の重さや供述状況などで総合的に判断され、単純に比較できない」と話す。

 最高裁によると、初公判までに争点を絞り込む公判前整理手続きは長期化傾向にあり、平均は2006年に2・1カ月だったが、15年には7・4カ月。別の地検幹部は「手続きが長くかかる分、保釈は認められやすい傾向」と話している。

 

森友学園の再生計画案、債権者集会で可決 幼稚園継続へ(2017年12月20日配信『朝日新聞』)

 

 民事再生手続き中の学校法人森友学園(大阪市)の債権者集会が20日、大阪地裁であり、負債約30億円の97%の免除を求めた再生計画案が過半数の同意で可決された。学園は幼稚園事業を続けつつ、大阪府豊中市の国有地と、ほぼ完成している小学校舎を第三者に一括転売するよう国に働きかけていく方針だ。

 管財人によると、計画案には議決権のある債権者10者のうち、校舎施工業者の藤原工業(債権額約16億円)など7者が同意。大阪府(同約7600万円)は「補助金返還請求の公平性が保てない」として不同意、国(同約10億円)も同意しなかったとみられる。近く大阪地裁が認可するという。

 一方、籠池泰典・前理事長の経営責任を問う損害賠償額について同地裁は6日付で計10億3千万円と決定。管財人は確定後、前理事長の自宅を強制競売にかける方針という。

 この日、会見した学園の籠池町浪理事長は「今後は適正な幼稚園運営をしていきたい」と話した。藤原工業の藤原浩一社長は「国や管財人には、一刻も早く校舎の転売手続きを進めてほしい」と求めた。

 

「森友」協議 音声データ詳報(2017年12月20日配信『東京新聞』)

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、地中のごみを巡る学園側と国側の協議の詳細が記録された音声データ。協議には、学園側は籠池泰典(かごいけやすのり)理事長と、妻の諄子(じゅんこ)・幼稚園副園長、学園の代理人弁護士、小学校建設業者、国側は財務省近畿財務局の統括国有財産管理官とその部下、国土交通省大阪航空局職員が出席していたとみられる。 (肩書はいずれも当時)

 学園は2015年5月、小学校建設を予定する国有地について国側と定期借地契約を締結。翌6月から12月にかけて、土壌改良と地中のごみの撤去工事を実施した。

 しかし昨年3月11日、学園側が財務局に「地中から新たなごみが見つかった」と連絡。籠池氏が財務省国有財産審理室長と面会後の同月24日、学園側の代理人弁護士が財務局に土地の購入を申し出た。音声データに記録された協議はこの後の3月下旬に行われたとみられる。協議の詳細は次の通り。

 

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学園の代理人弁護士(以下、弁護士) 「うちはリスク負ってやっている。今、口約束できないのは分かるが、鑑定額はこちらの納得いくような金額じゃなかった場合、相当な話になる。そうならないよう資料の作成の仕方とか話の持っていき方は、知恵を絞ってもらわなければいけない。●●さん(工事業者)に見積もり出してくれとか、いろいろ言ったら頑張って出してくれると思うし、こういうのが要るんだというものを詰めて、ピックアップしてほしい。(中略)どういう理屈で、土地の評価を下げようと考えているのか教えてほしい。どうやるのが一番勘所がいいのか。(中略)土壌汚染があるかどうかの調査報告書がほしいなら調査はできる」

 工事業者 「分析の状態によって少しずれる可能性、後ろにずれる可能性も。もちろん前にいく可能性もあるが」

(中略)

 国側の職員 「われわれ土壌汚染調査も、(大阪府)豊中市にも一応手続きをして終わっている整理。まだ出てくるが。現状の考え方は、こういう状況を現認をしたうえで、これを地価に反映させるかして整理ができるのが一番ありがたい。(中略)もっと問題も発生するので、こういったものが内包されていることをもって反映させた形で提示をさせていただければありがたい」

(中略)

 弁護士 「調査報告書を2週間、3週間でできるものを出した方がいいのか。(中略)白黒はっきりさせない方がいいんじゃないのかという考え方もある」

 国側の職員 「そこはわれわれが現場確認した上で、いかに評価上反映させるか。冒頭話のあった●●さん(工事業者)に『こういう資料出ますか』とお願いしながら作業させていただくのがありがたい」

(中略)

 国側の職員 「僕はこの現場だけを見て、写真を撮って、内部にも早く要望を伝えていきたい。僕と●●(部下)は現場へ行って、写真だけ撮らしてもらって、そのうえでいろいろと手続きを進めたいと」

(中略)

 弁護士 「先ほど言ったように、土地の価格から処分費用を引いてもらえる話として、土地の評価ができるんだったら。そしたら、その時点で売買代金を処理するし、引けないと言うなら後で請求するしかない」

 国側の職員 「金額をまず提示して、それでどうかというところになる。それで合意に至らなければ当然、国が請求を受けるという話になると思う」

(中略)

 弁護士 「そういう値段と、そこから処理費用を引けるような形で話をもっていってもらうように。仮に引けなかったとしても、後で請求できるような形にしてもらいたいし、土地の値段もできるだけ低くということでお願いする」

(中略)

 籠池理事長 「棟上げの時に、首相夫人来られることになっている。だから日にちの設定をした。設定をしててこんなになってしまった。どうするの、僕の顔は。サミットが終わったついでに、こっち寄ろうかと。あほとちがうか」

 弁護士 「そういう目に見えない所で今回の件があるので、私から言えるのは、それはもう分かって、死ぬ気で、値段を下げるところに取り組んでほしい、知恵を絞ってほしいということ。(中略)『お願いします』と言って値段は下がらない。ちょっと失礼かもしれないが、下がる理屈を考えないといけない」

 籠池理事長 「信用できるのか。(中略)引っ返すことないの?」

 諄子副園長 「●●さん(設計業者)言っていた。『僕は、近財も航空局も信じてない』と言っていた」

(中略)

 国側の職員 「前の●●さん(工事業者)、3メートルまで掘ると、その後で、柱状改良というのをやって、その下からごみが出てきたというふうに理解している。(中略)その下にあるごみというのは、国が知らなかった事実なんで、そこはきっちりやる必要はあるというストーリーはイメージしている。3メートル以下からごみが噴出しているという写真などがもし残ってたら」

 工事業者 「ちょっと待ってください。そこは語弊があるので。三メートル下から出てきたかどうかは分からない。下から出てきたとは確定、断言できてない。そこにはちょっと大きな差がある。認識をそういうふうに統一した方がいいのであれば合わせる。でもその下から出てきたかどうかは、工事した側の方から、確定した情報としては伝えるのは無理」

 国側の職員 「●●さん(工事業者)からそういう話は聞いている。●●さん(設計業者)からもそういうふうに聞いている。どこの層から出てきたか特定したいのでこういう聞き方をしてきた。●●さん(設計業者)もどこから出てきたか、判然としないという話で今までは聞いている。ただ今後、資料を調整する中でどういう整理をするのがいいのか協議させていただけるなら、そういう方向で話し合いをさせていただければありがたい」

 工事業者 「虚偽をわれわれは言うつもりもないので、事実だけを伝える。ただ、その事実を伝えることが(森友)学園さんの土地(の価格)を下げることに反するならそちらに合わせることはやぶさかでない」

 

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 弁護士 「虚偽という表現があったが、それは●●さん(設計業者)も一緒で、そちら側から頼まれてこちらが虚偽の報告して、後で手のひら返されて、『だまされた』と言われたら、これは目も当てられない話になるので、それは嫌だという話。だから逆に、●●さん(工事業者)とか●●さん(設計業者)の方に、●●(以前の工事業者)がやった3メートルのところから全部出てきたか、と言われたらそれもノーだ」

 工事業者 「3メートル下より3メートルの上からの方がたくさん出てきてるので、3メートル下からはそんなにたくさんは出てきていないんじゃないかな」

 国側の職員 「言い方としては混在と。9メートルまでの範囲で」

 工事業者 「9メートルというのはちょっと分からない。そこまでの下は」

 弁護士 「そこは言葉遊びかもしれないが、九メートルの所までガラが入っている可能性を否定できるかと言われたら否定できない。そういう話だ」

 工事業者 「その辺をうまくコントロールしてもらえるなら、われわれは資料を提供させてもらう」

 国側の職員 「虚偽にならないように、混在していると。ある程度、3メートル超もあると。全部じゃない、ということ」

 工事業者 「あると思う」

 国側の職員 「そんなところにポイントを絞りたい」

(中略)

 弁護士 「言い方悪いが、まず半分はこういう事態が起きたので、損害を最小限にするために一生懸命やっていただけるということで信頼している。もう半分の問題は責任問題に発展しないように頑張っていただけるという意味での信頼を持っている。半分はわれわれのためにやってもらえると。半分はご自身のために頑張ってくださいと」

(中略)

 弁護士 「希望としては1億5千万かかるという報告をもらって、それより低い金額で買いたい」

 国側の職員 「理事長が考えているマイナスという話になるかというのは、金額の評価に関しては、やるだけやってみて、見ていただいて、判断していただくしかない。いくらと確約できる話でもない。●●先生(学園側代理人弁護士)からも言われて、最大限反映できるような形の手続きをやっている」

 

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「森友」国有地 売却協議の詳細判明 「9メートルまでごみ混在、虚偽にならぬ」(2017年12月20日配信『東京新聞』)

 

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 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、昨春行われた学園側と財務、国土交通両省との協議の詳細が本紙が入手した音声データで判明した。8億円超の値引きの根拠となった地中のごみについて、学園側の工事業者は「3メートルより下にあるか分からない」と主張し、虚偽報告の責任を問われかねないと懸念。これに対し、国側は「9メートルまでの範囲でごみが混在」しているとの表現なら、虚偽にならないと説得し、協議をまとめていた。 

 音声データには、昨年3月下旬に行われたとみられる学園側と財務省近畿財務局職員、国交省大阪航空局職員らとの協議などが記録されている。

 データでは、国側が「3メートルまで掘ると、その下からごみが出てきたと理解している」と発言。これに対し、工事業者が「ちょっと待ってください。3メートル下から出てきたかどうかは分からない。断言できない。確定した情報として伝えることはできない」と主張した。

 さらに国側が「資料を調整する中でどう整理するか協議させてほしい」と要請すると、工事業者は「虚偽を言うつもりはないので事実だけを伝える。ただ、事実を伝えることが学園さんの土地(価格)を下げることに反するなら、そちらに合わせることはやぶさかでない」とやや軟化した。

 この後、学園の代理人弁護士(当時)が「そちら(国)側から頼まれてこちらが虚偽の報告をして、後で手のひら返されて『だまされた』と言われたら目も当てられない」と懸念。工事業者は「3メートル下からはそんなに出てきていないんじゃないかな」と付け加えた。

 国側は「言い方としては『混在』と、『9メートルまでの範囲』で」と提案したものの、工事業者は「9メートルというのはちょっと分からない」と難色を示した。

 しかし、国側が「虚偽にならないように、混在していると。ある程度、3メートル超もある。全部じゃないということ」と説得すると、工事業者がようやく「あると思う」と同意。国側が「そんなところにポイントを絞りたい」と決着させた。

 国が算定した地中のごみの量を巡っては、会計検査院が最大7割過大に算定されていた可能性を示した。大阪航空局は、建設用地から実際に撤去したごみが国の算定の100分の1だったことを明らかにしている。

 音声データは11月28日の衆院予算委員会で財務省が存在を認めた内容を含む、より詳細なもの。本紙が著述家の菅野完(たもつ)氏から入手した。

 本紙の取材に財務、国交両省から回答はなく、学園の当時の代理人弁護士は「一切コメントしない」と回答。工事業者の代理人弁護士は電話取材に「国と学園側の落としどころの金額に沿ったものを出したが、根拠が十分ではなかった。こちらの試算では、ごみを完全に撤去する費用は9億数千万円だった」と述べた。

 

◆口裏合わせ はっきり記録

<解説> 会計検査院の検査では、学校法人「森友学園」への国有地売却で8億円超の大幅値引きの根拠となった地中ごみの処分量が最大7割も過大に算定されていた可能性が示された。一方で、契約に至る資料の一部が廃棄されたことなどが壁となり、価格決定の詳しい経緯は解明できなかった。

 しかし、今回、財務省が存在を認めた音声データの全容を詳細に分析すると、地中ごみが地下3メートルより下からはほとんど出ていないにもかかわらず、地下9メートルまであるという形にまとめようと、国側が口裏合わせを求めたともとれるやりとりがはっきりと記録されていた。学園側が、国側のストーリーに合わせて報告を行えば、虚偽にとられかねないと不安視している発言も含まれていた。

 なぜ財務省職員らがそんな無理をして値引きしようとしたのか。安倍晋三首相の妻の昭恵氏が小学校の名誉校長に就いたことや、首相夫人付きの職員が国有地について財務省に照会したことが影響した可能性はないのか。

 学園側への国有地の売却では、分割払いや価格の非公表などさまざまな特例がなぜか付されていた。その理由も政府はいまだに明らかにしていない。この音声データが明るみに出たのを機に、関係者を国会に呼ぶなどして、もう一度調査をやり直すべきだ。 

 

森友学園 撤去ごみは100分の1 値引き根拠一層揺らぐ(2017年12月13日配信『共同通信』)

 

 学校法人「森友学園」が大阪府豊中市の国有地を小学校建設用地として格安で取得した問題で、国土交通省大阪航空局は13日、建設用地から実際に撤去したごみが、算定の100分の1に当たる194トンだったと明らかにした。国は撤去すべきごみの量を1万9500トンと算定し、土地売却額を約8億円値引きしており、値引きした根拠がより揺らぐことになった。

 森友、加計学園の疑惑を追及する民進党調査チームの会合で、大阪航空局の担当者は「まだ学園内に積まれたごみもあるが、最終処分場で処理したごみは非常に少ない。森友学園関係の業者から豊中市に提出された資料では、昨年、194トンと報告されている」と述べた。

 民進党議員は7月の衆院閉会中審査で、同じ資料に基づき、実際のごみの量をただしたが、財務省担当者は「財務省としては確認していない」と答弁していた。

 会計検査院が11月に公表した検査結果では、国の見積もりを過大だと指摘。「値引き額の根拠が不十分で、算定の際に慎重な検討を欠いていた」と結論付けた。

 13日の会合では、売却手続きに関しても取り上げられ、財務省の担当者は「学園から損害賠償請求の可能性もあると言われ、通常かける期間を短縮する必要があった。早い対応が必要だという認識で、大阪航空局に依頼した」と説明した。

 大阪航空局によると、昨年3月30日に財務省近畿財務局から見積もりの依頼を受け、同4月14日に報告したという。同航空局の担当者は「限られた時間の中で見積もりを行った」と話した。

 調査チームの議員は「加計学園問題と同じだ。なぜ学園からの要請で行政手続きをゆがめるのか」と相次いで批判した。

 

森友問題、異例の契約なぜ? 国会閉会、不透明なまま(2017年12月11日配信『朝日新聞』)

 

 

 特別国会が9日に閉会した。学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却をめぐる論戦では、昨年3月15日の学園側と財務省室長との面会後、売買交渉が一気に進んだ様子が明らかになった。なぜ財務省は異例の契約に応じたのか。安倍晋三首相の妻、昭恵氏の存在の影響は。問題の核心は不透明なままだ。

財務省室長との面会後、売買交渉進む

 学園は、当面は土地を借りて小学校を建てるつもりだった。すぐ買い取ると決めたのが、昨年3月だ。

 この土地では前年、汚染土を取り除く工事をしたが、学園の籠池泰典前理事長は3月11日、「新たなごみ」が見つかったと財務省近畿財務局に報告。4日後、本省の田村嘉啓・国有財産審理室長(当時)が籠池前理事長と面会した。

 田村室長は前年秋、政府の昭恵氏付職員がこの土地について問い合わせた時、対応した人物だ。前理事長は「昭恵夫人の方からも聞いてもらったことがあると思う」と言いながらごみへの対処を求め、室長は「重大な問題と認識」「明日、財務局の方から伺う」などと答えていた。

 その後、交渉は加速する。特別国会では、学園側と国との生々しいやりとりが、音声データなどで次々に判明した。

 財務省は、財務局の職員が3月中旬、ごみの対応について「反省している」と前理事長に陳謝したことを認めた。学園が土地を買い取ると申し出たのは3月24日。学園側によると「払えるのは1億6千万円まで」とも伝えたという。

 財務局の職員が3月下旬〜4月ごろ、学園との協議で「3メートルより下にあるごみは(補償を)きっちりやるストーリー」と発言していたことも同省は認めた。「国のストーリーは『瑕疵(かし)を見つけて(土地の)価値を下げたい』」という3月30日の学園側の会議のメモも国会に示された。

 財務局の職員は5月中旬、国が汚染土の除去で1億3200万円を負担したのを念頭に、「1億3千(万円)を下回る金額というのはない」としつつ、「ゼロに近い金額まで努力する」と伝えた。不動産鑑定士が9億5600万円の鑑定価格を出したのは5月末。国は6月、1億3400万円で売った。公益目的で購入を希望する自治体や学校法人を優先する過去5年間の「公共随意契約」の土地取引1214件のうち、分割払いを認めたのはこの1件だった。

 財務省の太田充理財局長は国会で、最終的な売却額は提示していない、と正当性を一貫して主張した。前理事長は逮捕前、朝日新聞の取材にこう振り返っている。「(室長との面会後)対応はスムーズにいった」

 

森友疑惑「口裏合わせ」(2017年12月9日配信『しんぶん赤旗』)

 

山添議員 同席の課長喚問求める

 日本共産党の山添拓議員は7日の参院国土交通委員会で、学校法人「森友学園」への国有地売却の「値引きの根拠が不十分」とした会計検査院報告書への国交省の対応をただしました。

 国交省は、8・2億万円もの値引きの根拠とされた、ごみ撤去費用の算定を担当。今国会で、国と森友側が算定前に「口裏合わせ」をしていたことが明確になり、異例の形で便宜を図った理由や経過が問われています。

 山添氏は、報告書を「重く受け止める」と述べる一方、会計検査院の指摘を否定するような国会答弁を繰り返す石井啓一国交相に対し「ずさんな算定は不適切だったと認め、国民に謝罪すべきだ」と要求。大幅値引きの経過を再検証することも求めました。

 石井国交相は「(算定は)限られた時間の中のギリギリの対応」「今後、より丁寧な事務の遂行に努める」と述べるだけで、謝罪も再検証も、山添氏の要求には応じませんでした。

 国交省の蝦名邦晴航空局長は「口裏合わせ」の場に同席していた大阪航空局の永尾和也補償課長の名前を初めて明らかにしました。山添氏は、同氏の証人喚問を求めました。

 

「森友」ごみ撤去費10倍に 別見積もりでは8000万円(2017年12月8日配信『東京新聞』)

  

 大阪府豊中市の国有地が昨年、ごみ撤去費として8億円余りを差し引き学校法人「森友学園」に売却された問題で、財務省近畿財務局が2012年、購入を希望した別の学校法人に対し、撤去費を約8430万円と見積もっていたことを示す資料が7日、明らかになった。森友学園への売却に際しては新たにごみが見つかったとして算定され、積算方法も異なり単純比較はできないが、撤去費は10倍近くに膨らんでいた。

 資料は7日の参院内閣、文教科学両委員会の連合審査で質問した自由党の森裕子参院議員の求めに応じ、財務省が開示した。撤去費の妥当性を巡り、野党はさらに追及を強める構えだ。

 資料は12年7月付の国有財産売却の際に必要な「評価調書」。別表のごみ撤去費の算定書によると、国土交通省大阪航空局が09年度に実施した68カ所の深さ約3メートルの試掘調査で、実際に出てきたコンクリート片や廃材などの量に基づき計算されている。

 評価調書では、約8430万円の撤去費を差し引き予定価格は9億300万円となっていた。この学校法人は7億円程度で購入を希望していたとされ、予定価格と合わずに破談となり、森友学園が手を挙げた。

 15年5月に近畿財務局と定期借地契約を結んだが、学園は「新たに地中からごみが見つかった」として土地購入を申し出た。大阪航空局は地中3・8メートル(くい部分は9・9メートル)までの深さに、ごみが47・1%の割合で混入しているとみなし、ごみ撤去費は約8億1900万円と算定。これを値引きし16年6月、近畿財務局が1億3400万円で売却する契約を結んだ。

 会計検査院はごみの深さや混入率について、裏付けや確認が不十分だったと指摘している。近畿財務局は評価調書の作成を失念していた。

 

倉重篤郎のサンデー時評;深層スクープ 「森友・加計学園問題」は終わらない! 元会計検査院局長が「実名」激白(『サンデー毎日』12月17日号)

 

「致命的な疑惑はコレだ!」

▼積算のプロとしてあり得ない国交省のミス

▼「特例」づくしの財務省疑惑

 会計検査院による森友問題についての報告が出された。数々の問題を具体的に検証した重要な内容だが、お役所文書であるため疑惑追及の武器とはなり得ていない。そこで「サンデー時評」倉重篤郎が元会計検査院局長を直撃、検査のプロの目でモリ・カケ疑惑の本質を読み抜いてもらった。

 モリ・カケ疑惑解明の衆参予算委審議。どうも我々はある武器を上手に使い切っていないのではないか。

 それは、憲法90条に定められた独立機関・会計検査院の森友問題についての国会への報告(11月22日公表)である。

 森友学園に対し国有地約8800平方メートル(鑑定価格9億5600万円)を約8億2000万円分値引きし、1億3400万円で売却したことについて、「必ずしも適切とは認められない点や、より慎重な調査検討が必要だった点がある」と指摘。値引き原因になったゴミの量は「国土交通省の推計の3割から7割程度にすぎなかった」とした。このことの意味をもっと深く受け止めるべきではないのか。

 このお役所文書をどう正しく読み込むか。格好な人材を見つけることができた。有川博・日本大教授(69)である。氏は会計検査院で法規、会計課長、官房担当審議官(法令、検査研究)などを歴任、第四局長(文科省、農水省担当)を2002年まで務めた検査のプロである。

 有川氏には11月30日にインタビューした。たまたま検査院とOBたちの意見交換会があった日で、OBたちの森友報告に対する評は、総じて高かったという。有川氏も同様だ。

「かなり踏み込んだ印象だ。金額が出てないのが国民にとって不満だろうが、それ以外についてはおかしい点が全部書き込まれている。ただ、結びの表現が柔らかいところを、政府側答弁にすくい取られ、本来は森友案件という個別事件の検証が必要なのに、将来に向けて改善すればいいという答弁に利用されている」

 森友問題には、国有財産売却の特例、値引き積算の根拠という二つの疑惑がある。前者は財務省、後者が国交省の仕事だ。

 「後者から行くと、8億円という値引き積算は、通常では考えられない。物件の面積、深さ、ゴミの混入率、処理費用の単価という四つの積算の『いろは』もすべて根拠がない、適切に計算されていないということを推定できる文書になっている」

 明確に言っている?

 「書類がないので確認できないと言っているのか、書類があったとしても妥当ではないというところまで踏み込んでいるのか、必ずしもニュアンスがはっきりしないが、国交省が通常やっている仕事とは全く違う。どう考えても真剣にやっているとは思えない」

 「ゴミ混入の過大積算が3割から7割という。最低でも2億四、五千万円高く積算しているという指摘ともいえる。一部市民団体からはゴミを除去しなくても建物は建てられるという声もあるが、今回の検査報告ではゴミが入っていれば、除去して売却するのが適正な土地の処分価格だという論が立てられている」

 役人だけでこういうことはやれない

 その立て方は適正か?

「そうしないと、ゴミ入り国有財産は不良資産として減額しなければならなくなるが、そんな評価はどこも行われていない」

 「国交省は積算のプロとして、積算基準を全国に流し、公共の土木、建築工事はすべてそれを基に行われている。指導的立場の国交省が、四つの積算の『いろは』のうち一つミスったのならばまだしも、すべて誤ったというのは絶対あり得ない」

 あり得ないことがなぜ?

「そこが検査報告には書かれていない。誰がなぜこういう積算をしたのか。国交省も問われるし、そのまま受け取った財務省も問題だ」

 財務省もわかる立場か?

「国交省ほど積算のプロではないとしても、いくらなんでもこんな深いところにゴミがあるわけがないだろうとか、混入率がおかしいのではないか、単価の内訳をどう作ったのか。依頼側の財務省も検証すべきだが、その形跡が全くない」

「国会答弁を聞いていると、瑕疵(かし)担保責任を免除してもらうからその積算は粗々(あらあら)でいいんだという趣旨のことを言っている。ならば、何のための積算なのか。瑕疵担保責任を免除してもらうとしても、ゴミがどの程度入っているのかという積算を適正にやった上で、金額を決めなければいけない。財務省は国民の財産を管理するに当たって全くその責任を果たしていない。財務省の国有財産管理でこのような杜撰(ずさん)な事例は他にない。検査報告でも数百件調べたが、森友ケースしかなかった、となっている」

 財務省には、特例づくし、という疑惑がある。

 「第一の特例は、売却ではなくて将来買い取ってもらう貸し付け、という措置だ。貸し付けにすると、借地権などの問題もあり、土地の処分が難しくなる。従って、貸し付けは極力抑制されている。第二の特例は、その後貸し付けを売却に変更し、分割延納を認めたことだ。国有財産法上、延納上限は5年のはずだが、10年という優遇。法令違反の疑いも出てくる。第三の特例は、国は随意契約の内容について全部公開しなければならないのに売却金額を開示しなかった。これに国交省の異例の積算が加わり、突出した特例行政となっている」

 「検査報告には書いてないが、私自身が一番問題だと思うのは、国有地処分に当たり3カ月間公募をかけたことに関してだ。売却で公募しているはずで、森友だけが手を挙げ、その森友に特例を連発、まずは貸し付けを、次に10年の延納を認めた。最初からそれを示していたら、他に手を挙げたところもあったはずだ。行政として公正性、透明性を欠く。コスト計算以前の大きな問題として横たわっている」

 「欲を言えば、財務省の誰が、なぜ、どんな根拠をもって、特例の連発をしたのか。そこに突っ込んでほしかった。報告書の物足りない点だ。書類がなくてもヒアリングで確認できる。恐らくそこは国会に委ねたんだろうが、検査報告にももう少し端緒があればよかった。証拠がないということで終わらないで、ヒアリングした結果、つまり、追及したが、一切回答がなかった、調査に協力してもらえなかった、という報告もあり得る」

 国会審議の印象は?

 「政府は将来の制度改善は言うが、この問題がなぜ発生したのかという原因分析は避けている。財務省、国交省も他ではしっかり仕事をしているのだから制度や運用体制の問題ではない。森友という固有の事件について、なぜこういうことが起きたかをきちんと分析、解明しないと、本当の改善策にはならない。また同じような事件が起きると感じた」

 まさにその原因とは?

 「役人だけでこういうことをやるとは考えられない」

 政治的背景がある?

 「そこまではなかなかわからないが、役所の中でこのような杜撰なことをやることは考えられない。普段の両省の仕事ぶりからいっても考えられない」

 安倍晋三首相夫人付の女性秘書が財務省宛てに森友側の意向を受けた照会文書を出している。

 「あのような文書を投げること自体、あってはならないように思う。こういう問題を発生させないために繰り返し指摘されてきたのは、外部からそういう働きかけがあった場合には必ずそれを記録、上司に報告して、請求があれば常に開示できるという仕組みを作らなければならない、ということだった。今回もこうやってうやむやにしてしまうと、また外から何かあった場合、同じ問題を繰り返してしまう」

 「神戸製鋼、日産、東レなど一連の製造業不祥事に対して、監督官庁がしっかりと原因分析して改善しろと言っているが、今回、政府が森友問題できちんとした原因分析もなしに改善策を図る、というのは民間企業に対して示しがつかないのではないか。そういう気持ちで国会審議を聞いていた」

「会計検査院報告」で解散を決断?

 検査院の独立性は制度的に担保されている?

「人事と予算については悩ましい点がある。検査官人事は内閣が決める。検査結果はその検査官(院長を含め)3人の合議で決まる。どんな風を受けても検査を貫く覚悟がないと、独立といってもなかなかつらいところもある」

 今回は覚悟を示した?

「そう思います。政府にはあまり面白くない報告と思います。独立の矜持(きょうじ)は守ったのではないか」

 加計(かけ)問題への関心は?

 「森友は、入り口はオープンな公募だが、森友が当事者になった途端、どんどん特例を認めた。その点、加計も似ている。というか、国家戦略特区自体が特定のところを優遇するシステムだから、森友以上に公正で透明性の高い手続きで進めなければならないのに、森友に負けず劣らず公正性、透明性を欠いた手続きで進められた印象だ」

 事件性は?

「森友の事件で行政が国家に損失を与えかけたことは間違いない。事件性はゼロではないのかもしれない。加計のほうはそもそも法律が想定していない世界で、国家戦略特区制度の存在意義が問われるのではないか。国家発展のための特区という制度を考えておきながら、運用が不公平なら特区ではなくて特例になってしまう」

 ここで、有川氏に今回の検査院報告提出の時期について、従来からの疑問をただした。つまり、今回の検査院報告はいつの段階で出来上がっていたのか、ということである。

 というのも、私がこの報告が出てくるという話を最初に聞いたのは、9月6日だからである。某公明党幹部がこう漏らしたのだ。

 「私は早期解散はないと思っていたが、最近考えを変えた。というのも、会計検査院の報告が9月下旬に出る予定になっており、その中身が政権に対して厳しい内容となっているからだ。例年同様、9月下旬に臨時国会を開き、冒頭に検査院報告が出てくると、国会は森友追及国会となり、10月22日予定の衆院3補選(愛媛3区、青森4区、新潟5区)にも影響が出て、安倍政権は失速しかねない」

 解散の「か」の字も表面化していなかった時期である。安倍氏が冒頭解散に向け政権要路に根回しを始めたのはその後のことである。

 元来、この解散の本質は、モリ・カケ隠しではあったが、9月段階での検査院の森友報告封じというのが、その直接動機ではなかったのか。

 有川氏はこの点については以下のように語った。

 「私自身は検査院報告がこれだけシビアとは思っていなかったので、解散とリンクしているとは考えたことはなかった。今そう伺うと、そういう可能性もゼロでもないのかなと……」

 報告がいつ出来上がっていたか、というのは?

検査院の中でもシークレットではないか。ただし、検査官会議という意思決定機関にかけて決定した後、出さずにあたためていたとすれば問題だが、それは考えにくい」

「国会審議」に前川喜平氏が怒る!

 有川氏には前号、前々号でインタビューに応じてくれた前川喜平・元文科事務次官についても聞いた。

「個人的な好みで言ってはいけないんでしょうが、元公務員から見て、矜持を持った事務次官がおられるのだな、と。忖度(そんたく)する人のほうが出世すると思っていたが、政府と相対しながらトップになる人がいるのであれば、役所もまんざら悪くはないなと思いました」

 その前川氏は、今回の国会審議について次のような印象を書き送ってくれた。

 「安倍首相が自身の関与がなかったと主張するため、私の名前を持ち出されるのは、正直なところきわめて不愉快です。私自身は、2016年9月9日に和泉洋人首相補佐官から『総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う』と言われた時、加計学園獣医学部の早期新設は安倍首相自身の強い意向だと感じました。文科省で存在が確認された文書に『総理のご意向』『官邸の最高レベルが言っている』などの記述があったのは客観的事実であり、安倍首相自身の関与を疑わせるのに十分な証拠です。さらに、その後新たな情報(2016年10月21日付萩生田(はぎうだ)光一官房副長官発言概要や2015年4月2日の関係者の官邸訪問など)が明らかにされたことから、私としては、安倍首相自身が直接指示していた疑いがますます濃厚になっていると思っています。国会での自民党の質問者は、私の発言そのものに反証を出すことができず、発言者である私自身の信用性を落とそうとする質問に終始しているように思われます。このような質問を繰り返すのであれば、真相解明には全く役に立たないので、質問時間を返上してもらいたいと思います」

 再び有川氏に聞く。検査院OBで有川氏のように解説してくれる人は他にいるのだろうか。

「私は教員をやっていて、毛色が違うと見られている。一般のOBの方は、役人をやめてもなかなか役人時代のヒエラルキーから抜けることは難しいように思う」

 前川氏にしても有川氏にしても国民目線のある役人よ、もっと出て来い。

 

くらしげ・あつろう

 1953年、東京都生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局、整理、政治、経済部。2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員

 

籠池夫妻4カ月勾留のウラ…検察は司法取引で口封じ画策か(2017年12月7日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 補助金詐欺の疑いで逮捕、起訴され、4カ月間も大阪拘置所に勾留されている「森友学園」前理事長の籠池泰典、諄子夫妻。今さら証拠隠滅や逃亡を図る恐れもなく、容疑を認めて不正受給したとされる補助金は返還した。にもかかわらず、保釈申請は却下され、家族との接見は禁止だ。さすがに法曹界からは人権無視の「人質司法」との批判が出ているが、そんな悪徳司法の「本当の狙い」が大阪司法記者らの間でささやかれ始めた。

 森友側と近畿財務局担当者が口裏合わせし、売買ストーリーをつくっていた証拠の録音テープが明るみになった今、安倍政権は何が何でも籠池夫妻を保釈したくないだろう。籠池前理事長が「間違いない」と断言し、「実はこんな録音テープもある」と言い出せば大変だからだ。ただ、保釈されようがされまいが、結局、裁判が始まれば籠池前理事長は例の調子でどんどん証言するだろう。この先も森友問題は続くわけだ。裁判所も検察も、そんなコトは百も承知なのに、なぜ、2人を拘置所にブチ込んだままなのか。

 「ささやかれているのは、検察が籠池夫妻の口封じのために司法取引を持ちかけているのではないか、ということ。昨年5月の改正刑事訴訟法の成立で、来年6月までに協議合意制度、いわゆる『日本版司法取引』が始まる。対象には経済犯罪が含まれているから、おそらく、今回の補助金詐欺も対象です。そこで検察は2人に司法取引をチラつかせて『罪を軽くするから、これ以上、政権にとって都合が悪くなることをしゃべるな』と説得しているのではないか」(在阪司法記者)

 森友事件の場合、罪を軽くするも何も、もともと罰金刑がせいぜいの事案だが、2人が司法取引に応じるとどうなるのか。元検事の落合洋司弁護士はこう言う。

「裁判所が保釈を認めていないのは、籠池夫妻が黙秘を続けているため、罪証隠滅の恐れあり――とみているからでしょう。夫婦だから仮に保釈しても2人を面談、接触の禁止にもできません。籠池氏が司法取引に応じるか否かはともかく、保釈などを狙って不同意にしていた証拠に同意する可能性はあるでしょう」

 ロシア疑惑で、米国の特別検察官は大統領の関与に迫るために司法取引を使ったが、仮に日本の検察が政権を守るために司法取引を使おうというのであれば何をか言わんや、である。

 

テレビで森友問題を痛烈批判 福田康夫元首相の“アベ嫌い”(2017年12月4日配信『日刊ゲンダイ』)

 

「国家の記録を残すということは、国家の歴史を残すということ。その時の政治に都合の悪いところは記録に残さないとか、本当にその害は大きい」「後世に対する悪い影響を残すだけ」――。福田康夫元首相が「森友問題」を痛烈批判だ。

 3日のTBS系情報番組「サンデーモーニング」のインタビューで、福田氏は、森友問題で財務省が公文書を破棄した――と説明したことに対し「これは問題ありますよ。会計検査院が審査すらできないのは論外」と怒りをぶちまけたのだ。

「(記録廃棄を)正々堂々とやりました、みたいな言い方をすべきではない。間違っていましたぐらいのことを言うべき」。佐川宣寿国税庁長官の理財局長時代の国会答弁を振り返り、ズサンな公文書管理について批判した福田氏。だが、本当に批判したかった相手は財務省じゃないだろう。

■「国家の破滅」発言に続き2回目

 何といっても永田町で福田氏のアベ嫌いは有名だ。2人の政治信条は、水と油、正反対だ。靖国神社の参拝について「相手(周辺国など)が嫌がることをあえてする必要はない。配慮しないといけない」と語った福田氏と、知ったこっちゃないという姿勢の安倍首相。対北朝鮮でも、08年の日韓首脳会談で、李明博大統領に「北朝鮮を説得する時、『日本からのボーナスがある』と話してほしい」と伝えたという福田氏に対し、安倍首相は「最大限の圧力を加える」だ。

 福田氏は8月にも共同通信の取材に「政治家が人事をやってはいけない。安倍内閣最大の失敗」「国家の破滅に近づいている」と政権批判していた。おそらく今回のTV出演も怒りの矛先は安倍首相だ。

「福田さんは会合でも度々、安倍さんの話をしていますよ。『何であんなにムキになるのかねぇ』とか『トップがすぐに拳を振り上げちゃダメでしょ』とか。党に息子さん(達夫)がいるから公の場での発言は控えていますけどね」(自民党関係者)

 福田氏のところには、現職の官僚や自民党議員から安倍首相の批判が持ち込まれているという。政治評論家の山口朝雄氏がこう言う。

「元首相の福田さんから見れば、内政も外交もメタメタな安倍政権に対して忸怩たる思いがあるのでしょう。メディアに露出したのは、執行部に唯々諾々と従うだけの自民党議員に『これでいいのか。情けないと思わないのか』と叱咤激励の意味も込められていると思います」

 自由も民主主義も失ったのが今の安倍自民の姿なのだ。

 

首相の森友説明「不十分」75% 共同通信社・世論調査(2017年12月4日配信『共同通信』)

 

 共同通信社が12月2、3両日に実施した全国電話世論調査によると、学校法人「森友学園」への国有地の売却額算定がずさんだったと指摘した会計検査院報告を踏まえた安倍晋三首相の説明について、75・0%が不十分と答えた。

 11月30日まで4日間の国会論戦で、安倍首相は「真摯(しんし)に受け止める」と何度も繰り返すだけで、真相はあいまいな回答に終始。内閣支持率は47・2%で、11月の前回調査に比べて2・3ポイント減少した。不支持率は40・4%だった。

 また、皇族減少対策として、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる女性宮家の創設について「するべきだ」との賛成意見が61・3%に上り、「必要はない」の26・0%を上回った。

 

<森友売却問題>「口裏合わせ」深まる疑念 二つの録音(2017年12月2日配信『毎日新聞』)

 

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題を巡り、11月2730日の衆参両院の予算委員会で二つの音声データが新たな焦点に浮上した。ともに昨春、近畿財務局と森友側の協議を録音したもの。値引きの理由とされた地下ごみの存在の口裏合わせをするかのようなやりとりと、売却の最低価格を巡る交渉とも受け取れる内容だ。財務省はそうした意図を否定したが、反論の根拠はほとんど示さずじまいで、野党は今後も安倍晋三首相を追及する方針だ

 ◇「価格交渉」も浮上

 音声の一つ目は、昨年3月11日に森友側が財務局に連絡した新たな地下ごみの深さを巡るやりとりで、財務省は同月下旬から4月ごろだと認めた。

 政府は、深さ3.8メートルと同9.9メートルから新たに見つかった地下ごみの撤去費用を8億円値引きの理由にしている。

 だが音声では、3メートルより深いごみか不明だと訴える工事業者に対し、政府職員が9メートルまでごみがある「ストーリーをイメージしている」などと、ごみの量を過大に見せるかのような会話が記録されていた。

 財務省の太田充理財局長は予算委で「会話の一部が切り取られたものだ」と反論。あくまで新たなごみの資料提出を森友側に求めた会合で、口裏合わせではなかったと釈明した。

 しかし会計検査院の河戸光彦院長は、「9.9メートル」の根拠とされるくい打ち工事で出たごみが「浅い部分に存在したと考えられる」と述べ、政府の主張をほぼ否定した。太田局長は資料が実際に提出されたかどうかも明言せず、工事関係者の話など「いろいろな調査の結果」だと強弁した。

 もう一つの音声では昨年5月半ばに、森友学園の籠池泰典理事長(当時)が国有地の「ゼロに近い形の払い下げ」を要求。当初のごみの撤去費用として政府が負担した1億3000万円は下回れない、と政府職員が釈明している。売却価格が1億3000万円未満になると、土地を売ったのに政府の収支がマイナスになってしまうからだ。

 ただ同時に職員は「(差額が)ゼロに近い額まで努力する」とも回答。実際に土地は翌6月、1億3400万円で売却された。

 先の通常国会で理財局長だった佐川宣寿国税庁長官は「価格を示したことはない」と答弁しており、野党は予算委で追及した。

 すると太田局長は「金額のやりとりが一切なかったと受け止められたとしたらおわびする」とする一方、「金額」に言及しただけで「売却価格」は伝えていないと強引な理屈を繰り広げ、野党議員からは「涙が出ちゃうような答弁だ」とあきれる声が出た。

 迷走する財務省を横目に安倍首相は「(検査院の指摘を)次の予算編成に生かすのが私の責任」と問題解明の責任を回避し、ごみの再調査も拒否した。

 野党は「来年の通常国会でも聞いていく」(民進・大塚耕平代表)と反発している。

 

ゴミ処理費 森友に合わせ算定か(2017年12月2日配信『しんぶん赤旗』)

 

財務局担当者の証人喚問を

宮本議員迫る

 日本共産党の宮本徹議員は1日の衆院財務金融委員会で、国有地が森友学園に異常な安値で売却された疑惑を追及しました。値引きするゴミ処理費の算定前に、国が森友学園の購入限度額を確認し、その支払い能力に価格がおさまるようゴミの量を多く見積もった疑いが濃厚になりました。

 宮本氏は、国側が値引きの筋書きを学園側に示した昨年3月下旬の会合の音声データの中で、工事業者が「3メートルより下から(ゴミが)出てきたかどうかは分からない」と述べていたと指摘。「『9メートルの深さまでゴミがある』と言いだしたのは、学園・業者側か、国か」とただすと、財務省の太田充理財局長は「国として合理的に判断した」と答弁しました。

 さらに宮本氏は、学園が国有地購入を打診した2016年3月24日、同省近畿財務局側が「いくらまでなら支払えるのか」などと購入金額の上限を尋ね、学園側が約1億6000万円と答えたやりとり(NHK報道)についてただしました。太田理財局長は、財務局に加え、ゴミ処理費などを査定した国土交通省大阪航空局の職員が出席していたと答弁。宮本氏は「航空局は学園側の購入限度額を念頭において、逆算でゴミ処理費を算出できる立場にあったということだ」と指摘しました。

 購入要望の際のやりとりについて、太田理財局長は「具体的な金額について(職員は)記憶がないが、買う場合の金額にも限度があるとの話はあった」「(具体的な金額があったかは)肯定も否定もできない」と否定しませんでした。宮本氏は財務局担当者の証人喚問を含め、徹底究明すべきだと求めました。

 

「森友」真相究明、逃げ腰の財務省 不手際認めても栄転幹部は不問(2017年12月1日配信『東京新聞』)

 

 森友学園への国有地売却問題が焦点となった国会予算委員会の4日間の審議が30日終了し、取引を「適正だ」と主張してきた財務省の論理破綻が明白になった。会計検査院報告では、取引に疑問が呈され、同省は審議でも数々の不手際を認めた。それにもかかわらず、当事者の幹部らは栄転したまま。同省は再調査も責任追及も否定し続けている。 

 「この事務の認識が薄かった。二度と起きないよう文書管理の徹底を行う」。財務省はこの日の参院予算委でも釈明に追われた。学校用地の鑑定価格(9億5千6百万円)から8億2千万円も大幅値引きした理由を説明する「評価調書」の作成を怠っていた点について、太田充理財局長はこう答弁せざるをえなかった。

 森友への国有地売却取引のさまざまな問題点を指摘したのが、22日に公表された会計検査院の報告だ。中でも、政府が値引き理由としたごみの量が、検査院の試算では3分の1以下に縮小、値引き根拠が大きく揺らいでいる。

 これまで佐川宣寿(のぶひさ)前理財局長(現・国税庁長官)が「取引は適切」と強気な立場を貫いてきた財務省だが、予算委では太田氏は「その時点で最善としてやったことが、今は必ずしも適切じゃないこともある」と不手際を認めざるを得なかった。「ゼロ円に近い形で」と求める森友側に、幹部が「努力している」と、なれ合いをのぞかせた録音記録の存在も一転して認めた。

 それにもかかわらず、財務省は「(再調査は)いまのところない」(麻生太郎財務相)として事態の解明は行わない方針だ。同省は小学校の建物が建てられていることを理由に「全部ひっくり返さない限り無理」(太田氏)と答弁した。

 当事者だった幹部はいずれも栄転。国会で取引の正当性を主張しつづけ、野党から虚偽答弁の指摘を受ける佐川氏は7月に税金徴収のトップである国税庁長官に就任。森友と交渉時の近畿財務局長だった武内良樹氏は昨年6月から、国際局長に昇進。武内氏と同時期に理財局長だった迫田英典(ひでのり)氏もその後、国税庁長官に昇進した。

 納税者の批判は高まっている。全国の税務署には納税者から「来年からは資料を提出しない」など不信の声が相次いでおり、仕事がやりにくくなったと国税庁職員の不満もたまる。職員の労働組合、全国税労組の機関紙によると最近の団体交渉で佐川長官に対して「職員は批判の矢面に立たされている」との突き上げの声が出た。

 2万人の署名を集めた市民団体「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」の発起人の醍醐聡(だいごさとし)東大名誉教授は「財務省は経緯や答弁の正当性の検証を行い責任をうやむやにすべきでない」と訴えている。

 

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首相、不適切値引きの責任認めず=検査院「ごみは浅い層」−森友問題、資料提示なし(2017年11月30日配信『時事通信』)

 

 安倍晋三首相は30日の参院予算委員会で、学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐり会計検査院が約8億円の値引きの根拠が不十分と指摘したことについて、「次の予算編成に生かしていくのが私の責任だ」と述べた。一方、不適切な値引きを指摘されたことに対する責任は認めなかった。共産党の辰巳孝太郎氏への答弁。

 辰巳氏は「適切だと言ってきたものが適切でなかったのは首相の責任ではないのか」「最低限、国民に謝罪すべきだ」などと迫った。首相はこれには答えず、「国有財産売却の業務の在り方を見直すことが必要と考えており、関係省庁においてしっかりと検討する」と述べるにとどめた。

 政府はこれまで、異例の値引きについて、地下3メートルよりも深い層で新たなごみが見つかったとの学園側の主張を認めた結果だと説明。しかし、国側からこうしたシナリオを持ち掛けたことをうかがわせる音声データが確認されたため、政府の説明は揺らいでいる。

 学園が行ったくい打ち工事で掘り出された廃棄物混合土について、石井啓一国土交通相は「地下9.9メートルの位置に存在する廃材が含まれる可能性はある」と改めて主張。しかし、会計検査院の河戸光彦院長は、3メートルより深い層は「約1万8000年前以後に堆積した沖積層」と説明するとともに、「廃棄物混合土は浅い部分に存在していたと考えられる」との見解を示した。

 辰巳氏は深い層のごみの存在を客観的な資料で証明するよう求めたが、政府側は資料を示さなかった。辰巳氏は「存在してもいないごみのでっち上げではないか」と疑問視した。

 

森友・加計の質問時間、野党間に差 立憲6割、希望3割(2017年11月30日配信『朝日新聞』)

 

 

 与野党議員が安倍晋三首相と様々なテーマで議論を交わした衆院予算委員会(27、28両日)では、焦点だった「森友・加計(かけ)学園」問題の取り上げ方に野党間で温度差があったことが、朝日新聞の集計でわかった。質問時間の配分が見直される中、与野党の質問内容も注目されていた。

 政府側の答弁も含めて各党がやりとりしたテーマを集計した結果、自民、公明両党はこの問題にそれぞれ持ち時間の3割程度を費やしていた。野党全体では5割近くが割かれていた。

 野党第1党の立憲民主党は質問者(4人)全員が森友・加計問題を取り上げ、持ち時間の6割以上を占めた。一方、第2党の希望の党では3割台。両党で倍近い開きがあった。衆院会派「無所属の会」は立憲と同様に「森友・加計」で半分以上を割いた。

 共産党はこの問題が8割で、ほぼ一点突破で追及した。日本維新の会はこの問題について質問せず、憲法改正で教育無償化を明記するため、首相に協力を求めるなど独自路線だった。

 与党の「森友・加計」以外の質問時間では、自民が経済政策、公明が教育無償化と、政権が重視する政策に費やした。ただ、いずれも憲法改正は取り上げなかった。

 衆院予算委の質問時間配分では、与党は当初、議席数を一定反映させるべきだとして「与党5対野党5」を提案した。これに対し、野党側は政府を監視するのは野党の役割だとして従来通りの「2対8」を譲らず、調整が難航。最終的に計14時間を与党5時間、野党9時間にすることで決着した。立憲の辻元清美・国会対策委員長は29日の党会合で「与党はヨイショ質問、政府の言い訳を引き出す質問になっていたのでは」と指摘した。一方の首相は同日夜、党幹部と会食し、「いい予算委員会だ」と語ったという。

     ◇

 衆院予算委員会では与野党の質問時間配分が見直され、与党の持ち時間が増えた中で計14時間の審議が行われた。衆院選で全候補者の政策の立ち位置などを朝日新聞社と共同調査した東京大学・谷口将紀教授(現代日本政治論)は、論戦をどう見たのか。

     ◇

 議院内閣制ではたいていの場合、議会多数党が政権を構成する。与党が政府への質問時間を増やしたいなら、法案などの事前審査制度を改めるか、質疑でなく討論を増やすのが筋だ。あるいは、与党の内閣への信任が揺らいでいる場合も考えられる。いずれにも該当しないのに、与党が質問時間増を求めたことを正当化できるかに注目した。

 幼児教育の無償化策をめぐって独自性のある質問をした田村憲久氏のようなケースもあった。朝日新聞との共同調査で農林漁業を最重要視し、安倍内閣による環太平洋経済連携協定(TPP)締結を「どちらかと言えば評価しない」と回答した若手の加藤鮎子氏に農政に関して質問させるなどの工夫もあった。

 一方、共同調査で森友・加計問題への政府の対応を「どちらかと言えば評価」とした菅原一秀氏に質疑させたほか、質問よりも持論に長広舌をふるう与党の質問者が目立つなど、与党の持ち時間を増やす意義があったとまでの印象は得られなかった。

 もう一つの注目点が、立憲民主党と希望の党などに分かれた民進党出身者による質疑だった。長妻昭氏を筆頭に引き続き森友・加計問題の追及に重点を置いた立憲と、待機児童や性的少数者などの問題にまず焦点を当てた希望の戦略は対照的だった。

 「北朝鮮に対しては対話よりも圧力を優先すべきか」という共同調査の設問に、「どちらとも言えない」と答えた希望の長島昭久氏が質問に立ち、「賛成」と答えた河野太郎外相と応酬したように、見応えのある議論もあるにはあった。

 しかし、ただでさえ野党全体の質問時間が減ったところに、民進系の政党間ですら質問が前後したり重複したりするなど、議論は深まらなかった。森友問題では、会計検査院が国有地売却額の算定について十分な根拠が確認できないと報告したり、財務省が森友側との売買交渉に関する録音内容を事実上認めたりしたが、そうした新事実を質疑に生かせたとは言い難い。党組織の分裂・未整備もあり、野党第1、2党にふさわしい調査能力が劣化しているのではないか。

 

森友 値引き「口裏合わせ」 財務省、音声データ認める(2017年11月29日配信『しんぶん赤旗』)

 

衆院予算委 宮本議員、昭恵氏の喚問を要求

  国有地が異常な安値で森友学園に売却された疑惑で、国側の職員と同学園関係者が値引きを正当化するために「口裏合わせ」をしていたことを示す新たな音声データ(関西テレビ、9月11日放送)の発覚をめぐり、財務省は28日の衆院予算委員会で同音声データの存在を認めました。日本共産党の宮本岳志議員への答弁。


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パネルを示して質問する宮本岳志議員=28日、衆院予算委

 宮本氏が示した音声データについて、財務省の太田充理財局長は、2016年3月下旬から4月ごろに森友学園側を訪問した際のものではないかと答弁。同省近畿財務局と国土交通省大阪航空局の職員が出席していたことを明らかにしました。

 音声データによると、国有地で新たに“3メートルより深いところからゴミが出てきた”と値引きを求める森友学園側の主張をめぐり、国側が「そこはきっちりやる必要があるでしょというストーリー(物語)はイメージしている」と値引きへのレールを提案しました。これに工事業者は「3メートルより下から(ゴミが)出てきたかどうかは分からない」と発言。“3メートルより深いところにゴミがある”との国・学園側の念押しに業者が折れると、国側は「そんなところで(話を)作りたい」とストーリーを作り上げました。

 宮本氏は、会計検査院の報告書(11月22日)が、大阪航空局の算定した地中ゴミの深度3・8メートル(くい打ち部分以外)などについて「十分な根拠を確認できなかった」と結論付けたことを指摘。「『口裏合わせ』で、根拠も定かでない8億2000万円もの大幅値引きをして、国民の財産をタダ同然で売却した。明確な背任だ」と批判しました。

 安倍晋三首相は答弁することを拒否。太田理財局長は、新たなゴミの撤去費の見積もりのために「資料提出」を求めたやりとりだとし、「『ストーリー』という言葉は大変適切でなかったと(職員)本人も申している」と弁明しました。

 宮本氏は、売却交渉時に同学園小学校の名誉校長だった首相夫人の昭恵氏が直接、真相を語るべきだとして証人喚問を求めました。

 

 

「ストーリー」つくり8億2000万円値引き(2017年11月29日配信『しんぶん赤旗』)

「森友」疑惑 宮本岳氏の追及

論戦ハイライト

 28日の衆院予算委員会で、学校法人「森友学園」に国有地がタダ同然で売却された疑惑の核心に迫った日本共産党の宮本岳志議員。宮本氏は、国有地の売却価格をめぐって森友学園と近畿財務局、大阪航空局が「口裏合わせ」をしていたと指摘。財務省は音声データに記録されたやりとりが事実であることを初めて認めました。


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森友学園問題で政府に質問する宮本岳志議員=28日、衆院予算委

宮本氏「適正答弁 ウソ明白」

検査院「仮定で処分量推計値は変動」

 安倍首相は国有地の8億2000万円の値引きの妥当性について「調べるのは会計検査院」と繰り返してきました。しかし、22日に国会に提出された会計検査院の報告書は、国有地売却に関し「必ずしも適切とは認められない」と結論。宮本氏は「この報告を受けてもなお『適正だった』との認識か」とただしました。

 麻生太郎財務相 慎重な調査検討を欠いていたという指摘は重く受け止める。土地の処分については、切迫した状況の中でぎりぎりの対応だった。

 宮本 全然答弁になっていない。「法令に基づき適正な価格で処分した」という国会答弁が、会計検査院自身によってウソだったことが明らかになったということだ。

 宮本氏は、「重く受け止める」と言いながら「時間がなかったから仕方がない」という言い逃れは許されないと追及。国交省が算定したゴミ撤去の見積もりについて、宮本氏が対象面積、ゴミの深度・混入率など「一つでも根拠があったか」とただすと、会計検査院は「ございません」と明言。財務省の「独立した立場で鑑定」したから適正という言い分も、不動産鑑定士から“国の推測が含まれていて不適当”とダメ出しされていたことを指摘しました。

 宮本 どれも十分な根拠を確認できなかったのだから「仮定の仕方によって」どうにでも計算できたのではないか。

 河戸光彦会計検査院長 仮定の仕方によっては処分量の推計値は大きく変動する状況にある。

 宮本氏は「さじ加減ひとつでどうにでも額が決められたということだ」と批判しました。

財務省「音声は学園訪問時のもの」

宮本氏「これは明確な背任」

 そのうえで、宮本氏は、ゴミ撤去費用の算定が国有地をタダ同然で売却するために行われた疑惑に言及しました。森友学園は昨年3月11日、国有地の地中から新たなゴミが見つかったとして近畿財務局に報告し、同月24日に土地の購入を申し入れています。

 宮本氏は、近畿財務局が土地の売却価格の見積もりを出すために、大阪航空局にゴミ撤去費用の算定を依頼した昨年3月下旬から4月上旬にかけて、森友学園と近畿財務局、大阪航空局が接触を繰り返していることを指摘。関西テレビが、同時期に行われた森友学園と近畿財務局、大阪航空局の会合の一つを録音した音声データと報じたやりとりをパネルで示し、事実関係の確認を求めました。

 宮本 関西テレビが放送した音声データを近畿財務局職員に確認しましたね。

 財務省の太田充理財局長 近畿財務局の職員に事実関係の確認を行った。音声データは森友学園側を訪問した際のやりとりと思われる。

 宮本 大阪航空局も同席していたか。

 太田局長 大阪航空局の方も同席していたと職員はいっている。

 宮本氏の追及に財務省は、記録の内容が事実であることを認めつつ、「必要な資料の提出をお願いする旨の話をした」との弁明を繰り返しました。

 宮本氏は「音声データに記録されているのは、財務省など国側職員と森友学園関係者が買い取り価格をめぐって『口裏合わせ』を行っていたという驚くべき事実だ」と指摘。地下深くまでゴミがあったことにして売却価格を引き下げる提案を国側から切り出している事実をつきつけました。

 やりとりでは、国側が「ストーリー」という言葉を使って、地下9メートルまでゴミが“混在”しているという筋書きを提起。工事業者は「9メートルというのは分からない」「3メートルより下からはゴミはそんなに出てきていない」と重ねて否定するものの、国側が森友学園側の代理人弁護士と一緒になって、工事業者を筋書き通りの結論に説得していく様子が示されています。

 宮本 こんな口裏合わせで、根拠も定かでない8億2000万円の大幅値引きをやって、国民の財産である国有地をタダ同然で売ってやる。これは明確な背任ではないか。

 太田局長 口裏合わせをして、地下埋設物の撤去費用を見積もろうとしたとの指摘は当たらない。

 太田局長は弁明を繰り返しながらも、「『ストーリー』という言葉を使っているのは、適切ではなかったと本人もいっている」と答弁。宮本氏は「もう一つ、動かぬ証拠を示す」と述べ、この工事業者が今年6月に会計検査院に提出した敷地図にも3メートルより深いところにあるゴミは示されていないことを指摘しました。

首 相「丁寧な説明積み重ねてきた」

宮本氏「奇怪 ウラに昭恵氏」

 そのうえで、宮本氏は「(土地を)売る側である国側から値引きを提案するなどという奇怪なことが、なぜ起こったのか」と提起。国側が土地価格を提案する直前の昨年3月15日、森友学園の籠池夫妻が安倍首相夫人の昭恵氏の名前をちらつかせて財務省の田村嘉啓国有財産審理室長と談判した経緯を指摘しました。

 田村室長は、一昨年11月に昭恵夫人付きの政府職員である谷査恵子氏の問い合わせに回答した本人。昭恵氏は国有地の売却交渉がされている最中に、森友学園の小学校の名誉校長に就任していました。

 宮本 これはもう、安倍昭恵氏が証人として自らの口で語る以外に「丁寧な説明」などしようがない。

 首相 私自身、国会において丁寧な説明を積み重ねてきた。

 宮本 安倍首相が「丁寧な説明」といっても国民が納得しないのは、昭恵さんが語らないからだ。

 首相 妻が名誉校長だったからといって、近畿財務局がそう簡単に、そういう(値引き)行為をすることはありえない。

 何一つ根拠も示さずに開き直る安倍首相。宮本氏は「こんな不可解なことが行われたのは、昭恵名誉校長の意向が働いた以外考えられない」と述べ、関係者の証人喚問を重ねて求めました。

 

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<森友問題>財務省、新たな録音認める 「口裏合わせ」否定(2017年11月28日配信『毎日新聞』)

 

 財務省は28日の衆院予算委員会で、学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、8億円値引きの根拠とされた地下3メートル以下のごみについて、同省と学園が昨春に「(ごみがあるという)ストーリーはイメージしている」などと相談している新たな音声データの存在を認めた。値引きを前提にした口裏合わせと受け取られかねず、安倍政権が主張する「適切な売却」に一層疑問が生じた形だ。

 9月に関西テレビが報じた音声データに基づき、共産党の宮本岳志氏が質問した。音声では、工事業者とみられる人物が「(ごみが)3メートルより下から出てきたか分からない」と話したのに対し、政府職員とみられる人物が「言い方としては『混在と、9メートルの範囲で』」と提案。学園側も「言葉遊びかもしれないが、9メートルまでごみが入っている可能性は否定できないでしょ」と応じ、政府職員が「そんなところで作りたい」と結論づけている。

 財務省の太田充理財局長は予算委で、音声は昨年3月下旬から4月に近畿財務局が学園と協議した内容だと認め、国土交通省大阪航空局の職員も同席していたとした。学園は同3月11日に新たな地下埋設物が出たと近畿財務局に連絡し、同24日に撤去費用を差し引いた額での購入を希望していた。ただ、太田局長は「撤去費用を見積もるために資料の提出を(学園に)お願いしたが、口裏合わせはしていない」と否定した。

 一方、太田局長は財務省が行った過去4年間の公共随意契約972件のうち、売却額を非公表にしたのは森友学園の1件だけだったと明らかにした。会計検査院の河戸光彦院長は、地下のごみの対象面積や深度、土壌への混入率のいずれも「算定の根拠が確認できていない」と指摘した。

 検査院の指摘に対し、安倍晋三首相は「(過去の答弁との)整合性は各省で検証したい」と述べた。学園の名誉校長だった妻昭恵氏の国会招致については慎重な姿勢を示す一方、「国会が決めれば従う」とした。野党は昭恵氏や佐川宣寿前理財局長(現国税庁長官)の招致に加え、森友問題などの集中審議を開催するよう求めたが、与党は拒否する構えだ。

 

売却額非公表、972件中森友のみ 取引は異例ずくめ(2017年11月28日配信『朝日新聞』)

 

 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題について、財務省は28日の衆院予算委員会で、2013〜16年度の4年間にあった同種の土地取引計972件のうち売却額を非公表にしたのは、森友学園との契約1件だったと明らかにした。売却を前提にした定期借地契約や分割払いを認めたのも学園に対してだけで、異例ずくめの取引だったことが明確になった。

 立憲民主党の川内博史氏の質問に財務省の太田充理財局長が答えた。非公表の件数については、すべての財務局や財務事務所が、公益目的で購入を希望する自治体や学校法人などを優先する「公共随意契約」で売却したものを調べた。

 学園との土地取引をめぐっては、同省近畿財務局が15年5月に10年以内の売却を約束した定期借地契約を結んでいる。太田局長はこうした契約も、12〜16年度の財務省全体の公共随意契約1194件のうち学園との契約のみと説明した。

 財務局は、学園から「新たなごみ」が見つかったと報告を受け、ごみ撤去費8億2千万円などを値引きした1億3400万円で学園に土地を売る契約を16年6月に締結。資金繰りに余裕がなかった学園に対し、財務局は10年間の分割払いを認めた。太田局長によると、学園のケースと同じ空港整備勘定なども含めた公共随意契約1214件のうち、分割払いを認めた事例は学園のみだった。

 売買契約には、さらにごみが見つかっても国が責任を負わない「瑕疵(かし)担保責任の免除」の特約を盛り込んだ。財務省は、この特約を値引き額を決める際に考慮した、と説明しているが、同様の特約をつけたのは学園との契約だけという。

 財務局は当初、売却額を非公表にした理由を「風評被害を恐れた学園側に求められた」としていた。朝日新聞がこの問題を報じた直後の今年2月、「国有地を不当に安く取得したとの誤解を受ける恐れがあると判断し、学園が公表に同意した」として公表した。太田局長は、学園側が非公表を求めたことを証明する資料について「現時点で紙というような形で残っているものはない」と明らかにした。

 答弁を受け、川内氏は「1千件を超える契約件数の中で森友学園だけ。非常に特別で、何で森友だけなのかという思いを国民は持つと思う」と指摘した。

 

「1億3千」の音声記録…でも価格交渉は否定 森友問題(2017年11月28日配信『朝日新聞』)

 

 

 森友学園への国有地売却で、会計検査院が「根拠が不十分」と指摘した直後の衆院予算委。政府は27日、音声データと同様の森友学園側とのやりとりがあったと一転して認める一方で、「価格交渉ではない」とも強調した。与党質問に導かれた答弁で、これまでと対応を変えたのは一部にとどまった。

 土地の売却を「0円に近い形で」と迫る籠池泰典・前理事長。「1億3千(万円)は国が払っている。それよりも安い値段はとうてい出ない」と主張する近畿財務局職員。子どもの声やアナウンスが交じり、学園の幼稚園で録音されたとみられる音声データが明らかになったのは約4カ月前だった。

 不動産鑑定士が査定額を出す前の昨年5月中旬の録音とみられる。売却価格の正当性を揺るがしかねない「価格交渉」の疑いも生じるやりとり。野党は事実確認を求めてきたが、財務省は「(大阪地検の)捜査への影響」などと職員への調査を避けてきた。

 この日、菅原一秀氏(自民)の質問に太田充理財局長はあっさり切り出した。

 「職員に事実関係の確認を行った結果は、以下の通りでございました」

担当職員が挙げた「1億3千」は、2015年に実施したごみの撤去費として国が負担した1億3200万円を意識したもので、具体的な売却額を示したものではない――。太田局長はそう強調し、「価格交渉」との見方を否定した。

 佐川宣寿前理財局長は3月、事前の売却価格の提示を国会で否定している。その答弁との整合性についても太田氏は、ごみの撤去費を下回る価格での売却はあり得ないとする「考え方」を伝えたにすぎず、佐川氏の答弁は虚偽にはあたらない、との見解を示した。

 音声データをめぐっては、24日の衆院内閣委員会で菅義偉官房長官が「一方的な報道」と説明を避けたばかり。麻生太郎財務相は27日、「総理も丁寧に説明する旨、発言をしている」と説明責任を果たそうとする姿勢を強調した。

 ただ、音声データには、職員が「ゼロに近い金額まで努力する」と発言したり、「マックス10年であとの8割を返すやり方もある」「劇的に月額の負担料が安くなる」と異例の分割払いを職員側から提案したりする様子も記録されている。政府からはこの日、この部分について明確な説明がなかった。

 真相の解明への姿勢にも疑問が残る。野党は27日、首相の妻昭恵氏や佐川氏らの招致を要求したが、与党側は拒否した。

与党の質問時間増加 「森友・加計」政府と一体

 「森友・加計問題」で安倍晋三首相を追及し続けるのは、存在しないことを証明させる「悪魔の証明」のようなものだ――。今回の衆院予算委員会で時間配分が増えた与党質問からにじんだのは、政府・与党一体となって「問題なし」としたい姿勢だった。

 「赤いカラスがいるかいないか。すべてのカラスを捕まえないと証明できない」。田村憲久氏(自民)はこう強調し、「悪魔の証明」の難しさを訴えた。その上で首相に「天使のように謙虚にお答えいただきたい」と求めると、首相は「委員会を通じて真摯(しんし)な説明を丁寧に行っていくことで理解を得ていきたい」と応じた。

 菅原氏(同)は、財務省幹部から音声データの内容に関連して「売却価格を提示したこともない」との答弁を引き出すと、「正直言って、もっと早く言ってよという感じですね」と述べ、こう戒めた。「『1億3千万円を下回らない』と言っちゃっている。不適切だ」

 竹内譲・元厚労副大臣(公明)は、地中から見つかった「新たなごみ」の量や撤去費用の算出方法について「慎重な調査検討を欠いていた」などと指摘した会計検査院の報告について質問。同じ公明の石井啓一・国土交通相は「ギリギリの対応だった」などと釈明した。終了後、竹内氏は取材に対して「国交省がでたらめをやったとは思っていなかった。一定の合理性のある考え方をしていると確認できた」と胸を張った。

 衆院予算委の質問時間は慣例で「与党2対野党8」だったが、衆院選で大勝した与党が「5対5」を要求。厳しい交渉の末、今回は「与党5時間、野党9時間」で決着した。

 それだけに、野党は不満を抱えていた。質問者が与党から野党に代わったのは27日夕方。最初に質問に立った長妻昭氏(立憲)は「(従来通りの配分なら)野党のトップバッターは昼前に始まっていた」と不満を漏らした。

 長妻氏は首相が側近に野党の配分を削減するよう指示したと追及し、「国会による行政の監視のあり方の問題だ。元に戻すと指示してほしい」と要求。だが、首相は「時間配分は国会が決めることだ」とかみあわなかった。

 終了後、衆院予算委で野党筆頭理事を務める逢坂誠二氏(立憲)は与党の質問について「野球の試合に例えれば消化試合を見ているようで、出来レースといった感じだ」と指摘。「政府の姿勢を確認するにしても、20分ぐらいでできる」と話した。

 

首相「真摯に受け止め」 森友、検査院指摘に(2017年11月27日配信『毎日新聞』)

 

 衆院予算委員会は27日午前、安倍晋三首相ら全閣僚が出席して基本的質疑を行った。学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐり、会計検査院がずさんと指摘したことについて、首相は「政府として指摘を真摯(しんし)に受け止めなければならない」と述べた。

 今後の対応については「国有地は国民共有の財産であり、売却にあたっては、国民の疑念を招くことがあってはならない」とも述べ、財務、国土交通両省が公表した国有財産の処分手続きを透明化する再発防止策を徹底する考えを示した。自民党の菅原一秀氏への答弁。

 また、国有地売却を巡って森友学園側と近畿財務局のやりとりとされる音声データについて、財務省の太田充理財局長は、音声データの存在と内容を確認した。

 学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題に関し、首相は「(学園の加計孝太郎理事長から)相談や依頼があったことは一切ない」と強調。国家戦略特区諮問会議の議論などを挙げ、「民間の皆さんが私をそんたくすることなど到底考えられない」と改めて否定した。

 森友、加計問題に関して、自民党の田村憲久政調会長代理が「謙虚に、誠実に、実直に、この問題は答えてほしい」と求めたのに対し、首相は「謙虚に受け止めながら、委員会を通じて、真摯な説明を丁寧に行っていくことで国民の理解を得たい」と語った。

 午後は立憲民主党の長妻昭代表代行らが質問する。27、28両日の与野党の質疑時間配分は「5対9」で、従来の「2対8」と比べて野党の持ち分が減った。初日の27日は自民、公明両党が計5時間で、野党の質問は立憲の1時間45分のみとなる。

 

財務省、音声データ認める 価格交渉は否定(2017年11月27日配信『毎日新聞』)

 

 衆院予算委員会は27日、安倍晋三首相ら全閣僚が出席し基本的質疑を行った。学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省の太田充理財局長は、近畿財務局が売却価格について「ゼロに近い形まで努力する」などと学園に伝えたとされる音声データを事実上認めた。売買契約前の価格交渉は否定したが、データには価格の下限を巡るやり取りが詳細に記録されており、値引きなどの事前交渉を否定してきたこれまでの政府答弁に大きな疑問符がついた形だ。

 一方、首相は売却が「適切だった」としてきた過去の答弁は「財務省や国土交通省から適切に処分したと報告を受け、そのような理解で申し上げた」と述べ、訂正しない考えを示した。

 太田局長は音声データを近畿財務局職員に確認し、時期は売買契約前の「2016年5月半ば」と説明。データには学園の籠池泰典理事長(当時)が「ゼロに近い形の払い下げ」を繰り返し求め、財務局が「1億3000万円を下回る額は提示できない」「理事長が言うゼロに近い額まで、できるだけ努力する作業をしている」と話すなどの応答が記録されている。

 学園との協議について、佐川宣寿国税庁長官は理財局長時代に「価格を提示したことはない」と答弁していた。音声と食い違うこの答弁について太田局長は、当時まだ基本になる国有地の土地評価額(9億5600万円)が出ておらず、そこから追加のごみ撤去費用(約8億2000万円)を差し引いた正式価格は示していない、という意味だったと釈明した。

 音声の内容は「金額などさまざまなやり取りがあったが、(財務省側の)考え方を申し上げたものだ」とし、「(佐川氏の過去の答弁が)金額に関する一切のやりとりがなかったかのように受け取られたのは申し訳ない」と陳謝した。

 首相は、会計検査院から「値引きの根拠が不十分」と指摘されたことに対し、「真摯(しんし)に受け止めなければならない」と述べ、今後は国有財産の処分手続きを透明化すると強調した。一方、衆院予算委は理事会で、野党が要求した首相の妻昭恵氏、佐川氏、学校法人「加計学園」の加計孝太郎理事長らの招致を認めないと決めた。

 

自民「追及」を演出 衆院(2017年11月27日配信『毎日新聞』)

 

 自民、公明両党は27日の衆院予算委員会で、学校法人「森友学園」への国有地売却問題で説明責任を求めるなど、政府をチェックする姿勢を演出しようと努めた。「与党2対野党8」から「5時間対9時間」に与党の質問時間を増やしたことで「なれ合いが増えただけ」との批判を懸念したからだ。ただ、自民党議員は野党攻撃や首相への賛辞も随所に織り交ぜ、森友問題では核心に入る前に次のテーマに移るなど、従来通りの「緩さ」も目立った。

 「『価格の提示はしていない』との答弁は、虚偽だったのではないか」。自民党の菅原一秀氏は、森友学園の籠池泰典前理事長が公表した音声データと過去の政府答弁が矛盾する、とただした。音声データでは財務省近畿財務局が「1億3000万円を下回る売却はない」などと額に言及しており、同省の太田充理財局長は「価格交渉ではなかった」と釈明。自民の田村憲久氏も「安倍政権で格差が広がったのではないか」と問うなど、従来の「安倍1強」国会とは違う姿勢をアピールしてみせた。

 質問時間の増加に加え、森友・加計問題への世論の不信も意識した自民国対は予算委の質問議員に「厳しくやってほしい」と要請。公明党の石田祝稔政調会長も、会計検査院が森友学園を巡る文書の不備を指摘したことに関し、「こうしたことが2度あれば、公権力の行使とは何なのかと言われる」と苦言を呈した。

 ただ、与党の「勢い」は質問の一部にとどまった。菅原氏は「籠池氏のフェイク(虚偽)に基づいて質問し、国民をミスリードした。猛省してほしい」と野党を非難。森友学園の音声データでは「不適切で厳に戒めなければならない」と財務省をしかったが、それ以上は追及しなかった。田村氏は「(説明は)悪魔の証明で難しいが、天使のように謙虚に答えてほしい」と首相にエールを送った。

 自民の新藤義孝氏は「ヨイショしているわけではない」と断りながら、「首相は就任以来、延べ129国を訪れた。前政権の倍だ」と持ち上げた。与党の後に質問に立った立憲民主党の長妻昭代表代行は「与党は前半少しきつめだったが、(最後は)一件落着という内容だった」と批判した。

 

石井国交相ピンチ 森友問題が創価学会員の怒りへ“飛び火”(2017年11月27日配信『日刊ゲンダイ』)

 

「限られた時間でのギリギリの対応だった」――。森友学園への8億円値引きについて、会計検査院から「根拠不十分」との報告を受け、24日に会見した公明の石井啓一国交相。「ギリギリの対応」を連発し、いつもの冷静沈着ぶりはどこへやら。お茶を十数回、口にするなど明らかに様子がおかしかった。実は、森友問題が支持母体の創価学会に飛び火。学会員の不興を買っているのだ。

 8億円値引きのごみ撤去費用を、根拠不十分に見積もったのは国交省大阪航空局。国交省が疑惑の“第一歩”なのに、トップの石井大臣はこれまで、森友問題に対して「我関せず」を貫いてきた。おかげで、学会内でこの問題が俎上に載ることはなかったが、会計検査院からの報告でムードが一変したという。

 「これまで多くの学会員は森友問題を、野党と一部マスコミが騒いでる話と見ていました。ところが、公的機関である会計検査院が指摘し、問題視する報道も増えている。この問題の行方を注目している学会員も少なくありません。それに現在、学会員は安倍政権を批判的に見るようになっていますから」(現役の学会員)

 ■学会員の「公明離れ」加速も

 公明は先の総選挙で、解散時から6議席減らし、比例では初の700万票割れ。安倍暴政に何らブレーキ役を果たしていない公明に対する学会員の不満の表れだとみられている。

 政治評論家の山口朝雄氏が言う。

「公正やクリーンは公明の立党精神です。政権内で森友問題を解明することは、公明の本来の役割です。学会員もそれを期待している。もし、会計検査院の指摘を受けても、石井大臣が森友問題に及び腰なら『何のための連立参加か』ということになり、学会員の公明離れはますます進むでしょう。そんな状況を考えれば、石井大臣は、値引きの動機を含め本気で真相を解明すべきです。しかし、昭恵夫人の関与など、安倍政権にとって不都合な問題に切り込むことになる。板挟みの苦しい対応になりそうです」

 会見で石井大臣は「政治的配慮はない、と私は理解している」と早くも予防線を張っていた。立党精神を忘れた大臣が、学会員から見切られる日は近いか。

 

会計監査院は手抜き 森友値引きは「過大」でなく「不要」(2017年11月25日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 森友学園の小学校建設用地として、大阪府豊中市の国有地が約8億円も値引きされて売却された問題。

 会計検査院が22日、国会に報告書を提出し、「値引きの根拠となったごみの推計量が過大で、実際はその約3〜7割だった可能性がある」と指摘したことで、安倍首相や財務省の「適切に処理した」としてきた説明がくつがえる事態になり、メディアも大騒ぎだ。

 だが、ちょっと待ってほしい。報告書は、値引きするための“デッチ上げ”にも見えるごみ撤去が、本当に小学校建設工事のため必要だったのか、何ら検証されていない。判例にのっとれば値引きは一切必要なかった可能性があるのである。

 建設予定地の土地は2015年に、1億3200万円かけて土壌改良工事が行われたが、翌年、新たな“ごみ”が見つかった。これが、土地の瑕疵(キズ)で、その分8億円を値引くという理屈なのだが、森友疑惑を追及する東大名誉教授の醍醐聰氏が言う。

 「ごみといっても、工事に支障をきたすコンクリートもあれば、何の障害にもならないビニール片、廃材もあります。工事に支障のない地中埋設物は瑕疵に当たらないという判例があります」

 宅地の売買で、家の土台で使われていたコンクリートが見つかり、除去工事を余儀なくされた事案では、裁判で瑕疵が認められた(東京地裁・1992年10月28日)。一方、マンション造成地の地中にビニール片など廃棄物が混入していたものの、予定通り新築できたケースでは、造成地に瑕疵があるとは言えないとされた(神戸地裁・1984年9月20日)。

 ごみだからといって何でも「瑕疵」には当たらない、つまり不良土壌になるわけではないのだ。では、森友の土地の地下埋設物はどんな代物だったのか。今年2月28日の参院予算委で、小川敏夫議員が「小学校の校舎を建てる建築に支障があるか」と質問している。これに対し、国交省の佐藤善信航空局長(当時)は「工事の施工には問題はございません」と答弁。「瑕疵」にならない程度のごみだということを認めたようなものだ。

 「判例があるのですから、土地の『瑕疵』についての解釈は、いわば常識です。会計検査院が知らないわけがありません。それなのに『ごみ』をひとくくりにして、ごみの混入率に矮小化しているのです。わざと本質から目をそらしている。明らかな手抜き検査ですよ。野党は、ごみの積算根拠の議論に乗ってはダメです。そもそも、ごみ除去の必要がなかったという点を徹底的に攻めるべきです」(醍醐聰氏)

 週明けの予算委では野党はこのことも追及すべきだ。

 

森友学園;学校名含め黒塗り文書を開示 実際は「開成小」(2017年11月25日配信『毎日新聞』)

 

 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、国は24日、学園が国有地で開校を計画した小学校の設置趣意書について、これまで不開示としていた学校名を含めて全て開示した。国会で野党は「安倍晋三記念小学校」という校名を隠すために黒塗りにしたのではないかと追及していたが、実際には「開成小学校」との記載だった。

 財務省近畿財務局が、情報公開請求していた上脇博之・神戸学院大教授に開示した。上脇教授は先月、黒塗り部分の開示を求めて大阪地裁に提訴。代理人弁護士によると、民事再生手続き中の学園の管財人が「小学校の開設がなくなり、開示で学園の利益を害する恐れはなくなった」との意見書を国に提出したため、国が一転して開示した。上脇教授は当初の不開示で損害を被ったとして賠償を求める訴えを追加する方針。

 文書は「開成小学校設置趣意書」という題名で、「日本国民としての自覚を持ち、大いなる志をもって青少年の教育にまい進することを決意した」などと記しているが、安倍首相や妻昭恵氏についての記載はなかった。

 文書を巡っては、民進党議員が5月、学園前理事長の籠池泰典被告(64)=詐欺罪などで起訴=の証言に基づき、「安倍晋三記念小学校という名前を出したくなかったからか」と黒塗りの理由をただしたが、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は「学校運営の手法を公にすることになり、法人の利益を害する恐れがある」と説明していた。

 学園は一時、安倍晋三記念小学校との名称で寄付を募っていたが、安倍首相の了解がなかったとして「瑞穂の国記念小学院」に変更していた。

 

検査院報告読み「背任だ」 森友追及の弁護士ら究明要求(2017年11月23日配信『朝日新聞』)

 

 疑惑はさらに深まった。大阪府豊中市で小学校開校を目指した学校法人「森友学園」(大阪市)に、国有地が格安で売却された問題。会計検査院が値引きの十分な根拠を確認できないと公表した22日、問題を追及してきた関係者は改めて徹底究明を求めた。捜査の行方にも注目が集まる。

 「これが背任でなくて、何が背任なんだ」。22日夕、大阪市内の法律事務所で、会計検査院のホームページから検査結果の報告書を印字し、真剣な表情で読み込むグループがあった。国有地売却問題で財務省の職員らを、大阪地検特捜部に背任容疑で告発した弁護士たちだ。

 共同代表の菅野園子弁護士は「ごみの量や深さに明確な根拠がないまま(国有地を)減額したと指摘したことは評価できる」としつつ、「検査院が自らごみの量を調査すべきだった。適正な撤去費を具体的に挙げなかったのは残念」と付け加えた。そして、異例の安値売買の背景への踏み込みもないとして「特捜部には徹底的な捜査を求めたい」と述べた。

 当初非開示だった売却価格の公表を求めてきた木村真・大阪府豊中市議は、報告書で国側に値引きの積算資料が残っていないとされた点について「ありえない」と批判。「(小学校の名誉校長だった)安倍晋三首相の妻である昭恵氏の関与の有無も明らかになっていない。国会で証人喚問すべきだ」と話した。

 NPO法人「情報公開クリアリングハウス」(東京)の三木由希子理事長は報告書について「(会計検査院の)無念がにじみ出た内容」と語った。「検査院は捜査機関ではないので、『文書がない』と言われればそれ以上の追及は難しい」。国有地売買の当事者だった財務省に対しては「森友問題について『逃げ切った』と思っているかもしれないが、もっと大きな『行政の信頼』を深く傷つけた。失ったものは大きい」と批判した。

特捜部捜査、カギは「目的」

 検察当局は、国の担当者が森友学園に国有地を不当に安く売ったとする背任容疑の告発4件を受理し、捜査している。

 大阪地検特捜部は、学園の補助金詐欺事件の捜査を終えた9月以降、国有地にからむ捜査を本格化させた。財務省の佐川宣寿(のぶひさ)・前理財局長を含む11人が告発されており、関係者らの聴取が続く見通しだ。

 会計検査院報告と検察の捜査で、精査すべき国の行為は重なる。ある捜査関係者は、ごみの量などに疑義を呈した報告内容に「そうなるだろうと思った」。一方、検察幹部は「検査院とは権限や存在目的、物差しが違う」と語った。

 例えば、検査院は「値引きの根拠は薄弱で契約も異例」としたが、そうした理由や背景には踏み込んでいない。一方、個人の刑事責任を問う捜査では、担当者らに学園の利益や国の損害を企てる「目的」があったかどうかがカギになる。捜査関係者は「値引きに問題があったからといって直ちに犯罪にはならない」。捜査の視野には、売買交渉記録を捨てたとする公用文書等毀棄(きき)や証拠隠滅の容疑も入っている。

 特捜部は捜査を尽くす構えで「結論も結論を出す期限も決めていない。そんなことをすれば捜査がゆがめられてしまう」(幹部)。

 学園の前理事長の籠池泰典被告(64)と妻諄子被告(61)は、7月に詐欺容疑で逮捕されて以降、大阪拘置所で勾留が続いている。両被告に対しては、国有地値引きをめぐる聴取は行われていない模様だ。

 いずれも大阪地裁に保釈請求したが、検査院報告が出たこの日、地裁は却下。口裏合わせなどでの証拠隠滅の恐れがあるとされた可能性がある。弁護人以外との面会は認められていない。親族とみられる男性のフェイスブックによると、泰典被告は「孫たちは元気ですか」と伝言した。

 両被告が国や大阪府・市から詐取したとされる補助金総額は約1億7千万円にのぼる。今月13日に公判前整理手続きが始まったが、司法関係者は「特捜事件は証拠が膨大で、手続きに1年以上かかるのが普通。勾留も初公判まで続く可能性がある」とみている。

計画頓挫の校舎、そのまま

 国が森友学園に一度は売却した大阪府豊中市の土地には、22日も土や建築資材が積まれていた。ほぼ完成した校舎はそのまま立っている。柵に「国有地」の貼り紙があった。

 国有地値引きに伴う疑惑が表面化し、学園の小学校構想が頓挫した後の6月下旬、国はこの土地を買い戻した。学園に校舎を撤去し原状回復するよう求めているが、民事再生手続き中で校舎の売却益を得たい学園と校舎の建設業者は、土地と校舎を第三者に一括して売却するよう国に要望している。

 学園の管財人は10月、再生計画案を大阪地裁に提出。債権者に負債総額約30億円の97%を免除してもらい、残りを10年間で分割返済する内容で、校舎が転売されれば負債額が圧縮される可能性はある。しかし疑惑が晴れぬ中、一括売却についての国との交渉は進まず、国有地の行方も宙に浮いたままだ。再生計画案への賛否を問う債権者集会は12月20日に予定されている。

財務省、異例さ認める

 朝日新聞は5月、財務省近畿財務局が、2016年4月に国有地の評価を大阪市内の不動産鑑定士に頼んだ際、ごみ撤去費約8億2千万円に加え、高層建築を想定した地盤改良費約5億円を差し引くよう求めていたと報じた。会計検査院の報告書も今回、この経緯に触れ、財務局と国土交通省大阪航空局を批判した。

 「(地盤改良費に関する国の資料を)採用しないで適切だった」。不動産鑑定士は22日、朝日新聞の取材に、そう振り返った。

 財務局からの依頼条件は、地盤改良費とごみ撤去費を考慮して土地の鑑定評価をすることだった。

 財務局から示された資料には、地盤改良費として、8階建て想定で約5億8千万円と記されていた。だが森友学園が建設を計画していた小学校舎は2階建て一部3階建て。鑑定士は「合理的ではない」と判断し、そのまま用いなかった。

 報告書は、財務局が示した費用見積もりが、学園側の工事関係者から提出されたものだったと指摘し、「財務局はその事実を説明せず、内容を十分に確認しないまま、不動産鑑定士に判断を委ねた」とした。鑑定士は「利害関係者の資料だったことは当時全く分からなかった」と話す。

 ごみ撤去費約8億2千万円も、不動産鑑定士は「推測の域を出ていない」と判断し、鑑定評価の対象にはしなかった。あくまで更地の市場価格として9億5600万円を算出。ごみ撤去費については「依頼者提示の費用」と明記し、仮に全額引いた場合は1億3400万円になると、あくまで参考、目安である「意見価額」を記載した。

 報告書では賃借から売却まで異例ずくめの経緯が指摘された。鑑定士は「財務局は売れ残りが怖かったのか、がんじがらめの案件だったのか、そこは今もわからない」と話す。

 「値引きありきだった疑いが強まった。検査院はずさんなやり方を見逃さない。当然の結果だ」。土地トラブルについてアドバイスする大阪高裁の専門委員で技術士の諏訪靖二さんは語る。

 朝日新聞は8月、国が更地の鑑定価格9億5600万円から差し引くごみの撤去費を、約8億2千万円と積算した根拠とされた現場写真21枚を入手し、「どこまで、ごみがあるのか読み取れない」とする諏訪さんの指摘とともに報じた。

 今回の検査院報告はこれらの写真について「(ごみの深さを)正確に指し示していることを確認することができる状況は写っていない」と断定。現地確認の計測結果もないとし、「裏付けは確認することができなかった」と結論づけた。

 今回は、土地に簡単にわからないような欠陥が見つかった場合に売り主が買い主に負う責任を免除する代わりに、見積もり段階で最大限減額する「瑕疵(かし)担保責任の免除」の考え方が特例で採用された。財務省も検査院の調べに、国有地売買で把握する限りでは「同様の事例はない」と認めた。諏訪さんは「この理屈を使い、根拠が不十分な計算が次々になされた」と指摘した。

 

クローズアップ2017;森友 検査院報告(その1) 揺らぐ政府説明 証拠不足、調査に限界も(2017年11月23日配信『毎日新聞』)

 

 会計検査院が22日に公表した森友学園問題の検査結果は、土地評価額から約8億円を値引きした国の対応に疑問を投げかける内容となった。学園への対応を「問題ない」と強調してきた財務省、国土交通省幹部らの答弁との食い違いは大きく、政府は改めて説明責任が問われることになる。問題を追及する市民団体などの告発に基づく検察の捜査も進んでおり、問題の終結は見通せない状況だ。

値引き額は本当に算定できないのか」。22日、河戸光彦・会計検査院長が参院予算委員会に検査結果報告書を提出後、東京・霞が関の検査院庁舎で原田祐平審議官が報道陣向けに内容を説明した。記者からは、財務省と国土交通省の対応に疑義を突き付けながら「法令違反」や「不合理」とまでは踏み込まなかった点に関する質問が相次ぎ、原田審議官は「仮定の置き方でごみの量は変わる」「責任を持って金額を示せる状況ではなく、困難だった」と繰り返した。

 報告書が、官僚側がとった対応の動機面についてほとんど言及せず、全体としても慎重な言い回しとなったのは、学園側とのやり取りを示す文書の多くが廃棄されていたことが大きい。「(なぜ不合理と思われる対応をとったかという)原因が分かったものは記述したが、確認できていない面があった」(原田審議官)。残っていた文書や聞き取り調査からは「首相官邸へのそんたく」などを裏付ける材料を見つけることはできなかった。ある検査院職員は「文書がなければ裏付けのハードルは極めて高い。『そんたく』の有無は会計検査になじまない」と嘆く。

 

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 また、財務省が国の賠償責任を免じる特約を学園と結んでいたことも評価を難しくした。「賠償金の支払いが万一必要な事態になれば、今回の売却価格が不当に割安だったとは言えなくなる」(検査院幹部)からだ。

 それでも報告書は、「適正な手続きと合理的に算出された額で国有地は売却された」という政府の説明の信頼性を大きく揺るがした。

 例えば、佐藤善信・前国交省航空局長は国会で「職員が工事写真を踏まえて地下3・8メートルまでの層に地下埋設物があることを確認した」と答弁したが、検査院は「工事写真は正確に3・8メートルを指し示す状況が写っていない」と疑問視。ごみの混入率や撤去対象の面積、撤去費用の単価設定などに関する両省の主張の根拠をことごとく否定した。「十分な知見と実績がある国交省に(ごみ撤去費の見積もりを)依頼したのは適切だった」(佐川宣寿・前財務省理財局長)との見解も根底から崩された格好だ。

 参院が要請して始まった検査院の調査については、安倍晋三首相も「結論を待ちたい」と繰り返し表明してきた。検査院幹部は両省の不可解な対応に首をかしげつつ、検査の限界も強調した。「官庁が普通やらないようなことが繰り返されていたことは間違いない」【松浦吉剛、島田信幸】

検察の捜査、焦点に

 今後、焦点となるのは検察捜査の行方だ。大阪地検特捜部は、近畿財務局の職員らが国有地を不当に安く売却し、国に損害を与えたとする市民団体の告発を受けて背任容疑などで捜査を続けている。検察関係者は「値引き額が過大というだけでは背任罪は成立しない」としており、会計検査院の指摘とは別に違法性を判断する構えだ。

 背任罪は(1)自己または第三者の利益を図るなどの目的で(2)任務に背く行為をし(3)財産上の損害を加えた−−場合に成立する。立証の壁となるのは(1)の部分だ。この関係者は「国の価格算定はずさんだが、単に安く売っただけでは不十分だ。何のために値引きしたかがポイントになる」と話す。

 一連の問題の発端は、学園が小学校を建設中に新たなごみが見つかったとして、土地を安価で売却するよう国に求めたことだった。財務局職員らは、特捜部の事情聴取に「早期に売却しなければ、開校が遅れ学園に訴訟を起こされるリスクがあり、将来新たな廃棄物が見つかる可能性もあった」などと経緯を説明しているという。値引きで学園との交渉を早期決着させることが国益になり、違法性はないとの理屈で、国会答弁との整合性もとれる内容だ。工事の受注業者も売買価格は妥当だったとの見解を示している。

 これに対し、背任容疑で告発した弁護士らは、安倍首相の妻昭恵氏が小学校の名誉校長だった点を重視。財務局職員らが官邸に配慮した結果、「自己保身のために学園の利益を図った」と主張する。ごみ撤去費は少なくとも約2億7000万円が過大だったとして、強制捜査の必要性を訴えている。

 特捜部は事情聴取とともに、職員のパソコンやメモを調べるなど詰めの捜査を進めている。背任容疑の他にも、国が不正に交渉記録を廃棄したとする証拠隠滅容疑や公用文書毀棄(きき)容疑での告発も受理しており、長期化する可能性もささやかれる。

 

クローズアップ2017森友 検査院報告(その2止) 追及強める野党 予算委、紛糾必至(2017年11月23日配信『毎日新聞』)

 

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 森友学園への国有地売却を巡る会計検査院の報告について、野党側は「野党の主張が正しかったと認められた」(立憲民主党・福山哲郎幹事長)、「政府は事実を隠したいがために隠蔽(いんぺい)や屁理屈(へりくつ)を言ってきた」(希望の党・今井雅人氏)と一斉に政権を批判した。検査院は22日の参院予算委員会理事会で報告し、「悪質な部類か」との問いに「こういうケースは極めて異例だ」と明言。なお不透明な売却の経緯や過去の政府答弁との食い違いを巡り、27〜30日の衆参予算委は紛糾必至だ。

 福山氏は22日の立憲プロジェクトチーム会合で「行政文書が全く保存されず、(政府内や学園側との)やり取りが全部あいまいなまま売却が行われたのは明らかだ」と強調。予算委にとどまらず、今後の各委員会などで安倍晋三首相らを追及したい考えを示した。

 希望と民進党は森友問題を検討する会合を初めて合同で開催。「問題はなかった」と強弁してきた佐川宣寿財務省理財局長(当時)の国会招致を求める声が上がった。今井氏は「通常とまるで違う取り扱いだ。何かの力が働いていると考えざるを得ない」と記者団に強調。首相の妻昭恵氏の証人喚問も目指すとした。

 一方、首相は22日の参院代表質問で、森友問題について「私の妻が一時期、名誉校長を務めていたこともあり、国民から疑念の目を向けられたとしてももっともだ」と改めて述べた。自民党の岸田文雄政調会長は記者会見で「説明が十分かを判断するのは国民だ。国民に疑念や説明を聞きたい思いがあるなら、政府はしっかり答えなければならない」と促した。

 だが、独立機関の検査院でさえチェックできない多くの疑問が指摘されたことで、首相らが「適切に処理した」と繰り返してきた根拠は一体何だったのか、改めて問われることになる。政府関係者は「検査院から八つほど(改善点の)指摘を受けたのでやっていく。何もやらないわけではない」と釈明したが、今後安倍政権は苦しい説明を迫られそうだ。

 

佐川氏「適切に処分」答弁に矛盾 検査院、文書管理に対策求める(2017年11月23日配信『東京新聞』)

 

 財務省の佐川宣寿(のぶひさ)前理財局長(現国税庁長官)は国会答弁で、森友への国有地売却を「適正な価格」と繰り返してきた。会計検査院の結果報告を受け、本紙は国税庁に取材したが、同庁の広報担当者は「所管に関係ないので答えられない」とし、佐川氏からのコメントもなかった。

 ごみ撤去費用は、財務省の依頼で国土交通省が算定した。国会での論戦で、国有地を安く売るため撤去費を意図的に高く見積もったのではないかとの野党からの質問に、佐川氏は「規則にのっとって適切に処分した」と主張。一方で「(交渉記録は)破棄した。残っていない」と繰り返した。

 しかし検査院は22日の検査結果報告で、佐川氏の主張と異なり、撤去費の算定を「慎重な調査検討を欠いた」と指摘。今後は手続きを適正にするよう両省に促した。

 ただ、手続きに関する文書の多くが実際に存在せず、検査院の担当者は「撤去費用が過大だったとまでは評価できない」と、調査に限界があったことをにじませた。検査院は文書管理でも必要な対策を取るよう求め、両省の対応を暗に批判した。

 内閣府の公文書管理委員会の委員を務める三宅弘弁護士は「公文書管理は民主主義の基盤で、財務省が交渉過程の文書を破棄したことは公文書管理法違反だ」と指摘する。

 佐川氏は国税庁長官に就任してから4カ月以上たったが、歴代の長官が行ってきた就任記者会見は今も開かれていない。 

 

森友国有地、ずさん算定 「適正」政府主張揺らぐ(2017年11月23日配信『東京新聞』)

 

 大阪府豊中市の国有地が、ごみ撤去費用として8億円を差し引いて学校法人「森友学園」に売却された問題で、会計検査院は22日、土地の売却額がずさんに算定され「慎重な調査検討を欠いた」とする検査結果報告を参議院に提出、公表した。ごみ処分量の推計根拠が定かでなく、実際の処分量は推計の3〜7割だった可能性があるとした。

 この問題では安倍晋三首相の妻の昭恵(あきえ)氏が、国有地に建つ予定だった小学校の名誉校長に一時就任。行政側が忖度して不可解な値引きにつながったとの疑惑が浮上した。検査院は権限上、この点について踏み込んでおらず、首相に説明を求める声が一層強まりそうだ。

 検査結果を受け、自民党の岸田文雄政調会長は記者会見で「国民に疑念があるなら政府はしっかり答えないといけない」と述べた。財務省の担当局長として国会で「資料は破棄した」といった答弁を繰り返した佐川宣寿(のぶひさ)国税庁長官はコメントしなかった。

 土地売却には財務省近畿財務局と国土交通省大阪航空局が関与。土地評価額9億5600万円からごみの処分費用を差し引き、1億3400万円で売却された。22日の報告書では、値引き理由となるごみの処分量の推計方法は、ごみが埋まっている深さ、サンプルとした土壌にごみが含まれる比率などについて根拠が確認できなかった。

 検査院は過去に行われた調査の結果から、ごみの量を複数の方法で推計。最も少ない場合で6196トン。他の推計でも大阪航空局が算定した1万9520トンを下回った。

 最終的な値引き額である約8億2000万円はごみの推計量に1トン当たり2万2500円の単価を掛けて算出したが、そもそも単価をどのように決めたのかを示す資料が残っていなかった。検査院は検査の過程で撤去費用を2億〜4億円程度と見積もり、値引き額が最大約6億円過大と試算していたが、報告には妥当な値引き額を盛り込まなかった。

◆真相解明 首相に説明責任

<解説> 森友学園への国有地売却額の算定をずさんとした会計検査院の検査結果報告で、「適正だ」と言い続けてきた政府の主張は大きく揺らいだ。第三者を入れた調査委員会設置を求めた野党議員らを、安倍晋三首相自ら「検査院が調査する」と突っぱねてきただけに、首相には真相解明と説明責任があらためて求められる。

 不可解な値引きが実現した過程に、行政側の忖度があったのではないか。学園を巡っては、安倍首相の妻の昭恵氏が小学校の名誉校長に就いていたことや、首相夫人付きの職員が国有地について財務省に照会した内容を学園側に伝えていたことなどから疑いが浮上し、加計学園問題とともに国民の関心を集めた。

 しかし、首相はこれまで、昭恵氏は関与していないと強調し、与党も国会での昭恵氏の証人喚問を拒み続けた。財務省の佐川宣寿前理財局長(現国税庁長官)は「適正な価格で売った」と繰り返す一方で、「交渉記録は破棄した」と根拠を示さなかった。

 検査院の報告でも、算定の根拠などを示す資料は残されていなかったとされる。「誰」の「どんな」意図が働いたのか、忖度はあったのか−。検査院はこの点には踏み込んでおらず、国民の最も知りたい疑問は依然、解消されていない。

 「適正な価格」という政府側の強弁が崩れた今、疑惑は深まった。市民団体からは佐川氏らに対する告発状が検察に出ており、今後は捜査の行方も注目されるが、まず必要なのは、安倍首相はじめ関係者が自らの口で、真実を語ることだろう。 

 

<会計検査院> 国の予算が適切に使われているかをチェックする憲法上の機関。国会や裁判所に属さず、内閣に対しても独立している。中央省庁や国が出資する法人などの会計を調べて内閣や国会に報告する。不適切な経理を指摘するだけでなく、是正や改善も要求できる。法令に定められた国の決算などに関する検査の他、国会からの要請に基づく個別検査も行う。森友学園問題では参院が検査を要請していた。

 

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森友学園問題 値引きは根拠不十分 会計検査院が国会に報告へ(2017年11月21日配信『NHKニュース』)

 

大阪の学校法人「森友学園」に国有地が8億円余り値引きされて売却された問題で、会計検査院は、値引き額の積算には十分な根拠が確認できないうえ、検証に必要な資料が十分残されていない、などとする検査結果をまとめ、22日にも国会に報告する方針です。

去年6月、大阪 豊中市の国有地が、地中のごみの撤去費用などとしておよそ8億2000万円値引きされ、「森友学園」におよそ1億3400万円で売却された問題では、会計検査院が国会の要請を受けて値引きが適正だったかなどについて調べています。

 財務省からごみの撤去費用などの見積もりを依頼された国土交通省は、平成21年度に行った地質調査の結果をもとに、ごみが埋まった範囲とされた地中のおよそ47%にごみが混入し、くいを打つ場所は9.9メートル、校舎などを建設する場所は3.8メートルの深さまでごみがあるものと推計し、「値引きは合理的に算出された金額だ」と説明していました。

 これについて会計検査院は、地質調査は一部を抽出して実施されたものだったのに「9.9メートルの深さまでごみがある」などとするのは合理性がないうえ、ほかにも複数の推計方法があったにもかかわらず、試みた形跡がないなどとして、値引き額の積算に十分な根拠が確認できないとする検査結果をまとめたことがわかりました。

 一方で、適切と考えられる値引き額については、ごみの処分単価に関する資料など積算に必要な資料が十分残されていないことなどから検証が難しいとして報告書には盛り込まず、財務省や国土交通省に対し、文書管理の在り方について改善を求める方針です。

 検査院は22日にもこの検査結果を国会に報告し、公表する方針です。

参議院予算委で22日午後報告受ける 与野党で合意

自民党と民進党の参議院国会対策委員長が会談し、22日午後、参議院予算委員会の理事会を開いて、会計検査院から、「森友学園」に国有地が売却された問題をめぐる検査結果について、報告を受けることで合意しました。

 

森友学園問題 籠池被告夫妻が保釈申請(2017年11月21日配信『NHKニュース』)

 

大阪の学校法人「森友学園」をめぐる事件で、詐欺などの罪で起訴され4か月近く勾留されている籠池泰典前理事長と妻について、弁護士が大阪地方裁判所に保釈を申請したことが関係者への取材でわかりました。

森友学園の前の理事長の籠池泰典被告(64)と妻の諄子被告(60)は、大阪 豊中市で進めていた小学校の建設工事をめぐる国の補助金や、学園が運営する大阪 淀川区の幼稚園に対する大阪府や大阪市の補助金をだまし取ったなどとして詐欺などの罪で起訴されています。

だましとった補助金の総額は合わせて1億8000万円余りにのぼるとされ、関係者によりますと2人は調べに対し黙秘しているということです。

2人はことし7月末に大阪地検特捜部に逮捕されて以来、4か月近く大阪拘置所で勾留されていますが、21日までに弁護士が大阪地方裁判所に保釈を申請したことが関係者への取材でわかりました。

裁判所は今後、大阪地方検察庁の意見なども参考にしながら保釈するかどうか決定すると見られます。

 

8億円下げ「根拠不十分」…会計検査院(2017年11月21日配信『毎日新聞』)

 

 大阪府豊中市の国有地が、学校法人「森友学園」にごみの撤去費分として約8億円値引きされて売却された問題で、会計検査院が値引きの根拠となったごみ推計量について「十分な根拠が確認できない」とする検査結果をまとめたことが、関係者への取材で分かった。検査院は22日に検査報告書を国会に提出し、結果を公表する。国土交通省と財務省は国会で「基準に基づき適切に積算した」と説明してきたが、矛盾する結果となる。

 関係者によると、検査院はごみ推計量が過大に見積もられた可能性を指摘するものの、国交省が積算に用いた資料の一部がないことなどから適正な撤去費の金額については言及せず、8億円の値引きが不当かは判断を示さないとみられる。両省は森友学園との交渉記録を破棄するなどしており、行政文書の管理についても改善を求める見通し。

 森友学園は2016年6月、評価額9億5600万円から地中のごみ撤去費など約8億2000万円を差し引いた額で国有地を購入した。野党は交渉経過が不透明として国会で追及したが、両省は約8億円のごみ撤去費について「土地面積にごみの深さ3.8メートル(一部9.9メートル)とごみ混入率47.1%を乗じてごみ推計量を出し、適切に算出した」と説明してきた。

 関係者によると、ごみの深さを撮影した写真が不鮮明だったり、混入率も土地全体ではなく一部から得たデータが使われたりしており、検査院は積算に使用する資料として不十分と判断した。検査院は参院予算委員会の要請を受けて3月から検査していた。

 

「森友」黒塗り文書、全面開示へ(2017年11月21日配信『東京新聞』)

   

 学校法人「森友学園」の国有地売却問題で、財務省近畿財務局が20日、ほとんどを黒塗りで開示した学園の小学校設置趣意書を一転して全面開示する決定を出したことが、分かった。近畿財務局は、学園の管財人から開示に支障はないとの意見書が提出されたためとしている。

 設置趣意書については神戸学院大の上脇博之教授が今年5月、情報開示請求。近畿財務局は「法人の経営ノウハウを含み、正当な利益を害する恐れがある」として、3枚の文書のほとんどを黒塗りにして開示した。

 代理人の阪口徳雄弁護士によると、学園管財人の弁護士が11月、近畿財務局に「(大阪府豊中市で計画していた)小学校の開設はなくなり、開示に支障はない」との意見書を提出。これを受けて20日付で不開示処分を撤回した。

 上脇教授は10月、不開示処分の取り消しを求めて大阪地裁に提訴しており、国側は裁判所から11月30日の第1回口頭弁論までに黒塗りの理由を記した答弁書の提出を求められていた。

 

国会報告前にTV出演 “森友疑惑に白旗”会計検査院長の魂胆(2017年11月11日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 “甘噛み検査”でお茶を濁す気か――。森友学園への国有地売却を巡る8億円値引き問題を検査している会計検査院。国会報告は今月末だが、なぜか9日、河戸光彦院長がNHKのインタビューに登場し、検査内容についてアレコレと明かしていたから驚いた。

 会計検査院の院長がわざわざこのタイミングでテレビ出演したのだ。てっきり森友や財務、国交両省をバッサリ切り捨てるのかと思ったら、違った。河戸院長の口ぶりは、モゴモゴというのか、何か奥歯に物が挟まったようだった。

「検証には書類が保存されていることが必要で、その一部が欠けていて、部分的に検証できないような状況は問題がある」

「積算のやり方は特殊な事情があれば、特例的なやり方を考えることもある。正解がひとつとはなかなか決められないのではないか」

一体、河戸院長はインタビューで何が言いたかったのか。会計検査院に「厳正な検査報告」を申し入れた市民団体の醍醐聰東大名誉教授はこうみる。

「国会への報告前に検査内容を示唆するような発言をすること自体、大いに疑問ですが、真相究明を半ば諦めたかのような院長の発言は“検査の限界”を文書管理のせいにして結論をあらかじめエクスキューズする意図が透けて見えます」

つまり財務、国交両省のズサンな文書管理を理由にすでに白旗を振っているらしい。だが、たとえ文書管理が不十分であっても、会計検査院がソノ気になれば厳正検査は十分可能なのだ。

8億円値引きの最大のポイントは、値引きの根拠となった埋設物の存在だ。産廃処理にはマニフェスト(産業廃棄物管理票)が残っている。施工業者の藤原工業が5月に豊中市に提出した報告書によると、2016年度に小学校建設予定地から排出した廃棄物はわずか194.2トン。数百万円程度の処理費で済むレベルだ。森友疑惑を追及している山本一徳豊中市議が言う。

「文書がそろっていなくても、会計検査院はマニフェストの確認や実地調査で真相に迫れる。194トン以外に排出した廃棄物があればその記録を探せばいいのです。今も埋設物が地下に残っているのであれば掘り起こしたり、レーダー解析したりすればいい」

果たして会計検査院は産廃処理の記録確認や実地調査を行ったのか。会計検査院に聞くと「検査中なのでお答えできません」(渉外広報室)と答えるだけ。会計検査院も結局は「吠えない番犬」なのか。

 

会計検査院まで忖度? 森友学園への“8億円値引き”不問も(2017年11月9日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 森友学園への国有地払い下げを巡る「8億円値引き問題」を調べている会計検査院。「値引きは最大6億円の過大」との報道もあり、会計検査院の“切り込み”に期待が集まっている。会計検査院は今月中にも調査結果を公表する見通しだ。

 ところが、大幅値引きは不問に付されそうだ――そんな見方が広がっている。不問になることを懸念し、先週には3つの市民団体が、会計検査院に「厳正な検査報告」の申し入れを行う事態になっている。

 懸念が広がっているのは、安倍自民党が選挙で大勝したことで、会計検査院が忖度する可能性が強まっているからだ。

 そもそも会計検査では、立証責任を負う主体が決められていないという。要するに、財務省近畿財務局側は、どんなに嫌疑をかけられようが、無実を証明する必要がないのだ。

 昨年6月、財務省近畿財務局は、評価額9.5億円の国有地を、わずか1.3億円で森友学園に売却した。約8億円の値引きの理由は「地下埋設物の発見」だった。しかし、本当に地下に埋設物があったのか、証明されていない。

 森友疑惑を追及する東大の醍醐聰名誉教授が言う。

「8億円の値引きは、誰もが首をかしげる話です。そういう場合は本来、疑いを向けられている近畿財務局側が嫌疑を晴らすのが筋でしょう。ただ、会計検査院が『値引きされた真相はわからなかった』と国会に報告する可能性も捨てきれません」

 会計検査院は「立証責任については、会計検査院の検査権限上、お答えすることは難しい」(渉外広報室)と回答した。

 こんな事情もある。会計検査院は三権から独立した憲法上の機関だ。とはいえ、府省庁との人事交流も盛んだ。麻生財務相の答弁書によると、昨年11月16日現在、府省庁から会計検査院に22人、会計検査院から府省庁へ19人が出向している。会計検査院が、関係省庁の意向や利害を忖度し、「8億円の値引き」という森友問題の核心に、二の足を踏むことも十分あり得るのだ。

 市民団体は、人事面でのつながりが検査に悪影響を与えないかという懸念も申し入れた。

 政権に忖度して8億円の値引きを不問にするような報告になれば、国民の怒りは会計検査院に向かうことになる。

 

政府、行政文書保存の基準公表へ 森友、加計受け新指針案(2017年11月8日配信『共同通信』)

 

 森友、加計学園問題で批判を受けた行政文書管理を巡り、政府の新たなガイドライン案の全容が7日、判明した。保存対象となる文書の種類や期間を決める基準を省庁の課ごとに公表すると明記。文書管理に携わる担当者の増員も求めた。これまで課ごとの基準は公表されるケースが少なく、どんな文書が保存されるか不明確で、重要文書が捨てられているとの指摘が出ていた。

 ガイドラインは、政府の行政文書の扱いに関する指針。新案では、行政文書について、政策立案や事業実施に影響する各府省庁内や外部との打ち合わせ記録とし、作成の際には、出席者の確認などを経て「正確性の確保を期す」よう求めた。

 文書管理新指針案ポイント

 

首相 論戦前に語らず モリ・カケ、疑惑の議員「謙虚に」(2017年11月2日配信『毎日新聞』−「社説」)

 

 自民党が大勝した衆院選を受け、特別国会が1日開会した。9月の臨時国会が質疑もないまま冒頭解散されてから、1カ月あまり。会期が39日間となって各党の代表質問も行われ、加計学園などを巡る問題についても改めて論戦が交わされそうだ。安倍晋三首相が繰り返す「丁寧な説明」は果たされるのか。一連の問題への関与が取りざたされた衆院議員を含め、自民党内からはさまざまな声が上がった。 

 本会議開会直前の1日午後0時半、国会内で開かれた自民党の両院議員総会に姿を見せた安倍首相。若手議員らと笑顔で握手を交わし、「重い責任を胸に刻み、結果を出していこうではありませんか」とあいさつした。記者会見などで森友学園や加計学園の問題について「丁寧に説明する」と述べてきたが、同僚に向けたこの日のあいさつではこうした問題に触れなかった。

 首相の友人が理事長を務める加計学園は、愛媛県今治市で国家戦略特区を活用した獣医学部新設を計画。文部科学省が今月、設置認可の可否を判断する見通しになっている。

 「謙虚に誠実に対応すべきだ。加計問題も質問されれば(政府が)説明するのは当然」。下村博文元文科相は衆院本会議終了後に語った。文科相時代に支援団体が学園の当時の秘書室長からパーティー券代を受け取っていたことが発覚。政治資金収支報告書に虚偽の記載があるなどとして大学教授らから刑事告発されており、自身の説明責任については「捜査にマイナスにならないように発信する必要がある」と述べるにとどめた。

 「必要があればどこへでも出ます」。萩生田光一幹事長代行は強調した。官房副長官時代、文科省幹部に獣医学部の早期開学を迫ったことが記された文書の存在が明らかになったが「私の関与はなかったことを野党も分かっているから心配していない」とも語った。

 一方、今治市が地元の村上誠一郎元行政改革担当相は「加計問題を説明しないで勝手に解散した」と語気を強めた。これまでも首相に批判的な言動で知られ、この日も「『丁寧に説明する』と言っても態度で示していない」と突き放した。

 

森友への過剰値引き 衆院選前に近畿財務局が情報開示妨害(2017年10月31日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 安倍政権はやっぱり、選挙前に“疑惑隠し”を画策していた。選挙が終わった途端、森友学園への国有地払い下げの値引き額が最大6億円も過大だったとする会計検査院の試算結果が明らかになった。

 今年3月から始まった調査の内容が、衆院選後のタイミングで出てくるとは、いかにも不自然。隠蔽のにおいが漂うが、実はある専門家も選挙前に、土地の売却主の「近畿財務局」に対し証拠文書の開示請求を求めたところ、“妨害工作”の憂き目に遭っていた。

 政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授が9月15日、近畿財務局に〈財務局と森友学園との面談、交渉記録〉など計15項目の開示を求めた。

 ところが、10月6日。衆院解散から約1週間後に財務局は、上脇教授に〈開示請求文書を特定するに足りる事項の記載が不十分〉として「補正」を要求。要は「どの資料が欲しいか分からないから、請求文書を書き直せ」と居丈高に迫ったわけだ。

 ■嫌がらせの「逆質問」が19項目

 異例の補正要求の内容も、ほぼ「難癖」に近い。例えば、上脇教授の〈森友学園側の担当者からの地中埋設物が存在したとして提出された文書〉との請求に、財務局は〈文書の提出先の行政機関を明記してください〉〈担当者(が誰)であるか不明確〉〈『森友学園側』の『側』がどのような内容を意味するのか不明確〉と、嫌がらせのような“逆質問”を全19項目にわたり展開している。上脇教授はこう言う。

「そもそも、国民側は政府がどんな情報を持っているのか、詳細には把握しようがありません。こちら側の請求が不十分で、資料を特定できないのであれば、どういった資料があるのかを事前に示すべきです。以前、別の政府機関に開示請求した際は、『○○局に××関連の文書や△△関連の文書が存在しますが、どれにしましょう』と助言してきたくらいです。嫌がらせのような要求を受けたのは、今回が初めて。“忖度”なのか“圧力”なのか分かりませんが、選挙前に疑惑が噴出することを防ごうとしたのではないでしょうか」

 安倍首相が約束した「丁寧な説明」は、いまだ果たされていない。それどころか、年明けの通常国会まで事実上の審議を半年以上もストップさせる構えだ。これ以上の“疑惑隠し”はとても許されない。

 

自民が質問時間増を要求 追及回避狙い 野党は反発(2017年10月30日配信『毎日新聞』)

 

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 国会での質問時間を巡り、自民党が議席数に応じて与党への配分を増やすよう要求している。衆院選大勝という「民意」を押し出すが、加計(かけ)学園問題などでの追及を減らしたい思惑が透けて見え、野党は「野党の質問封じだ」などと強く反発。しかし自民は、11月1日召集の特別国会で質疑に応じるための「取引条件」にする構えも見せ、与野党の攻防が激化している。

 「安倍晋三首相は謙虚な姿勢で国会に臨むと言ったのに、野党の質問を削るのか」。30日の衆院各派協議会で、立憲民主党の辻元清美国対委員長はこう批判した。自民側は「有権者から『なぜ自民は質問しないのか』と言われる」と反論。予算委員会などでの時間配分「与党2対野党8」を見直したい考えを改めて示した。 

 これまで衆院では、過半数を占める与党が配慮し、質問時間の大半を野党に割り当ててきた。関係者によると、自民党政権時代の2008年は「与党4、野党6」。09年からの民主党政権では、当時野党だった自民の要求などにより「与党2、野党8」と野党の持ち時間がさらに増え、それが第2次安倍政権以降も続いてきた。 

 ところが先の通常国会で安倍政権は森友・加計問題を追及され、内閣支持率が急落。自民は首相が矢面に立つ時間を減らそうと、7月の予算委の閉会中審査では「与野党5対5にしない限り、審査に応じない」と主張し、結局「与党3、野党7」で折り合った。 

 さらに自民の若手衆院議員が27日、「質問をしないと地元で『税金泥棒』とまで言われる」と党執行部に時間増を要望。菅義偉官房長官は30日の記者会見で「議席数に応じるのは国民からすればもっともだ」と後押しした。 

 自民、公明両党が衆院選で得た計313議席を単純に当てはめると、時間配分は「与党67%、野党33%」と与党に大きく有利になる。しかし、自民自身が野党時代は旧民主党政権による配慮の「恩恵」を享受していたことに加え、加計問題などを「丁寧に説明する」と繰り返す首相の姿勢とも逆行しかねない。立憲の枝野幸男代表は30日、「とんでもない暴論」と取り下げを求め、共産党の小池晃書記局長も「非常に姑息(こそく)でせこい」と批判した。 

 

安倍首相の「丁寧な説明」いつ?=本格国会なおハードル(2017年10月29日配信『時事通信』)

 

 学校法人「森友・加計学園」問題で野党が求める本格的な国会審議に、政府が慎重な姿勢を崩していない。安倍晋三首相は野党の審議要求に応じる考えを自民党幹部に伝えたが、与野党の質疑時間の配分をめぐって高いハードルを掲げる構えも見せる。首相が約束した「丁寧な説明」はいまだ果たされていない。

 民進党など4党は通常国会閉幕直後の6月22日、森友・加計問題の真相究明のため、臨時国会召集を要求したが、政府・与党は7月の東京都議選への影響を懸念し拒否。その後、首相が先月28日の臨時国会召集初日に衆院を解散したため、十分な会期を設けた国会は開かれていない。

 首相は選挙中のテレビ討論で、臨時国会を要求された中での冒頭解散が過去2例あると説明、「求められれば丁寧に説明する」と述べていた。

 だが、首相が指摘した1986年と96年の冒頭解散では、いずれも特別国会後に臨時国会を開き、所信表明演説と各党代表質問に応じている。今回のように要求から4カ月余りたっても、与野党論戦の実施を前提とした国会が召集されないのは異例だ。

 政府・与党の及び腰な姿勢には、森友・加計問題の新たな動きが影響しているとみられる。森友問題では国有地が約8億円値引きされた経緯を調べる会計検査院の検査結果が近く公表される。値引き額が過大と判断されれば、「適正」一点張りだった政府の説明は苦しくなる。

 加計学園の獣医学部新設の申請をめぐっても、政府の審議会が来月前半に認可の是非を判断する見通しだ。学園理事長らの証人喚問を求める野党は攻勢を強める構えで、政府内には「この時期に国会を開いていることが得策なのか」との声もある。

 とはいえ、野党の要求を無視することもできない。首相は27日、自民党の萩生田光一幹事長代行と首相官邸で会談。萩生田氏は「首相は(審議を)やらないと誰が言ったのかという感じだ」と記者団に強調した。

 政府・与党内には、11月1日召集の特別国会について、野党側に提案している8日間の会期を12月上旬まで延ばす案や、開会後に8日までの会期を延長する案などが浮上している。首相は野党偏重との指摘がある国会質疑の時間配分を見直し、与党により多く配分するよう萩生田氏に指示した。審議に応じる条件として野党に求めていく構えだ。

 

◇主な政治日程

 6月22日 衆参両院で臨時国会召集要求

 9月28日 国会召集、冒頭解散

10月22日 衆院選

11月 1日 特別国会召集(8日まで?)

    5日 トランプ米大統領来日(7日まで)

   10日 APEC首脳会議(11日まで)、ASEAN関連首脳会議(14日まで)

 同月前半  政府審議会が加計学園の獣医学部新設認可の是非判断

 同月中?  森友学園への国有地売却問題で会計検査院が検査結果公表

12月中旬  来年度予算編成が本格化

   年内  日中韓首脳会談?

 

森友6億円値引きでも逮捕者なし 悪党がのさばる無法国家(2017年10月27日配信『日刊ゲンダイ』)

 

 もはや疑う余地はない。600億円もの血税をつぎ込んだ衆院解散・総選挙は、安倍首相のアキレス腱であるモリカケ隠しだったことがハッキリした。

 安倍首相夫人の昭恵氏が名誉校長として関わっていた森友学園へのタダ同然の国有地売却交渉をめぐり、売却額の妥当性を調べていた会計検査院が「値引き額は最大6億円過大だった」と試算していると報じられた。国有地の地中に埋まっていたゴミ撤去費用の積算を担当した国交省大阪航空局が、過剰に見積もりをした疑いが濃厚だということだ。これが公示前、あるいは選挙戦の最中に表に出ていれば、安倍政権を直撃したのは間違いない。世論の8割がモリカケ疑惑に関する安倍の説明に納得しておらず、逃げ回る姿に不信感を強めている。安倍自民の圧勝はあり得なかった。元特捜検事の郷原信郎弁護士はこう言う。

 「森友疑惑は何から何までメチャクチャです。検査院が調査に着手してから半年以上も経っている。ゴミ撤去費用の積算が適正であったかどうかを調べているだけなのに、なぜこんなに時間がかかるのか。その上、安倍政権の続投が確実になってから調査概要が漏れ伝わってきている。検査院も大阪地検特捜部もそうですが、あらゆる機関、関係者が安倍首相への忖度ありきで動いている印象です」

 ■アベ自民圧勝で幕引きシナリオ

 問題の国有地をめぐって、森友は財務省近畿財務局と定期借地契約を締結後に購入を打診し、「地下9.9メートルまでゴミがある」と申告。近畿財務局から土壌調査を依頼された大阪航空局は詳細に調べ直さないまま、以前の調査データを基にゴミ混入率を土壌全体の47%とみなし、撤去費約8・2億円を算出した。財務省が撤去費単価に関する文書や交渉記録を廃棄したとする中、残された資料を検査院が検証すると、混入率は30%程度で撤去費は約2億円にとどまったという。

 ゴミ撤去費については市民グループも問題視。弁護士らが当時の近畿財務局長らを背任容疑などで大阪地検特捜部に告発し、約2.7億円が過大だったとする1級建築士の鑑定書も提出した。森友疑惑に関与した職員を立件する材料は揃ってきている。にもかかわらず聞こえてくるのは特捜部の本格始動どころか、捜査終了のシナリオだ。

 「財務省、国交省の職員を背任容疑で立件するにはハードルが高く、〈値引きをしてもいいから売れ〉などといった具体的な指示を文書や電子データで立証する必要がある。それでも、総選挙の結果次第で特捜部が本腰を入れる可能性はありましたが、自民党の強さを見せつけられ、森友疑惑を追及する機運はついえてしまった。とはいえ、何もしなければ世論の批判は特捜部に向かってくる。当面は捜査を継続し、不適正ではあるけれど違法性は認められないという結論を出す。納得しない市民団体が検察審査会に不服申し立てをするでしょうが、そこで不起訴相当の議決を出して幕引きという算段です」(捜査事情通)

 国会で「記録はない」「記憶はない」を連発した揚げ句、「データは自動的に消える」などとインチキ答弁を繰り返し、身をていして安倍を守り抜いた財務省の佐川宣寿前理財局長は国税庁長官に出世。「内閣総理大臣夫人付」として昭恵氏に3年間仕え、森友と財務省の橋渡し役も務めた経産省の谷査恵子氏は在イタリア日本大使館の1等書記官に栄転した。検査院は選挙が終わるまで沈黙し、特捜部はまるで動く気配がない。国民の財産である国有地を6億円も値引きして叩き売っておきながら、当事者の役人から逮捕者はなし。こんなデタラメが許されるはずがない。

 推定無罪ガン無視、首相が公然と司法判断に介入

「教育に対する熱意が素晴らしい」と持ち上げられたのも束の間、「非常にしつこい」と安倍から切り捨てられた籠池夫妻は補助金不正受給の詐欺罪などで逮捕、起訴された。安倍夫妻との関係をチラつかせて財務省に揺さぶりをかけ、「グーンと下げていかなアカンよ」などと値引きを迫った籠池夫妻のやり方はえげつないが、口封じの国策捜査との非難が絶えないのも事実である。

 「一般法と特別法の関係からすれば、森友学園のケースは補助金適正化法違反で進める事案ですし、籠池夫妻のように全額返還後に起訴された事例はない。詐欺罪での立件は逮捕事実の水増しを意図したとしか考えられません。しかも、安倍首相はトンデモない発言をしている。公示直後に出演したテレビ党首討論で〈籠池さんは詐欺を働く人間〉と断定し、〈昭恵も騙された〉と言い放った。この国の行政府の長は推定無罪の原則を知らないのでしょうか。初公判もまだ開かれていないし、籠池夫妻は黙秘していると伝えられている。検事総長に対する指揮権を持つ法相を任免する立場にある総理大臣が、司法判断の介入になりかねない発言をする。日本はとても法治国家とは言えない。無法国家ですよ」(郷原信郎氏=前出) 

 国のトップが国家を私物化し、その仲間内だけが甘い汁を吸う露骨な利権構図がまかり通る。そんな国柄だからなのか、アベノミクスの牽引役だと喧伝されてきた企業の不祥事が相次いでいる。

 政府が約46%の株式を保有する商工中金は、2008年のリーマン・ショックを機に制度化された危機対応融資を悪用。2600億円を超える巨額不正に手を染めていた。国のお墨付きを得て融資残高をガンガン増やしたのは悪辣だが、中小企業対策と称する見せかけの景気対策装置の役割を担っていた側面もあった。それで悪事がバレたら安達健祐社長は引責辞任してオシマイだ。新車不正検査が常態化していた日産自動車、検査データ改ざんがグループ内に蔓延していた神戸製鋼所しかりである。日産も神戸製鋼も株高演出の指標である日経平均株価に採用されている。多少の悪さを働いても日銀やGPIFが株を買い支えるし、救済措置も施される。そんなもくろみでタガが外れ、発展途上国並みの不正天国の国に成り下がったのか。

 ■国会審議よりゴルフ外交

 無法国家でワルはぬくぬくと暮らし、一般市民は「働き方改革」で安価な労働力の提供を強制され、社会保障費はさらに削られようとしている。国民を飢えさせても、核・ミサイル開発に猛進する海の向こうの独裁国家を冷笑してはいられない。

 モリカケ疑惑の真相究明はもとより、内憂山積にもかかわらず、安倍官邸は野党が要求する臨時国会の召集を拒否。首相指名選挙が行われる特別国会を11月1日から開き、所信表明演説も各党の代表質問もやらずに8日には閉じる腹積もりだ。

 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。

「官邸はトランプ米大統領の来日や、APEC首脳会議やASEAN首脳会議などの外交日程を口実に来年の通常国会まで逃げる魂胆のようですが、トコトンふざけています。トランプ大統領とゴルフに興じる時間があるなら、国民や野党が求める国会審議に回すのが当然でしょう。森友疑惑の端緒は紛れもなく昭恵夫人です。安倍首相は総選挙後も〈誠意を持って丁寧に説明していきたい〉と言っていたのですから、いい加減に約束を守ってもらいたい。安倍首相が説明できないのであれば、昭恵夫人を国会招致してコトの経緯を明らかにするべきでしょう。そうしない限り、この問題が鎮火することはありません」

 衆院の8割を親アベが占め、衆参で3分の2超を超える勢力を再び手にした安倍は、自民党総裁3選、10年に及ぶ超長期政権に手を掛けようとしている。

 主権者である国民をないがしろにし、国会も立憲主義も蹂躙するワルの親玉が戦後最長政権にまっしぐら。こんな悪夢を招いてしまった以上、国民がさらに声を張り上げなければ、加速する独裁者の暴走を止めることはできなくなる。

 

国交省積算ごみ撤去費 森友値引き6億円過大 検査院が疑義(2017年10月26日配信『東京新聞』)

 

 学校法人「森友学園」に大阪府豊中市の国有地が、ごみの撤去費分として約8億円値引きされて売却された問題で、売却額の妥当性を調べていた会計検査院が撤去費は2億〜4億円程度で済み、値引き額は最大約6億円過大だったと試算していることが25日、関係者への取材で分かった。 

 官僚の「忖度(そんたく)」が取り沙汰された問題は、税金の無駄遣いをチェックする機関からもごみ撤去費の積算に疑義が突き付けられる見通しとなった。検査院は関連文書の管理にも問題があったとみており、売却に関わった財務省と国土交通省の責任が改めて問われるとともに、政府に説明を求める声が強まるのは必至だ。

 検査院は詰めの調査を進め、両省への指摘内容を年内にも公表する見通し。

 森友学園は2015年5月、財務省近畿財務局と国有地の定期借地契約を締結。その後、国有地の購入を申し出たことから、財務局は地中に埋まっていたごみの撤去費の見積もりを、以前に現場周辺の地下の埋設物を調査していた国交省大阪航空局に依頼した。

 学園は「地下9・9メートルまでごみがある」と申告。航空局は詳細に調べ直さないまま、以前の調査を基に、土壌全体の47%にごみが混入しているとみなし、撤去費を約9億2千万円と算出。財務局は16年6月、この額を評価額の約9億5千万円から値引きし、約1億3千万円で売却した。

 検査院が残された資料を検証したところ、47%というデータは、航空局が以前に現場の敷地を掘削した数十ポイントのうち、ごみが出てきた6〜7割のポイントの土壌に限っての混入率だった。残る3割以上では、ごみが見つかっていないのに混入率に反映させていなかったという。検査院が計算し直したところ、混入率は30%程度で撤去費は約2億円にとどまった。別の計算方法を用いても四億円余りだったという。

 ただ、撤去費単価に関する文書や、国と学園とのやりとりの記録は破棄されており、正確な見積もりはできなかった。検査院は文書管理の改善も求めるとみられる。

 

<森友学園問題> 学校法人「森友学園」が、大阪府豊中市の国有地を約8億円値引きされた価格で取得していたことが今年2月に発覚。この土地で建設を計画していた小学校の名誉校長には安倍晋三首相の妻昭恵氏が一時就任し、国会で追及された。大阪地検特捜部は国や大阪府、市の補助金を詐取したなどとして、詐欺罪などで籠池泰典前理事長と妻を起訴。近畿財務局長らの背任容疑などについても刑事告発を受け捜査している。

 

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森友・加計、党首と候補者に温度差 朝日・東大調査(2017年10月19日配信『朝日新聞』)

 

各党党首の立ち位置

 

 「森友・加計(かけ)学園」問題や憲法改正の問題などについて各党の党首や幹部らはどのように考えているのか。朝日新聞社と東京大学・谷口将紀研究室が衆院選の全候補者を対象に実施した調査で、主な政党の党首らの回答を比べた。党首同士の考えの違いだけではなく、党候補者との距離感も見えてきた。

 党首は安倍晋三首相(自民党総裁)のほか、共産党の志位和夫委員長、立憲民主党の枝野幸男代表を比較。そのほか、党首が衆院選に立候補していない希望の党、公明党、日本維新の会はそれぞれ、樽床伸二選対事務局長、北側一雄副代表、馬場伸幸幹事長を対象にした。

 森友・加計学園問題への安倍内閣の対応については、首相と北側氏が最も肯定的な「評価する」で一致した。ただ、自民候補のうち首相と同様に「評価する」と答えたのは17%。「どちらかと言えば評価する」は40%で、否定的な評価も12%あった。公明候補で北側氏と同じ「評価する」と回答したのも6%で、首相や北側氏と両党候補者たちとの温度差がうかがえた。樽床、志位、枝野、馬場の4氏は最も否定的な「評価しない」と回答し、それぞれの党の候補者平均と大差なかった。

 

「森友・加計」依然うやむや 語らぬ首相 批判の野党(2017年10月16日配信『東京新聞』)

 

 今年の国会で最も議論となったテーマの一つは「森友学園」と「加計(かけ)学園」を巡る問題だ。公正で公平な行政が行われているのか、との疑念を持たれている。四年十カ月の安倍政治の一端として生まれたとも指摘されている問題について、衆院選で各党はどう語っているのか。 

 安倍晋三首相(自民党総裁)は15日、北海道で街頭演説。岩見沢市では北朝鮮対応や幼児教育への投資を訴えたが、17分の演説中「森友・加計」に一度も触れなかった。

 衆院解散を表明した9月25日の記者会見では「国民から大きな不信を招いた」と認め、丁寧に説明する考えに「変わりはない」と明言した。

 この問題について、世論調査では約8割が納得していないと回答。首相も衆院選公示直前に「選挙が終われば、終わるものだとは思っていない。求められれば、誠意を持って答えなければならない」としたが、自ら説明する姿勢はない。このため、演説中に聴衆から「森友・加計を説明しろ」とやじが飛ぶことも。

 これらは、首相自身または妻昭恵氏とつながりが深い学校法人を巡る問題だ。

 森友問題では、昭恵氏付きの政府職員が国有地を巡り財務省に照会したほか、同省職員が学園側に「ゼロに近い金額まで努力する」と語った音声テープが明らかに。加計問題では、獣医学部新設で競合相手がいたのに、なぜ「加計ありき」と指摘される形で手続きが進んだのか。首相は真相究明に積極的ではない。

 野党側は、森友・加計問題を「安倍一強政治の象徴」として批判している。

 希望の党の小池百合子代表は街頭演説で、この問題を取り上げ「忖度(そんたく)だ、お友達であれば何か良いことがある、そんな政治を変えていこう」と訴えている。

 共産党の志位和夫委員長は「暴走政治の行き着く果てが森友、加計疑惑だ。これほど国政私物化疑惑にまみれた政権は戦後ない」と批判。首相が街頭演説で語らないことに対し「ならば、国会で昭恵氏に出てきてもらい、疑惑の徹底究明を行う」と主張する。

 立憲民主党の枝野幸男代表も「税金が食い物にされている。安倍政権は情報公開や説明責任をまったく無視している」と強調。社民党も同様に問題視する。

 公明党の山口那津男代表は首相に説明責任を果たすよう求める。日本維新の会の松井一郎代表は、森友問題は検察が捜査中とし、加計問題は「首相と加計(孝太郎)理事長の友情がきつすぎた」と指摘するにとどめている。

 

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「森友・加計」語らぬまま 行政責任者ら選挙戦で触れず(2017年10月16日配信『毎日新聞』)

 

 安倍政権の姿勢をめぐって、国会で追及が続いてきた学校法人森友学園と加計(かけ)学園の問題。選挙戦でも、野党党首らが街頭演説などで批判する一方、与党側が自ら触れることはほとんどない。二つの問題で名前が出たり、行政の責任者だったりした候補者の選挙区でも議論はすれ違っている。

 加計学園の獣医学部新設問題について、国会で野党の追及を受けた自民前職の松野博一・前文科相(55)が立候補する千葉3区。公示日の10日、松野氏は千葉県市原市で開かれた出陣式で加計学園の問題には直接触れず、「いろいろとご心配をかけた」と述べるにとどめた。公示後は、各地への応援演説で選挙区を空けることが多い。陣営によると、15日は地元に戻っていたが街頭演説はせず、支援者へのあいさつ回りなどを続けた。

 これに対し、野党候補は街頭で、加計問題を重点的に訴える。

 「一部の人のために忖度(そんたく)をし、一部の人のために首相が新たな特区を作って、一緒に支える大臣がいて、説明もしないで下を向いている」。15日午後、市原市のスーパー前で演説に立った立憲元職の岡島一正氏(59)は冒頭、松野氏を念頭に加計問題に触れ、「森友・加計問題で国民に説明もできない人たちが、『自分がリーダーだ』と言うのは間違っている」と続けた。岡島氏の陣営関係者は「森友・加計を話題に出すと有権者の反応が全然違う」と話す。

 希望元職の櫛渕万里氏(50)も、松野氏を意識して政府の説明責任を強調する。「千葉3区には文科相だった方がいる。一度でも加計問題の事実が何だったのか説明しましたか?」。15日昼、市原市内でマイクを握ると、約10分間の演説の多くを加計問題に割いた。安倍政権を「情報隠しの政治」と批判したうえで、「もし政権をとれば、関係者すべて証人喚問をして、すべての文書を公開する」と訴え、事実解明の必要性を強調している。

■山口4区、真相究明求める団体から立候補も

 安倍晋三首相(63)が立候補する山口4区。首相が全国を遊説に回る中、妻の昭恵氏が街頭や個人演説会でマイクを握る。

 森友学園への国有地売却問題では再三、名前が出たり、関与が取りざたされたりした昭恵氏だが、「この国を守るため全力を尽くしてきた」など、首相の実績のアピールがほとんどで森友問題には触れていない。安倍氏の事務所はネット上で昭恵氏を「囲みましょう」といった書き込みがあったとして、個人演説会などの取材を拒否。報道各社で作る下関市政記者クラブは撤回を申し入れたが、15日現在も続いている。

 安倍陣営の個人演説会に参加した男性は、演説会では森友・加計問題への言及はなく、参加者からの質問もなかったという。「参加者は根っからの支持者ばかり。あのピリピリした雰囲気の中で、問題を問いただす人はいない。そこはみんな忖度(そんたく)していると思う」と話した。

 一方、4区には加計学園問題の真相解明を求める市民団体を立ち上げた黒川敦彦氏(39)が無所属で立候補した。黒川氏は街頭演説で「市民の先頭に立って加計問題を追及してきた。一国の総理が税金の使い方について説明できない。そんなおかしいことがあるのか」などと主張。安倍氏の事務所前でも演説している。

 安倍氏は中選挙区時代を含めて8回連続で当選。前回、前々回の得票率はいずれも75%を上回るなど、支持基盤は厚い。

 支持者は問題をどう受け止めているのか。安倍氏の父、故晋太郎氏の代からの支持者という同市の飲食店経営、藤尾憲美さん(71)は「安倍さんも昭恵さんも本当に良い人。利益を得ちゃろうという人じゃない。森友・加計問題ははめられた。良い人だから利用されたんですよ」と話す。

 このほか山口4区には、いずれも新顔で希望の藤田時雄氏、共産の西岡広伸氏、無所属の郡昭浩氏も立候補している。

 

ひいき、忖度やめて 計画頓挫 森友学園の周辺住民(2017年10月9日配信『東京新聞』)

 

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「市民の要望通り、避難所になる公園にしてほしい」と訴える、有友耕二さん=9月28日、大阪府豊中市野田町で

 

 安倍晋三首相の周辺関係者が登場する森友学園事件と加計(かけ)学園疑惑。異例の国会冒頭解散は、「森友・加計」隠しと批判されたが、衆院選の注目は小池新党や民進党分裂に移り、両学園の真相解明は依然として進まない。用地の払い下げで、8億円もの不透明な値引きが発覚した森友学園のある大阪府豊中市では、「えこひいきや忖度(そんたく)のない政治」を求める声が聞かれた。 

 名神高速豊中インター近くの住宅地を歩くと、茶褐色の建物が目に入る。森友学園が「安倍晋三記念小学校」の触れ込みで寄付を募っていた小学校だ。校舎は98%完成していたが、計画は頓挫。敷地の周りの3分の2はフェンスで覆われていた。

 森友への売却交渉が破棄されたとして、国が6月に土地を買い戻し、「国有地」の看板が所々に掛かる。校舎の前の一角には、小さな公園ができ、幼児連れの父親がぶらんこで娘を遊ばせていた。

 目の前に住む鶴岡武さん(79)は元々、予定地内に住んでいた。市から災害時の避難のため公園を造ると言われて引っ越したという。

 「なぜ、計画が変わったのか。安倍首相の昭恵夫人が懇意になった籠池夫妻が『記念小学校』を建てようとしたからでないのか」。今も疑念は消えないといい「地権者に説明がなく、忖度がまかり通っていたら言語道断。衆院選では市民に必要なことをする政治家、政党を選びたい」と話す。

 友人と立ち話をしていた近所の有友耕二さん(71)は「当初の希望通り、全部の土地を避難所になる公園に戻してほしい」と訴えた。

 森友学園は民事再生手続き中。手続きを進める管財人は「土地は国に戻ったが、学校建設での森友の支払いが完了していないため、建物は建設した藤原工業が所有している」と言う。10日に管財人が国などに示す再生計画案が認められなければ森友は破産する。

 

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建設中だった「森友学園」の小学校の周りには、フェンスが張り巡らされ「国有地」と書かれた看板が掲げられていた

 

管財人は「再生計画などを債権者がどう受け止めるか次第。土地価格を調査する会計検査院の報告や、大阪地検特捜部の捜査が終わるまでは手がつけられないのが実情だ」と明かした。

 公園で幼なじみとおしゃべりをしていた会社員金岡碧さん(29)に声をかけると、「今、その話をしていたんですよ。ここどうなるんだろうねって。建物だけでも相当お金がかかっている」とあきれた表情を見せた。

 「疑惑があったから処分で良いのか。うやむやなまま解散し、疑惑隠しとしか言えない。選挙が終わっても、土地がなぜこれほど値引きされたか、政府は説明責任を果たしてほしい」

 次男(1つ)を自転車に乗せて、長男(3つ)を幼稚園に迎えに行く途中の主婦万廣祐莉(まひろゆり)さん(28)は「正直、政治不信になった。普通の会社なら『ごめんなさい』では済まない」という。「こうした疑惑があると、支持政党選びは慎重になる。子育てや教育にしっかりと寄り添い、えこひいきのない政治を行う政治家に投票したい」と考えている。

 

<森友学園事件> 学校法人「森友学園」が払い下げを受けた大阪府豊中市の国有地が、評価額より約8億円安い約1億3000万円で売却されていたことが今年2月に発覚。大阪地検特捜部は国や大阪府、市の補助金を詐取したなどとして、詐欺罪などで前理事長の籠池泰典被告と妻諄子被告を起訴した。国有地売却を巡る財務省関係者への背任容疑でも捜査している。

 

森友・加計問題 衆院解散、官僚もホッ 国会追及逃れ(2017年10月7日配信『毎日新聞』)

 

野党側の追及が予想された新たなポイント

 

 森友学園、加計学園の問題で、衆院解散・総選挙によって渦中の省庁に安堵(あんど)感が漂っている。6月の通常国会閉会後に新たな問題も浮上したが、先月の臨時国会は審議のないまま冒頭解散となり、野党の追及を逃れた格好だ。東京都の小池百合子知事による新党結成を機に世論の関心が政界再編に傾いているようにも見えるが、識者は「国民は忘れていない」とくぎを刺す。

 ■加計問題

 「臨時国会で答弁の準備をしなくていいので、仕事量が格段に減る」。加計学園の獣医学部新設の認可を担う文部科学省で、幹部の一人は衆院解散を歓迎した。国家戦略特区に指定された愛媛県今治市での学部新設について、内閣府が文科省に「総理のご意向」と迫ったことを記した内部文書の存在が5月に発覚して以降、国会対応に追われていたからだ。別の職員も「答弁づくりは大変。ほっとしている職員はたくさんいる」と明かした。

 だが、通常国会閉会後も疑問は深まった。7月24日の衆院予算委員会の閉会中審査で、安倍晋三首相は学園の獣医学部の計画を知った時期を問われ、突然「今年1月20日」と主張。過去の答弁と矛盾するうえ、学園の理事長を「腹心の友」と呼ぶ首相が、獣医学部新設の事業者に加計学園が認定される当日まで計画を知らなかったことになる。不自然さは拭えず、野党は理事長の国会招致を求めている。

 今月6日には市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表が山口県庁で記者会見し、解散・総選挙について「加計隠しだ」と批判。首相の地元・山口4区から無所属で出馬し、真相究明を訴える考えを明らかにした。

 ■森友問題

 「国会で『捜査中』って答えていたら、持たなかったかもしれない」。財務省の職員はほっとした様子を見せた。森友学園への国有地売却を巡り、約8億2000万円を値引きした経緯の不透明さが問題視され、国会閉会中も野党が説明を要求。財務省は「捜査中でコメントできない」との姿勢を崩していないが、国民が注視する国会で同じ言葉を繰り返せば厳しい世論の批判を招きかねなかった。

 この取引を巡っては、財務局の担当者が昨年5月、学園側に売却額の見通しを伝えていたとされる音声データの存在が今年8月に発覚。国会で3月、当時の佐川宣寿理財局長(現国税庁長官)が「価格を事前に相手に伝えることはない」と説明した答弁と矛盾することになる。解散で野党は追及の舞台を奪われた格好だが、会計検査院も問題がなかったか調べている。政府関係者は「これで終わりとはいかない。選挙で問題が消えるわけではない」と語った。

国民は忘れない

 元文科省大臣官房審議官の寺脇研・京都造形芸術大教授の話 文科省や財務省の中で国会審議がなくなってほっとしている官僚がいるとしたら情けない。今も二つの問題の真相解明を求める動きが全国各地で起きている。選挙が終われば忘れられるという考えは国民をバカにしている。疑惑が解明されるまで収束することはないだろう

 

森友、加計問題「総理は説明を」(2017年10月7日配信『共同通信』)

 

小泉氏が街頭演説で

 自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長は7日、大阪府高槻市での街頭演説で森友、加計学園問題を取り上げ「皆さんの疑念を払拭できるのは安倍総理しかいない。真摯に説明を果たしていく選挙にしなければいけない」と発言し、安倍首相に説明責任を果たすよう求めた。

 小泉氏は次期衆院選大阪10区の自民候補の応援で来訪。「野党をいくら非難しても、森友、加計学園について総理がしっかり説明していないという声がつきまとう」と指摘し、「今回の選挙でけりをつけられなければ、選挙後の信頼回復につながらない」と訴えた。

 

特例尽くし、積み上がる不信 森友問題に背を向ける政権(2017年9月28日配信『朝日新聞』)

 

森友学園をめぐる疑惑と経緯

 「神風」は吹いたのか――。

 大阪地検特捜部の捜査が進む森友学園問題。学園側と安倍晋三首相の妻昭恵氏の親密さに、人々の疑念の目が向けられた。

 森友学園が小学校用地として得た大阪府豊中市の国有地は、更地の鑑定価格から「ごみ撤去費」として8億1900万円が値引きされ、1億3400万円で売却された。分割払いOK。売却額は、当初非公表。国の実務にしては「特例」尽くしだった。

 学園の籠池泰典・前理事長(64)=詐欺罪などで起訴=によると、昭恵氏とは2012年12月の第2次安倍政権発足より前、学園幼稚園のPTA役員の紹介で知り合った。昭恵氏に小学校の構想を伝え、国有地取得に向けた国との交渉経過を頻繁に報告した。

 14年春には昭恵氏と予定地で記念撮影し、交渉窓口の財務省近畿財務局職員に写真を見せたという。15年5月、国は「特例」で10年以内の購入を約束する定期借地契約を結んだ。

 その年の9月、昭恵氏は幼稚園で講演し、小学校の名誉校長就任を引き受けた。その日の昼食は籠池夫妻らの案内で近くの洋食店へ。店の関係者によると、会食は和やかな雰囲気で、昭恵氏は3千円のランチを残さず食べ、学園側が支払った。

 国有地をめぐり事態が大きく動いたのは16年3月。過去に1億3千万円かけて汚染土などを除去したのに「新たなごみが見つかった」と学園側が国に報告。その4日後には籠池夫妻が財務省の担当室長に会い、昭恵氏らの名前を出して対応を求めた。

 野党が追及した通常国会が今年6月に閉じたあとも、国有地売買をめぐる疑惑はさらに深まっている。

 8月には、財務局側が16年3月下旬、学園側に「いくらまでなら買えるのか」と尋ねていたことが複数の学園関係者の証言で判明。事前の価格交渉を「ない」とした財務省の佐川宣寿(のぶひさ)・前理財局長の国会答弁は、虚偽だった疑いが指摘されている。

 9月には、財務局職員が「ゼロに近い金額まで私はできるだけ、努力するという作業をやっています」などと語る音声データ(16年5月録音)が残っていたことも明らかになった。

 さらに、ごみの積算根拠とされた不鮮明な写真資料でも、新たな疑惑が浮上している。別々の試掘場所と示された写真が同じ穴を違う角度から撮っていた可能性が高いことが専門家の指摘でわかった。土地紛争の専門家は「写真を見比べれば、二つが同じ穴であることは明らかだ」と話す。

 国有地売却の経緯に疑念が続出するなか、籠池前理事長は昭恵氏や保守系の国会議員との関係を冗舌に語ってきた。

 「昭恵夫人は政治家的な方。財務省に多少の動きをかけて頂いた」「神風が吹いたかなと思った」(今年3月、国会証人喚問)

 「定期借地契約に難色を示していた財務省が14年夏ごろ、突然前向きになってくれた」(同4月、民進党のヒアリング)

 積み上がった不信。しかし、国民が国会で事実に近づける機会は、安倍首相の解散表明で遠のいた。

 埋没していたこの問題に気づき、今年2月、非公表だった国有地売却額の情報公開を求めて裁判を起こした大阪府豊中市議の木村真さん(53)は、臨時国会を待ち望んでいた。「ここまでの事実が出てきた以上、『知らぬ存ぜぬ』では無理」と感じていたからだ。議論の余地を与えない冒頭解散は、「なりふり構わない権力の私物化」としか見えない。

 解散の意向を表明した25日夜、安倍首相は「誠実に丁寧に説明してきた」とテレビのインタビューで繰り返した。

 木村さんは言う。「政府が説明するということ。これは民主主義の前提です。『記録がない』『処理は適切だった』と繰り返すのでは、国民は判断することさえできない」

 この問題にかたくなに背を向ける政権のもとで、民主主義のプロセスはあまりに軽んじられている。

 

「森友」記録 復元の可能性 財務省 業者に消去延期指示(2017年9月22日配信『東京新聞』)

   

 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、財務省と学園側との交渉記録を含む可能性のある電子データが保管されていることが、同省への取材で分かった。「7月末までにコンピューターのハードディスクを破壊してデータを復元不能にする」との業者との契約を同省が覆し、業者に延期を指示した。

 同省が記録復元を視野に入れていることを意味し、情報開示を求める声が再燃することは必至だ。

 問題の電子データをめぐっては、財務省の佐川宣寿・前理財局長(現国税庁長官)が今年2月の衆院予算委員会などで「(学園側との)売買契約締結をもって事案は終了し、交渉記録は残っていない」と答弁。野党や情報開示を求めるNPO法人は「技術的に復元可能だ」と反論していた。

 交渉記録が含まれる可能性があるのは、職員個人のパソコン内のディスクのほか、ファイルを集積管理するサーバーや、文書データが添付された電子メールを中継したサーバーにつながったディスク。財務省と森友学園との交渉の全期間にわたり使われた。

 財務省によると、これらの機器は5月末に4年間のリース契約が満了し、既に新システムでの業務が始まっている。システムを納入したNECと同省の契約では、交渉期間内に使われた旧機器は7月末までにディスクに穴を開けたり、無意味なデータを上書きしたりして、記録を復元不能にするよう定められていた。

 だが、財務省はこの消去期限を延長するようNECに指示。財務省は取材に、「関係機関による調査が行われていることをふまえ、機器の撤去やデータ消去の作業期限を延長している」と回答した。今後の取り扱いについては「調査の推移などをふまえながら検討する」としている。

 

森友・加計問題「論戦しないのか」 有権者から厳しい声(2017年9月17日配信『朝日新聞』)

 

 安倍晋三首相が年内の衆院解散を検討していることが報じられたことについて、有権者からは厳しい声もあがる。

 安倍政権の支持率は、学校法人森友学園への国有地売却や加計学園の獣医学部新設を巡る問題などで低下した。28日召集の臨時国会ではこれらの問題が議論される見通しだが、冒頭解散となれば政権の説明の場は遠のく。NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「問題の核心に関する文書もなく、定型文のように『一点の曇りもない』と繰り返す姿勢が政権の支持率の下落につながった。国会論戦になればイメージを悪くするだけで、やりたくないというのが政権の本心だろう」とみる。

 「説明が尽くされていない点を国会で明らかにした上で、有権者に選択を求めるのがあるべき姿。国会論戦のないまま解散するとすれば、説明責任を尽くさない政権の体質が端的に表れた判断だ」

 北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射も相次いでいる。今年3月、領海へのミサイル落下を想定して政府と住民避難訓練を行った秋田県男鹿市で地区の自主防災会長を務める高野進さん(77)は「ミサイル発射がやまない危機的な状況下での解散はもっての外。民進党がゴタゴタするのに乗じて党利党略のみを考えた行動だ」と怒りを隠さない。「ここは体の不自由なお年寄りも多く、みんな不安を感じている。解散よりも危機対応を進めてほしい」と話した。

 

森友「口裏合わせ」報道問題、民進が追及 国、説明回避(2017年9月15日配信『朝日新聞』)

 

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、民進党のプロジェクトチームは14日、会合を開き、学園側と国との売却価格をめぐる交渉の過程で「口裏合わせともとれるやりとりがあった」とした関西テレビの報道について国に説明を求めた。財務省は「(大阪地検の)捜査に影響がある」と繰り返し、説明を避けた。

 問題の土地は、2016年6月、鑑定価格から約8億2千万円を差し引いた1億3400万円で国が売却した。国は15年に地下の埋設物などを除去したが、16年3月に地中の深い部分から「新たなゴミ」が見つかったために大幅に値引きした、などと説明。財務省の佐川宣寿(のぶひさ)・前理財局長も「適正に処分費を見積もって算定した」などと答弁している。

 民進党は14日の会合で、関西テレビが11日に報じた音声データを再生し、国に説明を求めた。「新たなゴミ」が見つかったと学園側が国に伝えた後の昨年3月下旬の録音とされる。学園の籠池泰典・前理事長や当時の学園の代理人弁護士らが国側と交渉し、国側が値引きの方策を提案した、と報じられた。

 報道によると、この交渉の中で国の職員とみられる人物が「(15年に撤去した部分より)下にあるゴミは国が知らなかった事実なので、そこはきっちりやる必要があるでしょというストーリーはイメージしている」と説明。同席した工事業者とみられる人物が「下から出てきたかどうかは分からない」と反論したが、近畿財務局の担当者が「どういう整理をするのがいいのかご協議させていただけるなら、そういう方向で話し合いさせてもらえたら」と発言した、とされる。

会合で、同党の今井雅人衆院議員は「明らかに事前に交渉され、しかも国側が提案している会話。これまでの国会答弁とまるで違うと言わざるを得ない」と指摘した。これに対し、財務省の担当者は「捜査にどういう影響があるのか分からないのでコメントできない」などと答えた。

 報道では、近畿財務局の職員の実名を挙げ、一部の発言がこの職員によるものとされた。民進側が会合でこれについて確認すると、財務省側は「報道の音声データの内容については(本人に)確認していない」と説明した。

 ただ、昨年3月下旬に職員と前理事長らが接触したかについては、「何回かごあいさつしている」と認めた。職員への事実関係の調査については、「どんなやりとりがあったかについても捜査中なので、確認はしていない」とした。

 

森友学園国有地売却“国の基準でも値引き額多すぎる”(2017年9月14日配信『NHKニュース』)

 

学校法人「森友学園」に国有地が鑑定価格より安く売却された問題で、国の担当者を背任の疑いで告発している弁護士らのグループが国の説明する基準で計算しても値引きの額が2億円以上多すぎるとして14日、追加の鑑定結果を大阪地検特捜部に提出しました。

大阪の弁護士など246人のグループは大阪・豊中市の国有地が鑑定価格から8億円余り値引きされて森友学園に売却された問題で近畿財務局などの担当者が国に損害を与えたとして背任の疑いで告発しています。

 グループはすでに国が値引きの根拠としたごみの撤去費用は3億8000万円余り多いとする鑑定結果を提出していますが、空港の騒音対策の一環として買い上げられたこの土地について、国が空港工事の基準で算出したと説明したことから、改めて鑑定を行いました。

 そしてこの鑑定でも撤去費用は2億7000万円余り多すぎることがわかったとして14日、特捜部に追加の鑑定結果を提出しました。

 グループの阪口徳雄弁護士は記者会見で「空港の工事基準を当てはめること自体がおかしく、撤去費用が高くなるように極めて恣意(しい)的に計算をしている。特捜部は捜査を徹底してほしい」と述べました。

 

「土地の売却、0円で」 迫る籠池氏に譲らぬ最低ライン(2017年9月12日配信『朝日新聞』)

 

 森友学園への国有地売却問題で、学園前理事長の籠池泰典容疑者(64)と国との交渉内容とみられる録音データが明らかになった。「適正に算定した」とする国の説明に疑念が深まる内容だ。大阪地検特捜部は今後、大幅値引きをめぐる背任容疑の捜査に注力する。

 「どうぞ」。約45分間の音声データは、籠池前理事長の声かけで始まる。子どもの声、アナウンス……。朝日新聞がノンフィクション作家菅野完(たもつ)氏から提供を受けたスケジュール帳のコピーの記載や学園関係者の証言から、昨年5月、学園が運営する幼稚園での録音とみられる。前理事長夫妻と、担当の財務省近畿財務局職員とうかがえる男性2人が参加している。

 「一度、ごあいさつ兼ねて来ておいた方がいいかなと」。担当職員とみられる男性がゆっくりとあいさつする。前理事長が呼ぶ男性の名字は当時、近畿財務局で、学園との交渉を担当した職員と同じ名字だ。

 学園の小学校を建てるための土地の売却を「0円に近い形で」と迫る前理事長。それに対し、職員は最初から「1億3千(万円)」の数字を示した。

 国が学園に汚染土の除去費の立て替え分約1億3200万円を支払ったのは2016年4月。「1億3千は国が払っている。それよりも安い値段はとうてい出ない」。職員は除去費の額を売却額が下回ることはない、と説明する。

 前理事長夫妻は「ダイオキシン」による新たな土壌汚染が発覚したと主張するが、職員は「1億3千」を「ライン」と表現。「そこまでのラインというのは我々はやる」と言い切った。

 このやりとりの前の同年3月には前理事長が財務省国有財産審理室長と会い、当時、小学校の名誉校長だった安倍晋三首相の妻・昭恵氏の名前に触れて「早急な対応」を迫っていた。

そして同年6月、国が学園に土地を実際に売却した金額は、更地の鑑定価格9億5600万円から、地中のごみ撤去費約8億2千万円などを引いた1億3400万円だった。さらに支払いは10年間の分割払い。これも今回の音声データの中で、「劇的に月額の負担料が安くなる」「契約は成立して、名義も文句なく森友学園に変わる」と、職員側から提案していた。

■今後の背任捜査、どう進む?

 背任罪の成立には、国有地の値引きについて、自己や第三者の利益を図るなどの目的で、「故意に」国に損害を与えようとしたことの立証が必要となる。

 そのため大阪地検特捜部は、財務省近畿財務局職員を始め、多数の関係者の証言と証拠が整合するかなどを検証。検察幹部の一人は「ある程度時間をかけてやらなければ」と語る。

 財務省の佐川宣寿(のぶひさ)・前理財局長は今年3月、国有地売却で「(価格を)提示したこともないし、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」と国会で話した。4月には「適正に処分費を見積もって不動産鑑定士の評価した更地価格から控除し、売却価格を算定した」と答弁した。

 しかしその後、近畿財務局と学園側の昨年3月の協議で、財務局側が「いくらまでなら買えるのか」と問い、学園側が「1億6千万円まで」と答えていたことが、学園関係者らの証言で明らかに。さらに、国土交通省大阪航空局がごみの撤去費を約8億2千万円と見積もる根拠にした現場写真21枚が不鮮明だったことも明るみに出た。

 さらに今回の音声データで、財務省側の答弁の疑わしさは強まる。同省は交渉記録を「破棄した」としており、背任容疑で告発した弁護士らは、強制力をもった家宅捜索を求めている。

 捜査関係者は「籠池容疑者がしゃべれば(背任の)捜査が進むかもしれない」と語るが、起訴後の12日以降、夫妻に取り調べに応じる義務はない。黙秘の姿勢から転じるかは不透明だ。

 仮に不起訴処分となれば、告発者らが検察審査会に不服を申し立てる可能性は高い。捜査の経過を第三者が検証するため、複数の検察幹部は「きちんと説明できる捜査をしなければ」と強調する。

 売却の経緯は、会計検査院も実地検査に入るなどして検査を続けている。

 

財務局側、10年分割「劇的に月額負担安く」 録音要旨(2017年9月12日配信『朝日新聞』)

 

 森友学園前理事長の籠池泰典(64)、妻の諄子(じゅんこ、60)の両容疑者が昨年5月、財務省近畿財務局の職員と面会した際の録音とされる音声データの主な内容は次の通り。

■国有地の売却価格について

 職員 「どういうものを引くとか、あんまり中身の話を申し上げても、最後は『実際の金額いくらやねん』ていう話だと思うので。そこをばしっとご提示して、土地の取得価格をもって事業計画、資金収支を計算していただいて、それが成立するかという判断をしてもらうことが大事。来月(6月)早々には金額をご提示させていただく」

 前理事長 「我々の想定している金額とあなた方が出してくる金額とは、前の見積もり合わせの時でも格段の違いがあったはず」

 「すでに賃貸料を払いつつ、(熊本地震の影響で)工事費が高騰した分を上乗せして払ってくれと(業者から)言われてる。0円に近い形で払い下げをしてもらいたい」

職員 「おっしゃられる『0円に近い』というのは売り払い価格が0円ということなのかなと思いますが、有益費(汚染土や埋設物を15年に撤去した際の費用)の1億3千(万円)は国が払ってるので。その分の金額ぐらいは少なくとも売り払い価格に出てくる。そこは何とかご理解いただきたい」

 前理事長 「1億3千がうんぬんよりも、ぐーんと下げていかないかんよ」

 職員 「ゼロに近い金額まで私はできるだけ、努力するという作業をやっています。だけど、1億3千を下回る金額というのはないです。そこまでのラインというのは、我々はやる」

 前理事長 「(国有地から)ダイオキシンが出たのよ」

 妻 「昨日、大量に。どうやら、ゴムとか焼いている焼却炉やったらしい」

 前理事長 「風評が広がると、(学校が)できなくなる。これ、早めに口封じしなあかん」

 職員 「国として焼却炉の存在は認識していない」

■近畿財務局側が売買代金の分割払いを提案

 職員 「現在、(学園側が賃貸契約で払っている)月額の使用料が227万5千円。延納の手続きをとったときに……」

 職員 「2割以上を納めていただいて、分割払い。マックス10年であとの8割を返すみたいなやり方もありまして」

 前理事長 「10年で分割するということやね」

 職員 「結構劇的に月額の負担料が安くなる」

 職員 「延納でやると、残りを10年で割って返したら、ご負担も減ると」

 前理事長 「その間はどこの土地になんの?」

 職員 「契約は成立して、名義も文句なく森友学園に変わっている」

 

財務局「森友学園の希望額まで努力」 特捜部が音声入手(2017年9月11日配信『朝日新聞』)

 

 大阪地検特捜部は11日、大阪府・市から補助金約1億2千万円を詐取したとして、学校法人森友学園の前理事長籠池泰典(64)、妻の諄子(じゅんこ)(60)の両容疑者を詐欺罪などで起訴し、補助金不正の捜査を終結した。起訴済みの国からの分も含め詐取総額は約1億7千万円。一方、安値で学園に売却された国有地の売買交渉で、財務省近畿財務局の担当職員が「(学園の希望額に)近い金額まで努力している」と学園側に伝えた音声データを特捜部が入手していたことがわかった。

 特捜部は今後、過大な値引きがなかったかなど財務省職員らの背任容疑の捜査を本格化させる。

 関係者によると、音声データは2016年5月中旬、近畿財務局職員が学園の幼稚園(大阪市淀川区)を訪れた際のものとみられる。朝日新聞はノンフィクション作家菅野完(たもつ)氏からデータの提供を受けた。

 この中で、担当職員は国有地の価格について「理事長がおっしゃるゼロに近い金額まで努力するという作業を今やっている」と発言。国は15年に実施した国有地の汚染土の除去工事に1億3200万円を支出しており、担当職員は「その分の金額ぐらいは少なくとも売り払い価格に出てくる」とも述べていた。

 こうしたやりとりで国側は、支出した除去工事費を下回る額での売却は不可能と学園側に示唆したとみられる。一方、強硬に値下げを求める籠池夫妻に、前例のない10年分割払いも提案していた。

 最終的に国は16年6月20日、鑑定価格からごみ撤去費約8億2千万円を差し引き、汚染土除去費を約200万円上回る1億3400万円で学園に売却した。

 国有地売却の経緯をめぐっては、この約2カ月前、担当者が学園側に対して支払い可能な金額を尋ね、学園側は「1億6千万円まで」と回答していた。

 また、値引き額に反映する地中のごみ撤去費の根拠として学園側から国が受け取った試掘現場の写真が極めて不鮮明なものだったことも報道などで分かっており、特捜部もこうした経緯を把握している模様だ。

 

特集ワイド;栄転、昇格…森友問題「渦中の人」 忘れていいの?二つの人事(2017年9月7日配信『毎日新聞』)

 

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森友学園問題で注視された官僚人事で、関係者は十分な説明責任を果たしたと言えるだろうか

(左下は世耕弘成経済産業相、右下は佐川宣寿国税庁長官)=コラージュ

 

 学校法人・森友学園問題を巡り、「渦中の人」となった霞が関官僚2人の人事は大きな批判を浴びたが、北朝鮮の核実験などもあり、報道される機会が減った。霞が関でもこの問題は沈静化したのか。現役官僚やOBを訪ね歩くと、いまだに疑問が残るという。このまま忘れ去っていいのだろうか。【鈴木美穂】

 安倍晋三首相の妻昭恵さん付の政府職員だった経済産業省の官僚、谷査恵子さんが8月6日、ローマにある在イタリア日本大使館の1等書記官に就いた人事は記憶に新しい。世耕弘成経産相は「同期の2種(ノンキャリア)の職員も既に3分の1程度は海外勤務を経験している」「1月末に内内示が行われ、森友問題との関連は全くない」と「通常の人事」であると強調した。だが、ある経産官僚は「こんな人事は聞いたことがない。ノンキャリア官僚の処遇としては違和感を覚える」と驚きを隠さない。

 1等書記官は大使、公使、参事官に次ぐポスト。元外務官僚で青山学院大法科大学院客員教授の小池政行さんは「主要7カ国(G7)の一つのイタリアで1等書記官は通常、キャリアのポスト」と解説する。このため、異例の人事と受け止められ、さまざまな臆測が飛び交い続けている。

 「『口封じ』と『ご褒美』がセットになった人事では」とみるのは、谷さんが直属の部下だったこともある経産省OBで「官僚の責任」などの著書がある古賀茂明さん。「誰もがうらやむ欧州の一等地へ異例の栄転です。身をていして昭恵さんを守り、政権に貢献したことへの『特別な配慮』だけでなく、『余計なことはしゃべるな』というメッセージが込められているように見えます。公務員に忠誠を守らせるために人事を最大限活用する現政権の姿を象徴していないでしょうか」。その上で、こう苦言を呈す。「仮に半年以上前に内内示があったとしても、谷さんに国民への説明をさせてから、異動させるべきです」

 小池さんも「籠池泰典前理事長に暴露され、慌てて押し込んだと見られても仕方がない。国内では参考人招致などで国会に呼ばれる可能性があり、取材攻勢にも遭う。海外なら大使館で守られ、家のセキュリティーも厳重なはず。記者も接触が難しくなるでしょう。イタリアはワシントンほどの多忙さはなく、余暇も快適に過ごせると人気があります。本人にも『口封じ』と感じさせない『人事的配慮』が行き届いた異動ではないでしょうか」と推測する。

現役官僚も「違和感覚える」

 改めて、経緯を振り返りたい。

 谷さんは経産省クール・ジャパン海外戦略室などに勤務後、内閣官房で2013年から3年間、昭恵さん付を務め、16年1月に経産省に戻った。

 今年3月、森友学園に対する国有地売却問題をめぐる証人喚問が衆参両院予算委であり、籠池前理事長は「国有地の借地契約」について昭恵さんに相談し、谷さんが財務省に照会したと証言。照会内容は谷さんからファクスで受け取ったとした。昭恵さんの関与の有無を問題視した野党が、参考人招致を要求したが、与党は拒否した。菅義偉官房長官は「谷氏個人が作成した」と述べ、昭恵さんの関与を否定する。

 このような説明について、複数の官僚は「役所のルールから外れている」と口をそろえる。谷さんが照会した相手は財務省の国有財産審理室長。全省庁の予算を査定する「格上官庁」の財務省を相手に、谷さんのような経産省出身のノンキャリアが誰の口添えもなく問い合わせて文書で回答をもらうのは極めて不自然だ、というのだ。

 古賀さんも「谷さんがいくつもの『壁』を突破できた裏で、政治の力が働いたのは、官僚から見れば明らか。だからこそ、ほとぼりが冷めるまで谷さんをかくまう必要があったのでは。2〜3年もたてば国民は忘れてしまう。政治の側にはそんな計算が働いていると思います」。

 一方、谷さんと同世代のノンキャリアの官僚には一連の問題はこう映っている。「政治家がとるべき責任を1人のノンキャリアに負わせている。公務員は政治に要請されれば『ノー』と言えない。我々にも生活があり、よほど恵まれた家の出でもない限り『辞めて告発する』ことはできません。問題は、国民の目を真実からそらそうとする『政治の側』にあるのでは」

 谷さんのようなノンキャリアが、1等書記官としてイタリア大使館に異動した前例はあるのか。経産省に問い合わせると「同様のケースが過去にあったかどうかは、にわかには回答できない」との答えだった。

「既定路線」なら問題ないのか

 耳目を集めた「もう一つの人事」が7月の佐川宣寿前財務省理財局長の国税庁長官就任だ。事務次官に次ぐ「ナンバー2」への昇格である。森友学園への国有地売却問題で、野党の追及に「記録は残っていない」「データはない」「政治関与はない」と答弁を続け、「鉄壁のゼロ回答で首相を守りきった」と評される。同省には、問題発覚から半年以上がたっても苦情が寄せられており、「数も多く、極めて強い叱責もある」(同省幹部)。

 これは「論功行賞」人事なのか。佐川さんの直近3代も理財局長からの就任だ。麻生太郎財務相は「適材だ」と語り、省内でも「既定路線」との見方が大勢を占める。

 だが、前出の古賀さんは「真相究明を阻止したと世論の袋だたきに遭っている人物を既定路線で昇進させる人事はやり過ぎで、歴代政権とは明らかに異質な対応です。『守ってくれれば、見合う処遇をする』との強いメッセージを霞が関の官僚向けに発信する必要があったのではないか」と指摘する。

 官僚を敵に回せば政治家は反撃を食らいかねない。文部科学省の前川喜平前事務次官が反旗を翻した加計学園問題はそうだった。

 古賀さんは続ける。「真相解明をせずに人事で丸め込むようでは、今後も『政官一体の隠蔽(いんぺい)工作』が続いてしまいます」。古賀さんの著書「官僚の責任」にはこう記されている。

 <官僚になった当初は、ほとんどの人間が「国のために働く」という志を胸に抱いていたはずなのだ。(中略)いつしか初心を忘れて、しだいに内向きになっていく。国益より省益を第一に考えるようになっていく>

 旧大蔵省の広報誌・ファイナンス(1999年9月号)に、佐川さんが書いた「編集後記」がある。当時の肩書は、国民の窓口役を担う広報室長。国民が同省の発表資料などを一元的に入手できる「広報スペース」を新設し、広報誌にも発表資料一覧を掲載することをアピールする内容だった。当時、国民目線はあったようだ。

 森友問題で「ゼロ回答」を貫き、国税庁長官就任の記者会見も「諸般の事情」で拒んだ佐川さん。18年前のご自身に今、何と声をかけますか。

 

         安倍首相 真摯な説明はいつ? 森友・加計疑惑、日報問題(2017年9月1日配信『毎日新聞』)                                                                          

 

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内閣改造から1カ月、丁寧な説明は?

 

 8月3日の内閣改造からまもなく1カ月。安倍晋三首相は通常国会閉会後の6月19日の記者会見で「真摯(しんし)に説明責任を果たす」と語り、改造の際も「謙虚に、丁寧に」と低姿勢を強調した。森友、加計学園問題など残る疑問点について、説明は進んだのだろうか。

 「対抗勢力もある。非公開でお願いできたら」。国家戦略特区ワーキンググループ(WG)は8月25日、獣医学部新設を巡って2015年6月5日に愛媛県に行ったヒアリングの議事録を公開した。冒頭部分では、愛媛県が議事内容の非公開を要請し、八田達夫座長が「分かりました」と了承していた。

 一方、内閣府が3月に公開した議事要旨はこの部分を省略。「公開でいいか」との質問に愛媛県が「はい」と答えたことになっている。WGの原英史座長代理は食い違いについて「非公開の希望を公開するほうがネガティブだ。公開すべき内容は示しており問題ない」と説明するが、「改ざん以外の何物でもない」(民進党幹部)との批判は強い。

 WGはまた、ヒアリングに加計学園幹部が出席したことも認めているものの「『説明補助者』の非公式な発言だ」(原氏)と内容を伏せたままだ。

 「一点の曇りもない。議事録を読んでもらいたい」。首相はWGの公平性をこう強調してきた。「国家戦略特区の正体」(集英社新書)の著書がある立教大の郭洋春教授(国際経済論)は「WGは限られた人たちの密室の議論だ。議事録は国民が内容を知るただ一つの手段なのに、信ぴょう性が問われている。公平性を担保しにくい意思決定に問題がある」と疑問視する。

       ◇

 森友問題で野党から証人喚問要求も出た首相の妻昭恵氏。8月下旬、フェイスブックで「6月に植えた稲がスクスク育ち、花を付けています」と活動を紹介した。国が国有地を不当に安く売却した疑惑では、政権と学園の接点になった昭恵氏だが、公の場で説明に応じる気配はない。

 自衛隊の国連平和維持活動(PKO)の「日報」隠蔽(いんぺい)問題。特別防衛監察で未解明のまま残った稲田朋美元防衛相への事前報告に関し、小野寺五典防衛相は8月10日の国会答弁で「証言が一致しなかった」と深入りを避け、再調査も拒否した。

 民進党など野党4党が臨時国会の召集を要求したのは6月22日。政府・与党が調整する今月25日の召集となれば、要求から95日間も放置されることになる。民進党の代表選が政権側に猶予を与えた側面もあるものの、召集を要求から「20日以内」とした自民党の2012年の憲法改正草案とも矛盾する。

 官邸前の抗議活動などに詳しい五野井郁夫高千穂大教授(民主主義論)は「近年増えているデモの参加者には、退陣要求だけでなく首相の真意を聞きたいという人もおり、説明すれば納得する人も多い。国のトップが説明責任を果たさずに居直れば、長期的には社会や民主主義を腐敗させるのではないか」と警鐘を鳴らした。

 

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